【感想・書評】大学受験生の非認知能力を育むボーク重子さんの本

 

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【感想・書評】大学受験生の非認知能力を育むボーク重子さんの本

 

ボーク重子さんの実績と信頼性

 ボーク重子さんは、娘さんが「全米最優秀女子高生」に選ばれた、です。ボーク重子さんはメディアにも登場していますね。メディアでは「パッション、パッション」言っている、変なお姉さま、という印象ですが、実際に「パッション」は大切だと思います。
 プロフィールに「科学的データ」「大学での研究」などを「詳細にリサーチ」とあるように、著書の内容は、ボーク重子さんの独りよがりではなく、研究に基づく他の本と重なるものが多いです。したがって、内容の信頼性は、東大生、東大卒やその関係者が書いた独りよがりのものよりは、高めだと思います。

 

『世界最高の子育て』の感想、書評

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 IQや学力テストなどで計測される能力を「認知能力」と言います。私たちの成績や職業能力の指標としてしばしば取り上げられます。この数字は黒白明瞭で、私たちがどれだけそのテストの範囲内で知識や技能を持っているかを示します。
 それに対し、その背後に隠れているもう一つの能力、自信、協調性、自制心、責任感、共感力、コミュニケーション力といった、ペーパーテストで計測できない能力を「非認知能力」と言います。実際の人生の中でどれだけ重要であるかに驚かされることが多いです。私たちの日常生活や仕事、人間関係において非常に重要な要素が含まれている。

 ボーク重子さんが重視しているのも「非認知能力」です。

大学受験塾チーム番町による非認知能力の解説はこちら

 塾長の経験上、「非認知能力」が高い人のほうが、ペーパーテストの成績も伸びやすいです。まあ、自制心や責任感が高いのだから、ペーパーテストでも点数を取りやすいでしょう。
 しかし、逆のケースも存在します。塾長は、一部の進学校の下位層の生徒たちがペーパーテストでなかなか点数を取れない背景には、「非認知能力」が低いことが原因であることが多いと考えています。

 もちろん、学生時代だけでなく、むしろ、大学を卒業し一般企業で働く際にも、この「非認知能力」は非常に重要です。特に、リーダーシップを取る立場になると、この能力の有無が明確に現れるでしょう。『世界最高の子育て』では、効果的なコミュニケーションやプレゼンテーション、対話の技術、さらには逆境時の回復力やチームでの協働力、他者への共感、そしてリーダーシップなど、さまざまな非認知能力が詳細に解説されています。

 『世界最高の子育て』を通して、「非認知能力」の重要性と、それを育む方法についての深い洞察を得ることができるでしょう。

 

世界最高の思考力の教育法

 『世界最高の子育て』という題名の本を手に取った瞬間、多くの親や教育者の期待が高まることでしょう。第1章では、目を引くキャッチフレーズとして「世界水準の思考力を養う」と記載されています。この言葉を目にしたとき、私の胸も高鳴りました。思考力とは、単に知識を蓄えるだけでなく、それを活用し、新しい発想やアイデアを生み出す能力のこと。そういった能力があれば、日本の大学入試はもちろん、その後の人生においても大きな武器となるでしょう。本書においては、そんな思考力を培うための手法として、3つの具体的な思考法が紹介されています。

・自分で考える力
 子供たちが自らの意思で物事を考え、判断する能力は非常に価値があります。しかし、今の時代、保護者が過度に手を出してしまうことで、子供たちの自主性が失われることがあります。特に教育の場では、この問題が深刻です。大学受験塾チーム番町では、子供たちの自分で考える力を大切にし、保護者面談を行わないという大胆な取り組みをしています。
 本書では、イエス、ノーで答えられない質問を問いかけることをおすすめしています。大学受験塾チーム番町でも、世の中には論理的でない人が多いので、塾内でも「なぜ?」とくり返し問うことが多いですし(論理的でない人は、途中で論理的でない返答になる。)、ご家庭でもおすすめしています。

・実行機能
 ただ知識を持っているだけでは、社会で成功するのは難しい。それを実行に移すスキル、すなわち実行機能が必要です。自分で計画し、それを実行し、最後に結果を出す。この一連の流れができる子供は、大人になっても成功することが多いですよね。しかし、これも保護者や先生が過度に干渉してしまうと、子供の自主性が損なわれてしまいます。したがって、大学受験塾チーム番町では、「こうやれば東大や医学部に合格する」という大枠は示しますが、宿題などは出しません。
 本書では、子供が望むトピックに合わせて、まず大人が手本を示し、小さく分割させ(デカルトも「困難は分割せよ」と言っていますね)子供にやってもらうことをおすすめしています。

・クリティカルシンキング
 問題解決のために情報を集め、事実を確認し、分析し、推論を立て、反証し、自分の中にある偏見やバイアスに挑戦しながら、思い込みに惑わされることなく論理的に良い結論を導くことです。たとえば、なんとなく、そのあたりの予備校に通うのではなく、論理的に判断して、大学受験塾チーム番町に入ってくる、といったことですね(笑)。
 『世界最高の子育て』では、賛否両論の表を作ることで、物事の良い点と悪い点をしっかりと見極める方法が紹介されています。

 

世界最高のコミュニケーション力の教育法

 『世界最高の子育て』の第2章は、双方向の「コミュニケーション力」を養う、です。この章を読むことで、私たちの心に響くメッセージがたくさん詰まっているのが分かります。
 コミュニケーションという言葉を耳にすると、多くの人が思い浮かべるのは、お互いに話すこと、相手の気持ちを理解することでしょう。実際、この章でも「双方向のコミュニケーション力」に重きを置いています。しかし、このコミュニケーション力は単なる言葉のやりとりだけではないです。それは、人と人との繋がりを深め、社会においての自分の存在価値を高めるための非常に大切なスキルです。コミュニケーション力、社会性も非認知能力の1つです。
 これは、ペーパーテストの大学入試を考えると、受験生側にはあまり関係ないかもしれないですね。むしろ、保護者がお子さんとのコミュニケーション力を養うと、受験がうまくいくでしょう。ただ、日本でも、東大、医学部以外の入試では、AO型の入試が増えています。これは、単に学力だけでなく、人としての総合的な能力や個性を評価するためのものです。そのような入試を希望する人は、参考にするといいでしょう。
 さらに、コミュニケーション力が高い人は、受験の場面においても、他の人からのサポートを受ける機会が増えるため、有利になることが予想されます。この点においても、コミュニケーション力を磨くことの重要性が改めて認識されます。 

 このように、『世界最高の子育て』の第2章は、受験生や保護者、さらには教育者にとっても非常に参考になる内容となっており、私たちの日常生活においても、コミュニケーションの大切さを再認識させてくれる1章となっています。

 

世界最高のレジリエンスの教育法

 『世界最高の子育て』の第3章は、心が折れない「回復力」をつける、です。レジリエンスとも呼ばれますね。レジリエンスも非認知能力の1つです。もちろん、心が折れない人のほうが、大学入試に成功しやすいですよね。
 本書では、その日の終わりに、その日の良かったことを3つ書き出す、ことをおすすめしています。これは、荒れた公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された、原田隆史先生の日誌にも、この欄があります。また、家庭が安心できる場であること、親自身が幸せであること、をおすすめしています。これも、非認知能力についての書籍のはしりであろうポール・タフさんの著書にも、脳の映像など、科学的根拠とともに書かれています。

 

世界最高の長所の教育法

 『世界最高の子育て』の第4章は、その子だけの「長所」を徹底的にのばす、です。日本のペーパーテストの大学入試は、特に、東大、医学部受験は、各科目のバランスの良い得点が要求されがちなので、表題からは、大学入試には関係なさそうです。 
 一方、本章では、ボーク重子さんがメディアで連呼する「パッション」(情熱)の話が出てきます。「好奇心」と言い換えることもできるでしょう。そして、好奇心はアクションリストを実行することにより、高めることができることが、南メソジスト大学の実験により、わかっています。好奇心が高い人のほうが、色々なことを勉強しようと思い、勉強したことを忘れにくいでしょうから、東大、医学部受験に強いですよね。

 本書を参考に、日々の行動を変えれば、東大、医学部合格に近づくことは、間違いないでしょう。

 

『世界最高の子育て』の目次

第1章 世界水準の「思考力」を養う
1.レスポンシブ・クラスルームで考える力を育てる
2.実行機能 自分からやる子を育てる
3.クリティカルシンキング 高い問題解決能力を持つ子になる

第2章 双方向の「コミュニケーション力」を養う
1.プレゼン力を鍛える
2.対話力を鍛える
3.表現する「自信」を育む

第3章 心が折れない「回復力」をつける
1.心をポジティブに保つ
2.想像力で選択肢を広げる
3.良好な人間関係を築く

第4章 その子だけの「長所」を徹底的にのばす
1.「出る杭」の持つ人間的な魅力
2.「好き」を真剣にやらせる環境づくり 6つのコツ
3.「出る杭は打たれる」という恐怖を克服する

第5章 「協働する力」こそが未来を切り開く
1.コミュニティーの一員として協働力を鍛える
2.国際化、多様化の中の共感力を鍛える
3.21世紀のリーダーシップとは

 

SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法(祥伝社)の感想、書評

 

 この書籍は、親子関係や教育に対する新たな視点を提示しており、読者にはその科学的根拠と共に、具体的で実践的なツールを提供していると思います。『SMARTゴール』は、育児に関わるすべての人々にとって有益なガイドブックとなることでしょう。私自身もこの書籍から多くを学び、生徒指導に生かしていきたいと感じました。

 

理想的な親のタイプは?

 『SMARTゴール』の第1章「子供の成功は親のタイプで決まる」では、まず、「子供の成長を決めるのは遺伝が49%、育て方などの環境が51%」という研究が示されます。この数字は、慶應義塾双生児研究の安藤寿康教授の著書『なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える』(講談社現代新書)では、行動遺伝学の研究によると、テストの成績などは、遺伝50%、遺伝に還元されない家庭環境30%、教え方や本人の変化20%、とされます。

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 そうすると、遺伝に還元されない家庭環境、つまり、親のあり方がかなり大きな要素だ、ということになります。
 『SMARTゴール』では、「ベストな親のタイプ」は「民主型」。「子供主体のニーズを満たす親」、「コントロールと期待水準が高い+子供の気持ちとニーズを汲み取る暖かさが高い」としています。「コントロール」も押し付けではなく、あくまでもお子さんの主体性を尊重したものです。
 この件の根拠は、本書では「あらゆる調査」としています。たとえば、ペンシルベニア大学心理学部教授の著書で、研究などに基づいて書かれた『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社)では、「さらなる研究が必要だ」としつつも「賢明な子育て」の科学的結論が、ほぼ本書と同様に述べられます。
 たとえば、本書では「服従型」というタイプ分けがあります。まあ、読んで字のごとくです。例えば、医師の親が、子どもの意に反して、医学部受験を強要する、といったケースです。本書では、『タイガー・マザー』という服従型教育の著書が紹介されます。一定期間の賛否両論の後、著者は13歳の娘の反抗に遭い、スパルタ教育からの撤退を決意したそうです。

 第1章では、親と子の関係性に光を当て、科学的データや大学での研究に基づいた育児法を語っています。読者に新しい視点を提供すると共に、親が子供の成長に対してどのような影響を与えているかを考察する機会を提供していると思います。
 これらの結果は、子供の教育方法や親としてのあり方が、子供の未来に及ぼす影響の大きさを物語っていると思います。著者が推奨する「民主型」の親のスタイルは、読者に新鮮な洞察を与えていると思います。

 

「SMART」とは?

 『SMARTゴール』の第2章以降に登場する「SMART」という目標達成のツールも、ジョージ・T・ドラン氏が提唱して、ビジネスでは有名な手法であり、ボーク重子さんのオリジナルではありません。
Specific(具体的)
Measurable(計測可能)
Actionable(自力で達成可能)
Realistic(現実的)
Time limited(時間制限付き)
の頭文字です。
 たとえば、とりあえず、大学受験という目標は具体的ですね。大学卒業後にやりたいことが具体的なら、さらにいいと思います。そして、テストは点数が出るので、計測可能です。1日レベルまで細分化して「問題を○○問解けるようにする」でもいいでしょう。大学合格という目標は、自力で達成可能です。現実的とは、目標を下げる、ということではありません。自分らしいということです。そして、テストや入試までは時間制限があります。目標を1週間、1日レベルまで細分化して、時間制限をつけるのもいいと思います。
 人生全般の目標達成に役立つツールと言えると思います。

 

子どもの可能性を潰さないために

 『SMARTゴール』の第5章、第6章では、子供の夢、可能性をつぶす、親、他人について書かれます。
 お子さんに気の向かないことを押し付ける親がいる一方で、たしかに、お子さんを過小評価し可能性の芽を摘んでいる親も存在します。たとえば、塾長の生徒は、まったく成績が足りていない状況から、東大、京大、医学部に入った人も多いです。一方で、入塾面談で保護者の方が、そのあたりの大学には絶対入れないと思いこんでいて、もう少し入りやすい大学の志望を希望する、といったケースも有りました。
 また、家族以外にも友人、はたまた、学校の先生の進路指導などもネガティヴなことを言って可能性を摘んでしまうかもしれません。

 そのような場合に、どのように対処すればいいかの参考になるでしょう。親として、または成長する子供として、どういった態度や行動が自己の可能性を損なうかを認識し、避けるための手引きを提供していると思います。

 

『SMARTゴール』の目次

1.子供の成功は親のタイプで決まる
 民主型
 服従型
 寛容型
 無関心型

2.能力を最大限に引き出すツール SMARTゴール
 主体性と行動力と責任感が身につく
 Specific
 Measurable
 Actionable
 Realistic
 Time Limited

3.「SMARTノート」を使ってSMARTゴールを実践する
 SMARTゴールの細分化で、ゴールを毎日の行動にまで分解
 SMARTな夢を目指し毎日行動する自分をモニターする
 「何のために?」という目的が確実に達成に導く
 心の筋トレは続ければ必ず力になる

4.だれでも「民主型」の親になれるツールとの出会い
 私の人生を変えた1つ目の質問
 「I think I can!」と言って遊ぶ子供たちに衝撃
 「ベストな子育て」探しに私を駆り立てた2つ目の問いかけ
 起業系セミナーで出会った意外なツール、SMARTゴール
 SMARTゴールは親も子供も育てるツール

5.親の「心のブレーキ」は子供に感染する
 「成功=出る杭」という「心のブレーキ」を外す
 「失敗=やり直しがきかない」という「心のブレーキ」を外す
 まずは行動ありき。「考えるだけ」という「心のブレーキ」を外す
 「私には無理」という「心のブレーキ」を外す
 「どうせ無理」から「きっと大丈夫」に脳を訓練する
 「みんなと同じがいい」という「心のブレーキ」を外す
 「他人との比較」という「心のブレーキ」を外す
 「論理的思考」と「自分基準」で比較をやめる
 「苦手を克服する」ことをやめる
 強みにフォーカスする

6.元気泥棒に気をつけて
 必要なのは心のメンテナンス
 簡単にできる心のエネルギーの効率化

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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