【感想・書評】大学受験生のレジリエンス、回復力(非認知能力の1つ)を育むオススメ本3選

 

非認知能力とは?

非認知能力についてのポール・タフ氏の本

非認知能力を育むボーク重子さんの本

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非認知能力をエビデンスで語る:「学力」の経済学

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【感想・書評】大学受験生のレジリエンス、回復力(非認知能力の1つ)を育む本3選

 

レジリエンスとは?

 レジリエンスとは,困難で脅威を与える状況にもかかわらず,うまく適応する過程や能力,および適応の結果のことで,精神的回復力とも訳される。従来,心理学においては,個人が困難な状況や脅威にさらされる状況を長い間経験することは,なんらかの問題を生じさせるものであるという考え方が通例であった。しかし,長期間にわたる大規模な追跡調査が行なわれるようになるにつれて,悲惨な出来事を経験しているからといって,必ずしもつねに不適応状態に陥るわけではないこと,そのような経験をしていたとしてもうまく適応する人びとが少なくない割合で存在していることが明らかにされた。(最新 心理学辞典より)

 

大学受験におけるレジリエンス(回復力)の重要性

 大学受験におけるレジリエンスとは、忍耐力、適応力、挫折から立ち直る力など、多面的な資質を指します。このような試験におけるレジリエンスの重要性は、さまざまな観点から理解することができます。

 

大学入試は難しい

 入試、特に名門校の入試は非常に難しいです。試験科目に関する知識だけでなく、時間管理、ストレス管理、プレッシャーの下で批判的に考える能力も試されることが多いです。レジリエンスは、受験生がこうした試練を乗り越えるのに役立ちます。

 

競争率が高い

 多くの大学入試では、限られた席数を何千人、何万人という受験生が争います。このような厳しい競争では、挫折や失望はほとんど避けられません。レジリエンスがあれば、受験生はやる気を失うことなく、こうした困難を乗り越えることができます。

 

失敗に対処する

 すべての生徒が初めての大学受験で成功するとは限りません。レジリエンスがあれば、生徒は失敗を乗り越えられない挫折としてではなく、学習経験としてとらえることができます。チャレンジは学び、成長する機会であるという成長思考を促します。

 

健康の維持

 受験勉強は精神的にも肉体的にも疲れるものです。レジリエンスは、ストレスに対処し、燃え尽き症候群を避け、必要なときにはサポートを求めることによって、受験生が幸福を維持できるようにする役割を果たします。

 

大学入試は長きにわたる勝負

 受験勉強は、最低でも数ヶ月、数年を費やす人もいます。この間、個人的な問題、学業上の苦闘、入試の傾向の変更など、複数の困難に直面することもあります。レジリエンスがあれば、このような困難にも負けず、目標に集中し続けることができる。

 

変化への対応

 大学入試の形式、出題傾向などが変わることがあります。レジリエンスのある学生は、このような変化に素早く適応し、それに応じて準備戦略を調整することができます。

 

大学受験以外のスキル

 大学受験準備中に培われるレジリエンスは、大学受験を乗り切るために役立つだけではありません。貴重なライフスキルも身につけることができます。大学やその先で、学生は困難に直面することになりますが、レジリエンスがあれば、それらをうまく切り抜けることができます。

 

粘り強さを促す

 レジリエンスのある人は、困難に直面してもあきらめません。この特性により、困難に直面しても全力を尽くすことができ、大学合格の可能性が高まります。

 

 要するに、大学受験で成功するためには、知性、受験勉強、資源がすべて不可欠ですが、レジリエンスは、特に逆境に直面したときに、これらの要素をまとめる基礎として機能します。レジリエンスは、受験生が受験勉強の過程における障害に対処し、挫折から立ち直ることを確実にするものであり、競争試験という文脈ではかけがえのない特性なのです。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(大和書房)

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の著者の実績と信頼性

 『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)がベストセラーになった、スタンフォード大学の心理学者、ケニー・マクゴニガルさんの著書です。実験や研究の裏づけがある、ちゃんとした本です。
 実績はあり、信頼性はエビデンスに基づくものです。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の書評、感想:ストレスはレジリエンスを高める

 題名や下記の目次のように、ストレスは力に変えることができる、役に立つ、という本です。多くの人は、ストレスというとネガティブなイメージを持つことが一般的ですが、この本はそういった一般的な見方を覆す内容となっています。私自身も、読んでいく中で、これまでのストレスに対する固定観念が揺らぎ始めました。
 そもそも、ストレスによる反応は、なにか人類の生存にプラスだったから、今生きている私達にも備わっているのでしょう。太古の昔、たとえば人類が猛獣に出会うなど身の危険を感じたとき、「心拍数が上がり、呼吸が速くなり、筋肉が緊張して、瞬時に活動を起こせるように」できる、などのメリットがあったのでしょう。この「闘争・逃走反応のおかげで命拾いをしてきた」そうです。

 一方、現代社会では、ストレスは悪であると語られ、多くの人々は、ストレスを避けるためにあらゆる手段を講じる傾向があります。たしかに、科学的には「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌され、慢性化すると免疫機能の低下、うつ病などの症状が表れる可能性があります。
 現代社会はストレスが慢性化しがちなのですね。大学受験生も、慢性的にストレスを感じていることでしょう。

 『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』によると、一時的なストレスについては私達の味方。「ストレスは良い効果がある」とマインドセット(心の持ちよう)を変えるだけで、コルチゾールの作用を抑制し、創傷の治癒を高め、免疫機能を高めるなどの働きがあるDHEAが多く分泌され、ストレスに強くなるそうです。つまり、回復力、レジリエンスを高めるということですね。
 一時的なプレッシャー、緊張、不安などには「ワクワクしてきた」などと考えるのがいいそうです。ぜひ、大学受験本番で緊張したときには、実践したいですね。

 さらに驚いたのは、ストレスの反応は「闘争・逃走反応」だけでなく、人との絆を強化する効果や、新たな学びや成長のキッカケを作る力も秘めていること。この一冊の本が、私たちの日常におけるストレスとの向き合い方を、よりポジティブに、そして健康的にするヒントを提供してくれたのです。

 この新しい視点は、ストレスとは一面的なものではなく、その多面性を理解することで、より良い日常を送るためのツールとして利用することができるのだと、深く感じました。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』まとめ

 『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』は私たちが普段感じるストレスという通常はネガティブな要素を、驚くべきことにポジティブなエネルギーへと逆転させる、つまり、レジリエンスを高める方法を明らかにしてくれる画期的な一冊です。この本は、ストレス反応の本質と、それを人間の利益に役立てる方法を紐解くことで、人生をより豊かで健康的なものにするための新しい道を示してくれます。もちろん、大学受験も有利になるでしょう。この本のページをめくるたび、ストレスの科学的な背景や、その真実の深淵を知ることができ、私たちの生活の中でのストレスの位置づけを再考させられます。

 本書を読むことで、ストレスは敵ではなく、時には私たちの最良の味方として機能することを学びます。この新しい視点は、日常生活におけるさまざまなストレスの状況をどのように受け止め、またどのように向き合っていくべきかのヒントを数多く提供してくれます。

 提案されているストレスに対する新しいアプローチを理解することは、ストレスに対処するための選択肢を増やすことができると思います。ストレスに対する受容的な態度を持ち、ストレスが人生においてポジティブな役割を果たすことができるという考え方により、ストレスを受けたときにパニックに陥ることなく、冷静に対処することができるようになると思います。

 特に印象的だったのは、ストレスの反応やそれをうまく利用する方法に関する具体的なケーススタディや研究結果の数々です。それらを通じて、私たちがストレスというものをどのように感じ取り、それにどう反応するかの心理的なメカニズムについて深く理解することができます。これにより、ストレスがもたらす肉体的・精神的な影響をよりよく知り、自らの生活に適切に取り入れることができると確信しています。

 また、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』では、ストレスに対するポジティブなアプローチが、学校や職場などの集団にも適用されることを強調しています。たとえば、学校や職場でのストレスに対処するためには、ストレスが学習や仕事の成果に寄与することを示すことが重要であり、さらには、ストレスを減らすための支援やリソースを提供することも必要だと思います。

 全体的に、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』は、ストレスについての一般的な見方を変え、より前向きなアプローチを与えてくれると思います。この本を読んで「ストレス」に対する認識が大きく変わりました。もはやストレスは避けて通れない敵ではなく、正しく理解し、適切に対処することで力に変えることが可能な存在と捉えることができると思います。ストレスを認識し、扱い、活用するためのツールを提供することにより、私たちはより健康的で幸福な人生を送ることができると感じました。ストレスを経験している人々、またはストレスに対して興味がある人々にとって、この本は非常に役立つと思います。

 これからのストレスフルな状況に対する新たな視点を得るために、ぜひこの本を手に取ってみてください。

 以下は、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』には書いていない話です。
 とはいっても、現代社会はストレスが慢性化しがちです。そんなときは、一番手軽なのは、自然に触れ合うと、副交感神経が優位になり、唾液中のコルチゾール濃度も下がるという大学の研究があります。[1]
 本物の自然ではなく、自然の映像、音だけでも、かなりの効果があるという研究があります。

 

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の目次

Introduction-考え方を変えれば、人生が変わる
part1 ストレスを見直す
 1.全ては思い込み
 -「ストレスは役に立つ」と思うと現実もそうなる
 2.ストレス反応を最大の味方にする
 -レジリエンスを強化する
 3.ストレスの欠如は人を不幸にする
 -忙しい人ほど満足度が高い
part2 ストレスを力に変える
 4.向き合う
 -不安は困難に対処するのに役立つ
 5.つながる
 -いたわりがレジリエンスを生む
 6.成長する
 -逆境があなたを強くする
 7.おわりに
 -新しい考え方は、ひっそりと根を下ろす

 

脳を鍛えるには運動しかない!(NHK出版)

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2009年第1刷。

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者の実績と信頼性

 ハーバード大学医学部准教授(現在は教授らしい)のJohn J. Ratey先生です。他にも『GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス』といった著書があります。
 医学部の先生がおかしなことを言ったら、研究生命が絶たれますから、著者の実績と信頼性は絶大と言えます。

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の目次

1.革命へようこそ-運動と脳に関するケーススタディ
2.学習-脳細胞を育てよう
3.ストレス-最大の障害
4.不安-パニックを避ける
5.うつ-気分をよくする
6.注意欠陥障害-注意散漫から抜け出す
7.依存症-セルフコントロールのしくみを再生する
8.ホルモンの変化-女性の脳に及ぼす影響
9.加齢-賢く老いる
10.鍛錬-脳を作る

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の感想、書評:有酸素運動はレジリエンスを高める


 
この度、私が手に取った『脳を鍛えるには運動しかない!』は、単なる運動論の本ではなく、その根拠となる科学的なエビデンスが豊富に織り込まれています。著者は、行われたさまざまな実験や研究の結果をもとに、運動と脳の関係性を語っており、その中でも特に有酸素運動が脳に及ぼすポジティブな影響について詳しく解説しています。

 読み進める中で、私は運動時に身体で生成されるさまざまな化学物質の名称やその働き、そしてそれらが脳や心の健康にどのように影響するのかを学ぶことができました。これまで私たちが「運動は健康に良い」と感じていた理由が、これらの化学物質の働きによるものであることを知ると、ますます運動の大切さを実感することができました。

 本書の中で特に心に残ったのは、有酸素運動を行うことで学習能力が向上するという点です。大学受験も有利になるということですね。これは、運動をすることで脳の働きが活性化され、新しい情報を効率よく取り込むことができるようになるからです。また、ストレスや不安といったネガティブな感情に対しても、運動の力で克服することができるという内容も非常に興味深いものでした。

 そして、最も印象的だったのは、「レジリエンス」についての言及です。レジリエンスとは、困難な状況に直面しても、その状況を乗り越えるための心の強さや適応力を指す言葉です。運動をすることで、このレジリエンスが高まり、日常生活の中でのストレスや不安に立ち向かう力が増すというのは、非常に魅力的なポイントだと感じました。

 

走ることは苦しくないし、早足でもいい!

 学校時代の思い出をたどると、体育の授業は決して欠かせない時間でした。青い空の下、緑の校庭での球技や各種のアクティビティー。しかし、そんな楽しいと感じる時間でも、真剣に取り組む球技の合間の休憩や、指示を待つ時間など、実際に動いていない時間も少なくありませんでした。私たちが考える「体育の時間=運動の時間」というイメージに疑問を持つことは、あまりなかったのではないでしょうか。

 特に冬の季節、多くの学校で行われる「持久走」。冷たい空気を切り裂くように走る感覚は、一見健康的に感じられるものですが、全力で駆け抜けるその経験は、多くの生徒にとって苦しいものでした。その結果、走ること自体に対してネガティヴな感情を持つ人が増えてしまっているという現状に、私は少し心を痛めました。

 しかし、心地よい運動には、過度な負荷は必要ではありません。実際、早足のウォーキングだけでも、私たちの体には十分な効果があるのです。そして、その効果は単なる身体の健康だけに留まらず、セロトニンやBDNFといった、精神の安定や脳細胞の新生を助ける物質の生成にも繋がるのです。
 このセロトニンが生成されることで、私たちの心は安定します。ということは、困難な状況にも柔軟に対応する「レジリエンス」が高まるということです。
 また、BDNFにより脳細胞の新生が促進すれば、大学受験にも有利ですよね。

 さらに、日常の中で早足のウォーキングを習慣化してから、少しペースを上げてジョギングを取り入れる、または短時間の激しい運動をすることで、BDNFの生成が促進されるというのは驚きの事実です。 

 この、適度な運動が生み出す精神的安定や脳細胞の新生を促す力などは、驚くべき効果だと思いました。このことは、日々の生活の中で運動を取り入れるという行為が、ただの健康維持だけでなく、私たちの精神的な安定や脳の健康にまで大きな影響を与えることを示していると思いました。

 『脳を鍛えるには運動しかない!』は、読者にとって、自身の身体と脳の健康を最大限に引き出し、レジリエンスを高める一冊だと思います。多くの科学的知見に基づいて書かれているこの本は、運動が身体だけでなく、脳に対してもどのような効果をもたらすのかを深く理解するための鍵となると思います。

 総じて、運動は、健康的な脳と身体のために必要不可欠なものであることがわかりました。また、私たちは運動に取り組むことで、健康上の利益だけでなく、精神的な健康にも多くの利益をもたらすことができることを学びました。私たちが運動を取り入れるモチベーションを高め、生活に変化を加える助けにもなると思いました。

 

『脳を鍛えるには運動しかない!』の出版社の実績と信頼性

 『脳を鍛えるには運動しかない!』の出版社は、NHK出版です。日本放送協会(NHK)の関連会社です。NHKEテレの番組用のテキストなどが有名です。本書のような、一般書も出しています。
 NHK出版の実績と信頼性は絶大と言えます。

 

世界のエリートがやっている最高の休息法(ダイヤモンド社)

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『世界のエリートがやっている最高の休息法』の著者の実績と信頼性

 イェール大学医学部精神神経科卒業の医師の久賀谷亮先生です。日本、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、論文も多数、執筆されているのに加え、臨床医としての経験も豊富のようです。趣味はトライアスロンだそうです。
 著者の実績と信頼性は高いと思われます。

 

『世界のエリートがやっている最高の休息法』の書評、感想:マインドフルネス瞑想はレジリエンスを高める

 2016年7月発売。
 著者の久賀谷亮先生は、大学の役職は無いようですが、論文を多数執筆され、また、本書も巻末に引用した論文などがたくさん載っており、ありがちなトンデモ本ではなく、ちゃんとした本だと思います。
 そして、『世界のエリートがやっている最高の休息法』は、上記のように、科学的根拠に基づいた、難しい話になりがちです。それを、イェール大学の女性研究員とその伯父の経営するベーグル店をめぐるストーリー仕立てにして、わかりやすくしているのだと思います。(ゴーストライターは存在するかもしれないですね(笑)。) 

 日常の喧騒から時折距離を置き、自分をリセットすることの大切さを感じたことはありませんか?私たちが忙しい日常を送りつつも、心の安らぎを求めるとき、どのように自分を労って休むかは、非常に大切な課題です。そんな我々の心のオアシスとなるような指南書が、『世界のエリートがやっている最高の休息法』であります。この本は、現代の疲れた脳を労る、つまり、レジリエンスを高めるためのアドバイスが満載で、確かな科学的研究を元に、心地よい休息の方法を深掘りしています。

 初めてこの本のタイトルを目にしたとき、興味をひかれたのは私だけではないでしょう。『世界のエリートがやっている最高の休息法』というタイトルからは、トップランナーたちがどのようにして自分をリフレッシュしているのか、その秘密に迫ることができるのではないかと期待が膨らみます。そして、その期待を裏切ることなく、実際、グーグル、フェイスブック(現メタ)、といった、世界の超有名企業や、個人のエグゼクティブ、起業家が取り入れている様々な休息法が具体的に、そして分かりやすく紹介されています。

 驚かされるのは、我々が普段「休む」と感じている時間でも、脳は意外と働いているという事実。静かに部屋でぼんやりしている時間や、何も考えずに空を眺めている時間、その時の脳は実は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という機構が動いていると指摘されています。これは、休んでいるつもりでも、実際には脳が休まっていないという意味で、その発見には驚きを隠せませんでした。

 さて、真の休息を得るための手法として、この本が提唱するのが「マインドフルネス」という瞑想法。多くのトップ企業や成功者たちが実践しているその方法は、宗教的な要素を取り除いた純粋な瞑想法で、ここという瞬間、今という時間に意識を集中させることで、真の休息を追求するものです。心の中に湧き上がるさまざまな感情や考えを静かに観察し、そのままに受け入れる。このシンプルな行為が、驚くほどのリフレッシュ感をもたらしてくれるのです。

 「マインドフルネス」は、『世界のエリートがやっている最高の休息法』では「評価や判断を加えずに、いまここの経験に対して能動的に注意を向けること」としています。いわゆる一般的な瞑想のイメージは、座禅を組んで、呼吸という「いまここの経験」に「注意を向ける」ものでしょう。

 

食事瞑想、歩行瞑想で脳を休める

 『世界のエリートがやっている最高の休息法』では「食事瞑想」という新しい形の瞑想方法を提唱しています。
 上記のように座禅を組んで、呼吸という「いまここの経験」に「注意を向ける」のではなく、「食べている感覚に注意を向ける」。食事しながらできますから、ハードルが低いですよね。ベーグルを食べるときには

薄茶色でつるっとした表面。ところどころに凹凸がある。手にとって匂いを嗅ぐ。渇いていた口の中に、少し唾液が出たことに気づいた。ベーグルを口へ運ぶ。その時の筋肉の動きは?ベーグルを噛みちぎる。噛み切られたその欠片は、どんなふうに口の中を動いているだろうか?ベーグルが構内の粘膜に触れる感覚。唾液がさらに増える感じ。当然、味も感じられる。小麦、チーズ、玉ねぎ、いつもよりそれらの味わいに注意を向けた。最後にベーグルを飲み込む。喉を通るときの感覚、胃の中に落ちていく感じ。

といったように、「食べている感覚に注意を向ける」。
 この、食べるときの感覚を詳細に感じ取り、食べていることに集中するというこの手法は、我々が日常的に行う行為に新たな意味を付与してくれると思いました

 また、『世界のエリートがやっている最高の休息法』ではハードルが高いとされていますが、「歩行瞑想」が挙げられています。マインドフルネスを歩行中に行おうというものです。歩くと言っても、そのメカニズムはとても複雑です。だから、本書では「ハードルが高い」としているのでしょう。とりあえず、「足の裏が地面に着いた、離れた」だけにひたすら集中すればいいのではないでしょうか。私達は、一日のあらゆる場面で歩きますから、歩行のメカニズムは複雑とはいえ、お気軽にできると思います。

 これらを実践することにより、レジリエンスが高まるのだと思います。

 また、近年は、以前考えられていたよりも、脳は可塑性(変化できる)を持つとされています。『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)にも、脳の可塑性について書かれていて、現在の自分より、ほんの少し上のトレーニングを続けることにより、脳の神経回路を構築すれば、物事は効果的に上達する、といったことが書かれています。これは、大学受験生をおおいに勇気づけると思います。

 

マインドフルネス瞑想はメタ認知、自制心も高める

 『世界のエリートがやっている最高の休息法』に載っている、研究に基づいたマインドフルネスによる脳の変化を挙げます。
・尾状核(不要な情報を除いて注意を向けることに関与)
・嗅内野(心がさまようのをとめることに関与)
・内側前頭前皮質(自己認識や統制に関与)
・大脳皮質(脳の表層の最も進化した部分)
・老化による脳の萎縮に対する効果
・左海馬、後帯状皮質、小脳で灰白質の密度増加(記憶に関連)
・前頭極(メタ意識)
・感覚野と島(身体感覚への気づき)
・前帯状皮質、眼窩前頭皮質(自己や感情の調整)
・上縦束と脳梁(左右の大脳半球の交通)
 これらは、脳という驚異的な器官の可能性を証明していると思いました。

 上記のうち、「自己認識」「メタ意識」は、自分の状況を把握する、自分の理解度を把握する「メタ認知」という非認知能力の1つと言えるでしょう。また、「自己統制」は「自制心」「忍耐」といった、非認知能力でしょう。マインドフルネス瞑想により、これらの非認知能力も高まりそうだ、ということです。

 本書に書いてあることを実行することにより、本書のテーマ通り、勉強しても疲れにくい脳を構築する、つまり、レジリエンスを高めることがことができるでしょう。また、上記のように、「注意を向ける」「記憶に関連」といった能力が高まれば、当然、大学受験にもプラスに働くと思います。   
 受験生は、本書のような、最先端の科学的知見を取り入れ、受験を少しでも有利に戦うことを心がけることが大切だと思います。

 『世界のエリートがやっている最高の休息法』は、深い洞察と具体的な実践方法を兼ね備えた一冊で、読んだ全ての人々が自分自身の休息法を見直すきっかけとなるでしょう。私自身、この本を読んで得た知識を活用し、より質の高い休息を得る、レジリエンスを高めるために努力を続けるつもりです。

 

『世界のエリートがやっている最高の休息法』の目次

0.先端脳科学が注目する「脳の休め方」
1.「疲れない心」を科学的につくるには?
 ー脳科学と瞑想のあいだ
2.「疲れやすい人」の脳の習慣
 ー「いま」から目をそらさない
3.「自動操縦」が脳を疲弊させる
 ー集中力を高める方法
4.脳を洗浄する「睡眠」×「瞑想」
 ーやさしさのメッタ
5.扁桃体は抑えつけるな
 ー疲れを溜め込まない「不安解消法」
6.さよなら、モンキーマインド
 ーこうして雑念は消える
7.「怒りと疲れ」の意外な関係性」
 ー「緊急モード」の脳科学
8.レジリエンスの脳科学
 ー瞑想が「折れない心」をつくる
9.脳から身体を治す
 ー副交感神経トレーニング
10.脳には脳の休め方がある
 ー人と組織に必要な「やさしさ」

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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