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大学受験塾チーム番町オススメ 教育の本5選:エビデンスと非認知能力が成績向上の鍵!

 

大学受験塾チーム番町オススメ 教育の本5選:エビデンスと非認知能力が成績向上の鍵!

 

「学力」の経済学(ディスカヴァー)

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著者は、慶應義塾大学総合政策学部教授の中室牧子先生です。
ご専門は教育経済学とのことです。
巻末に、引用した論文などがたくさん載っている、ちゃんとした本だと思います。

日本の教育には科学的根拠(エビデンス)が欠けている。
他人が子育てに成功したからといって、同じことをしても自分の子供が成功するとは限らない。
非認知能力学歴も大きく左右する。
「専門家の意見や考え」は科学的根拠(エビデンス)の信頼性の階層の最下層。

といった内容です。

塾長による書評

 

なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える(講談社現代新書)

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著者は慶應義塾大学文学部の安藤寿康先生です。
ご専門は教育心理学、行動遺伝学、進化教育学だそうです。
慶應義塾双生児研究のサイトに、本書で引用した論文などがたくさん載っている、おおむね、大学での研究に基づいた、ちゃんとした本だと思います。

前半は、教育とはなにか、といった、原理的な話が多いです。
本書のクライマックスは、第二部「教育の遺伝学」ではないでしょうか。
テストの点数などの能力が、どの程度遺伝によるもので、どの程度環境によるものか、双子による研究が述べられます。
このような行動遺伝学の研究によると、テストの成績などは、遺伝50%、遺伝に還元されない家庭環境30%、教え方や本人の変化20%だそうです。

塾長による書評

 

GRIT やり抜く力(ダイヤモンド社)

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ペンシルベニア大学心理学部のアンジェラ・ダックワース教授の著書です。
大学での研究、調査に基づく話がたくさん出てくる、ちゃんとした本です。
アンジェラ・ダックワース教授の研究は、他の多くの本で引用されています。

非認知能力の内容に「やり抜く力」が挙げられます。
まさに、「やり抜く力」の重要性、どのように育むか、などが述べられます。

「賢明な子育て」の科学的結論は「要求は厳しいが、暖かく支援し、子供の自主性を尊重する」だそうです。

塾長による書評

 

成功の教科書(小学館)

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普通の公立中学の陸上部で7年間で13回の日本一を達成された、元中学校の先生の原田隆史先生の著書です。
大学教授ではありませんが、大学で講師をされていたこともあり、様々な家庭環境の生徒を日本一に導き、生徒や成功者を分析したということは、学術論文に近いものがあると思います。
「非認知能力」という言葉こそ使われていませんが(流行る前から現場で実践していたからでしょう)、現在、「非認知能力」とされているものを育むための具体的な方法が語られています。

古今東西の成功者を分析して指導に生かされたそうです。

成功は、人間の生まれ持った質ではなく、つくるものである。
物事の結果を決める要因は「心・技・体・生活」で、特に「技」の前に「心」が大切だとおっしゃいます。
「心」の内容として「やり抜く力」「意欲」「自信」といった「非認知能力」のかなりの部分がカバーされています。
日誌(その日すべき事の予定と実績)をつけ、毎日少しづつ、目標への階段を登る、といった目標達成の技法も、「やり抜く力」「自分の現在の状況を把握する力」などを育む方法と言ってもいいでしょう。

 

子供の夢を叶える家族の教科書(学研)

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上記の原田隆史先生の著書です。

上記の『なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える』では、テストの点数などの要因は、遺伝に還元されない家庭環境30%であると述べられます。
また、上記の『GRIT やりぬく力』では、「賢明な子育て」の科学的結論が述べられます。
家庭環境はテストの点数に非常に大切です。
その実践編、という位置づけでいいのではないでしょうか。

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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職場(大学卒業後)における非認知能力の重要性と鍛えかた:自己効力感、やり抜く力、意欲

 

職場(大学卒業後)における非認知能力の重要性:自己効力感、やり抜く力、意欲

 

はじめに

 当塾は、大学受験塾なので、大学受験における非認知能力の重要性と鍛え方を解説しました。
 一方、非認知的能力は、社会人が持つ認知能力や技術的スキルを補完するものとして、職場において極めて重要です。非認知能力のうち、コミュニケーション能力、チームワーク、適応力といったものは、大学受験よりも、むしろ、社会に出てから重要になります。
 この記事では、これらの非認知能力が職場で重要視される理由と、その非認知能力の鍛え方について解説しています。

 

自信、自己効力感の重要性と鍛えかた

生産性の向上

 自信のある従業員は、新しい課題や責任を引き受ける可能性が高く、生産性の向上につながる可能性があります。

コミュニケーションの改善

 自信のある従業員は、自分の考えや考えをよりよく伝えることができるため、より良いチームワークとコラボレーションにつながる可能性があります。

より強い関係

 自信のある従業員は、同僚や上司とより強い関係を築く可能性が高く、よりポジティブでサポート的な職場環境につながる可能性があります。

仕事への満足度の向上

 自信のある従業員は、仕事に満足する可能性が高く、定着率の向上と離職率の低下につながる可能性があります。

 

鍛え方

 大学受験のところで、以下の本を紹介しました。

『やる気が上がる8つのスイッチ』(ディスカヴァー)

 この中で、自信を高めるには

「成功体験を積むこと。社会人ならば、職場でのオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で成功体験を積むこと。」

と述べられています。まさに社会人の話なので、実際に仕事で成功を収めることが、自信の向上につながり、正のスパイラルを生み出します。

 

やり抜く力、GRITと鍛えかた

困難に直面した際の回復力

 職場は、高いプレッシャー、締め切り、様々な障害物などがある、困難な環境である可能性があります。「やり抜く力」を持つ従業員は、モチベーションや決意を失わずにこれらのプレッシャーに耐える可能性が高くなります。

長期的なコミットメント

 「やり抜く力」のある人は、仕事で困難な状況や挫折に直面しても、諦めたり、焦点を切り替えたりする可能性が低いです。これは、離職率を低め、生産性の向上につながる可能性があります。

継続的な成長と学習

 「やり抜く力」を持つ従業員は、自分の仕事に情熱を持っている傾向があります。これは通常、継続的な学習と成長への欲求につながります。これは、さまざまな変化に適応し、役割の中で成長するのに役立ちます。長期的には従業員自身と雇用者を助けます。

イノベーション

 「やり抜く力」のある人は、課題に直面してもあきらめにくいため、問題の革新的な解決策を見つける可能性が高いかもしれません。これは、多くの職種や業界で非常に価値があり、特に創造的な問題解決スキルが必要な場合です。

 

鍛え方

 大学受験のところで挙げた、大学の研究に基づく、『GRIT やり抜く力』『やり抜く人の9つの習慣』(ディスカヴァー)が信頼性が高いでしょう。

 

意欲と鍛えかた

パフォーマンスの向上

 意欲の高さは、生産性の向上につながり、組織はより高いレベルの成果を達成することができます。

創造性とイノベーションの促進

 意欲は人々を創造的に考えるように刺激し、イノベーションを促進することができます。意欲が高い従業員は、新しい仕事の仕方を模索する可能性が高く、これはビジネスプロセスの改善と組織の競争上の優位性につながる可能性があります。

従業員の離職率の低下

 従業員が意欲を高め、仕事を楽しんでいる場合、退職する可能性は低くなります。これは、企業にとって有益です。従業員の離職コストは高額になる可能性があるため、これは採用と新入社員のトレーニング、および生産性の低下にかかる費用の両方に関係します。

リーダーシップ開発

 職場のモチベーションは、将来のリーダーを育成することもできます。意欲的な従業員が成功を目指すとき、彼らは将来のリーダーを引き受けるために必要なスキルと特性を開発することができます。

 

鍛え方

 大学受験のところに書きました。
 『やる気が上がる8つのスイッチ』(ディスカヴァー)を紹介しました。やる気、つまり、意欲ですね。自分の能力を証明するのではなく、成長を目指す。自信をつける。自分が獲得型か回避型かを見極め、強みを活かす。ことを意識しましょう。
 原田隆史先生の目標設定用紙には、「自分がなぜその目標を達成しなければならないのか」の理由を「公私」「物心」をxy軸にした平面にたくさん書き上げる欄があります。理由をたくさん上げることで、目標達成への意欲が高まる、ということだと思います。

 

忍耐力と鍛えかた

関係構築

 同僚と強固で有意義な関係を築くには時間がかかります。忍耐は、これらの関係が自然にそして真に成長するために必要な時間を与えてくれます。

課題への対処

 すべての仕事には独自の課題とストレスがあります。忍耐は、これらの問題をより効果的に処理するのに役立ち、パフォーマンスと全体的な幸福への潜在的な悪影響を減らすことができます。

意思決定

 忍耐はより良い意思決定を可能にします。短気は、すべての潜在的な結果や代替案を考慮せずに、性急な決定を下す可能性があります。

紛争処理

 紛争や意見の相違は、どの職場でも避けられません。これらの状況に対処する鍵は忍耐です。他者の視点を傾聴し、状況を冷静に処理し、全員の利益にかなう解決策を探すことを可能にします。

顧客サービス

 仕事が顧客やクライアントと接することであれば、忍耐は重要です。顧客は耳を傾けてもらうことに感謝しています。そして、忍耐力を示すことは、彼らのニーズをよりよく理解し、したがってサービスの向上につながる可能性があります。

鍛え方

・マインドフルネス瞑想を実践する
 マインドフルネス瞑想はGoogleなどでも取り入れられています。日本の禅から宗教的な要素を排除したもので、脳に様々な変化が生じることが、科学的にわかっています。
世界のエリートがやっている最高の休息法(ダイヤモンド社)という本があります。著者はイェール大学医学部精神神経科卒業の医師の久賀谷亮先生です。日本、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、論文も多数、執筆されているのに加え、臨床医としての経験も豊富のようです。ちゃんとした本だと思います。マインドフルネス瞑想の効果について書かれています。

・共感と理解
 他人の視点を理解してください。同僚や顧客があなたをイライラさせている場合は、彼らの状況や動機を考慮してください。このより広い視点は、忍耐と思いやりを持って応答するのに役立ちます。

・運動と健康的なライフスタイル
 定期的な運動、健康的な食事、十分な睡眠は、全体的な気分とエネルギーレベルを改善し、忍耐力を練習しやすくします。

 

自制心と鍛えかた

衝動的な行動を減らす

 自制心は、しばしば間違いや誤解につながる衝動的な反応を防ぎます。行動する前に考える能力は、早まった決定を下したり、後で後悔するようなことを言ったりする可能性を減らします。

責任と誠実さを促進する

 自制心はしばしば高い責任と誠実さと密接に関係しています。それは人々が約束を守り、期限を守り、職場の倫理基準を守るのを助けます。

 

鍛え方

・マインドフルネス瞑想
 すぐ上の「忍耐力」を参照してください。自分の感情、思考、衝動をより認識できるようになり、自制心を向上させることができます。マインドフルネスはまた、衝動的な行動を引き起こすことがよくあるストレスを軽減することができます。
休息、栄養、運動なども有効です。

・自己監視
 定期的に行動と感情を監視してください。行動や感情を振り返ると、自制に苦労した状況を理解し、改善方法を特定するのに役立ちます。

・フィードバックとコーチングの依頼
 同僚、上司、部下からフィードバックを求め、行動の異なる視点を獲得してください。メンターやコーチと協力することも検討してください。彼らは建設的な批判と実行可能なアドバイスを提供することができます。

 

理解度を把握する、メタ認知と鍛えかた

課題解決

 メタ認知は、課題の特定、分析、解決において重要です。このスキルは、従業員が思考プロセスを認識し、仮定を認識し、結論を評価し、問題解決のアプローチを再考できるようにします。

自己規制

 メタ認知は自己規制スキルの開発を助けます。思考パターンや学習プロセスをより意識している個人は、行動をよりよく制御し、時間管理を行い、タスクを整理し、達成可能な目標を設定できます。

感情的知能

 メタ認知は、自己認識が感情的知能の重要な要素であるため、感情的知能と密接に関連しています。自己認識能力のある個人は、自分の感情を認識および理解できます。これにより、感情をよりよく管理し、他の人とより効果的に作業することができます。

 

鍛え方

・自己認識
 メタ認知への第一歩は、自分の強みと弱みを理解することです。自分のパフォーマンスや意思決定を定期的に振り返り、何がうまくいったか、何を改善できるかを特定します。
 原田隆史先生の目標達成用紙は「心・技・体・生活」について、成功、失敗の原因、問題点、解決策を記入する欄があります。原田隆史先生は公演で、この部分について「自分のこと知っとるか?」とおっしゃっています。

・明確な目標を設定
 明確な目標を設定することで、自分のパフォーマンスを測る基準が得られます。目標を設定する場合、SMART(Specific、Measurable、Attainable、Relevant、Time-bound)の基準を満たすようにしてください。大学受験のところで紹介した、ボーク重子さんの著書『SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法(祥伝社)』は、SMARTについて、詳しく解説しています。

・フィードバック
 フィードバック(与えることと受けることの両方)は、メタ認知を向上させるために重要です。フィードバックは、自分のパフォーマンスについての異なる視点を獲得し、必要な調整を行うのに役立ちます。

 

社会性と鍛えかた

チームワークとコラボレーション

 ほとんどの職場では、個々の努力だけではなく、チーム全体としての成果が求められます。社会性があることは、他の人々との良好な関係を築き、共通の目標に向かって協力する能力を意味します。これは新しいアイデアを生み出し、問題を解決し、より良い結果を達成するために不可欠です。

コミュニケーション

 効果的なコミュニケーションは、誤解を避け、タスクを円滑に進め、全体の生産性を向上させるために重要です。良好な社会性を持つ人は、思いやりと尊重をもって他人とコミュニケーションを取り、意見やフィードバックを効果的に伝えることができます。

職場環境の改善

 社会性のある人々は、職場でのポジティブな相互作用を通じて、より友好的で助け合いの精神を育むことができます。これは、全体的な職場の雰囲気を改善し、ストレスを減らし、満足度と生産性を向上させます。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

非認知能力とは?:大学受験での重要性、鍛え方、おすすめの本は?

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【レビュー】運の方程式(アスコム):天才と凡人を分けるのは好奇心!?大学受験に活かす

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

 

【レビュー】運の方程式 チャンスを引き寄せ結果に結びつける科学的な方法(アスコム):天才と凡人を分けるのは好奇心!?大学受験に活かす

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『運の方程式』の著者

 鈴木祐さんという、論文マニアの方です。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業。出版社勤務を経て独立されたそうです。近年、大学などの研究論文、エビデンスに基づいた書籍を何冊も出しています。例えば

・ヤバい集中力(SBクリエイティブ)
 集中力があれば受験も有利になりますね。

・超ストレス解消法(鉄人社)
 受験にストレスはつきものですよね。

・最高の体調(インプレス)
 体調が良ければ受験も有利になりますね。

・無 最高の状態(インプレス)
 不安がなければ受験も有利になりますね。

といった、受験生にも役立つようなものも多いです。

 

『運の方程式』の内容、感想、書評

 2023年2月第1刷。
 本書は、大学などの研究に基づいて作った方程式により、運を高め、人生で成功しようという趣旨の本です。当塾は大学受験塾なので、とりあえず、大学受験で成功するという観点から、紹介します。

 

天才と凡人を分けるのは好奇心!?天才のほうが東大、医学部受験に有利ですよね

 本書には、2021年にウィスコンシン大学などで行われた、天才に特有のパーソナリティを調べる研究が載っています。この調査で、「天才」とは、数学や語学といった学問の成績に加え、斬新なアートを生む想像力、他者をまとめるリーダーシップ、哲学的な思考の深さなど、あらゆる知的ジャンルで突出した存在、と定義しています。もちろん、大学受験で突出する能力も含まれますね。
 結論は、「好奇心の有無」でした。
 本書では、世界的な物理学の教科書『ファインマン物理学』でも有名な、ノーベル物理学賞受賞者、ファインマン先生が、いかに好奇心あふれる人物だったかのエピソードが載っています。

 天才と凡人を分けるのが好奇心の有無、というのは、塾長は、よくわかる気がします。
 塾長は、自分を天才だとは思っていませんが、たとえば、当塾のパソコンは、塾長が秋葉原でパーツを買ってきて、組み立てたものです。ノートパソコンで何も困らないにも関わらず。なぜか、作ってみたかったのです。好奇心でしょうね。
 また、塾長は、夏休みや冬休みに、受験生と一緒に、長時間、塾にいなければならない時、SHARPのヘルシオホットクックを使って、自炊をしていました。普通の塾の先生なら、コンビニ弁当あたりで済ませるのではないでしょうか。この件については、まず、ヘルシオホットクックという、最新の調理器具を使ってみたかった、という好奇心が1つ。もう1つは、コンビニ弁当などに比べ、野菜をたくさん摂れるので、腸内細菌に好影響があるだろうという、最先端の科学的知見(これも好奇心で得た知識です)を活かそう、といったものです。

 他の先鋭的な指導者が、好奇心について、どのように考えているかを述べます。
 まず、学術的に、好奇心は、非認知能力(ペーパーテストで測定できる認知能力に対し、ペーパーテストでは測定できないが、ペーパーテストの成績や社会的成功に大きく影響するもの)の1つです。当然、大学受験にも大きく影響するでしょう。
 東大の脳科学の池谷裕二先生は、著書『受験脳の作り方』(新潮文庫)で「生きるのに不可欠な情報以外は忘れる」と述べています。好奇心旺盛な人は、いろんなことに「生きるのに不可欠」レベルに興味を持っているので、いろんなことが脳に残りやすく、大学受験の点数も高くなりやすいでしょう。

 元灘校の英語の先生で、英語教師集団チームキムタツを率いる木村達哉先生は、著書『東大に入る子が実践する勉強の真実』(KADOKAWA)で、「勉強体質」という言葉を使っています。「勉強体質」を、「自分で楽しいことや新しいことに出会うと、調べてみようかな、知っておこうかな、という気持ちになる体質。自分のレベルをあげようという体質。」と定義しています。つまり、好奇心に近いものでしょう。
 世界陸上400mハードルで銅メダルを2回獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2021年9月29日に「与えすぎて弱くなるってどういうことですか?」という動画をアップしています。

 為末さんは、この動画の中で、一番の才能は「こんなことをしてみようかなと思いつく」「何を見ても好奇心がワーッと湧いてくる感覚」といったもので、これらが後天的に最も与えにくい、と語っています。「好奇心」が一番の才能だと語っていますね。
 一方、「後天的に最も与えにくい」とも語っています。実際に、進学校の下位1~2割ほどは、勉強の技術的なもの以前に、受験勉強を通して、好奇心を失ってしまった、ような場合が多いように思います。

 

塾長の経験:好奇心を失うとこうなる

 こまめに確認テストをすることをウリにしている大学受験塾があります。しかし、上手く行っているのかなあ、という疑問があります。
 1つは技術的な問題です。好奇心が普通くらいの人でも、学習内容を忘れるのは普通なので、確認テストの日に正解できても、その1ヶ月後にも正解できるかはわかりません。大学受験勉強というものは、大学受験の日に正解できなければなりません。
 もう1つ。保護者の過保護、過干渉で、好奇心を失ったであろう人が、授業のたびに、ごくごく基本的なことで引っかかったので、毎回、授業の前に同じ内容の確認テストを行ったことがあります。まあ、そのうちできるようになったので、しばらく確認テストをやめてみました。しばらくして、久しぶりに同じ確認テストを行ったところ、すっかり忘れていました。
 まあ、大学受験の成績が上がらないメカニズムというものは、技術面の前に、このような面が前提にあることが多いような気がします。

 

好奇心の高め方

 ここで朗報です。
 本書には、南メソジスト大学の実験によると、アクションリストから選んだいくつかのミッションを実行することにより、4ヶ月ほどで好奇心が高まったことが書かれています。たとえば

・最新の科学的発見や技術に関するニュース番組を読む
・いままで見たことがない新しい映画を見る

といったものです。アクションリストは、おおむね、今まで自分がやったことがないことを、やってみよう、といった内容のものが多いです。実際に本書を買うのが一番いいと思いますが、日々、新しいことにチャレンジすることを心がける、といった感じでもいいかと思います。

 では、好奇心が高まるメカニズムは何か、ということです。これは、本書では語られず、塾長の私見ですが、『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)などで、脳の可塑性(変化できる)について語られます。好奇心が高まるのも、好奇心が高まりそうな行動を継続することにより、脳に好奇心が高まる何らかの神経回路が構築される、ということではないかと思います。

 

人間は無意識に新しいものを嫌う

 本書では、このことを「反新奇性バイアス」と呼んでいます。
 これは、教育、大学受験についても言えることです。進学校の下位層の保護者の方というのは、8割方、単に、ちゃんとした大学の研究者や現場の指導者が言っていることの逆のことをしているケースが多いです。この方々は、ほのめかしたくらいでは、行動を変えません。だからといって、伝わるように直接的に申し上げると、猛烈に怒り出したりします。まあ、要因は、たとえば、自尊心だったりもすると思いますが、「反新奇性バイアス」という面もあるのではないかと思います。
 本書では、好奇心を高めるためのアクションリストが挙げられていますが、そのような新しいことをするのが嫌いな人が、おそらく世の中には、ある割合で存在します。
 そのために、本書では、「反新奇バイアス」に陥らないための方法も紹介されています。

 

社会性を高める:大学受験の後に役立つ

 社会性を高めるアクションリストも載っていますが、大学受験とそれほど関係はなさそうなので、あまり述べません。ただ、社会性が高いほうが、大学受験に必要な情報が集まりやすい、周りから応援してもらえる、など、目には見えないが、意外に大きな影響があるのかもしれません。
 当然、社会に出てからは、運を高める方程式として、重要なスキルになります。

 

ネガティヴで大学受験を戦いにくい人へ

 ネガティヴなゆえに、大学受験を戦いにくい、という受験生も、ある割合でいるようです。また、保護者の方が、大学受験について過保護過干渉になり、親子関係が崩壊するのも、1つは、ネガティヴさ、心配性が原因でしょう。
 そのような「ネガティビティ効果」から逃れるための、「視野拡大アクションリスト」も載っています。

 

ビジネス、研究で成果を出す:大学受験の後に役立つ

 『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)という本があります。著者は、ペンシルベニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授です。『ORIGINALS』では、ノーベル賞受賞者とその他の科学者を比較した調査で、ノーベル賞を受賞するような創造性を発揮するには、その分野の深い経験がもちろん必要だが、加えて、幅広い経験が必要なのではないか、と考察しています。
 本書『運の方程式』でも、「天才は幅広い実験と一点集中を交互に繰り返す」としています。おおむね、似たような趣旨でしょう。
 まあ、あまり大学受験には役に立たないかもしれませんが、ビジネスの世界に進むにせよ、研究の世界に進むにせよ、将来は、大切な考え方になるのではないかと思います。もしかすると、自分にあう大学受験の勉強法を模索する時などには、役に立つかもしれません。

 

忍耐があったほうが大学受験に有利

 忍耐力があったほうが、大学受験に有利ですよね。社会に出てからも、忍耐が合ったほうが、運が巡ってくるでしょう。
 本書には、忍耐力を高めるためのアクションリストも載っています。

 

 本書のような最先端の科学的知見を実行し、少しでも運を高め、受験を有利にしようという姿勢を持ちたいものですね。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想・書評】大学受験生のGRIT、やり抜く力(非認知能力の1つ)を育むオススメの本2選

 

非認知能力とは?

非認知能力についてのポール・タフ氏の本

非認知能力を育むボーク重子さんの本

非認知能力の権威、ヘックマン教授の本

小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て(マガジンハウス)

非認知能力をエビデンスで語る:「学力」の経済学

レジリエンス、回復力を育む本3選

やる気を育むオススメの本2選

 

【感想・書評】大学受験生のGRIT、やり抜く力(非認知能力の1つ)を育むオススメの本2選

 

大学受験生にとってのGRIT、やり抜く力の重要性

 GRIT、やり抜く力とは、逆境や困難に直面しても、長期間にわたって課題や目標に取り組み続けることです。ここでは、大学受験においてGRITが重要である理由を説明します。

 

大学受験は長い戦い

 大学受験の受験勉強には、何ヶ月、何年にもわたる継続的な努力が必要です。GRITは、受験生がこの長期間に渡って集中力を維持し、準備に専念できるようにします。

 

大学受験の挫折の克服

 受験勉強の過程では、難しいテーマ、模擬試験の点数の悪さ、個人的な問題など、さまざまな問題にぶつかる可能性があります。GRITは、大学受験生が意気消沈することなく、このような障害に耐え、乗り越えるのを助けます。

 

大学受験の一貫した努力

 一生懸命勉強するだけでなく、一貫して勉強することが大切です。GRITがあれば、生徒たちは散発的に勉強するのではなく、ずっと努力と勉強を維持することができます。

 

不確実性への対処

 大学入試の傾向や形式が変わることもあります。GRITのある人は、そうした不確定要素にうまく対処し、必要に応じて戦略を変更することができます。

 

大学入試科目の習熟度を高める

 英語や数学といった大学入試科目の習得は一朝一夕にできるものではありません。一貫した努力、反復、継続的な改善が必要です。GRITは、表面的な知識ではなく、習得を目指すよう、生徒を駆り立てます。

 

大学受験生のレジリエンス(精神的回復力)を高める

 レジリエンスとGRITは密接な関係にあります。レジリエンスは大学受験生が挫折から立ち直るのに役立ちます。GRITは、大学受験生が進歩が遅く感じられたり、進歩がないように感じられたりしても、前進し続ける決意を与えてくれます。

 

大学受験生の目標の設定と達成

 GRITは、大学受験生が明確で長期的な目標(入試をクリアすることなど)を設定し、それを堅持するのを助けます。この目標志向の考え方は、厳しい受験勉強で集中力とモチベーションを維持するために極めて重要です。

 

大学受験を超えた人生

 大学受験勉強で培ったGRITは、大学や将来のキャリアにも役立ちます。高等教育や多くの専門分野では、献身的な努力、長期的なコミットメント、困難を克服する能力が求められますが、これらはすべてGRITに関連する資質です。

 

特徴的な要素

 多くの生徒が同じような知能レベルや学習素材へのアクセスを持っているかもしれませんが、GRITは差別化要因となりえます。GRITの高い大学受験生ほど、準備を怠らず、必要な勉強に打ち込む可能性が高く、大学に合格する可能性が高くなります。

 

 まとめると、大学受験で成功するためには、知識、技能、戦略が不可欠ですが、GRITは、それらの資源を効果的に活用し、望ましい結果を得るために必要な粘り強さと決意を提供します。

 

GRIT やり抜く力(ダイヤモンド社)の感想、書評

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 2016年9月8日発売。GRIT、やり抜く力、は非認知能力の1つとして、近年、注目されています。

 

『GRIT やり抜く力』の著者の実績と信頼性

 著者はペンシルベニア大学心理学部のアンジェラ・ダックワース教授です。大学での研究、調査に基く話がたくさん出てくる、ちゃんとした本です。アンジェラ・ダックワース教授の研究は、他の多くの本で引用されています。また、アンジェラ・ダックワース教授はTEDに出演し、YouTubeは1,000万回以上再生されています。
 著者の実績と信頼性は抜群だと思います。

 

やり抜く人はなぜがんばれるのか?

 『GRIT やり抜く力』は、まず、米国陸軍士官学校の話から始まります。
 入学の難しさは、最難関大学にひけを取らない。学業でも体力測定でも高得点が必要。入学を許可される1200名は、ほぼ例外なく、各学校を代表するスポーツ選手で、大半はチームのキャプテンを務めている。
 しかし、5人に1人は中退してしまうそうです。しかも中退者の大半は、入学直後の厳しい基礎訓練に耐えきれずに辞めてしまう。
 では、この基礎訓練に耐えられるのはどんな人か。これが、アンジェラ・ダックワース教授が博士課程の時の研究テーマだったそうです。
 ちなみに、入学試験の成績が最高レベルの人たちは、なぜか、最低レベルの人たちと同じくらい、中退する確率が高かったそうです。
 大切なのは、「絶対にあきらめない」という態度、困難に負けずに立ち向かう姿勢、失敗しても挫けずに努力を続ける、といったことだそうです。GRIT、やり抜く力が高かった。グリットのテストを受けるとスコアが高く、それは、入学試験の成績とは関係がなかった。

 まず感銘を受けたのは、「物事をやり抜く力」が成功に至るための中心的要素であるという考え方です。この本の中でダックワース教授が語る「GRIT」は、課題に直面した時や困難な状況に遭遇した時でも、自分の目標を追求し続けるという強い意志を示しています。 
 この本を読むことで、大学受験生の課題に対する見方が変わりました。小さな成功や短期的な成果を追求するのではなく、長期的な視点を持って取り組むことの重要性を改めて理解しました。大学受験生が目指すべきは、一時的な成功ではなく、持続可能な成功であり、それを達成するためには「GRIT」、つまり「やり抜く力」が必要不可欠であることを痛感しました。

 塾長も、いろんな生徒を見てきましたが、入塾時の成績と、進学する大学は、あまり関係がないなあ、と思っています。全く成績が足りない人でも、絶対に東大、医学部に入りたいと思っている人は入る。一方で、高校の最初は、まずまずの成績でも、保護者が過干渉だったりする場合は、だんだん成績が下がり、その高校としてはどうだろう、といった結果になっていると思います。

 

東大、医学部合格を達成するには?

 アンジェラ・ダックワース教授は、競泳選手を対象とした「一流の人達が行っている当たり前のこと」という研究論文を読んだそうです。その内容は以下のようでした。

 最高のパフォーマンスは、無数の小さなスキルや行動を積み重ねた結果として生み出される。それは本人が意識的に習得する数々のスキルや、試行錯誤するなかで見い出した方法などが、周到な訓練により叩き込まれ、習慣となり、やがて一体化したものなのだ。やっていることの一つひとつには、特別なことや超人的なところはなにもないが、それらを継続的に正しく積み重ねていくことで生じる相乗効果によって、卓越したレベルに到達できる。

 この例からは、成功のためには一つ一つの小さなスキルや行動を継続的に正しく積み重ねることが不可欠だと学びました。卓越したパフォーマンスは、日々の練習と挑戦、そして持続的な努力の積み重ねによって生み出されるのだと思いました。

 普通の公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された原田隆史先生も「段差の小さい階段を毎日登る」のが成功のコツだ、とおっしゃいます。そのためのツールが「日誌」です。その日にすべきことを書き、実際にしたかをチェックする。

 東大、医学部受験の数学で考えましょう。部分的に教科書の説明を理解している。部分的に教科書の問題を解ける。部分的にチャート式やFocus Goldの問題を解ける。これらは、大したことではありません。しかし、これらを積み重ね、小学校から高校までのすべての教科書とFocus Goldについて、説明を理解し、問題を解けると、それは東大、医学部合格レベルです。世の中の、その他大勢の人から見ると、すごいことなのだと思います。

 本書には、「やり抜く力」をはかるテストも載っています。

 

やり抜く力を育む

 

最上位の目標は?

 たとえば、アンジェラ・ダックワース教授の最上位の目標は、「子どもたちの『目標達成力』と『しなやかな強さ』を育む」ことだそうです。
 このような、最上位の目標があれば、やり抜く力は高まるでしょう。
 一方で、「医師になりたい」「NBAのバスケットボール選手になりたい」といった高い目標を持ちながら、それを実現するための、中位、下位の目標を設定することができていない人も多いようです。
 東大・医学部受験に例えましょう。最上位の目標は、大学合格かもしれませんし、その後の「医師として社会貢献する」といったものかもしれません。そのような、最上位の目標を熱望している人のほうが、やり抜く力は高いと思います。一方で、東大や医学部に合格するための勉強のしかたを知っていて、1日1日、教材をこなしていく、という中位、下位の目標がしっかりしていれば、やはり、やり抜く力は高まると思います。

 最上位の目標を持つことの重要性には感銘を受けました。自分自身の生涯の目標を明確にすることで、人生の各ステージで直面する困難を乗り越え、成功へと導く「やり抜く力」を強化することが可能になるのだと思います。

 さて、最上位の目標、人生で何を成し遂げたいのか、なんて、そう簡単に見つからないよ、という高校生の方が、多いのかもしれません。
 筆者もそのように述べています。
 そして、金メダリストなどの「やり抜く力」の鉄人たちも、ほとんどのことは「これだ」と思うまでに何年もかかっていて、さまざまなことに挑戦していた、とのことです。興味は外の世界との交流で生まれるので、外の世界と多く交流するのが良い、ということだと思います。

 どうも、近年の気鋭の学者、現場の指導者の一致した意見は、「興味、好奇心を失う原因は、親の過干渉。親のすべきことは、きっかけ、機会を与えること。子供の興味を失わせないこと」といったもののようです。
 塾長も同意見です。進学校の下位層は、学科の理解以前に、保護者の方の過干渉により、好奇心、主体性、自分の人生を生きているという感覚、といった非認知能力を失った結果、成績不振に陥っている、というケースが多いように思います。
 本書では、Amazonの創業者のジェフ・ベゾスと、お母さんのエピソードが語られています。

 

やり抜くことでやり抜く力は高まる

 アンジェラ・ダックワース教授は、『GRIT やり抜く力』で、課外活動を1年以上続けることを奨めています。実際に、何かをやり抜くことで、やり抜く力は高まる。大学受験を戦い抜く力が高まる。
 普通の公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された原田隆史先生は、「1000日間続けることを決めなさい。」と指導するそうです。たとえば、家庭での皿洗い、風呂掃除などです。それにより、原田先生の生徒は、やり抜く力が高まったのかもしれません。
 

 

成功する東大、医学部受験の法則

 『GRIT やり抜く力』の章立てと全く同じ名前の『成功する練習の法則』(日本経済新聞出版社)という名著もあります。

ここではむしろ、『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)

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という本の内容が要約されています。『GRIT やり抜く力』の著者アンジェラ・ダックワース教授と『超一流になるのは才能か努力か?』の著者アンダース・エリクソン教授は共同研究をしており、盗作ではありません(笑)。物事の上達のメカニズムの科学的根拠が述べられています。一言でいうと、「現在の自分を少し越える負荷をかけ続け、脳に神経回路を構築する」というものです。

 

フロー体験とは?

 また、トレーニングをやり抜くために、元シカゴ大学心理学部、教育学部のチクセントミハイ教授が提唱する、物事に没頭し、喜びを感じる「フロー」という概念が紹介されます。

 

フロー体験が起きる条件は?

 チクセントミハイ教授は、著書で以下の条件を挙げています。

1.目標が明確
 チクセントミハイ教授は、最終目標も大切ではあるが、そうではなく、目の前の仕事に夢中になることだ、としています。
 ロッククライマーなら、山頂にたどりつくことではなく、落下しないための次の動作。チェスプレイヤーなら、勝つことではなく、次の一手や、読みによって戦略を立てることです。
 高校生の場合、東大や医学部に合格する、あるいは、さらにその先を見ている人もいるでしょう。それも大切ですが、まずは目の前の問題に没頭することです。

2.迅速なフィードバック
 「自分がしていることをどれくらいうまくやりこなしているかについての情報をすぐに入手できる」ことです。

 大学受験生の勉強の場合、すぐに答え合わせをすることができますね。

3.機会と能力とのバランス
 取り組んでいる物事と自分の能力のバランスがちょうどいい、ということです。
 簡単すぎると「退屈」ですし、難しすぎると「不安」「心配」といった状態になります。大学受験の勉強の場合、難しすぎても、わからなすぎるので「退屈」でしょう。
 ある研究では、85%ほど、すでに理解できている本が最もモチベーションが上がる、とのことです。かつて受験英語の神様と呼ばれた故伊藤和夫先生は「5割は知っている、3割は言われれば思い出す、2割は知らない、忘れていた」程度のレベルのときが最も学習効果が高い、といった趣旨のことをおっしゃっていたと思います。
 フロー体験うんぬんを抜きにしても、大学受験生の場合、多くは、取り組んでいる課題が簡単すぎるのではなく、難しすぎるので失敗していると思います。

4.集中の深化
 物事に没頭して、その中に深くはまり込んでいる状態です。
 たとえば、ロッククライマーが「瞑想や精神集中のようなもの」「考えなくても」「なにもしなくても」「正しいことが行われる」。エリート競輪選手が自己と自転車を「ともに作動している一台の機会のように感じる」。「努力を必要としない」といった状況です。
 東大、医学部受験の勉強も、このようでありたいですね。

5.重要なのは現在
 今、している物事に精神を集中しているので、日常の心配事が心に浮かぶ隙がない状態です。
 チェスプレイヤーなら盤上のみ。作曲家なら紙の上の符号とそれが表す音のみです。
高校生、大学受験生なら、目の前の問題のみでしょう。
 そしてそれは、現実逃避ではなく、現在の事実からの「前向きの」脱出です。

6.自分自身をコントロールしている感覚
 高校生や大学受験生なら、人に課された宿題をこなすのではなく、自分自身で選んだ勉強をする、ということでしょう。
 もちろん、どんな勉強をすればいいのか、というガイドライン、選択肢は、指導者がある程度の幅をもって提示するべきでしょう。

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人の役に立つとやり抜く力が高まる

 上で、人生の目標を見つけることの重要性を述べましたが、そうは言っても、そう簡単に人生の目標は見つからないでしょう。とりあえず、「人の役に立つ」と考えると、「やり抜く力」が強化される、とのことです。
 有名な「レンガ職人の寓話」があります。レンガ職人に「何をしているんですか?」と聞くと、
1人は「レンガを積んでいるんだよ」
1人は「教会を作っているんだよ」
1人は「歴史に残る大聖堂を作っているんだ」
と答えたという話です。
 東大・医学部受験に例えると、ただ、「化学を勉強しているんだよ」と答える人よりも、「1人でも多くの患者の命を救える医師になるために化学を勉強しているんだよ」と答える人のほうが、やり抜く力は強いでしょうね。
 利他の精神、人間教育は、受験に合格するためにも大切なのですね。

 

東大、医学部に合格できるとしなやかに考える

 マインドセットとは、心の持ちよう、といった意味です。本書では、『マインドセット「やればできる! 」の研究』(草思社)の著者、スタンフォード大学心理学教授のキャロル・S・ドゥエック先生の研究も引用しています。
 しなやかマインドセットとは、「知的能力は大きく向上させることができる」という心の持ちようです。しなやかマインドセットの人は、逆境でも粘り強くやり抜くことができる。東大・医学部受験にたとえると、成績が全く足りなくても、「勉強すればできるようになる」と考え、勉強をがんばれる、ということでしょう。大学受験塾チーム番町では、テストや模試の反省を行い、「この教材のこのページに載っているよね」と指摘し、勉強すれば東大、医学部に合格できるという考え方、しなやかマインドセットを育むよう、サポートしております。

 

東大、医学部受験をやり抜く子供を育てる科学的結論

 アンジェラ・ダックワース教授は「さらなる研究が必要だ」としつつも「賢明な子育て」の科学的結論が述べています。
 それは、「要求は厳しいが、暖かく支援し、子供の自主性を尊重する」というものです。
 塾長の経験上も、入塾時は全く成績が足りないのに、東大や医学部に合格するご家庭は、このような傾向があります。そもそも、塾に出てこないので、よくわからないのですが、まあ、そのような感じです。逆に、成績不振で保護者主導で塾の面談に連れてこられるようなご家庭は、本書に書いてあることの逆で、お子さんのほうも、やり抜く気概に欠けている、といった傾向があります。
 「賢明な育て方」診断テストもあるので、お子さんとの接し方のバランス感覚に問題意識を持っている保護者の方は、この部分だけでも、本書の値段の何倍もの価値があると思います。おおむね、上記のように、「興味、好奇心を失う原因は、親の過干渉。親のすべきことは、きっかけ、機会を与えること。子供の興味、主体性、自分の人生を生きているという感覚を失わせないこと。」といったことです。興味、好奇心を失わなければ、やり抜く力は維持されますよね。

 

 この本は、目標を設定し、それを追求するための方法論を示すだけでなく、人生の目的を見つけ、それを達成するための「GRIT」を育む方法についても教えてくれます。私たちが人生の各ステージで遭遇する困難に立ち向かう力を強化し、自分自身の目標を追求する努力を支えることで、達成感と成長の喜びを味わうことができると思います。

 『GRIT やり抜く力』は、困難な状況に直面したときに挫けず、自己の成長と成功を追求する力を高めるための手引きとして、非常に価値ある洞察を提供してくれると思います。これは自己啓発の一冊としてだけではなく、自己成長の道程を進む全ての人々にとっての貴重なガイドブックと言えるでしょう。

 私自身の人生においても、「やり抜く力」をより強化し、自分の最上位の目標を追求するために、ダックワース教授の提唱する方法を活用したいと強く感じました。この本は、自分自身の内面を見つめ直し、挑戦と成長に向けての努力を続ける上で、大いに助けとなるものでした。このような深い洞察と啓示を提供してくれた『GRIT やり抜く力』に、心から感謝します。

 

こういう人は『GRIT やり抜く力』を読むべき

・なんでも、やり抜いて、物事を達成したい人
・お子さんの教育を成功させたい保護者の方々

 

『GRIT やり抜く力』の目次

はじめに-「生まれつきの才能」は重要ではなかった!
1.「やり抜く力」の秘密
 なぜ、彼らはそこまでがんばれるのか?
2.「才能」では成功できない
 「成功する者」と「失敗する者」を分けるもの
3.努力と才能の「達成の方程式」
 一流の人がしている当たり前のこと
4.あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか
 「情熱」と「粘り強さ」がわかるテスト
5.「やり抜く力」は伸ばせる
 自分をつくる「遺伝子と経験のミックス」
6.「興味」を結びつける
 情熱を抱き、没頭する技術
7.成功する「練習」の法則
 やってもムダな方法、やっただけ成果の出る方法
8.「目的」を見出す
 鉄人は必ず「他者」を目的にする
9.この「希望」が」背中を押す
 「もう一度立ち上がれる」考え方をつくる
10.「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法
 科学では「賢明な子育て」の答えは出ている
11.「課外活動」を絶対にすべし
 「1年以上継続」と「進歩経験」の衝撃的な結果
12.まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらう
 人が大きく変わる「もっとも確実な条件」
13.最後に
 人生のマラソンで真に成功する

 

やり抜く人の9つの習慣(ディスカヴァー)の感想、書評

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 2007年6月25日初版第1刷。

 

『やり抜く人の9つの習慣』の著者の実績と信頼性

 
 著者は、コロンビア大学モチベーション・サイエンス・センター副所長のハイディ・グラント・ハルバーソン先生です。大学の研究に基づく、ちゃんとした本です。
 ハイディ・グラント・ハルバーソン先生は、他の著書には、
・やる気が上がる8つのスイッチ(ディスカヴァー)
・やってのける(大和書房)
があります。いずれも、モチベーション系の、大学の研究に基づく本ですね。
 著者の実績と信頼性は抜群と言えます。

 

『GRIT やり抜く力』と比べると?

 上で『GRIT やり抜く力』を挙げました。2冊を比べた場合、具体的に「やり抜く力」を身につけたい、という場合、『やり抜く人の9つの習慣』のほうが、実戦的でお手軽かもしれません。

 目次がほぼ本書の内容なので、目次を挙げます。

 

『やり抜く人の9つの習慣』の目次

1.目標に具体性を与える
2.目標達成への行動計画をつくる
3.目標までの距離を意識する
4.現実的楽観主義者になる
5.「成長すること」に集中する
6.「やり抜く力」を持つ
7.筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
8.自分を追い込まない
9.「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する

 

1.目標に具体性を与える

 たとえば「テストでいい点を取りたい」ではなく「テストで平均点の20点上を取りたい」といった目標を立てるほうが、やり抜く力が高まる、と思いました。

 

2.目標達成への行動計画をつくる

 そして、すべきことも具体的にする。「◯月◯日に◯◯という教材の△△~▢▢ページをできるようにする」といった計画を立てるよう、指導したほうが、やり抜く力が高まる、と思いました。

 

3.目標までの距離を意識する

 目標に向かって、向上しているのか、していないのか、他人によるか自分がでフィードバックを行う、ということです。
 大学受験塾チーム番町では、模試などで、東大や医学部の志望者に「この参考書のこのページに載っているから勉強すればできるよね」とフィードバックをしています。

 意外なことに、初心者ほど、頻繁にフィードバックすべきだと思いますが、研究によると、そうではないのだそうです。混乱を招き、かえって上達の邪魔になるからだそうです。指導者として、気をつけようと思いました。

 また、フィードバックも、これまで達成したことよりも、これからすべきことに着目したほうが、モチベーションが上がり、やり抜く力が高まる、ということです。今までこなした教材よりも、これからこなさなくてはならない教材に着目するということですね。なるほどなあ、と思いました。

 

4.現実的楽観主義者になる

 目標を達成することは簡単ではないことを自覚した上で、困難に立ち向かう自分をイメージする、ほうが、やり抜く力が高まる、ということです。
 「ポジティブシンキング」「思えば叶う」などと言われることがありますが、そういうものではなく、地に足がついた根拠が必要だということですね。
 ただ、東大や医学部に合格すると念じ続けるのではなく、ゴールから逆算し、こなさなければならない具体的な教材を示す、などの取り組みが大切なのだと思いました。

 

5.「成長すること」に集中する

 これは、やはり、ハイディ・グラント・ハルバーソン先生の著書『やる気が上がる8つのスイッチ』

やる気が上がる8つのスイッチ(ディスカヴァー)

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塾長による書評

の3本の柱の1つになっています。「能力を見せつけよう」と思うのではなく、「自分を成長させよう」と思うのが大切で、やり抜く力が高まる、ということです。「成長型」の人であれば、別に失敗しても前に進んでいればいいわけですし、人と自分を比べる必要もありませんよね。
 したがって、東大を目指す理由も、自分の能力を見せつけるためではなく、自分を成長させるためでなくてはなりません。
 

 

6.「やり抜く力」を持つ

 『やり抜く人の9つの習慣』という題の本で、その手段が「やり抜く力を持つ」とは、どういうことだ(笑)。
 本章では、スタンフォード大学心理学部のキャロル・ドゥエック教授の著書『マインドセット やればできる!の研究』(草思社)を引用しています。

マインドセット「やればできる!」の研究(草思社)

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塾長による書評

 本書では、「こちこちマインドセット」(個々人の知能はもって生まれたものとして固定されている)と「しなやかマインドセット」(能力は経験や努力を重ねることにより高めることができる)が紹介されています。様々な研究から、「しなやかマインドセット」が正しい、と証明されているようです。

 『やり抜く人の9つの習慣』では、「しなやかマインドセット」を持つことが、「やり抜く力」につながる、としています。
 受験であれば「適切な勉強により、成績は伸び、東大や医学部に合格する」と信じる(そして、それは科学的にも正しい)ことが大切なのだろうと思いました。

 

7.筋肉を鍛えるように意志力を鍛える

 意志力、やり抜く力は強くすることができるそうです。大きな挑戦でなくていいので、取り組む価値があると思うことを続けることが勧められています。
 そういえば、普通の公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された原田隆史先生は「まず1000日間続けることを決めなさい」と指導するそうです。たとえば、家庭での皿洗いです。原田先生の生徒は、それにより、意志力が高まったのかもしれませんね。

 

8.自分を追い込まない

 無理をしない、ということが書かれています。
 たとえば、誘惑と出会いやすい時間や場所を把握し、そうした状況を避けるようにする。大きな目標は1つに絞る、などが、やり抜く力を高めるコツだ、ということです。
 受験勉強ならば、自室で勉強するのではなく、外やリビングで勉強する、などがいいのだろうと思いました。

 

9.「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する

 何かをやめたいときにも、そのために具体的にどんな行動をするかに集中する、ほうが、やり抜く力が高まる、ということです。これも、こうしたほうが効果が高いことが、研究で明らかになっているそうです。「夜更かししない」ではなく、「早く寝る」。「ゲームをやりすぎない」ではなく「ゲームは1時間だけする」といったようにするよう指導しようと思いました。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

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【感想・書評】大学受験生のやる気、意欲(非認知能力の1つ)を育むオススメの本2選

 

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非認知能力についてのポール・タフ氏の本

非認知能力を育むボーク重子さんの本

非認知能力の権威、ヘックマン教授の本

小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て(マガジンハウス)

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大学受験におけるやる気、意欲の重要性

 

 意欲は人間の行動の原動力であり、学業成績、特に大学入試のような場面で極めて重要な役割を果たします。このような試験における意欲の重要性は、以下のように理解できます。

 ただし、この「意欲」なるものは、本当に現前しているのでしょうか?「意欲の不在」こそが現前するのではないでしょうか?
 以下に紹介する効果は、意欲そのものではなく、意欲の痕跡、意欲の補填物に過ぎません。
 意欲とは、私達が欠如を感じるがゆえに求めるものではないでしょうか?意欲の不在を埋めるために、私たちは意欲を求める。しかし、その求めは決して満たされることはありません。なぜなら、意欲とは常に先延ばしにされ、到来しないものだからです。
 大学受験という制度そのものが、意欲の不在を露呈しているのかもしれません。受験生は、自らの意欲ではなく、大学受験という制度に従属することを求められます。意欲は、制度の中で抑圧され、周縁化されます。意欲の不在は、制度の中心に座しています。
 ですが、意欲の不在は、決して否定的なものではありません。むしろ、意欲の不在こそが、新たな可能性を開くのではないでしょうか。意欲に囚われることなく、意欲の彼方へと歩み出すこと。それこそが、真の意味での学びへの第一歩となるのかもしれません。
 意欲は、確かに重要だと言われます。しかし、私達は意欲の重要性を語る前に、まず意欲の不在に向き合わなければなりません。意欲の不在を見つめ、その意味を問うこと。それこそが、大学受験という制度を乗り越える道であり、学びの本質に迫る道なのではないでしょうか。
 また、以下のような虚構の彼方に、学習の真の意味が待っています。虚構を脱構築し、虚構の彼方へと歩み出すこと。それこそが、真の学習への第一歩と言えるでしょう。

 

持続的な努力

 大学入試では、長時間の学習と準備が必要です。内発的動機づけ(対象や目標に対する純粋な興味や情熱)により、受験生は数ヶ月から数年にわたる努力を持続させることができます。

 しかし、この「持続的な努力」なるものは、本当に可能なのでしょうか?
 努力とは、常に未来へと先延ばしされるものではないでしょうか。「今日は頑張ろう」と思っても、その「頑張る」という行為は、常に明日へ、明後日へと延期されていく。努力の完了は、常に到来しない。努力は、常に不在なのです。
 また、努力は、しばしば外部からの要求や期待に応えるためになされます。受験生は、大学に合格するために努力します。しかし、その努力の目的は、彼ら自身の内部にあるのでしょうか? それとも、社会の要求に応えるためでしょうか?努力の主体は、常に不確かなのです。
 持続的な努力。それは幻想に過ぎないのかもしれません。私達は、努力の不可能性、努力の不在を直視しなければならなりません。努力は、常に先延ばしにされ、常に主体を欠いています。「意欲」を考える時、「持続的な努力」という言葉の背後には、努力の空虚さが潜んでいるのです。

 

先延ばしの克服

 意欲により、学生が直面する一般的な課題である先延ばしに対抗することができます。意欲のある学生は、勉強に優先順位をつけ、時間を効果的に管理することができます。

 しかし、この「先延ばしの克服」という考え方自体が、先延ばしを否定的に捉えているかもしれません。
 先延ばしとは、ある意味で、現在を生きることの肯定と考えることができます。先延ばしをする者は、今この瞬間を、勉強よりも大切なもののために使っているのかもしれません。先延ばしは、勉強という義務に抵抗する、一種の反抗なのです。
 また、先延ばしは、未来を確定することの拒否でもあります。勉強に優先順位をつけ、時間を管理すること。それは、未来を、あらかじめ決定してしまうことでもあります。先延ばしは、未来を開かれたままにしておくための戦略なのかもしれません。
 先延ばしの克服ではなく、先延ばしの肯定。私たちは、先延ばしの持つ肯定的な意味を見出だす必要があります。先延ばしは、現在を生きること、未来を開かれたままにしておくことの実践なのです。「意欲」という名の下に、先延ばしを否定してはなりません。

 

認知プロセスの強化

 意欲のある学生は、情報をより深く処理し、批判的思考に取り組み、新しい知識を過去の知識と結びつける傾向があります。このような深いレベルでの認知的関与は、学習内容のより良い理解と定着に役立ちます。

 しかし、この「知識」なるものは、本当に存在するのでしょうか?
 知識とは、常に言葉を媒介にして伝達され、獲得されるものです。しかし、言葉とは、決して確定した意味を持ちません。言葉は、常に文脈に依存し、解釈に開かれています。つまり、知識もまた、常に不確定であり、不在なのです。
 また、新しい知識と過去の知識を結びつけるという行為は、果たして可能なのでしょうか? 
 新しい知識は、過去の知識の文脈では理解できないかもしれません。過去の知識は、新しい知識を歪めてしまうかもしれません。知識同士の結びつきは、常に不確かなのです。
 認知プロセスの強化という言葉の背後には、知識の実在性への信仰があります。しかし、知識は常に不在であり、知識同士の結びつきも常に不確かなのです。私達は、「意欲」を考える時、知識の不在を認めることから始めなければなりません。

 

課題への対処

 受験勉強の過程で、受験生は難しいトピックや難しい問題にぶつかり、模擬試験で失敗することもあります。高い意欲は、生徒がこれらの課題に正面から立ち向かい、解決策を模索し、失敗から学ぶ原動力となります。

 しかし、この「失敗」は、本当に克服されるべきものなのでしょうか?
 失敗とは、ある意味で、新しい可能性の開始ではないでしょうか。失敗は、私達が予期していなかった方向へ、私たちを導いてくれます。失敗は、私たちの思考の限界を露呈し、新たな思考の可能性を開いてくれるのです。
 また、失敗から学ぶという考え方自体が、失敗を否定的に捉えています。失敗から学ぶためには、まず失敗を受け入れ、失敗と共に生きることが必要です。失敗を克服の対象としてではなく、生の一部として肯定することが重要なのかもしれません。
 課題への対処という言葉の背後には、失敗を否定的に捉える姿勢があります。しかし、失敗は、新たな可能性の始まりであり、生の一部なのです。私たちは、「意欲」を考える時。失敗を克服の対象としてではなく、失敗と共に生きる道を模索しなければならないのだと思います。

 

学習素材の活用

 意欲のある学生は、教科書、オンライン教材、コーチングクラス、勉強グループなど、利用可能な素材を積極的に探して活用する傾向があります。彼らは、成功に必要なものを確実に手に入れようと積極的です。

 しかし、学習素材は、学習者の外部に存在しています。つまり、学習素材そのものは、学習者の理解とは独立して存在しているのです。学習者が学習素材を手に入れたとしても、それだけでは理解には直結しません。
 たとえば、数学の教科書を買ったとします。しかし、教科書を買ったからといって、すぐに数学が理解できるわけではありません。教科書の内容を理解するためには、学習者自身が能動的に考え、問題に取り組む必要があります。
 学習素材を手に入れる努力も大切だけれども、それだけでは不十分です。学習素材の内容を自分のものにするには、学習者自身の主体的な努力が必要不可欠です。
 つまり、「意欲」を考える時、学習素材を手に入れただけでは理解には至らず、学習者は常に学習素材の内容を追いかけ続けなければならない、ということが重要だと思います。

 

目標設定と達成

 意欲はしばしば明確な目標から生まれます。特定の研究分野への情熱、有名大学への進学願望、その他の個人的な目標など、意欲は、具体的で測定可能な成果を設定し、それに向かって努力するよう学生を駆り立てます。

 しかし、この「目標」なるものは、本当に存在するのでしょうか?
 目標とは、常に未来に属するものです。目標は、現在の学習者にとって不在です。学習者は、不在の目標を追い求めて、現在の学習を犠牲にします。目標の追求は、現在の学習の価値を奪ってしまいます。
 また、目標は、他者によって設定される可能性があります。研究分野への情熱も、有名大学への進学願望も、社会や他者からの期待によって形作られるます。目標は、学習者の主体性を奪い、学習者を他者の欲望に従属させる可能性があります。
 目標は、学習者を欺く可能性があります。目標は、学習者に現在の学習を犠牲にさせ、学習者の主体性を奪いかねません。「意欲」を考える時、目標への盲目的な追求は、学習者を目標の虚構に囚われさせてしまう可能性があります。

 

粘り強さを高める

 挫折に直面したときや、成功への道のりが長く険しいと思われるときでも、意欲は粘り強さの燃料となります。あきらめるか前に進むかの違いです。

 しかし、この「粘り強さ」なるものは、本当に必要でしょうか?
 粘り強さとは、挫折を否定し、挫折から目を背ける態度です。粘り強さは、挫折の意味を問うことを拒否します。粘り強さは、挫折の痛みから逃げ、挫折の痛みを忘れようとするものです。
 しかし、挫折とは、学習者に必要不可欠なものではないでしょうか。挫折は、学習者に自らの限界を知らしめ、新たな可能性を開きます。挫折は、学習者を変容させ、成長させるです。
 粘り強さは、挫折の意味を奪ってしまいます。粘り強さは、学習者から成長の機会を奪ってしまうのです
。「意欲」を考える時、粘り強さへの盲目的な信仰は、学習者を粘り強さの虚構に囚われさせてしまうと思います。

 

感情的な幸福

 意欲、特に内発的意欲は、生徒の全般的な情緒的幸福を高めることができます。意欲があれば、学生は勉強に熱意、興味、満足感を抱きやすくなります。

 しかし、この「幸福」なるものは、本当に存在するのでしょうか?
 幸福とは、常に先延ばしにされるものです。学習者は、勉強を頑張れば幸福になれると信じて、勉強に励みます。しかし、勉強が終わっても、幸福は訪れません。幸福は、常に未来に属し、現在の学習者にとって不在なのです。
 また、幸福とは、他者によって定義される可能性があります。熱意、興味、満足感といった感情は、社会や他者から期待される感情である可能性があります。学習者は、自らの感情を他者の期待に合わせようとするかもしれません。幸福は、学習者の主体性を奪い、学習者を他者の欲望に従属させる可能性があります。
 幸福は、学習者を欺きかねません。幸福は、学習者に現在の不幸を忘れさせ、学習者の主体性を奪う可能性があります。「意欲」を考える時、幸福への盲目的な追求は、学習者を幸福の虚構に囚われさせてしまう可能性があります。

 

自己効力感を高める

 意欲は、自己効力感と密接に関連しています。自己効力感とは、特定の状況で成功する自分の能力を信じることです。生徒が目標に向かって努力し、その進歩を目の当たりにすることで、自己効力感と意欲は相互に強化されます

 

ライフスキルの向上

 受験勉強で培われた意欲は、短期的な目的を果たすだけではありません。進学、キャリア、そして個人的な努力に役立つ習慣や考え方を植え付けることができます。

 

 要するに、知識やスキルは極めて重要ですが、意欲は、特に大学入試のような大きな試練において、学生がそれらのスキルや知識を効果的に活用する原動力となるエンジンなのです。十分な意欲がなければ、どんなに才能があり、資源に恵まれた学生でも、受験勉強でつまずくかもしれません。

 

マインドセット「やればできる!」の研究(草思社)の感想・書評

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『マインドセット「やればできる!」の研究』の著者の実績と信頼性

 著者はスタンフォード大学の心理学のキャロル・S・ドゥエック教授です。
 本書は、一個人についての話も多く出てきますが、おそらく、それは話をわかりやすくするためのエピソードトークであり、大学での研究、調査に基づく話もたくさん出てくる、ちゃんとした本です。
 ドゥエック教授の研究は、他の大学教授による書籍でも多く引用されています。
 著者の実績と信頼性は絶大だと思います。

 

『マインドセット「やればできる!」の研究』の概要

 2008年11月1日第1刷。時代の流れを先取りするかのような、革新的な内容が盛り込まれていました。当時は、「非認知能力」という言葉は、あまり使われていなかったと思います。一般の人々にとっては新鮮で未知のこのテーマに、エビデンスを元に紐解いていったのです。私は、この本が非認知能力の研究におけるパイオニア的な役割を果たしたのではないかと感じています。
 本の中で特に印象的だったのは、「こちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」という二つのキーワードでした。これらの言葉を通じて、人々の心の持ちようや、困難な状況に立たされた時の対応の違いが、非常に明確に、そして分かりやすく語られています。これら二つのマインドセットの違いは、まるで鮮やかなコントラストを描くように、私たちの心に響いてくるのです。
 『マインドセット「やればできる!」の研究』を手に取る際、どんな先入観や偏見も持たずに、純粋にそのメッセージを受け取ることが大切だと私は感じました。なぜなら、本の中には自己成長や「やる気」「意欲」を引き出すためのヒントや秘訣がたくさん詰まっているからです。一つ一つの章を読み進めるごとに、その深いメッセージと知識の量に、私は驚かされました。この一冊から、こんなにも多くの価値や教訓を得ることができるとは思っていませんでした。
 

マインドセットとは?:やる気を育むために

 私たち一人ひとりが持つ「マインドセット」。それは思考の基盤となる枠組みや、日々の生活での心の持ちようを意味しています。この言葉は、よく聞くかもしれませんが、実際のところ、具体的にはどういったことを指しているのでしょうか?

 『マインドセット「やればできる!」の研究』は、このマインドセットに焦点を当て、多くの人が「自分の性格や性質」と思い込んでいるものが、実は「心の持ちよう」であり、それによって行動や感じる感情が大きく変わってくると説いています。
 
 この本には、「こちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」という、興味深いキーワードが登場します。この2つの言葉は、訳者が用いており、それぞれの特徴を独自の言葉で伝えています。

 「こちこちマインドセット」とは、自分の能力は固定的で変わらないという心の持ちようです。また、自分の能力を証明せずにはいられないタイプです。自分が他人からどう評価されるかを非常に気にします。
 「しなやかマインドセット」とは、人間の基本的資質は、努力次第で伸ばすことができるという心の持ちようです。自分の成長に関心を向けるタイプです。

 たとえば、中間試験で非常に悪い点を取ってしまった場合を考えましょう。
 「こちこちマインドセット」の人は、「自分はもうダメ、どうにもならない」と考えます。非認知能力の1つである「意欲」を失う、ということですね。レジリエンスの喪失ということもできそうです。
 「しなやかマインドセット」の人は、「もっと身を入れて勉強するように、という警告だろう。でも後半が残っているので、成績を伸ばすチャンスはまだある。」と考えます。「意欲」を失わないということです。
 また、「こちこち」の人は、失敗を自分以外のなにかのせいにしがちです。一方、「しなやか」の人は、自分が間違いを犯したことを認め、そこから教訓を得て成長していくことができます。

 当塾は、進学校の下位層の親子には、上記のようなこと、その他、進学校の下位層に共通する特徴をお伝えし、修正するように指導しています。しかし、下位層から抜け出せない親子は、どうも、自分たちが「しなやか」に変わろうとするのではなく、子供の成績が上がらないのを塾のせいにして、塾を変えて問題を解決しようとする傾向があるように思います。「こちこち」なのですね。それゆえ「やる気」「意欲」に欠ける。

 この「こちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」という考え方は、私たちが日々の生活や仕事をどう捉えるか、そしてそれにどう対処するかに大きな影響を与えることに気づかされました。我々が遭遇する困難や挫折をどのように解釈し、それに対する対策をどう立てるかは、このマインドセットによって大きく左右されるのだと思いました。私もこの考え方を日々の生活に取り入れ、常に成長し続けることを目指しています。

 

「やる気」「意欲」を育むには、証明型か成長型か

 下に『やる気が上がる8つのスイッチ』(ディスカヴァー)という本を挙げています。人を2=8通りにタイプ分けして、それぞれのタイプのやる気の上げ方について、治療法を述べています。
 3つのタイプ分けの1つが「証明型」か「成長型」かです。上記のように、自分の能力を証明せずにはいられないタイプ(こちこち)か、自分の成長に関心を向けるタイプ(しなやか)かです。これは、「成長型」でなくてはならない、としています。
 本書でも、「賢さを証明できたら成功か」「新しいことを学べたら成功か」というパートがあります。やはり、「証明型」(こちこち)は、チャレンジを恐れる、「やる気」「意欲」を失う人が出てくる、などとして、「成長型」(しなやか)が望ましい、としています。
 したがって、東大を志望する理由は、「自分の能力を証明する」ではなく、「成長する」ためでなくてはならないのですね。
 また、『やる気が上がる8つのスイッチ』では、もう1つのタイプ分けが、自信があるかないか、となっていて、自信があったほうがいいとう事になっています。塾長も、テストの点は、技術的なことだけでなく、自信といったよくわからないものも、大きな要素だな、と思っていました。
 しかし、『マインドセット「やればできる!」の研究』では、「マインドセットがしなやかならば、かならずしも自信など必要ない」としています。たしかに、「しなやか」な人は、失敗しようが、ただただ自分の成長に関心を向け、「やる気」「意欲」を持ってやり抜いてしまうので、自信は必要ないな、と。「やり抜く力」も非認知能力の1つとされます。自信喪失が原因で、テストのパフォーマンスが下がっている人には、「しなやか」さを身に着けてもらうよう、指導していこうと思いました。
 大学受験でも、たとえば東大、医学部受験など、高い目標にチャレンジしようとしない人がいます。それは、こちこちマインドセットのせいで「やる気」「意欲」を失っていて、修正しなければいけないのではないか、と疑ってみる必要があると思いました。

 

やる気を育むためには、生まれ持った才能を褒めるか、努力を褒めるか

 『マインドセット「やればできる!」の研究』で、最も衝撃的なのは、この部分だと思います。 
 「頭がいいのね」などと生まれ持った能力を褒められると、「こちこちマインドセット」になる。このようなマインドセットの人は、高い目標や未知の領域にチャレンジするのを避け、その安全圏内で自分の才能や能力を守ろうとする。結果として、新しい挑戦から逃げてしまい、意欲を喪失してしまうことがあるのです。
 「頑張ったのね」などと努力を褒められると、新しい問題にチャレンジするほうを選んだそうです。努力や取り組む態度を褒められることで、人は新しい問題や難易度の高い挑戦に対しても前向きになれるようです。このようなポジティブなフィードバックを受け取ることで、自分の限界を挑戦し続け、さらなる成長を求める姿勢、「やる気」「意欲」が育まれるのです。

 この発見は、私たちが子供たちや生徒たちにどのような言葉をかけるかという観点で、大変示唆に富んでいます。保護者や教育者、そして私たち一人ひとりが、自分の子供や他者を励ます際には、その「努力」や「取り組み」を中心に褒めるように心がけることが、その人の成長を後押しする鍵となるのではないでしょうか。
 生まれつきの才能や資質はもちろん大切ですが、それよりもそれをどのように活用し、どれだけの努力をして発展させるかが重要だと思いました。
 生まれつきの才能よりも、それを活用し発展させる努力を重視するこの視点は、単なる、実験の結果というのみならず、私たちの学びや成長において非常に重要なメッセージを伝えていると感じました。

 

人間関係のマインドセット

 人間関係というのは、やはり複雑でデリケートなものですよね。私もそうですし、多くの人は、たとえば友人や同僚との関係を考えるとき、できればストレスがなく、気を使わず、楽にコミュニケーションをとりたいと強く感じているでしょう。誰もが、関係維持に過度な努力を要しない人と、心地よく時間を過ごしたいと願っているはずです。
 しかし、『マインドセット「やればできる!」の研究』では、私たちの普段の考えとは少し違った視点が示されています。「人間関係は、育む努力をしないかぎり、だめになる一方で、けっして良くなりはしない」としています。つまり「やる気」「意欲」が必要だということです。
 考えてみれば、人間関係もスキルの1つであり、学校のテストとあまり変わらないわけです。それを磨くための「やる気」「意欲」が必要です。日々のコミュニケーションや対人関係にも、向き合う勇気と意識が求められるのです。
 まあ、もちろん、付き合うべきではない人というのも、世の中には多いでしょうし、それはそれでいいとは思います。
 しかし、それと同時に、現在の人間関係を維持し、更に深めるための努力や、新しい人間関係を築くのに必要な努力を怠らず、積極的に取り組むことの大切さを再認識させられるのです。人間関係は、与えられたものではなく、一緒に育てていくものだということを、私たちは常に意識して生きていくべきなのかもしれません。

 人間関係は、大学受験とは直接は関係がないと思うかもしれません。しかし、家庭の人間関係が良好であれば、健全な精神や、必要なサポートを得ることができるでしょう。学校の友人との人間関係が良好ならば、やはり、健全な精神や、受験に大切な情報を得ることができるでしょう。結果、「やる気」「意欲」が高まるのだと思います。

 

 

東大、医学部への意欲を高める建設的な批判

 私たちが目指す目標や夢に向かって進む過程で、必ずと言っていいほど出くわす「失敗」。この失敗をどう受け止め、どう乗り越えるかは、その後の成果や達成感に大きく関わってきます。『マインドセット「やればできる!」の研究』では、子供、生徒が失敗したときには、建設的な批判、つまり、悪い点を改めたり、もっと努力したり、すぐれた成果を出したりするのをうながすような批判をすべきだ、とします。
 大学受験塾チーム番町では、こうした考えを基に、生徒たちの成長をサポートしています。たとえば、東大模試や医学部志望者の模試の反省を通して、できなかった問題について、たとえば、「数学のこの教材の何ページを勉強していたら解けたね」とか、記述型の現代文で「こういうふうに記号をつけて論旨を追っていたら、合格点の答案がかけたね」などと、建設的な批判をするように心がけています。
 このようなアプローチの結果、生徒は「ああ、勉強すれば受かるんだ」と思うようです。東大、医学部受験を含め、大学受験がうまくいかない原因の意外に大きな要因に「どう勉強すればいいかわからなくなって、心が折れる」、つまり「やる気」「意欲」を失う、というものがあるようです。しかし、当塾の生徒たちは、そうした迷いや不安を感じることなく、目標に向かって努力を続けることができます。それが大学受験塾チーム番町の個別指導の強みであり、生徒たちの成功の秘訣なのです。

 

医学部に受からないご家庭のこちこち毒親

 『マインドセット「やればできる!」の研究』には、胸を締め付けられるようなエピソードが載っています。それは、ハーバード大学への入学を最終的な目標とし、そのための成功を娘に強要してきた両親の話です。彼らの心の中では、娘や自らの価値は、ハーバードへの入学という結果にのみ結びついていました。娘や両親自身の優秀さを証明するため、つまり、こちこちマインドセットの両親です。娘がどんな人間か、今、何に関心があるか、学んで成長できるか、将来どんな人間になれるか、なんてどうでもいい。ハーバード大学に入れた場合にだけ、娘を愛し、尊重しよう。

 実際の社会でも、特に医師のご家庭でよく目にする光景があります。それは、お子さんが自分から熱心に医学を志望する場合とは異なり、お子さんの興味や夢を度外視して、絶対に医師になるようにという期待を抱くケースです。このような医学部受験の場合、お子さんが盲目的に従順、と言った特殊な場合を除いて、こじれる、「やる気」「意欲」を失って、うまく行かないことも多いだろうな、と思います。
 まず、本書のように、保護者の方が「こちこちマインドセット」なので、お子さんが十分に能力を発揮できない、という場合も多いと思います。また、本書とはあまり関係ありませんが、世界陸上400mハードルで銅メダル2回の為末大さんなどは、「自分の人生を生きている感覚」「何かを見てわーっと興味、好奇心が湧いてくる」が一番の才能であり、後から最も与えにくい、とおっしゃっています。たとえば、シリコンバレーの親が、子供が幼少の時からプログラミングを学ばせたら、子供は大学で哲学を専攻してしまった、などという話はよくあるようです。これは、子供の興味や関心を無視し、親の期待を一方的に押し付けることの限界を示しています。

 もし医師のご家庭で、お子さんを医師にしたいと考えているなら、言葉を駆使するよりも、ご自身が日々の仕事でどのように社会に貢献しているのかを、実際の行動で示し続けることが大切だと思います。
 世の中には、東大や他の名門校への受験を強く望むご家庭も少なくありません。中学受験を経験するご家庭も同様に、本書の内容を参考にし、お子様の将来との向き合い方を再考してみてはいかがでしょうか。

 

『マインドセット「やればできる!」の研究』のまとめ

 

 『マインドセット「やればできる!」の研究』というタイトルを初めて手に取ったとき、私はこの本がどれほどの影響を私の考え方や日常にもたらすか、全く予測していませんでした。教育の領域でのマインドセットに関する議論は、ただの教育論ではなく、我々が人生をどのように歩むべきか、という哲学的な問いかけとして感じられました。教育者である方、学ぶ側の学生である方、そして私たち一人一人がどちらの立場にもなり得るこの社会において、この一冊は非常に価値のある洞察を提供してくれました。

 失敗を避けるのではなく、その失敗自体を新たなステップとして受け入れ、さらに前へ進むための糧とする。この考え方の重要性を、私たちは社会全体で共感し、共有する必要があると強く感じました。この哲学的なアプローチは、日常のささいな出来事から大きな人生の選択まで、どんな場面においても応用が効くと確信しています。

 実際にこの本のページをめくりながら、私自身が過去に経験した失敗や挫折を思い返し、それらがどれほどの学びをもたらしてくれたかを振り返ることができました。日々の生活の中で、どれだけ自分を成長させる機会があるか、そしてそれをどのように捉えるか。これらのことを深く考えることで、私たちは前向きなエネルギーをもって人生の舞台に立つことができるのだと感じました。

 最後に、『マインドセット「やればできる!」の研究』は、ただの自己啓発書としてではなく、人生における大切な羅針盤としての役割を果たしてくれる一冊です。人間の持つ無限の可能性を信じ、それを実現するための方法を学ぶすべての方々に、心からこの一冊をおすすめしたいと思います。

 

『マインドセット「やればできる!」の研究』の目次

1.マインドセットとは何か
2.マインドセットが違うとこんなに違う
3.能力と実績のウソホント
4.人間関係のマインドセット
5.親と教師:マインドセットを培う
6.マインドセットをしなやかにしよう

 

やる気が上がる8つのスイッチ(ディスカヴァー)の感想、書評

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 2018年5月24日発売。ただし、アメリカでは、2013年には出版されていたようです。人がやる気を上げる方法は1つではなく、人に合わせて方法を考える、という方針です。成長か証明か、獲得か回避か、自信があるかないかで2=8通りにタイプ分けができます。本書では、その8タイプにつき、治療法が示されます。

 

『やる気が上がる8つのスイッチ』の著者の実績と信頼性

 うさんくさい題名ですが、著者は、コロンビア大学モチベーション・サイエンス・センター副所長のハイディ・グラント・ハルバーソン先生です。大学の研究に基づく、ちゃんとした本です。
 ハイディ・グラント・ハルバーソン先生は、他の著書には、
・やり抜く人の9つの習慣(ディスカヴァー)
・やってのける(大和書房)
があります。いずれも、モチベーション系の、大学の研究に基づく本ですね。
 著者の実績と信頼性は抜群と言えます。

 

やる気を上げるには、証明か成長か

 このテーマに関して、筆者は「成長型のマインドセット」を持つことの重要性を強調しています。
 マインドセット、つまり「心の持ちよう」とは何か。それは、私たちが日々の生活や仕事、学びの中でどのような意識や考えを持ち、それに基づいて行動するかを示しています。ここでは、「証明マインドセット」と「成長マインドセット」の2つに大別しています。

 「証明マインドセット」とは、「人に自分の能力を見せつけ認めさせよう」という心の持ちようです。それに対し、「成長マインドセット」とは、「自分が向上することに焦点を当てる」心の持ちようです。
 まあ、なんとなく証明型の人は、心が貧しい気がしますね。実際に、ミスを恐れ、自分にはできないことを他人に知られることも、自分でわかってしまうことも恐れ、不安に陥り、「やる気」「意欲」を失う、といった傾向が見られるようです。うつにも結びつきやすく、仕事を楽しいと思えない。過程を楽しむ余裕がない。
 証明型の人が「すごい人と思われたい」のに対し、成長型の人は「すごい人になりたい」。他人の目を気にしないし、他人に認められなくても、自分のしたいことをする。主体性がある。「やる気」「意欲」を持ち続ける。

 それは、「成長マインドセット」の人のほうが、困難に直面しても、粘り強く頑張り続け、最終的には成功しそうですよね。非認知能力として挙げられる「やる気」「やり抜く力」「レジリエンス」などが高い。
 つまり、受験勉強など、長丁場の戦いの場合、「自分が優秀であることを証明するために」勉強している人より、「自分を成長させよう」と思って勉強している人のほうが強い、ということになります。

 もしも「証明型」のマインドセットを持っていると感じる方は、意識的に「成長マインドセット」を取り入れるための工夫をしてみると良いでしょう。例えば、毎日の日常の中で「成長マインドセット」と書いたメモを机に貼ってみるなど、日常的にその意識を持つことが大切です。

 

やる気を上げるには、獲得か回避か

 『やる気が上がる8つのスイッチ』では、目標設定や達成のアプローチには「獲得フォーカス」と「回避フォーカス」という2つの大きなカテゴリがあると説明されています。これはどちらでもよく、強みを活かすことが大切だそうです。

 「獲得フォーカス」とは、最大限の利益、最小限の機会損失への心の焦点です。
 「回避フォーカス」とは、安定感、信頼性への心の焦点です。

 「獲得型」の人は、自分の理想とする高いランクの大学を志望し、その目標に向かって全力で取り組むでしょう。このタイプの人は、常に自分の限界を挑戦し、新しい道を切り開くことに「やる気」「意欲」を感じます。
 「回避型」の人は、自分の現在の実力程度に志望校を設定し、成績が上がるにつれて、志望校も少しずつ上げていけば、「やる気」「意欲」を維持できるのではないでしょうか。

 ただ、「回避型」の場合、失敗を恐れ、必要以上に目標を低く設定している可能性があります。世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2020年6月6日に「子供が自ら挑戦するようになる接し方」という動画をアップしています。

お子さんが主体的に東大・医学部受験に挑むためには?

 「回避型」の人がこのような性質を持つ背景には、親や教育者からの過度な期待やプレッシャーが影響していることも考えられます。そのため、自身の子供や生徒を育てる際は、過度なプレッシャーをかけず、自主性や挑戦心を大切にし、「やる気」「意欲」を失わせないことが求められます。

 しかし、この「回避型」には魅力的な長所も多く存在します。失敗を極力避けることで、高い精度や丁寧さを持って取り組むことができるのです。そして、その堅実さは、長期的なプロジェクトやチャレンジにおいて、「やる気」「意欲」を持続し、高い成功率をもたらすことが期待されます。

 

やる気を高めるには自信があった方がいい

 過去の研究や心理学の進化を通じて、成功ややる気に関して一つの事実が明確になってきました。それは、”自信があれば、やる気を高めることができる”ということです。この単純な事実は、『やる気が上がる8つのスイッチ』の中でも触れられており、実際に私たちの日常生活においても、非常に役立つ情報となります。

 塾長の経験上も、自信というよくわからないものが、テストの点数に大きな影響を与えます。テストで良い点を取ることにより、自信がつき、さらに点数が上がるという、正のスパイラルが存在します。ほとんどの人がそうです。塾長の生徒は、受験までダラダラ成績が上がっていく人が多いです。

 何百もの研究によると、技能と成功の相関係数は0.19であるのに対し、自己効力感と成功の相関係数は0.34だそうです。つまり、学術的にも、技術的なものよりも、自己効力感のほうが、成功との関係性が高そうだ、ということが言えます。

 では、この自己効力感をどのように高めていくのでしょうか。一番のキーは、成功体験を積むことです。社会人であれば、職場における具体的な成功や成果を挙げること。学生であれば、テストで高得点を取ることや、課題をクリアすること。また、当塾の生徒なら、授業中に実際に問題を解けるようにする、ことで成功体験を積み、自己効力感を高めるのがいいと思います。

 ただし上でも書きましたが『マインドセット「やればできる!」の研究』という書籍からの示唆も共有したいと思います。この本には、「しなやかマインドセット」の持ち主は、自信の有無にかかわらず、物事を柔軟に取り組み、失敗を成長の一部と捉え、「やる気」「意欲」を失わないことが述べられています。このような考え方を持つことは、我々の人生やキャリアにおいて、非常に価値があるのではないでしょうか。

 

やる気を高めるためのまとめ

 当塾に当てはめると
・机に「成長マインドセット」と書いた紙を貼る
・「獲得」「回避」の強みを活かす
・授業中に解説を受けた上で問題を解き、テストで少しずつ点を上げ、自信をつける
というのが「やる気」「意欲」を高める治療法になると思います。
 テストで点を取れない人の治療法が、テストで点を取って自信をつける、というのが難しいところですね。

 

やる気を高めるタイプ別診断と治療法

 ここまで書いてきたことで解決しますが、本書は、2=8通りのタイプに名前をつけています。たとえば、

・証明+獲得+自信なし=中二病
 自分の能力を証明するために「東大を目指す」などと言い(保護者の場合、自分の自尊心を満たすために強要し)、しかも自信がなく、努力もせず、失敗しても他人のせいにする(保護者の場合、自分の自己修養、子供への人間教育の欠如ではなく、塾のせいにする。自分の教育力のなさを知られたくない。)タイプです。「憂鬱な感じを漂わせている」「わからないのにわからないと言えない傾向」というのも、塾長の経験と一致します。本書では「破滅的」と診断しています。くり返しますと、上記のように「やる気」「意欲」を高める治療は可能なはずです。ただ、保護者が「空虚な自尊心」という、よくわからなないもので、妙にかたくなな場合が多く、治療は困難なケースも多いでしょう。

・成長+獲得+自信あり=新星
 壁にぶつかるほど「やる気」「意欲」が湧き出、革新的であり、最高の仕事人、スターとしています。

・成長+回避+自信あり=熟練の匠
 責任感が強く信頼でき、仕事にミスがなく、「新星」とタイプは違えども、「やる気」「意欲」を持続する、最高の仕事人としています。

 

こんな人は『やる気が上がる8つのスイッチ』を読むべき

・やる気を出したい人
・成長しようと思っているのではなく、自分の能力を見せつけようと思っている人
・最大限の利益を得たいと思っている人
・安定を得たいと思っている人
・自分に自信がない人

 

大学受験生のやる気、意欲を育む本とフーコー

 フーコーの権力と知の関係性の観点からすれば、「やる気」や「意欲」といった概念自体が、特定の歴史的・社会的文脈の中で形成された言説の産物だと言えます。近代以降の教育言説は、個人の内発的な動機づけを重視し、自己実現や成功への意欲を称揚してきました。受験生の「やる気」や「意欲」を育むことは、このような近代的な主体性の構築と密接に関連しているのです。

 受験生の意欲を育む方法を説く書籍は、一種の自己啓発言説として機能しています。それらの書籍は、受験生に特定の規律的実践(例えば、目標設定、時間管理、勉強技術など)を内面化させることで、自己を管理し、最適化するよう促します。フーコーが指摘したように、近代社会における権力は、個人の内面に働きかけ、自発的な服従を生み出すことで機能します。受験生の意欲を育む書籍は、この「生政治」(国家がどのように人々の命や身体を管理し、支配しようとしているのか)の一形態だと言えるでしょう。

 また、これらの書籍が前提とする「意欲的な受験生」像は、規範的な主体モデルとして機能します。受験生は、この理想像に自らを適合させようと努力することで、特定の行動様式や価値観を内面化していきます。しかし、フーコーの視点からすれば、この主体モデルは、特定の社会的・経済的な要請に応じて構築されたものであり、その背後にある権力関係を問い直す必要があります。

 さらに、受験生の意欲を育むことを目的とした書籍は、教育の目的を個人の競争力強化に収斂させる危険性を孕んでいます。これらの書籍は、「やる気」や「意欲」を、受験競争における優位性の獲得と結びつけることで、教育を経済的な利益追求の手段へと還元してしまいます。フーコーが批判したように、このような新自由主義的な教育観は、個人を経済的な主体へと矮小化し、社会的な連帯や批判的思考の可能性を閉ざしてしまうかもしれません。

 ただし、フーコーの思想は、「やる気」や「意欲」といった概念を全面的に否定するものではありません。むしろ、これらの概念が持つ生産的な側面にも注目する必要があるでしょう。受験生の意欲を育むことは、学びへの主体的な関与を促し、知的な探究心を深める契機にもなり得ます。重要なのは、「やる気」や「意欲」を特定の規範的モデルに還元するのではなく、それらの多様な表現や発現の可能性を認めることだと言えます。

 受験生の意欲を育む書籍は、近代的な主体性の構築と密接に関連した言説的実践です。それらは、特定の規律的技術を通して、受験生を自己管理する主体へと導きます。しかし、これらの書籍が前提とする「意欲的な受験生」像は、特定の社会的・経済的要請に基づく規範的モデルであり、批判的に吟味される必要があります。また、教育の目的を個人の競争力強化に収斂させることの問題性にも留意しなければなりません。

 フーコーの思想は、「やる気」や「意欲」といった概念の歴史的・社会的な構築性を明らかにし、それらをめぐる権力関係を可視化します。私たちは、受験生の意欲を育むことの意義を認めつつも、その言説的前提を問い直し、Alternative な教育の可能性を模索していく必要があるのです。受験生一人一人の個性や可能性を尊重し、多様な学びのあり方を認めることが、真に主体的な学習者を育むための鍵となるのかもしれません。

 

大学受験生のやる気、意欲を育む本とハイデガー

 私たちは単に効果的な学習テクニックを求めるのではなく、学ぶことの本質的な意味を問い直す必要があるでしょう。

 ハイデガーにとって、学問とは単に知識を蓄積することではなく、存在そのものを問うことでした。彼は『存在と時間』の中で、人間を「現存在」と呼び、その本質を「世界内存在」として規定しています。つまり、私たちは常にすでに世界の中に存在しており、事物や他者との関わりの中で生きているのです。学ぶということも、こうした世界との関わりの一つの様態だと言えます。

 この観点から見るなら、受験生が学習に意欲を持てないのは、彼らが学ぶことの本来的な意味を見失っているからかもしれません。学習が単なる点数稼ぎや競争に堕してしまっては、そこに世界を開示する喜びは生まれません。彼らは、自分自身の存在を問うことなく、ただ盲目的に知識を詰め込もうとしているのです。

 では、どうすれば受験生のやる気を育むことができるのでしょうか。ハイデガーが示唆するのは、学ぶことの本質を取り戻すことです。それは、事象そのものに向き合い、その意味を問うことから始まります。受験生には、なぜこの科目を学ぶのか、それが自分にとってどんな意味を持つのかを、自問自答することが求められます。

 もちろん、これは容易なことではありません。なぜなら、私たちは日常に埋没し、既成の価値観に囚われがちだからです。ハイデガーはこれを「頽落」と呼び、そこから脱却することの難しさを指摘しました。しかし、だからこそ、学ぶことの意味を問い直す営みには、大きな意義があるのです。

 ここで、書籍の役割が浮かび上がってきます。優れた書物は、私たちを日常の殻から解き放ち、新たな視点を提供してくれます。そこには、先人達の知恵と経験が凝縮されており、私たちはそれを手がかりに、みずからの存在を問い直すことができるのです。受験生が学ぶ意欲を取り戻すためには、こうした書物との出会いが不可欠なのかもしれません。

 ただし、ここで注意しなければならないのは、書物を読むことが自己目的化してはならないということです。ハイデガーは、書物を単に情報の源泉として扱うことを戒めました。大切なのは、書物と真摯に対話し、そこから得た洞察を自分自身の生の課題として引き受けることなのです。

 そのためにも、受験生には能動的な読書の姿勢が求められます。ただ受動的に知識を吸収するのではなく、疑問を持ち、考え、書物の内容を吟味することが大切です。時には、書物の主張に異を唱えることも必要でしょう。こうした批判的な読書を通じて、受験生は自分自身の思考を深め、学ぶことの喜びを体感することができるはずです。

 さらに、書籍を媒介とした他者との対話も重要な意味を持ちます。ハイデガーは、私たちが「共同存在」として、他者とともに生きていることを強調しました。受験生同士が書籍を巡って議論を交わすことは、互いの視野を広げ、学びを深化させる契機となるでしょう。そこには、競争ではなく、共に真理を探究する協働の精神が生まれるはずです。

 以上のように考えるなら、「大学受験生のやる気、意欲を育む本」は、単なる学習テクニックの提供ではなく、学ぶことの本質を問い直す契機となり得ます。そこで提示される方法論は、あくまでも一つの手がかりに過ぎません。重要なのは、受験生自身が書物と対話し、みずからの存在の意味を探究することなのです。

 そのとき、受験勉強は単なる点数稼ぎではなく、自己と世界を問い直す冒険の旅となるでしょう。書物を道標として、受験生は未知なる地平に踏み出していきます。そこには、困難や挫折も待ち受けているかもしれません。しかし、そうした試練を乗り越えることで、彼らは確かな意欲と自信を獲得していくはずです。

 大学受験という営みが、人生の重大な岐路であることは間違いありません。しかし、それは単なる関門ではなく、自己を形成する貴重な機会でもあるのです。受験生には、書物を手がかりに、学ぶことの本来的な意味を見出していってほしいと思います。そのとき、彼らは受験を超えて、生涯にわたって学び続ける力を身につけることができるでしょう。 

 

大学受験生のやる気、意欲を育む本とデリダ

 このテーマは、一見すると実用的で無害なものに見えますが、デリダ的な視点から考察すると、様々な問題を孕んでいることが明らかになります。

 まず、「大学受験生」という主体は、既に社会的に構築されたカテゴリーであると言えます。受験生は、教育制度という権力構造の中で生み出された存在であり、その主体性は制度によって規定されています。しかし、「やる気、意欲を育む」という言説は、あたかも受験生の主体性が自明のものであるかのように前提しています。ここには、主体の自律性を強調する近代的な価値観が潜んでいるのです。

 また、「やる気、意欲」という概念自体も、脱構築の対象となり得ます。これらの概念は、資本主義社会における生産性や効率性の価値観と密接に結びついています。つまり、受験生の「やる気、意欲」とは、競争社会に適応し、良い成績を収めるための心的エネルギーだと考えられているのです。しかし、こうした価値観は、学びの多様性や個人の独自性を抑圧するものでもあります。

 さらに、「育む本」という表現にも注目する必要があります。書籍という媒体は、知識を固定化し、権威化する装置だと言えます。「育む方法」を書物の形で提示するということは、ある特定の方法論を普遍的な真理として提示することでもあるのです。しかし、デリダが指摘したように、書かれたテクストの意味は決して一義的に確定できるものではありません。「育む方法」もまた、解釈の多様性に開かれているはずです。

 ここで、「大学受験生のやる気、意欲を育む本」というテーマが持つ両義性に着目することができます。デリダの「pharmakon」の概念が示すように、書物は毒にも薬にもなり得るのです。「育む方法」を提示する書物は、受験生にとって有益な知見を与える一方で、特定の価値観やイデオロギーを注入する装置にもなり得ます。

 重要なのは、この両義性を認識し、書物に書かれた「育む方法」を絶対化せずに、批判的に吟味することでしょう。受験生は、書物から一方的に知識を受け取るのではなく、自らの解釈を通してテクストと対話する必要があります。そのとき、「やる気、意欲」という概念もまた、脱構築の対象となるでしょう。受験生は、自らの「やる気、意欲」が社会的に構築されたものであることを認識し、その価値観を問い直していくことが求められます。

 そのような脱構築のプロセスを通して、「大学受験生」という主体もまた、解体されていくことになるでしょう。受験生は、教育制度という権力構造に規定されつつも、その構造を乗り越える可能性を秘めた存在でもあるのです。「やる気、意欲を育む方法」を批判的に吟味することは、その可能性を開くための第一歩だと言えます。

 「大学受験生のやる気、意欲を育む本」というテーマは、教育をめぐる権力と知のダイナミズムを浮き彫りにします。私たちは、書物に書かれた方法論を無批判に受け入れるのではなく、そこに潜む権力関係を見抜き、絶えず脱構築のまなざしを向けていく必要があるのです。そのとき、「大学受験生」という主体もまた、固定された存在ではなく、絶えざる生成のプロセスの中で捉え直されていくことになるでしょう。

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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レジリエンスとは?

 レジリエンスとは,困難で脅威を与える状況にもかかわらず,うまく適応する過程や能力,および適応の結果のことで,精神的回復力とも訳される。従来,心理学においては,個人が困難な状況や脅威にさらされる状況を長い間経験することは,なんらかの問題を生じさせるものであるという考え方が通例であった。しかし,長期間にわたる大規模な追跡調査が行なわれるようになるにつれて,悲惨な出来事を経験しているからといって,必ずしもつねに不適応状態に陥るわけではないこと,そのような経験をしていたとしてもうまく適応する人びとが少なくない割合で存在していることが明らかにされた。(最新 心理学辞典より)

 

大学受験におけるレジリエンス(回復力)の重要性

 大学受験におけるレジリエンスとは、忍耐力、適応力、挫折から立ち直る力など、多面的な資質を指します。このような試験におけるレジリエンスの重要性は、さまざまな観点から理解することができます。

 

大学入試は難しい

 入試、特に名門校の入試は非常に難しいです。試験科目に関する知識だけでなく、時間管理、ストレス管理、プレッシャーの下で批判的に考える能力も試されることが多いです。レジリエンスは、受験生がこうした試練を乗り越えるのに役立ちます。

 

競争率が高い

 多くの大学入試では、限られた席数を何千人、何万人という受験生が争います。このような厳しい競争では、挫折や失望はほとんど避けられません。レジリエンスがあれば、受験生はやる気を失うことなく、こうした困難を乗り越えることができます。

 

失敗に対処する

 すべての生徒が初めての大学受験で成功するとは限りません。レジリエンスがあれば、生徒は失敗を乗り越えられない挫折としてではなく、学習経験としてとらえることができます。チャレンジは学び、成長する機会であるという成長思考を促します。

 

健康の維持

 受験勉強は精神的にも肉体的にも疲れるものです。レジリエンスは、ストレスに対処し、燃え尽き症候群を避け、必要なときにはサポートを求めることによって、受験生が幸福を維持できるようにする役割を果たします。

 

大学入試は長きにわたる勝負

 受験勉強は、最低でも数ヶ月、数年を費やす人もいます。この間、個人的な問題、学業上の苦闘、入試の傾向の変更など、複数の困難に直面することもあります。レジリエンスがあれば、このような困難にも負けず、目標に集中し続けることができる。

 

変化への対応

 大学入試の形式、出題傾向などが変わることがあります。レジリエンスのある学生は、このような変化に素早く適応し、それに応じて準備戦略を調整することができます。

 

大学受験以外のスキル

 大学受験準備中に培われるレジリエンスは、大学受験を乗り切るために役立つだけではありません。貴重なライフスキルも身につけることができます。大学やその先で、学生は困難に直面することになりますが、レジリエンスがあれば、それらをうまく切り抜けることができます。

 

粘り強さを促す

 レジリエンスのある人は、困難に直面してもあきらめません。この特性により、困難に直面しても全力を尽くすことができ、大学合格の可能性が高まります。

 

 要するに、大学受験で成功するためには、知性、受験勉強、資源がすべて不可欠ですが、レジリエンスは、特に逆境に直面したときに、これらの要素をまとめる基礎として機能します。レジリエンスは、受験生が受験勉強の過程における障害に対処し、挫折から立ち直ることを確実にするものであり、競争試験という文脈ではかけがえのない特性なのです。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(大和書房)

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の著者の実績と信頼性

 『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)がベストセラーになった、スタンフォード大学の心理学者、ケニー・マクゴニガルさんの著書です。実験や研究の裏づけがある、ちゃんとした本です。
 実績はあり、信頼性はエビデンスに基づくものです。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の書評、感想:ストレスはレジリエンスを高める

 題名や下記の目次のように、ストレスは力に変えることができる、役に立つ、という本です。多くの人は、ストレスというとネガティブなイメージを持つことが一般的ですが、この本はそういった一般的な見方を覆す内容となっています。私自身も、読んでいく中で、これまでのストレスに対する固定観念が揺らぎ始めました。
 そもそも、ストレスによる反応は、なにか人類の生存にプラスだったから、今生きている私達にも備わっているのでしょう。太古の昔、たとえば人類が猛獣に出会うなど身の危険を感じたとき、「心拍数が上がり、呼吸が速くなり、筋肉が緊張して、瞬時に活動を起こせるように」できる、などのメリットがあったのでしょう。この「闘争・逃走反応のおかげで命拾いをしてきた」そうです。

 一方、現代社会では、ストレスは悪であると語られ、多くの人々は、ストレスを避けるためにあらゆる手段を講じる傾向があります。たしかに、科学的には「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌され、慢性化すると免疫機能の低下、うつ病などの症状が表れる可能性があります。
 現代社会はストレスが慢性化しがちなのですね。大学受験生も、慢性的にストレスを感じていることでしょう。

 『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』によると、一時的なストレスについては私達の味方。「ストレスは良い効果がある」とマインドセット(心の持ちよう)を変えるだけで、コルチゾールの作用を抑制し、創傷の治癒を高め、免疫機能を高めるなどの働きがあるDHEAが多く分泌され、ストレスに強くなるそうです。つまり、回復力、レジリエンスを高めるということですね。
 一時的なプレッシャー、緊張、不安などには「ワクワクしてきた」などと考えるのがいいそうです。ぜひ、大学受験本番で緊張したときには、実践したいですね。

 さらに驚いたのは、ストレスの反応は「闘争・逃走反応」だけでなく、人との絆を強化する効果や、新たな学びや成長のキッカケを作る力も秘めていること。この一冊の本が、私たちの日常におけるストレスとの向き合い方を、よりポジティブに、そして健康的にするヒントを提供してくれたのです。

 この新しい視点は、ストレスとは一面的なものではなく、その多面性を理解することで、より良い日常を送るためのツールとして利用することができるのだと、深く感じました。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』まとめ

 『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』は私たちが普段感じるストレスという通常はネガティブな要素を、驚くべきことにポジティブなエネルギーへと逆転させる、つまり、レジリエンスを高める方法を明らかにしてくれる画期的な一冊です。この本は、ストレス反応の本質と、それを人間の利益に役立てる方法を紐解くことで、人生をより豊かで健康的なものにするための新しい道を示してくれます。もちろん、大学受験も有利になるでしょう。この本のページをめくるたび、ストレスの科学的な背景や、その真実の深淵を知ることができ、私たちの生活の中でのストレスの位置づけを再考させられます。

 本書を読むことで、ストレスは敵ではなく、時には私たちの最良の味方として機能することを学びます。この新しい視点は、日常生活におけるさまざまなストレスの状況をどのように受け止め、またどのように向き合っていくべきかのヒントを数多く提供してくれます。

 提案されているストレスに対する新しいアプローチを理解することは、ストレスに対処するための選択肢を増やすことができると思います。ストレスに対する受容的な態度を持ち、ストレスが人生においてポジティブな役割を果たすことができるという考え方により、ストレスを受けたときにパニックに陥ることなく、冷静に対処することができるようになると思います。

 特に印象的だったのは、ストレスの反応やそれをうまく利用する方法に関する具体的なケーススタディや研究結果の数々です。それらを通じて、私たちがストレスというものをどのように感じ取り、それにどう反応するかの心理的なメカニズムについて深く理解することができます。これにより、ストレスがもたらす肉体的・精神的な影響をよりよく知り、自らの生活に適切に取り入れることができると確信しています。

 また、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』では、ストレスに対するポジティブなアプローチが、学校や職場などの集団にも適用されることを強調しています。たとえば、学校や職場でのストレスに対処するためには、ストレスが学習や仕事の成果に寄与することを示すことが重要であり、さらには、ストレスを減らすための支援やリソースを提供することも必要だと思います。

 全体的に、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』は、ストレスについての一般的な見方を変え、より前向きなアプローチを与えてくれると思います。この本を読んで「ストレス」に対する認識が大きく変わりました。もはやストレスは避けて通れない敵ではなく、正しく理解し、適切に対処することで力に変えることが可能な存在と捉えることができると思います。ストレスを認識し、扱い、活用するためのツールを提供することにより、私たちはより健康的で幸福な人生を送ることができると感じました。ストレスを経験している人々、またはストレスに対して興味がある人々にとって、この本は非常に役立つと思います。

 これからのストレスフルな状況に対する新たな視点を得るために、ぜひこの本を手に取ってみてください。

 以下は、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』には書いていない話です。
 とはいっても、現代社会はストレスが慢性化しがちです。そんなときは、一番手軽なのは、自然に触れ合うと、副交感神経が優位になり、唾液中のコルチゾール濃度も下がるという大学の研究があります。[1]
 本物の自然ではなく、自然の映像、音だけでも、かなりの効果があるという研究があります。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の目次

Introduction-考え方を変えれば、人生が変わる
part1 ストレスを見直す
 1.全ては思い込み
 -「ストレスは役に立つ」と思うと現実もそうなる
 2.ストレス反応を最大の味方にする
 -レジリエンスを強化する
 3.ストレスの欠如は人を不幸にする
 -忙しい人ほど満足度が高い
part2 ストレスを力に変える
 4.向き合う
 -不安は困難に対処するのに役立つ
 5.つながる
 -いたわりがレジリエンスを生む
 6.成長する
 -逆境があなたを強くする
 7.おわりに
 -新しい考え方は、ひっそりと根を下ろす

 

脳を鍛えるには運動しかない!(NHK出版)

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2009年第1刷。

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者の実績と信頼性

 ハーバード大学医学部准教授(現在は教授らしい)のJohn J. Ratey先生です。他にも『GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス』といった著書があります。
 医学部の先生がおかしなことを言ったら、研究生命が絶たれますから、著者の実績と信頼性は絶大と言えます。

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の目次

1.革命へようこそ-運動と脳に関するケーススタディ
2.学習-脳細胞を育てよう
3.ストレス-最大の障害
4.不安-パニックを避ける
5.うつ-気分をよくする
6.注意欠陥障害-注意散漫から抜け出す
7.依存症-セルフコントロールのしくみを再生する
8.ホルモンの変化-女性の脳に及ぼす影響
9.加齢-賢く老いる
10.鍛錬-脳を作る

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の感想、書評:有酸素運動はレジリエンスを高める


 
この度、私が手に取った『脳を鍛えるには運動しかない!』は、単なる運動論の本ではなく、その根拠となる科学的なエビデンスが豊富に織り込まれています。著者は、行われたさまざまな実験や研究の結果をもとに、運動と脳の関係性を語っており、その中でも特に有酸素運動が脳に及ぼすポジティブな影響について詳しく解説しています。

 読み進める中で、私は運動時に身体で生成されるさまざまな化学物質の名称やその働き、そしてそれらが脳や心の健康にどのように影響するのかを学ぶことができました。これまで私たちが「運動は健康に良い」と感じていた理由が、これらの化学物質の働きによるものであることを知ると、ますます運動の大切さを実感することができました。

 本書の中で特に心に残ったのは、有酸素運動を行うことで学習能力が向上するという点です。大学受験も有利になるということですね。これは、運動をすることで脳の働きが活性化され、新しい情報を効率よく取り込むことができるようになるからです。また、ストレスや不安といったネガティブな感情に対しても、運動の力で克服することができるという内容も非常に興味深いものでした。

 そして、最も印象的だったのは、「レジリエンス」についての言及です。レジリエンスとは、困難な状況に直面しても、その状況を乗り越えるための心の強さや適応力を指す言葉です。運動をすることで、このレジリエンスが高まり、日常生活の中でのストレスや不安に立ち向かう力が増すというのは、非常に魅力的なポイントだと感じました。

 

走ることは苦しくないし、早足でもいい!

 学校時代の思い出をたどると、体育の授業は決して欠かせない時間でした。青い空の下、緑の校庭での球技や各種のアクティビティー。しかし、そんな楽しいと感じる時間でも、真剣に取り組む球技の合間の休憩や、指示を待つ時間など、実際に動いていない時間も少なくありませんでした。私たちが考える「体育の時間=運動の時間」というイメージに疑問を持つことは、あまりなかったのではないでしょうか。

 特に冬の季節、多くの学校で行われる「持久走」。冷たい空気を切り裂くように走る感覚は、一見健康的に感じられるものですが、全力で駆け抜けるその経験は、多くの生徒にとって苦しいものでした。その結果、走ること自体に対してネガティヴな感情を持つ人が増えてしまっているという現状に、私は少し心を痛めました。

 しかし、心地よい運動には、過度な負荷は必要ではありません。実際、早足のウォーキングだけでも、私たちの体には十分な効果があるのです。そして、その効果は単なる身体の健康だけに留まらず、セロトニンやBDNFといった、精神の安定や脳細胞の新生を助ける物質の生成にも繋がるのです。
 このセロトニンが生成されることで、私たちの心は安定します。ということは、困難な状況にも柔軟に対応する「レジリエンス」が高まるということです。
 また、BDNFにより脳細胞の新生が促進すれば、大学受験にも有利ですよね。

 さらに、日常の中で早足のウォーキングを習慣化してから、少しペースを上げてジョギングを取り入れる、または短時間の激しい運動をすることで、BDNFの生成が促進されるというのは驚きの事実です。 

 この、適度な運動が生み出す精神的安定や脳細胞の新生を促す力などは、驚くべき効果だと思いました。このことは、日々の生活の中で運動を取り入れるという行為が、ただの健康維持だけでなく、私たちの精神的な安定や脳の健康にまで大きな影響を与えることを示していると思いました。

 『脳を鍛えるには運動しかない!』は、読者にとって、自身の身体と脳の健康を最大限に引き出し、レジリエンスを高める一冊だと思います。多くの科学的知見に基づいて書かれているこの本は、運動が身体だけでなく、脳に対してもどのような効果をもたらすのかを深く理解するための鍵となると思います。

 総じて、運動は、健康的な脳と身体のために必要不可欠なものであることがわかりました。また、私たちは運動に取り組むことで、健康上の利益だけでなく、精神的な健康にも多くの利益をもたらすことができることを学びました。私たちが運動を取り入れるモチベーションを高め、生活に変化を加える助けにもなると思いました。

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の出版社の実績と信頼性

 『脳を鍛えるには運動しかない!』の出版社は、NHK出版です。日本放送協会(NHK)の関連会社です。NHKEテレの番組用のテキストなどが有名です。本書のような、一般書も出しています。
 NHK出版の実績と信頼性は絶大と言えます。

 

世界のエリートがやっている最高の休息法(ダイヤモンド社)

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『世界のエリートがやっている最高の休息法』の著者の実績と信頼性

 イェール大学医学部精神神経科卒業の医師の久賀谷亮先生です。日本、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、論文も多数、執筆されているのに加え、臨床医としての経験も豊富のようです。趣味はトライアスロンだそうです。
 著者の実績と信頼性は高いと思われます。

 

『世界のエリートがやっている最高の休息法』の書評、感想:マインドフルネス瞑想はレジリエンスを高める

 2016年7月発売。
 著者の久賀谷亮先生は、大学の役職は無いようですが、論文を多数執筆され、また、本書も巻末に引用した論文などがたくさん載っており、ありがちなトンデモ本ではなく、ちゃんとした本だと思います。
 そして、『世界のエリートがやっている最高の休息法』は、上記のように、科学的根拠に基づいた、難しい話になりがちです。それを、イェール大学の女性研究員とその伯父の経営するベーグル店をめぐるストーリー仕立てにして、わかりやすくしているのだと思います。(ゴーストライターは存在するかもしれないですね(笑)。) 

 日常の喧騒から時折距離を置き、自分をリセットすることの大切さを感じたことはありませんか?私たちが忙しい日常を送りつつも、心の安らぎを求めるとき、どのように自分を労って休むかは、非常に大切な課題です。そんな我々の心のオアシスとなるような指南書が、『世界のエリートがやっている最高の休息法』であります。この本は、現代の疲れた脳を労る、つまり、レジリエンスを高めるためのアドバイスが満載で、確かな科学的研究を元に、心地よい休息の方法を深掘りしています。

 初めてこの本のタイトルを目にしたとき、興味をひかれたのは私だけではないでしょう。『世界のエリートがやっている最高の休息法』というタイトルからは、トップランナーたちがどのようにして自分をリフレッシュしているのか、その秘密に迫ることができるのではないかと期待が膨らみます。そして、その期待を裏切ることなく、実際、グーグル、フェイスブック(現メタ)、といった、世界の超有名企業や、個人のエグゼクティブ、起業家が取り入れている様々な休息法が具体的に、そして分かりやすく紹介されています。

 驚かされるのは、我々が普段「休む」と感じている時間でも、脳は意外と働いているという事実。静かに部屋でぼんやりしている時間や、何も考えずに空を眺めている時間、その時の脳は実は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という機構が動いていると指摘されています。これは、休んでいるつもりでも、実際には脳が休まっていないという意味で、その発見には驚きを隠せませんでした。

 さて、真の休息を得るための手法として、この本が提唱するのが「マインドフルネス」という瞑想法。多くのトップ企業や成功者たちが実践しているその方法は、宗教的な要素を取り除いた純粋な瞑想法で、ここという瞬間、今という時間に意識を集中させることで、真の休息を追求するものです。心の中に湧き上がるさまざまな感情や考えを静かに観察し、そのままに受け入れる。このシンプルな行為が、驚くほどのリフレッシュ感をもたらしてくれるのです。

 「マインドフルネス」は、『世界のエリートがやっている最高の休息法』では「評価や判断を加えずに、いまここの経験に対して能動的に注意を向けること」としています。いわゆる一般的な瞑想のイメージは、座禅を組んで、呼吸という「いまここの経験」に「注意を向ける」ものでしょう。

 

食事瞑想、歩行瞑想で脳を休める

 『世界のエリートがやっている最高の休息法』では「食事瞑想」という新しい形の瞑想方法を提唱しています。
 上記のように座禅を組んで、呼吸という「いまここの経験」に「注意を向ける」のではなく、「食べている感覚に注意を向ける」。食事しながらできますから、ハードルが低いですよね。ベーグルを食べるときには

薄茶色でつるっとした表面。ところどころに凹凸がある。手にとって匂いを嗅ぐ。渇いていた口の中に、少し唾液が出たことに気づいた。ベーグルを口へ運ぶ。その時の筋肉の動きは?ベーグルを噛みちぎる。噛み切られたその欠片は、どんなふうに口の中を動いているだろうか?ベーグルが構内の粘膜に触れる感覚。唾液がさらに増える感じ。当然、味も感じられる。小麦、チーズ、玉ねぎ、いつもよりそれらの味わいに注意を向けた。最後にベーグルを飲み込む。喉を通るときの感覚、胃の中に落ちていく感じ。

といったように、「食べている感覚に注意を向ける」。
 この、食べるときの感覚を詳細に感じ取り、食べていることに集中するというこの手法は、我々が日常的に行う行為に新たな意味を付与してくれると思いました

 また、『世界のエリートがやっている最高の休息法』ではハードルが高いとされていますが、「歩行瞑想」が挙げられています。マインドフルネスを歩行中に行おうというものです。歩くと言っても、そのメカニズムはとても複雑です。だから、本書では「ハードルが高い」としているのでしょう。とりあえず、「足の裏が地面に着いた、離れた」だけにひたすら集中すればいいのではないでしょうか。私達は、一日のあらゆる場面で歩きますから、歩行のメカニズムは複雑とはいえ、お気軽にできると思います。

 これらを実践することにより、レジリエンスが高まるのだと思います。

 また、近年は、以前考えられていたよりも、脳は可塑性(変化できる)を持つとされています。『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)にも、脳の可塑性について書かれていて、現在の自分より、ほんの少し上のトレーニングを続けることにより、脳の神経回路を構築すれば、物事は効果的に上達する、といったことが書かれています。これは、大学受験生をおおいに勇気づけると思います。

 

マインドフルネス瞑想はメタ認知、自制心も高める

 『世界のエリートがやっている最高の休息法』に載っている、研究に基づいたマインドフルネスによる脳の変化を挙げます。
・尾状核(不要な情報を除いて注意を向けることに関与)
・嗅内野(心がさまようのをとめることに関与)
・内側前頭前皮質(自己認識や統制に関与)
・大脳皮質(脳の表層の最も進化した部分)
・老化による脳の萎縮に対する効果
・左海馬、後帯状皮質、小脳で灰白質の密度増加(記憶に関連)
・前頭極(メタ意識)
・感覚野と島(身体感覚への気づき)
・前帯状皮質、眼窩前頭皮質(自己や感情の調整)
・上縦束と脳梁(左右の大脳半球の交通)
 これらは、脳という驚異的な器官の可能性を証明していると思いました。

 上記のうち、「自己認識」「メタ意識」は、自分の状況を把握する、自分の理解度を把握する「メタ認知」という非認知能力の1つと言えるでしょう。また、「自己統制」は「自制心」「忍耐」といった、非認知能力でしょう。マインドフルネス瞑想により、これらの非認知能力も高まりそうだ、ということです。

 本書に書いてあることを実行することにより、本書のテーマ通り、勉強しても疲れにくい脳を構築する、つまり、レジリエンスを高めることがことができるでしょう。また、上記のように、「注意を向ける」「記憶に関連」といった能力が高まれば、当然、大学受験にもプラスに働くと思います。   
 受験生は、本書のような、最先端の科学的知見を取り入れ、受験を少しでも有利に戦うことを心がけることが大切だと思います。

 『世界のエリートがやっている最高の休息法』は、深い洞察と具体的な実践方法を兼ね備えた一冊で、読んだ全ての人々が自分自身の休息法を見直すきっかけとなるでしょう。私自身、この本を読んで得た知識を活用し、より質の高い休息を得る、レジリエンスを高めるために努力を続けるつもりです。

 

『世界のエリートがやっている最高の休息法』の目次

0.先端脳科学が注目する「脳の休め方」
1.「疲れない心」を科学的につくるには?
 ー脳科学と瞑想のあいだ
2.「疲れやすい人」の脳の習慣
 ー「いま」から目をそらさない
3.「自動操縦」が脳を疲弊させる
 ー集中力を高める方法
4.脳を洗浄する「睡眠」×「瞑想」
 ーやさしさのメッタ
5.扁桃体は抑えつけるな
 ー疲れを溜め込まない「不安解消法」
6.さよなら、モンキーマインド
 ーこうして雑念は消える
7.「怒りと疲れ」の意外な関係性」
 ー「緊急モード」の脳科学
8.レジリエンスの脳科学
 ー瞑想が「折れない心」をつくる
9.脳から身体を治す
 ー副交感神経トレーニング
10.脳には脳の休め方がある
 ー人と組織に必要な「やさしさ」

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想・書評】非認知能力をエビデンスで語る:「学力」の経済学(ディスカヴァー)

 

非認知能力とは?

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【感想・書評】「学力」の経済学(ディスカヴァー):個人の経験よりエビデンスで学力向上へ

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 2015年6月18日発売。

 

『「学力」の経済学』の著者の実績と信頼性

 著者は、2022年現在、慶應義塾大学総合政策学部教授の中室牧子先生です。SFCでは、かの竹中平蔵先生の研究会で学ばれたそうです。その後、日本銀行に就職。コロンビア大学博士課程で教育経済学に出会い、現在のご専門にされています。
 全体としてエビデンスに基づいて論じられ、巻末に、引用した論文などがたくさん載っている、ちゃんとした本だと思います。
 著者の実績と信頼性は抜群だと思います。

 

『「学力」の経済学』の感想・書評

 

教育界はエビデンスより個人の経験で語られる現状

 『学力の経済学』という一見専門的なテーマを扱ったこの本が、多くの親や教育関係者にとって重要な意義を持つことを確信しています。私たちが普段目にする教育の成果や学習方法に対する一般的な考え方を、経済学という独特のレンズを通して再評価することで、新たな視点と洞察が得られると思います。

 『「学力」の経済学』の第1章は「他人の”成功体験”はわが子にも活かせるのか? データは個人の経験に勝る」と題されています。「どこかの誰かが子育てに成功したからといって、同じことをしたら自分の子どもも同じように成功するという保証は、どこにもありません」と述べています。一見すると直感的であるかもしれませんが、私たちが日常的に行っている教育行為に対する影響は深刻です。

 たとえば、お子さんを全員、ある超難関大学の超難関学部に合格させたママが、精力的に本を出し、講演などもされているそうですが、おそらく研究者となるであろうお子さん達は、ママの科学的根拠のないこの行動をどのように考えているのでしょう。
 塾長も何冊かこのママの著書を拝読しましたが、「身の回りのことをなんでもやってもらっている子は、自己管理ができず、だから成績が悪い場合が多いよな」と思います。個人の体験談は、家庭環境の違いなどが考慮されません。

 それに対し、塾長は、大学教授(主にアメリカ)の書いた、巻末に引用した論文がたくさん載っているような本もたくさん読んでいます。どうも、大学教授の書いた本のほうが、現場での感覚に当てはまることがほとんど、のようです。本書のテーマも科学的根拠(エビデンス)のようです。
 日本の経済財政諮問会議で、教育再生が議論に上った途端、財務大臣や経済再生大臣など、およそ教育の専門家と言えない人が「私の経験によると…」と主観的な持論を展開するそうです。財政政策や経済政策について、文部科学大臣が主観論を展開することなどありえないのに。
 そのような公の場のみならず、どうも、教育については、「1億総評論家」状態で、素人の思いつきで「自分の子供は東大や医学部に合格できる」と思いこんでいる場合がほとんどのような気がします。そして、多くの場合、家庭教育がうまくいっていない。

 たとえば、大学受験塾チーム番町から100mほどのところに、囲碁の総本山、日本棋院があります。囲碁というゲームは、盤に何も置かれていない対等な状態から、黒石と白石を交互に置き、勝負します。しかし、普通のアマチュアがプロ棋士と対局したら、100回やって100回全部、ボロボロに負けます。教育も同じだと思うのです。プロの名人からアマチュアの20級くらいまでの実力者があって、大差がつく。

 一方、アメリカで2001年に成立した「落ちこぼれ防止法」では、111回も「科学的根拠に基づく」という文言が使われているそうです。
 本書『学力の経済学』は、親や教育関係者、政策立案者にとって、どのように教育を再考し、子どもたちの学力を最大限に引き出すかという重要な問いに答えるための指南書と言えるでしょう。これまでの教育習慣に挑戦し、科学的根拠に基づく新たなアプローチを提供してくれる本書を、多くの人が読み、そのその洞察を活かすことを強く推奨します。

 

「勉強しなさい」はエネルギーの無駄遣いというエビデンス

 「勉強しなさい」と言うのが逆効果、というのは、気鋭の現場の指導者の中では通説になっていると思います。『「学力」の経済学』では、研究によると、母親が娘に言うのは逆効果、それ以外の場合もほぼ効果はない、としています。それなら、どうすればいいか、ということについて、述べられています。
 これは、伝統的な教育手法に対する挑戦であり、現代の教育現場でより効果的なアプローチを模索するための重要な手掛かりとなると思います。

 また、「友だちが与える影響」として、
・同じ学級や学年の子どもたちの平均的な学力から受ける影響
・優秀な同級生から受ける影響
・問題児から受ける影響
・習熟度別学級から受ける影響
について、エビデンスを基に、述べられています。
 これらの情報は、子どもたちの学力に影響を与える多様な要素を理解するための重要な手がかりを提供していると思います。
 エビデンスに基づいて書かれた他書でも、「成功」との相関係数は、「技術的なもの」よりも「自己効力感(自信)」のほうが大きい、などと書かれています。進学実績がやや良い高校の下位層よりも、進学実績がやや及ばない高校の上位層のほうが、大学受験で成功するのは、技術面以外に、心理面、自信の影響も大きいのだろうと思います。

 

非認知能力は大切というエビデンス

 『「学力」の経済学』の第3章では、「非認知能力」について述べられます。
 「非認知能力」として、ここでは、自己認識(自信、やり抜く力)、意欲、忍耐力、自制心、メタ認知ストラテジー(自分の状況を把握する)、社会的適性、回復力と対処能力、創造性、などが挙げられています。
 非認知能力はペーパーテストと対極なものとして語られがちですが、本書では「学歴」にも大きく影響することがノーベル経済学賞も受賞したヘックマン教授などの研究で明らかになっている、としています。
 まあ、そのような研究を待つまでもなく、やり抜く力、意欲、自分の状況を把握する、といった能力が高い人のほうが、大学受験の点数が高くなるのは当然ですよね。
 また、本書で挙げられている、これらの非認知能力は、教育やトレーニングで鍛えて伸ばせる、人から学び、獲得するものである、ということも大切でしょう。

 

非認知能力の育み方のエビデンス

 『「学力」の経済学』では、やり抜く力については、『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社)で有名なペンシルバニア大学の心理学者、ダックワース教授の名前も出てきます。やり抜く力に特化した解説の場合、『GRIT やり抜く力』を読むといいでしょう。課外活動を奨めている点も、本書と共通しています。また、マインドセット「やればできる!」の研究(草思社)の著者、スタンフォード大学の心理学者、キャロル・S・ドゥエック教授の名前も出てきます。マインドセット「やればできる!」の研究は、「能力は努力によって後天的に伸ばすことができる」という「しなやかマインドセット(心の持ちよう)」を持つことが大切であることが述べられています。
 その他、本書では「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことが、「自制心」を鍛えるのに有効であるという研究が多数ある、としています。普通の公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された、原田隆史先生は、生徒に「日誌」をつけるよう指導していました。つれづれに、思ったことを書く「日記」ではありません。1日のうちに、すべきことをあらかじめ書いておき、実際に実行できたかをチェックし、毎日、段差の小さい階段を登っていく。それを続けると、結局は、とんでもないところに到達できる、というものです。塾長は、「自制心」のみならず、「自分の状況を把握する力」も鍛えられるのではないか、と考えています。
 塾に保護者の方が出てくるようなご家庭は、日頃から、なんでも保護者の方がやってあげるので、子どもが「自分の状況を把握する力」が低い傾向があるように思います。したがって、大学受験の成績も上がらない。その他、意欲といった非認知能力についても、保護者の過干渉により、「興味、好奇心」「自分の人生を生きているという感覚」が失われているのではないか、というのが、気鋭の現場の指導者の中では通説になっていると思います。
 さらに、本書では、山形大学の窪田准教授らの研究により、しつけが「勤勉性」という非認知能力に因果関係を持つことが明らかになったことを紹介しています。『学力の経済学』は、教育における疑問に科学的な視点からアプローチを試み、教育についての誤解を解き明かしています。一見直接的な結果を示さないようなしつけでも、長期的な視点では子どもの成長に大きな影響を及ぼすことが示唆されます。
 塾長の経験からも、人間的にしっかりしている人は、大学受験の成績の伸びが大きいと思います。

 

エビデンスとは?

 教育については、世の中ではまずまず信頼に足るとされているようなメディアが、「専門家」などとして、平気で1塾講師の個人的見解を記事にしている事が多いです。また、情報源は、1東大生の親、1東大生であったりします。

 『「学力」の経済学』では最後に、科学的根拠、エビデンスの信頼性の階層について述べられます。読者は様々なエビデンスの信頼性を正確に理解することができると思います。
 本書では、最も信頼性の高いのは「ランダム化比較試験」としています。「ランダム化比較試験」は、クジや抽選でランダムに2つのグループに分け、介入を行うグループと行わないグループの差を計測するものです。更に上位に「複数のランダム化比較試験のメタ分析(複数の研究の分析)」を挙げる場合もあります。
 先述のアメリカの「落ちこぼれ防止法」では、「エビデンスとはランダム化比較試験に基づくもの」であると明言されているそうです。
 本書では、エビデンスの階層を

・ランダム化比較試験
・非ランダム化比較試験
・分析疫学研究
・症例報告
・論説・専門家の意見や考え

としています。「専門家の意見や考え」はエビデンスの最下層なのですね。専門家ですらない、東大、医学部合格者や、その関係者の個人的体験談などは、科学的根拠という面からは、論外なのですね。改めて、日本の教育、メディアはデタラメだなあ、と思いました。

 

『「学力」の経済学』の目次

1.他人の”成功体験”はわが子にも活かせるのか?
 データは個人の経験に勝る
2.子どもを”ご褒美”で釣ってはいけないのか?
 科学的根拠(エビデンス)に基づく子育て
3.”勉強は本当にそんなに大切なのか”
 人生の成功に重要な非認知能力
4.”少人数学級”には効果があるのか?
 科学的根拠(エビデンス)なき日本の教育政策
5.”いい先生”とはどんな先生なのか?
 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念
補論:なぜ、教育に実験が必要なのか

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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【感想・書評】小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て(マガジンハウス):非認知能力(自己肯定感、共感力)を育む

 

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【感想・書評】小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て(マガジンハウス):非認知能力(自己肯定感、共感力)を育む

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『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』の著者の実績と信頼性

 2018年9月の新刊です。
 慶應義塾大学医学部小児科教授の高橋孝雄先生の著書です。高橋孝雄先生は1957年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業です。アメリカのマサチューセッツ総合病院小児神経科で勤務したり、ハーバード大学医学部の神経学講師を務められたりもしました。
 特に論文が引用されているわけでも、エビデンスに基づいているわけでもありません。しかし、高橋孝雄先生は、慶應義塾大学医学部小児科教授という地位のある人なので、デタラメなことは書けないでしょう。高橋孝雄先生の経験と意見の書かれた本ではありますが、それは、医学部小児科教授として、多くのお子さんを見てきた経験と意見なので、信頼度は高い本だと思います。

 

『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』の書評、感想

 

まえがき

 まず、何より最初に、小児科医として子どものしあわせを願っていることが書かれています。
 これは、塾長も同じ思いです。受験というものは、子どもの幸せのための手段です。しかし、それが目的化してしまい、親子の断絶が生じ、幸せになるための手段であるはずの受験で、家庭が不幸になってしまう。あってはならないことが、世の中では多く起きていることに、悲しみを覚えます。

 

「トンビがタカを産む」は遺伝的にありえない?

 『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』では、「トンビがタカを産」んだように見える場合、実は、両親も「タカ」だった可能性が高い、と述べています。家庭の事情や時代状況などで、表に出なかった、と。「突然変異」にみえるものも、遺伝子の振り幅の範囲内にすぎない、と。

 一方、たとえば、同じ慶應義塾大学で行動遺伝学がご専門の文学部教授の安藤寿康先生は、著書『なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える』 (講談社現代新書)

テストの成績などは、遺伝50%、遺伝に還元されない家庭環境30%、教え方や本人の変化20%

と述べています。安藤寿康先生も、遺伝の影響が大きい、というニュアンスで述べているようです。しかし、遺伝以外の要因が残り半分もあるのに、あきらめていいのでしょうか?家庭に介入して、きちんとした勉強のしかたを教えれば、いいだけではありませんか。

 また、フロリダ州立大学心理学部のアンダース・エリクソン教授の、巻末に引用論文、文献などがたくさん載っている、ちゃんとした著書『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)では、現在の自分を少しだけ超える「限界的練習」を課すことにより、脳の神経回路は、かなり書き換えることができる、能力を伸ばすことができる、としています。

 『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』でも、後ろの方のページで、
・「遺伝子はON(発現)、OFFがあ」り、環境に順応することができる
・苦手なことも努力で克服できる余地がある
といったことを述べられています。
 高橋孝雄先生も、何事も遺伝の影響が大きいから、あきらめろ、と言いたいのではないのだと思います。

 

非認知能力:共感力、自己肯定感、意思決定力を育む

まず、「共感力」、「意思決定力」(自分のことは自分で決める)、「自己肯定感」が大事、などとおっしゃっています。これらは、学術的にも、認知能力(ペーパーテストで計測される能力)に対し、「非認知能力」と言われるものです。非認知能力が認知能力、学歴にも大きく影響することは、ノーベル経済学賞も受賞したヘックマン教授らの研究で明らかになっています。
 「意思決定力」については、世界陸上400mハードルで銅メダルを2回獲った、為末大さんは「自分の人生を生きている、という感覚が一番の才能で、後天的に最も与えにくい」と述べています。塾長も、いい歳をして塾に親が出てくる学業不振の高校生を見て、そうなのだろうな、と思います。今までの人生のどこかで、すでに「意思決定力」を喪失してしまったのだろう、と。
 「自己肯定感」と「自己効力感」は、似ていて、やや非なるものかと思いますが、「成功」との相関係数は、技術的なものよりも、自己効力感のほうが高いことが、数多くの研究から明らかになっています。

 

結局、高橋孝雄先生の言いたいことは?

 『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』のまえがきにあるように、子どものしあわせを願っているのだと思います。
 そのために、加熱しがちな早期教育や、保護者の方の過剰な不安をたしなめているのだと思います。

 全体として、子どもの個性、能力、才能は、多少のゆとり、揺らぎはあるものの、両親から受け継いだ遺伝子によるものだから、他人と比べて一喜一憂せず、成長を見守ることが大切だ、ということだと思います。

 「情報に振り回されるのは無意味」、「勉強しなさい」は逆効果、などともおっしゃっています。親が不安になって、早期教育に走ったり、口うるさく「勉強しなさい」とくり返しても、意味がない、むしろ、逆効果、ということですね。

 また、親は頑張りすぎない、きつかったらSOSを発する、といったこともおっしゃっています。お子さんが健全であるためには、何より、親が心身ともに健全であることが大切ですからね。

 塾長の経験からの私見ですが、受験で成功することを最優先に考えたとしても、上記のようなことは大切です。上記のようなご家庭であれば、大学受験塾チーム番町の技術があれば、ビックリするほど成績が伸びると思います。

 高橋孝雄先生は、4歳のときに、お父様を脳腫瘍で亡くされたそうです。その後は、母子家庭で、生活保護帯。慶應医学部と言えば、私大医学部で、授業料は高額のはずですが、学費免除の奨学金をもらったそうです。
 お母様は、「勉強しろ」とは一度も言わなかったそうです。だから、慶應医学部で授業料免除になる学力をつけることができたのでしょうね。現在、受験や学校の現場の先鋭的な指導者の中でも「勉強しなさい」は逆効果、というのは通説になっています。

 

書評、感想

 子育てとは、親と子が共に成長していく過程であり、その中での親の役割とは何か。この問いに対し、『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』は、独自の視点から鋭く迫ります。

 この本は、小児科医、大学教授としての視点から子育て論を展開し、親や教育者がどのように子どもと向き合うべきかを示します。遺伝や環境、才能や努力といった要素が子どもの成長にどのように影響するのか。そして、どのような育て方が子どもの可能性を最大限に引き出すのか。これらについて、具体的な事例とともに解説しています。

 子どもの成長においては遺伝子が大きな役割を果たすとともに、遺伝子がどのように発現するかは環境によっても変わります。つまり、親の影響が大きいのですが、その影響は必ずしも学業指導のみに限定されません。むしろ、共感力や意思決定力、自己肯定感といった非認知能力の育成が重要であると述べています。

 本書は、子育てに対する新たな視点を提供してくれます。遺伝子から環境、努力まで、子どもの成長に影響を与えるさまざまな要素について考察し、具体的な指導法を提示します。この本を読むことで、子どもの成長を支える親として、また教育者として、自身の役割を再認識し、適切なアプローチを見つけることができます。

 高橋先生の子育て論は、遺伝的な要素と環境、教育の要素が複雑に絡み合っていることを理解し、その全体像を見つめ直すきっかけを提供してくれます。さらに、遺伝と環境、それぞれが子どもの成長に及ぼす影響について理解し、子ども一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出すための指導法を提示しています。

 『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』は、遺伝子、環境、教育といった多角的な視点から子育てを見つめ直すための一冊です。子どもの可能性を最大限に引き出すために、親や教育者がどのように関わるべきかを深く考えさせてくれる一冊で、これからの子育てに活かすことができることでしょう。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想・書評】非認知能力の権威、ヘックマン教授の著書:幼児教育の経済学(東洋経済新報社)

 

非認知能力とは?

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【感想・書評】非認知能力の権威、ヘックマン教授の著書:幼児教育の経済学(東洋経済新報社)

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『幼児教育の経済学』の感想・書評

 2015年7月2日第1刷。
 著者は、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン教授です。ヘックマン教授は1965年にコロラド大学を卒業。1971年にプリンストン大学で経済学のPh.Dを取得。シカゴ大学ヘンリー・シュルツ特別待遇経済学教授です。
 本書の原題は『Giving Kids a Fair Chance』。
子供たちに公平な機会を与える、ということですね。

 ただ、本書は、ヘックマン教授による記述はあまり多くありません。最初にヘックマン教授が自身の研究と見解を述べます。次に、各分野の専門家が、ヘックマン教授の研究に対し、意見、問題点を述べます。最後に、ヘックマン教授が、各分野の専門家の意見に対し、再び見解を示します。このような構成となっています。

 

非認知能力の重要性

 『幼児教育の経済学』では、まず、ヘックマン教授は、今日のアメリカでは、どんな環境に生まれあわせるかが不平等の主要な原因の1つになっている、と問題提起します。専門的な技術を持つか持たないかは、乳幼児期の体験に根ざしていると。
 そして、これは、適切な社会政策を施せば是正できるのだが、適切な政策には科学的根拠が必要だ、と述べています。
 この教育政策についての科学的根拠という点は、慶應義塾大学総合政策学部教授で教育経済学がご専門の中室牧子先生も、著書「学力」の経済学(ディスカヴァー)で、アメリカでは進んでいて、日本に足りない部分だと述べています。日本の教育政策は、どうも、政治家の思いつきでいい加減らしいので、しっかりしなければならない部分だと思います。

 そして、科学的根拠を入念に検討したところ、人生で成功するかどうかは、認知的スキル(ペーパーテストの点数)だけでは決まらず、根気強さ、注意深さ、意欲、自信といった「非認知スキル」も貢献していて、その後の学歴、収入、健康管理、犯罪率などに影響を与えることを明らかにしました。しかも、非認知スキルはペーパーテストの成績にも影響する、と述べています。当塾は、大学受験塾なので、仮にペーパーテストの点数を最優先したとしても、それは、根気強さ、注意深さ、意欲、自信といった非認知スキルが高い人のほうが、ペーパーテストの点数も高くなるだろうと思います。
 そして、幼少期の介入により、非認知スキルを育むことが、成人教育プログラムなどよりも、はるかに、費用対効果の面で、効果が高い、としています。

 また、他の学者の研究を引用し、ひとり親家庭では、うつ病や妊婦の薬物使用や喫煙が多く、母乳育児や語りかけによる刺激が少ない。家庭内暴力、虐待、ネグレクトといった小児期の悲惨な体験は、成人してからの病気や医療費の多さ、うつ病や自殺の増加、アルコールや麻薬の乱用、労働能力や社会的機能の貧しさ、能力的な障害などと相関関係があることがわかっている、としています。これは、神経学的にも筋が通っていて、脳の発達に異常が生じる、とのことです。本書には、極度にネグレクトされた3歳時の標準より著しく小さく、萎縮した脳の頭部スキャン画像が載っており、衝撃的でした。

 

ヘックマン教授への提言

 『幼児教育の経済学』の中盤では、他の大学の先生、教育関係者による、ヘックマン教授への提言が書かれています。

 1つ目は、ヘックマン教授の提案も支持するものの、成人の職業訓練プログラムも成果を発揮することが研究で明らかになっている旨の、大学教授の主張です。幼児期にプログラムを受けられなかった場合、第二弾が用意されているべきだ、ということでしょう。
 たしかに、成人の職業訓練プログラムも用意されていた方がいいに決まっていますが、冒頭でヘックマン教授も述べているように、政策には費用が必要であり、なかなか難しい問題だな、と思いました。

 2つ目は、やはり、ヘックマン教授の提案を有望であるとするものの、子供側だけでなく、シングルマザー側も危機的状況にあることを見落としている、また、子育てのにおける母親の役割を奇妙なほど重要視し、父親についてあまり論じていない、さらに、ややもすると、一部の女性が子育てに適していないと烙印を押すかの発言に思われる、という旨の、大学教授の主張です。
 まあ、最初の2つについては、そうかも知れません。しかし、最後の「烙印」については、「言葉狩り」といった印象を受けます。塾長は、「受験がうまくいかないレベル」でも、ご家庭への介入は必要であると考えます。本書で論じられているような家庭は、どこ大学に入るか、といった問題よりも、はるかに悲惨な状況を想定しており、なおさら、家庭への介入は大切ではないかと考えます。

 3つ目は、ヘックマン教授が引用する「ペリー就学前プロジェクト」のサンプル数が少ない。逆に、幼児期の介入の効果に否定的な報告もある、という旨の、研究所の研究員の主張です。これについては、今後の研究を待つしかないと思いますが、塾長は、塾を主催している経験上、幼児期の非認知能力を育むための介入には効果があるのではないか、と考えています。

 4つ目には、マインドセット「やればできる!」の研究の著者、スタンフォード大学の心理学のキャロル・S・ドゥエック教授が登場します。ヘックマン教授の貢献は多大、かつ、論理的だが、思春期の子供への介入も効果的で、かつ、安価であるという主張です。
 たしかに、先述のドゥエック教授の著書を読むと、たとえば、保護者や学校の先生1人1人が、日頃の発言に気をつけるだけで、非認知能力をかなり育むことができそうだ、という気はします。

 5つ目は、財源に限りはあるが、質の違いよりも、すべての子がプログラムを受けられることが大事、である旨の大学の先生の主張です。これまでの研究者や政策立案者は、プログラムの質の向上ばかりに注意を集中しすぎていたと。
 これについては、たしかに、恵まれない子供のすべてがプログラムを受けられることが理想であり、簡潔、かつ、効果の高いプログラムが望まれるのだと思います。たとえば、先述のキャロル・S・ドゥエック教授の著書や、後述のポール・タフさんの著書を読むと、そのことは可能なのではないか、と思います。

 6つ目は、「ペリー就学前プロジェクト」の成果は比較的小さい旨の、研究所の副所長の主張です。ただし、「ペリー就学前プロジェクト」の時期に比べ、非認知能力をめぐる研究は進歩しているので、少予算で、かつ、効果の大きい幼児期の介入を行うことが期待できるのではないかと考えます。

 7つ目は、学業成績や収入は大事だが、人生の全てではない旨の大学の先生の主張です。
 もちろん、お金持ちにも不幸な人は多い、というのは、よく言われていることです。しかし、そういう人達は、お金を持っているのだから、本人にその気があれば、コーチをつけたり、カウンセラーに相談したり、問題解決の方法を持っているわけです。(そう考えると、お金を持っていて、不幸な人というのは、なんなのでしょう。)一方で、本書は貧困の連鎖、それに起因する脳の発達障害、萎縮などを問題にしています。自分で断ち切る手段を持たないから、連鎖なのです。この主張は、ちょっと論点がずれているのではないか、という気がします。

 8つ目は、良いプログラムは何が違うのかを研究し続ける必要がある旨の教育関係者の主張です。これは、ごもっともです。そして、現在も、非認知能力についての研究は、以前よりさかんに続けられているでしょうし、上記でくり返しているように、「ペリー就学前プロジェクト」の時期に比べ、非認知能力をめぐる研究は進歩しているので、良いプログラムのための材料は揃いつつあるのではないかと思います。

 9つ目は、恵まれない人々の文化的価値感に配慮した介入を、という旨の大学の先生の主張です。これも、ごもっともで、異なる文化的価値観を一方的に押し付けたところで、保護者は納得しないでしょう。これは、貧困層のみならず、日本で中学受験をするような、経済的に余裕がある層でもそうです。まあ、文化というよりは、個人的な思い込み、それが単なる思い込みであることを知らされた時の自尊心の喪失、それに伴う激しい怒り。中学受験層で、教育が上手くいかない家庭は、だいたいこのような感じでしょう。

 10番目は、就学前の親への教育と「考え方を変えること」が子供たちを救う、旨のなにかの団体の代表の主張です。これは、その通りで、家庭への介入の一種でしょう。当塾も、保護者の方が、教育が上手くいっていない保護者の特徴を持っている場合、修正してもらうよう、指摘しています。

 

非認知能力を育むためには?

 『幼児教育の経済学』は、非認知能力を育むための具体的方法については、ほとんど書かれていません。そのようなノウハウを手っ取り早く知りたい、という場合には、

SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法(祥伝社)

世界最高の子育て 「全米最優秀女子高生」を育てた教育法(ダイヤモンド社)

といった本を最初から読んだほうがいいと思います。上記2冊の著書はボーク重子さんという一般人ですが、大学などのリサーチを研究して書いた本なので、ありがちな母親の独りよがりな教育本ではなく、かなりまともな本だと思います。ビジネスなどでは有名な手法も載っています。

 

非認知能力について、背景を知りたい人は?

成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか(英知出版)

私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む(英知出版)

といった本を読んだほうがいいかと思います。一方で、特に、上記2冊は、大学の研究をベースにした、かなり信頼性が高いと思われる本ではありますが、著者は大学の先生ではなく、ポール・タフさんというジャーナリストです。

 

 ただ、ネットなどが発達し、情報の信頼性が問題になっている現在において、『幼児教育の経済学』のような、「非認知能力」の研究者自身が書いた文章を読んでおくこと、その研究者に対する、研究者による批判を知ること、は大切な姿勢であると考えます。

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想・書評】大学受験生の非認知能力を育むボーク重子さんの本

 

非認知能力についてのポール・タフ氏の本

非認知能力の権威、ヘックマン教授の本

小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て(マガジンハウス)

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【感想・書評】大学受験生の非認知能力を育むボーク重子さんの本

 

ボーク重子さんの実績と信頼性

 ボーク重子さんは、娘さんが「全米最優秀女子高生」に選ばれた、です。ボーク重子さんはメディアにも登場していますね。メディアでは「パッション、パッション」言っている、変なお姉さま、という印象ですが、実際に「パッション」は大切だと思います。
 プロフィールに「科学的データ」「大学での研究」などを「詳細にリサーチ」とあるように、著書の内容は、ボーク重子さんの独りよがりではなく、研究に基づく他の本と重なるものが多いです。したがって、内容の信頼性は、東大生、東大卒やその関係者が書いた独りよがりのものよりは、高めだと思います。

 

『世界最高の子育て』の感想、書評

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 IQや学力テストなどで計測される能力を「認知能力」と言います。私たちの成績や職業能力の指標としてしばしば取り上げられます。この数字は黒白明瞭で、私たちがどれだけそのテストの範囲内で知識や技能を持っているかを示します。
 それに対し、その背後に隠れているもう一つの能力、自信、協調性、自制心、責任感、共感力、コミュニケーション力といった、ペーパーテストで計測できない能力を「非認知能力」と言います。実際の人生の中でどれだけ重要であるかに驚かされることが多いです。私たちの日常生活や仕事、人間関係において非常に重要な要素が含まれている。

 ボーク重子さんが重視しているのも「非認知能力」です。

大学受験塾チーム番町による非認知能力の解説はこちら

 塾長の経験上、「非認知能力」が高い人のほうが、ペーパーテストの成績も伸びやすいです。まあ、自制心や責任感が高いのだから、ペーパーテストでも点数を取りやすいでしょう。
 しかし、逆のケースも存在します。塾長は、一部の進学校の下位層の生徒たちがペーパーテストでなかなか点数を取れない背景には、「非認知能力」が低いことが原因であることが多いと考えています。

 もちろん、学生時代だけでなく、むしろ、大学を卒業し一般企業で働く際にも、この「非認知能力」は非常に重要です。特に、リーダーシップを取る立場になると、この能力の有無が明確に現れるでしょう。『世界最高の子育て』では、効果的なコミュニケーションやプレゼンテーション、対話の技術、さらには逆境時の回復力やチームでの協働力、他者への共感、そしてリーダーシップなど、さまざまな非認知能力が詳細に解説されています。

 『世界最高の子育て』を通して、「非認知能力」の重要性と、それを育む方法についての深い洞察を得ることができるでしょう。

 

世界最高の思考力の教育法

 『世界最高の子育て』という題名の本を手に取った瞬間、多くの親や教育者の期待が高まることでしょう。第1章では、目を引くキャッチフレーズとして「世界水準の思考力を養う」と記載されています。この言葉を目にしたとき、私の胸も高鳴りました。思考力とは、単に知識を蓄えるだけでなく、それを活用し、新しい発想やアイデアを生み出す能力のこと。そういった能力があれば、日本の大学入試はもちろん、その後の人生においても大きな武器となるでしょう。本書においては、そんな思考力を培うための手法として、3つの具体的な思考法が紹介されています。

・自分で考える力
 子供たちが自らの意思で物事を考え、判断する能力は非常に価値があります。しかし、今の時代、保護者が過度に手を出してしまうことで、子供たちの自主性が失われることがあります。特に教育の場では、この問題が深刻です。大学受験塾チーム番町では、子供たちの自分で考える力を大切にし、保護者面談を行わないという大胆な取り組みをしています。
 本書では、イエス、ノーで答えられない質問を問いかけることをおすすめしています。大学受験塾チーム番町でも、世の中には論理的でない人が多いので、塾内でも「なぜ?」とくり返し問うことが多いですし(論理的でない人は、途中で論理的でない返答になる。)、ご家庭でもおすすめしています。

・実行機能
 ただ知識を持っているだけでは、社会で成功するのは難しい。それを実行に移すスキル、すなわち実行機能が必要です。自分で計画し、それを実行し、最後に結果を出す。この一連の流れができる子供は、大人になっても成功することが多いですよね。しかし、これも保護者や先生が過度に干渉してしまうと、子供の自主性が損なわれてしまいます。したがって、大学受験塾チーム番町では、「こうやれば東大や医学部に合格する」という大枠は示しますが、宿題などは出しません。
 本書では、子供が望むトピックに合わせて、まず大人が手本を示し、小さく分割させ(デカルトも「困難は分割せよ」と言っていますね)子供にやってもらうことをおすすめしています。

・クリティカルシンキング
 問題解決のために情報を集め、事実を確認し、分析し、推論を立て、反証し、自分の中にある偏見やバイアスに挑戦しながら、思い込みに惑わされることなく論理的に良い結論を導くことです。たとえば、なんとなく、そのあたりの予備校に通うのではなく、論理的に判断して、大学受験塾チーム番町に入ってくる、といったことですね(笑)。
 『世界最高の子育て』では、賛否両論の表を作ることで、物事の良い点と悪い点をしっかりと見極める方法が紹介されています。

 

世界最高のコミュニケーション力の教育法

 『世界最高の子育て』の第2章は、双方向の「コミュニケーション力」を養う、です。この章を読むことで、私たちの心に響くメッセージがたくさん詰まっているのが分かります。
 コミュニケーションという言葉を耳にすると、多くの人が思い浮かべるのは、お互いに話すこと、相手の気持ちを理解することでしょう。実際、この章でも「双方向のコミュニケーション力」に重きを置いています。しかし、このコミュニケーション力は単なる言葉のやりとりだけではないです。それは、人と人との繋がりを深め、社会においての自分の存在価値を高めるための非常に大切なスキルです。コミュニケーション力、社会性も非認知能力の1つです。
 これは、ペーパーテストの大学入試を考えると、受験生側にはあまり関係ないかもしれないですね。むしろ、保護者がお子さんとのコミュニケーション力を養うと、受験がうまくいくでしょう。ただ、日本でも、東大、医学部以外の入試では、AO型の入試が増えています。これは、単に学力だけでなく、人としての総合的な能力や個性を評価するためのものです。そのような入試を希望する人は、参考にするといいでしょう。
 さらに、コミュニケーション力が高い人は、受験の場面においても、他の人からのサポートを受ける機会が増えるため、有利になることが予想されます。この点においても、コミュニケーション力を磨くことの重要性が改めて認識されます。 

 このように、『世界最高の子育て』の第2章は、受験生や保護者、さらには教育者にとっても非常に参考になる内容となっており、私たちの日常生活においても、コミュニケーションの大切さを再認識させてくれる1章となっています。

 

世界最高のレジリエンスの教育法

 『世界最高の子育て』の第3章は、心が折れない「回復力」をつける、です。レジリエンスとも呼ばれますね。レジリエンスも非認知能力の1つです。もちろん、心が折れない人のほうが、大学入試に成功しやすいですよね。
 本書では、その日の終わりに、その日の良かったことを3つ書き出す、ことをおすすめしています。これは、荒れた公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された、原田隆史先生の日誌にも、この欄があります。また、家庭が安心できる場であること、親自身が幸せであること、をおすすめしています。これも、非認知能力についての書籍のはしりであろうポール・タフさんの著書にも、脳の映像など、科学的根拠とともに書かれています。

 

世界最高の長所の教育法

 『世界最高の子育て』の第4章は、その子だけの「長所」を徹底的にのばす、です。日本のペーパーテストの大学入試は、特に、東大、医学部受験は、各科目のバランスの良い得点が要求されがちなので、表題からは、大学入試には関係なさそうです。 
 一方、本章では、ボーク重子さんがメディアで連呼する「パッション」(情熱)の話が出てきます。「好奇心」と言い換えることもできるでしょう。そして、好奇心はアクションリストを実行することにより、高めることができることが、南メソジスト大学の実験により、わかっています。好奇心が高い人のほうが、色々なことを勉強しようと思い、勉強したことを忘れにくいでしょうから、東大、医学部受験に強いですよね。

 本書を参考に、日々の行動を変えれば、東大、医学部合格に近づくことは、間違いないでしょう。

 

『世界最高の子育て』の目次

第1章 世界水準の「思考力」を養う
1.レスポンシブ・クラスルームで考える力を育てる
2.実行機能 自分からやる子を育てる
3.クリティカルシンキング 高い問題解決能力を持つ子になる

第2章 双方向の「コミュニケーション力」を養う
1.プレゼン力を鍛える
2.対話力を鍛える
3.表現する「自信」を育む

第3章 心が折れない「回復力」をつける
1.心をポジティブに保つ
2.想像力で選択肢を広げる
3.良好な人間関係を築く

第4章 その子だけの「長所」を徹底的にのばす
1.「出る杭」の持つ人間的な魅力
2.「好き」を真剣にやらせる環境づくり 6つのコツ
3.「出る杭は打たれる」という恐怖を克服する

第5章 「協働する力」こそが未来を切り開く
1.コミュニティーの一員として協働力を鍛える
2.国際化、多様化の中の共感力を鍛える
3.21世紀のリーダーシップとは

 

SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法(祥伝社)の感想、書評

 

 この書籍は、親子関係や教育に対する新たな視点を提示しており、読者にはその科学的根拠と共に、具体的で実践的なツールを提供していると思います。『SMARTゴール』は、育児に関わるすべての人々にとって有益なガイドブックとなることでしょう。私自身もこの書籍から多くを学び、生徒指導に生かしていきたいと感じました。

 

理想的な親のタイプは?

 『SMARTゴール』の第1章「子供の成功は親のタイプで決まる」では、まず、「子供の成長を決めるのは遺伝が49%、育て方などの環境が51%」という研究が示されます。この数字は、慶應義塾双生児研究の安藤寿康教授の著書『なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える』(講談社現代新書)では、行動遺伝学の研究によると、テストの成績などは、遺伝50%、遺伝に還元されない家庭環境30%、教え方や本人の変化20%、とされます。

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 そうすると、遺伝に還元されない家庭環境、つまり、親のあり方がかなり大きな要素だ、ということになります。
 『SMARTゴール』では、「ベストな親のタイプ」は「民主型」。「子供主体のニーズを満たす親」、「コントロールと期待水準が高い+子供の気持ちとニーズを汲み取る暖かさが高い」としています。「コントロール」も押し付けではなく、あくまでもお子さんの主体性を尊重したものです。
 この件の根拠は、本書では「あらゆる調査」としています。たとえば、ペンシルベニア大学心理学部教授の著書で、研究などに基づいて書かれた『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社)では、「さらなる研究が必要だ」としつつも「賢明な子育て」の科学的結論が、ほぼ本書と同様に述べられます。
 たとえば、本書では「服従型」というタイプ分けがあります。まあ、読んで字のごとくです。例えば、医師の親が、子どもの意に反して、医学部受験を強要する、といったケースです。本書では、『タイガー・マザー』という服従型教育の著書が紹介されます。一定期間の賛否両論の後、著者は13歳の娘の反抗に遭い、スパルタ教育からの撤退を決意したそうです。

 第1章では、親と子の関係性に光を当て、科学的データや大学での研究に基づいた育児法を語っています。読者に新しい視点を提供すると共に、親が子供の成長に対してどのような影響を与えているかを考察する機会を提供していると思います。
 これらの結果は、子供の教育方法や親としてのあり方が、子供の未来に及ぼす影響の大きさを物語っていると思います。著者が推奨する「民主型」の親のスタイルは、読者に新鮮な洞察を与えていると思います。

 

「SMART」とは?

 『SMARTゴール』の第2章以降に登場する「SMART」という目標達成のツールも、ジョージ・T・ドラン氏が提唱して、ビジネスでは有名な手法であり、ボーク重子さんのオリジナルではありません。
Specific(具体的)
Measurable(計測可能)
Actionable(自力で達成可能)
Realistic(現実的)
Time limited(時間制限付き)
の頭文字です。
 たとえば、とりあえず、大学受験という目標は具体的ですね。大学卒業後にやりたいことが具体的なら、さらにいいと思います。そして、テストは点数が出るので、計測可能です。1日レベルまで細分化して「問題を○○問解けるようにする」でもいいでしょう。大学合格という目標は、自力で達成可能です。現実的とは、目標を下げる、ということではありません。自分らしいということです。そして、テストや入試までは時間制限があります。目標を1週間、1日レベルまで細分化して、時間制限をつけるのもいいと思います。
 人生全般の目標達成に役立つツールと言えると思います。

 

子どもの可能性を潰さないために

 『SMARTゴール』の第5章、第6章では、子供の夢、可能性をつぶす、親、他人について書かれます。
 お子さんに気の向かないことを押し付ける親がいる一方で、たしかに、お子さんを過小評価し可能性の芽を摘んでいる親も存在します。たとえば、塾長の生徒は、まったく成績が足りていない状況から、東大、京大、医学部に入った人も多いです。一方で、入塾面談で保護者の方が、そのあたりの大学には絶対入れないと思いこんでいて、もう少し入りやすい大学の志望を希望する、といったケースも有りました。
 また、家族以外にも友人、はたまた、学校の先生の進路指導などもネガティヴなことを言って可能性を摘んでしまうかもしれません。

 そのような場合に、どのように対処すればいいかの参考になるでしょう。親として、または成長する子供として、どういった態度や行動が自己の可能性を損なうかを認識し、避けるための手引きを提供していると思います。

 

『SMARTゴール』の目次

1.子供の成功は親のタイプで決まる
 民主型
 服従型
 寛容型
 無関心型

2.能力を最大限に引き出すツール SMARTゴール
 主体性と行動力と責任感が身につく
 Specific
 Measurable
 Actionable
 Realistic
 Time Limited

3.「SMARTノート」を使ってSMARTゴールを実践する
 SMARTゴールの細分化で、ゴールを毎日の行動にまで分解
 SMARTな夢を目指し毎日行動する自分をモニターする
 「何のために?」という目的が確実に達成に導く
 心の筋トレは続ければ必ず力になる

4.だれでも「民主型」の親になれるツールとの出会い
 私の人生を変えた1つ目の質問
 「I think I can!」と言って遊ぶ子供たちに衝撃
 「ベストな子育て」探しに私を駆り立てた2つ目の問いかけ
 起業系セミナーで出会った意外なツール、SMARTゴール
 SMARTゴールは親も子供も育てるツール

5.親の「心のブレーキ」は子供に感染する
 「成功=出る杭」という「心のブレーキ」を外す
 「失敗=やり直しがきかない」という「心のブレーキ」を外す
 まずは行動ありき。「考えるだけ」という「心のブレーキ」を外す
 「私には無理」という「心のブレーキ」を外す
 「どうせ無理」から「きっと大丈夫」に脳を訓練する
 「みんなと同じがいい」という「心のブレーキ」を外す
 「他人との比較」という「心のブレーキ」を外す
 「論理的思考」と「自分基準」で比較をやめる
 「苦手を克服する」ことをやめる
 強みにフォーカスする

6.元気泥棒に気をつけて
 必要なのは心のメンテナンス
 簡単にできる心のエネルギーの効率化

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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