【レビュー】運の方程式(アスコム):天才と凡人を分けるのは好奇心!?大学受験に活かす

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

 

【レビュー】運の方程式 チャンスを引き寄せ結果に結びつける科学的な方法(アスコム):天才と凡人を分けるのは好奇心!?大学受験に活かす

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『運の方程式』の著者

 鈴木祐さんという、論文マニアの方です。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業。出版社勤務を経て独立されたそうです。近年、大学などの研究論文、エビデンスに基づいた書籍を何冊も出しています。例えば

・ヤバい集中力(SBクリエイティブ)
 集中力があれば受験も有利になりますね。

・超ストレス解消法(鉄人社)
 受験にストレスはつきものですよね。

・最高の体調(インプレス)
 体調が良ければ受験も有利になりますね。

・無 最高の状態(インプレス)
 不安がなければ受験も有利になりますね。

といった、受験生にも役立つようなものも多いです。

 

『運の方程式』の内容、感想、書評

 2023年2月第1刷。
 本書は、大学などの研究に基づいて作った方程式により、運を高め、人生で成功しようという趣旨の本です。当塾は大学受験塾なので、とりあえず、大学受験で成功するという観点から、紹介します。

 

天才と凡人を分けるのは好奇心!?天才のほうが東大、医学部受験に有利ですよね

 本書には、2021年にウィスコンシン大学などで行われた、天才に特有のパーソナリティを調べる研究が載っています。この調査で、「天才」とは、数学や語学といった学問の成績に加え、斬新なアートを生む想像力、他者をまとめるリーダーシップ、哲学的な思考の深さなど、あらゆる知的ジャンルで突出した存在、と定義しています。もちろん、大学受験で突出する能力も含まれますね。
 結論は、「好奇心の有無」でした。
 本書では、世界的な物理学の教科書『ファインマン物理学』でも有名な、ノーベル物理学賞受賞者、ファインマン先生が、いかに好奇心あふれる人物だったかのエピソードが載っています。

 天才と凡人を分けるのが好奇心の有無、というのは、塾長は、よくわかる気がします。
 塾長は、自分を天才だとは思っていませんが、たとえば、当塾のパソコンは、塾長が秋葉原でパーツを買ってきて、組み立てたものです。ノートパソコンで何も困らないにも関わらず。なぜか、作ってみたかったのです。好奇心でしょうね。
 また、塾長は、夏休みや冬休みに、受験生と一緒に、長時間、塾にいなければならない時、SHARPのヘルシオホットクックを使って、自炊をしていました。普通の塾の先生なら、コンビニ弁当あたりで済ませるのではないでしょうか。この件については、まず、ヘルシオホットクックという、最新の調理器具を使ってみたかった、という好奇心が1つ。もう1つは、コンビニ弁当などに比べ、野菜をたくさん摂れるので、腸内細菌に好影響があるだろうという、最先端の科学的知見(これも好奇心で得た知識です)を活かそう、といったものです。

 他の先鋭的な指導者が、好奇心について、どのように考えているかを述べます。
 まず、学術的に、好奇心は、非認知能力(ペーパーテストで測定できる認知能力に対し、ペーパーテストでは測定できないが、ペーパーテストの成績や社会的成功に大きく影響するもの)の1つです。当然、大学受験にも大きく影響するでしょう。
 東大の脳科学の池谷裕二先生は、著書『受験脳の作り方』(新潮文庫)で「生きるのに不可欠な情報以外は忘れる」と述べています。好奇心旺盛な人は、いろんなことに「生きるのに不可欠」レベルに興味を持っているので、いろんなことが脳に残りやすく、大学受験の点数も高くなりやすいでしょう。

 元灘校の英語の先生で、英語教師集団チームキムタツを率いる木村達哉先生は、著書『東大に入る子が実践する勉強の真実』(KADOKAWA)で、「勉強体質」という言葉を使っています。「勉強体質」を、「自分で楽しいことや新しいことに出会うと、調べてみようかな、知っておこうかな、という気持ちになる体質。自分のレベルをあげようという体質。」と定義しています。つまり、好奇心に近いものでしょう。
 世界陸上400mハードルで銅メダルを2回獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2021年9月29日に「与えすぎて弱くなるってどういうことですか?」という動画をアップしています。

 為末さんは、この動画の中で、一番の才能は「こんなことをしてみようかなと思いつく」「何を見ても好奇心がワーッと湧いてくる感覚」といったもので、これらが後天的に最も与えにくい、と語っています。「好奇心」が一番の才能だと語っていますね。
 一方、「後天的に最も与えにくい」とも語っています。実際に、進学校の下位1~2割ほどは、勉強の技術的なもの以前に、受験勉強を通して、好奇心を失ってしまった、ような場合が多いように思います。

 

塾長の経験:好奇心を失うとこうなる

 こまめに確認テストをすることをウリにしている大学受験塾があります。しかし、上手く行っているのかなあ、という疑問があります。
 1つは技術的な問題です。好奇心が普通くらいの人でも、学習内容を忘れるのは普通なので、確認テストの日に正解できても、その1ヶ月後にも正解できるかはわかりません。大学受験勉強というものは、大学受験の日に正解できなければなりません。
 もう1つ。保護者の過保護、過干渉で、好奇心を失ったであろう人が、授業のたびに、ごくごく基本的なことで引っかかったので、毎回、授業の前に同じ内容の確認テストを行ったことがあります。まあ、そのうちできるようになったので、しばらく確認テストをやめてみました。しばらくして、久しぶりに同じ確認テストを行ったところ、すっかり忘れていました。
 まあ、大学受験の成績が上がらないメカニズムというものは、技術面の前に、このような面が前提にあることが多いような気がします。

 

好奇心の高め方

 ここで朗報です。
 本書には、南メソジスト大学の実験によると、アクションリストから選んだいくつかのミッションを実行することにより、4ヶ月ほどで好奇心が高まったことが書かれています。たとえば

・最新の科学的発見や技術に関するニュース番組を読む
・いままで見たことがない新しい映画を見る

といったものです。アクションリストは、おおむね、今まで自分がやったことがないことを、やってみよう、といった内容のものが多いです。実際に本書を買うのが一番いいと思いますが、日々、新しいことにチャレンジすることを心がける、といった感じでもいいかと思います。

 では、好奇心が高まるメカニズムは何か、ということです。これは、本書では語られず、塾長の私見ですが、『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)などで、脳の可塑性(変化できる)について語られます。好奇心が高まるのも、好奇心が高まりそうな行動を継続することにより、脳に好奇心が高まる何らかの神経回路が構築される、ということではないかと思います。

 

人間は無意識に新しいものを嫌う

 本書では、このことを「反新奇性バイアス」と呼んでいます。
 これは、教育、大学受験についても言えることです。進学校の下位層の保護者の方というのは、8割方、単に、ちゃんとした大学の研究者や現場の指導者が言っていることの逆のことをしているケースが多いです。この方々は、ほのめかしたくらいでは、行動を変えません。だからといって、伝わるように直接的に申し上げると、猛烈に怒り出したりします。まあ、要因は、たとえば、自尊心だったりもすると思いますが、「反新奇性バイアス」という面もあるのではないかと思います。
 本書では、好奇心を高めるためのアクションリストが挙げられていますが、そのような新しいことをするのが嫌いな人が、おそらく世の中には、ある割合で存在します。
 そのために、本書では、「反新奇バイアス」に陥らないための方法も紹介されています。

 

社会性を高める:大学受験の後に役立つ

 社会性を高めるアクションリストも載っていますが、大学受験とそれほど関係はなさそうなので、あまり述べません。ただ、社会性が高いほうが、大学受験に必要な情報が集まりやすい、周りから応援してもらえる、など、目には見えないが、意外に大きな影響があるのかもしれません。
 当然、社会に出てからは、運を高める方程式として、重要なスキルになります。

 

ネガティヴで大学受験を戦いにくい人へ

 ネガティヴなゆえに、大学受験を戦いにくい、という受験生も、ある割合でいるようです。また、保護者の方が、大学受験について過保護過干渉になり、親子関係が崩壊するのも、1つは、ネガティヴさ、心配性が原因でしょう。
 そのような「ネガティビティ効果」から逃れるための、「視野拡大アクションリスト」も載っています。

 

ビジネス、研究で成果を出す:大学受験の後に役立つ

 『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)という本があります。著者は、ペンシルベニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授です。『ORIGINALS』では、ノーベル賞受賞者とその他の科学者を比較した調査で、ノーベル賞を受賞するような創造性を発揮するには、その分野の深い経験がもちろん必要だが、加えて、幅広い経験が必要なのではないか、と考察しています。
 本書『運の方程式』でも、「天才は幅広い実験と一点集中を交互に繰り返す」としています。おおむね、似たような趣旨でしょう。
 まあ、あまり大学受験には役に立たないかもしれませんが、ビジネスの世界に進むにせよ、研究の世界に進むにせよ、将来は、大切な考え方になるのではないかと思います。もしかすると、自分にあう大学受験の勉強法を模索する時などには、役に立つかもしれません。

 

忍耐があったほうが大学受験に有利

 忍耐力があったほうが、大学受験に有利ですよね。社会に出てからも、忍耐が合ったほうが、運が巡ってくるでしょう。
 本書には、忍耐力を高めるためのアクションリストも載っています。

 

 本書のような最先端の科学的知見を実行し、少しでも運を高め、受験を有利にしようという姿勢を持ちたいものですね。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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