【書評・感想】キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)

 

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【書評】灘校と西大和学園で教え子500人以上を東大合格させたキムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)【感想】

 

キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の書評、感想

2021年4月発売。

キムタツ先生は本名は木村達哉先生です。
生徒の大半が東大、京大、国立医学部に進学する灘中高で教鞭をとられ、2021年3月に退職されました。英語教師集団「チームキムタツ」を率いられています。

 

『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の裏テーマは東大理Ⅲ佐藤ママ?

 あくまで塾長の推測ですが、お子さん4人が全員東大理Ⅲに進学した、佐藤ママさんへ反論書なのではないかと思います。
 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の中でも「特殊な成功例を、さも誰にでもあてはまるように話し、それを信じてしまう人が後を絶ちません。」「(稀に親の言うことを素直に聞く子供がいて)そういう親が書いた本もあります。親はこういう指示をすべきというような本が。」「『子供をこうやって東大に入れた』というような本」といったような表現が散見されます。
 塾長も、佐藤ママさんの家庭は特殊で、『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』に出てくるような家庭のほうが大多数派で、キムタツ先生の主張のほうが、一般性、汎用性が高いと思います。

 

東大に入る子は本当に本書のようなのか?

 塾長の経験上、ご家庭が『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』のようであれば、おおむね、受験は大成功します。
 逆に、『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の逆を行っているようなご家庭は、受験の技術うんぬん以前に、親子の精神的な幼さが原因で受験がうまく行かないように思います。

 

勉強し続ける子の親とは?

 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、「勉強しなさい」という言葉には、全く効果がなく、むしろ、逆効果だとしています。これは現在、まともな指導者の中では、通説と言っていいと思います。キムタツ先生以外にも、多くの指導者がこのようにおっしゃいます。

 キムタツ先生は、3つの提案をされます。以下のような環境は、良くないとしています。

1.幼いうちにスマホやゲーム機を与えられている環境
2.自宅にあまり本がないような環境
3.リラックスして生活できないような環境

 キムタツ先生は、ゲームに対し、かなり否定的のようです。子供が任天堂との勝負、ゲーム制作者がプレイヤーを熱中させようと、様々なテクニックを用いて中毒性を持たせるのに、勝てるわけがない、と。キムタツ先生は、自分のお子さんには、ご家庭ではゲームをさせなかったそうです。
 たしかに、ケームを一切しないのに越したことはないかもしれません。
 しかし、ゲームをやりたい、やりたい、やりたいと思っている子供に、一切ゲームを許可しない、というのは、バランスを欠く意見かと思います。子供の頃の我慢が、大人になってから、歪んだ人格として現れるということはあると思います。これは、「勉強しなさい」と言ってしまうような大人の、裏返しの姿ということもできると思います。また、実際に、適度にゲームをしつつ、受験にも成功している人は、かなり多くの割合を占めるはずです。さらに、『ドラゴンクエスト』などのゲームを通して、「受験も同じようにやればいいんだな」という、シミュレーションをすることもできると思います。
 このゲームに関する記述については、ちょっと偏った意見で、お子さんの教育上も危険をはらんでいるかな、と思います。

 自宅に本がたくさんあるような環境のほうがいいのは、当たり前ですね。しかし、大人がただ「本を読め」と言っても子供は本を読まないので、キムタツ先生はある取り組みをしており、それが本書に書かれています。

 リラックスできる家庭とは、どのような家庭でしょうか?キムタツ先生は、本書の冒頭から「勉強しなさい」と言わない、ということを書かれています。「~しなさい」と言わない。キムタツ先生によると、灘の生徒に聞くと両親が「放っておいてくれるのでありがたい」ということが多いそうです。塾長の経験からも、親が口うるさい場合、たいてい、ダメですね。当塾は、そもそも、保護者面談を行いませんし、保護者の方からのクレームも受けつけません。不都合があれば、生徒自身が言えばいいことで、保護者があれこれ言っているようではダメなのです。
 『私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む』(英知出版、著者はジャーナリストだが、巻末に引用論文などがたくさん載っている、かなりまともな本)の第4章「ストレス」には、「研究者らの結論によれば、環境による影響のなかで子供の発達を最も左右するのはストレスなのだ。」という記述があります。ストレスが子供の心と体の健全な発達を阻害する度合いは、従来の一般的な認識よりもはるかに大きい、と。そして、子供にとって、最も大きい環境は、家庭です。

 

英検の先取りは意味がない?

 キムタツ先生は英語の先生です。『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、英検の先取りは意味がない旨を書いています。大人になれば普通のレベルのことを、幼いときに達成しても、大して意味はない、というのは塾長もキムタツ先生と同意見です。また、キムタツ先生によると、小学生で英検2級を取ったが、高校になったら勉強がつまらなくなって辞めてしまい、どこの大学にも入れなかった、という話は、受験業界には多いそうです。塾長の経験では、年少にして英検1級を取ったことを、保護者がFaceBookでさり気なく自慢していていて、まあまあの進学校に合格したものの、その他、数学、国語の成績が壊滅的な人がいました。また、かなり面倒見が良い高校に通い、学校の授業の内容が非常に豊富なのに、英検のための塾に通った結果(英検くらい、自分で勉強して合格しろよと思いますが)、戦力の分散という戦略のタブーの基本を犯し、英語も含め、全体的に成績が悪い人もいました。

 

東大に合格する勉強体質とは?

 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、勉強体質とは、「自分で楽しいことや新しいことに出会うと、調べてみようかな、知っておこうかな、という気持ちになる体質。自分のレベルをあげようという体質。」のことだそうです。これについては、東大生は、机に向かっている時間だけでなく、日常自体が勉強だとか、世の中をみる解像度が違う、とか言われますね。
 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2021年9月29日に「与えすぎて弱くなるってどういうことですか?」という動画をアップしています。

 為末さんは、一番の才能は「こんなことをしてみようかなと思いつく」「何を見ても好奇心がワーッと湧いてくる感覚」といったもので、これらが後天的に最も与えにくい、と語っています。キムタツ先生の「勉強体質」と通ずる物があると思います。

 

中高一貫校のデメリットは?

 中学受験の塾がメディアのスポンサーになっているからなのかはわかりませんが、中学受験、中高一貫校のデメリットが語られることは少ないように思います。
 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では
・入った段階ですでに疲弊しまくっている生徒が多い
・ゆっくりやるのが合っている子が、中高一貫校の速いスピードについていけない
・公立に転校する子もいる
といったことを挙げられています。
 塾長は、高校入試を経ないがために、中高一貫校の下位層は、普通の公立中学レベルの内容もマスターできていない人だ、ということを挙げておきたいと思います。公立中学レベルのことをマスターできていないのだから、当然、大学受験には大きなハンディです。なんのために中学受験をしたのでしょうね。

 

東大に入る子の特徴

 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、以下を挙げています
1.読書ができる子
2.勉強体質が身についている子
3.中学時代の内容が頭に入っている子
4.精神的に安定している子
5.がり勉でない子

 1,2,3,4に関しては、上記で論じました。精神的に安定ということは、家庭でリラックスできるということですね。
 5.については、キムタツ先生は、机に向かうだけでなく、「自分が人生でやりたいことを見つけるために、経験値を上げる」「学校と自宅の往復しかしていないような子では、自分のやりたいことが見えてきません」「時間を見つけて本を呼んだり映画を見たり、どこかにでかけたりする子ほど成績がいい」とおっしゃっています。
 普通の感覚では、机にしがみつくことができれば、まあ、たいしてものですよね。ただ、キムタツ先生は、多くの場合、「机にしがみつかされている」と指摘しています。また、ペンシルベニア大学心理学部のアンジェラ・ダックワーズ教授の著書『GRIT やり抜く力』でも、将来、やりたいことを見つけるために、なるべく多くの経験をすることが大切、といったことが書かれています。オリンピックの金メダリストなども、意外にも、最初から専門種目を選んでいたわけではなく、色々なことをやってみた後に専門種目にたどり着いたケースも多いようです。将来やりたいことがあれば、当然、勉強をやり抜く力が高まりますよね。

 

東大に合格するには考える力を身につける

 キムタツ先生が『ドラゴン桜』関係で、有名な編集者、佐渡島庸平さん(灘→東大)と話していた時、佐度島さんが常に「なぜですか?」と尋ねてくることに気づいたそうです。そして、それは、灘のよくできる生徒と話しているときも全く同じことが言えるそうです。
 逆に、進学校の下位層には、数学や理科の授業で支離滅裂な答案を書き、「なぜそうなると思った?」と尋ねても、答えられない人が多いです。数学や理科を、理解せずに、解き方を丸覚えする、数値を当てはめる科目だと履き違えてしまっている。おそらく、中学受験、高校受験を通して身についてしまった悪習慣なのでしょう。当塾でも、ご家庭で常に「なぜ?」「それってそもそも何?」と問いかけるよう、おすすめしています。

 

東大脳の作り方(平凡社新書)

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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