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【使い方】共通テストへの道(山川出版社):日本史、世界史、地理、倫理、政治経済、過去問が合格の鍵

 

大学入試共通テストの勉強法

 

【使い方】共通テストへの道(山川出版社):日本史、世界史、地理、倫理、政治経済、過去問が合格の鍵

 

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『共通テストへの道』はどんな人におすすめ?

・医学部志望者など、大学入試共通テスト社会で高得点が必要で、学校の授業と並行して大学入試共通テストを仕上げたい人
・学習マンガなどを読んだ後に、旧センターの過去問を使って内容を定着させるという、一石二鳥を狙う人
・自分が勉強した分野が大学入試共通テストでどのように出題されるのか知りたい人

 

『共通テストへの道』の使い方

 旧センター試験、共通テストの過去問が分野別に再編成されています。学校や解説書で学習を終えた分野から過去問を解くことができますし、実際にどんなことが問われているのかを知ることができます。

 旧センター試験、共通テスト似たような出題がくり返されるので、過去問を分野別に再編集した問題集を使った勉強が効果的に点数を上げることができます。
 また、共通テストの正誤問題は、選択肢の一部を改変して間違いの選択肢にしているようなものも多いです。実際に、過去問に多く取り組み、そのような問題に慣れることによって、共通テストで点を取りやすい知識の、正誤問題のカンを身につけることができます。
 まずまず点数が取れるなら、いきなりこれらの問題演習から始め、わからないことがあったら、教科書やわかりやすい参考書で調べる、という流れがいいでしょう。
 ただし、後述のように、解説はかなり簡素であるというデメリットがあります。

 医学部などで、共通テストの高得点が必要な場合、学校の授業と並行して、これらの問題を解けるようにするといいでしょう。
 今はまだ共通テスト型模試であまり点が取れない、という人は、学習マンガなどを読んだ分野から、『共通テストへの道』をできなかった問題に✓マークをつけつつ全問解けるようにすると、効果的に点数が上がるでしょう。
 共通テスト型模試でかなり仕上がっているという人は、『共通テストへの道』をできなかった問題に✓マークをつけつつ全問解けるようにすると、かなり効果的に85点あたりを狙えると思います。

 90点以上を狙う場合は、さすがに、他にも問題集を補強する、教科書や共通テスト用参考書の参考書を通読に近い読み方をする、といった取り組みが必要です。

 

『共通テストへの道』のダメなところ

 とにかく、解説が簡素なので、共通テスト型模試で、まずまずの点数がないと、かなり使いづらいと思います。
 見た目もあまり良くなく、勉強しようという気が、あまり湧いてこないかもしれません。
 また、後発で、他の出版社から、同様に、旧センター試験、共通テストの過去問を分野別に再編集したような問題集で、『共通テストへの道』よりも、初心者向け、解説がいい、見た目もいいものが、かなり出ています。これら後発のものは、共通テストの地歴の点数が、かなり低いうちからも、『共通テストへの道』と異なり、まずまず使うことができます。

 

『共通テストへの道』のレイアウト

 1ページの中に、旧センター試験、共通テストの過去問が何題か載っていて、そのすぐ横に、簡素な解説がある、というページ構成が続きます。この、問題のすぐ横に解説があるレイアウトを、「解説が近くにあって便利」と捉えるか、「隠すのが面倒くさい」と捉えるかは、人によって違うかと思います。
 一応、解説は2色刷りなのですが、あまり見た目が良い、おしゃれとは言い難く、かわいいものが好きな女子などは、テンションが上がらない可能性もあります。

 巻末には、切り離し可能な、別冊解答冊子があります。本当に答の番号だけ載っています。この冊子には解説は一切載っていません。

 

『共通テストへの道』の最新版と旧版の違い

 共通テストが2021年に始まったばかりで、旧センター試験とは傾向が異なる問題も出ていることもあり、近年、頻繁に改定し、共通テストの新傾向を盛り込んでいます。『共通テストへの道』を買うならば、必ず、最新版を買いましょう。

 

『共通テストへの道』の出版社の信頼性と実績

 『共通テストへの道』の出版社は、山川出版社です。検定教科書『詳説日本史』『詳説世界史』は、検定教科書でありながら、受験用の教科書としては定番中の定番。あまりにも需要が多いので、一般書店でも売っていることが多いです。また、日本史、世界史、地理、倫理、政治経済の各科目で出ている山川出版社の『用語集』も受験では定番中の定番です。地歴公民については、山川出版社の信頼性と実績は絶大、他の追随を許さない、と言えます。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

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【レベル】化学の新標準演習(三省堂) 難易度、使い方は? どんな人におすすめ?

 

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化学の新体系(啓林館)

 

【レベル】化学の新標準演習(三省堂)難易度、使い方は?どんな人におすすめ?

 

大学受験の化学で悩んでいる人へ

 世の中には、化学の問題集が多すぎて、どれを使えばいいか、悩んでいませんか?
 実は、化学の問題集は、易しいものから難しいものまで、難易度に、かなり差があります。選ぶ教材を間違えると、効果的に成績を上げることができません。易しすぎるものを選んだ場合は、「易しすぎる」とわかるでしょう。一方、難しすぎるものを選んでしまった場合、必要以上に、化学という科目が難しい、と勘違いしてしまうでしょう。
 この記事では『化学の新標準演習』という問題集を紹介します。その名の通り「標準的な」問題集です。この解説を理解できない場合、教科書レベルの基本に抜けがあります。超上位大学以外は、ほぼ似たような問題が出ることが多いです。東大や京大は初見の問題が多く出ますが、詳しい誘導がついていて、結局やることは『新標準演習』レベルのことが多いです。この記事を読めば、新標準演習を使って、少なくとも東大合格レベルの少し手前くらいまで行けることがわかります。

 

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『化学の新標準演習』旧版と新版の違い

 オレンジ色の方は、旧課程用です。2023年4月現在、高校3年生以上の人が買ってください。
 青っぽい方は、新課程用です。2023年4月現在、高校2年生以下の人が買ってください。熱化学に「エンタルピー」という、今まで大学レベルだった概念が導入されるなどの変更があります。

 

『化学の新標準演習』はどんな人におすすめ?

 教科書をまずまず理解していて、教科書レベルの問題を解ける人。(『宇宙一わかりやすい高校化学』(学研)を理解して、別冊問題集を解ける人。)教科書レベルの基本のチェックから、共通テスト対策から、難関大学の化学で合否を分けている問題で使う技法の網羅まで、1冊で済ませたい人。

 

『化学の新標準演習』の到達レベル、難易度、使い方

 大学受験化学に必要な基本ツールを効率的にほぼ網羅できる問題集です。大学受験塾チーム番町では、教科書~受験標準レベルの難易度の問題集として使います。著者は卜部吉庸先生です。

 他のレビューでは、到達レベルを低く見積もっているものが多いですが、『新標準演習』が完璧なら、進研模試、河合全統記述模試など、標準レベルの記述模試では、東大レベルに達します。
 実際の東大、京大、国立医あたりの入試については、下で述べています。決して、『新標準演習』以上の知識が求められているわけではなく、初めて見るような問題でも、誘導を丁寧がついていて、結局は『新標準演習』レベルのことをやっていることがほとんどです。

 教科書レベルの基本のチェックのページも充実しています。教科書をただ読むより、問題型式のほうが「出力」をしているので、覚えやすいと思います。穴埋め問題は、0.28mmのオレンジボールペンで書き込み、赤下敷きで隠し、できない問題に✓をつけ、正解できるまでくり返す、という使い方がいいでしょう。

 収録問題のレベルは安定していますが、問題数が多すぎるので、できない問題だけチェックをつけてくり返す使い方が大切でしょう。

 

『化学の新標準演習』のレイアウト

 各章のはじめには、その章で扱う内容の要点がまとまっています。教科書などでしっかり理解することが望ましいですが、ちょっと忘れたことがあって、このページで済む場合などは、活用するといいでしょう。

 次に「確認&チェック」というコーナーがあります。教科書レベルの基本知識を問題の形で確認することができます。また、無機、有機の「確認&チェック」は、たとえば「一酸化窒素に該当するものはA、二酸化窒素に該当するものはB、アンモニアに該当するものはCと記せ」など、共通テストの正誤問題に役立ちそうな問い方をしてくれることも多いので、活用しましょう。

 次に例題が載っているページがあります。その後の問題に取り組む前に、例題を理解すると、問題の形を通して、より理解を深めた状態で、問題に取り組めるでしょう。

 次に問題が載っているページがあります。ここがメインだと思います。『新標準演習』に取り組むと決めたからには、全問解けるようにしましょう。

 何章かに1つ、その後に「共通テストチャレンジ」というコーナーがあります。旧センター試験型(共通テストでも出ますが)の問題が載っています。

 解答、解説は別冊になっていて、勉強しやすいと思います。解説や図解も親切だと思います。

 

『化学の新標準演習』は東大、京大、医学部受験に足りる?

 理論化学、無機化学については、『新標準演習』が完璧なら、ほとんどの大学で合格点を取れます。
 東大、京大の化学の特徴は「初めて見るような設定を、丁寧に誘導をつけて、高校標準レベルで考えさせる」ことです。つまり、物事を根本から理解しようとする姿勢のある人は、教科書の説明を理解した上で、『新標準演習』の組み合わせ、ひとひねりで、東大、京大あたりでも合格点を取れます。阪大や東北大や東工大や早稲田や慶應あたりなら、なおさら足ります。
 『新標準演習』を完璧にした後、過去問に取り組んで、実際の入試問題に慣れるといいでしょう。

 逆に、東大、京大あたりが志望だったとして、『新標準演習』レベルをおろそかにして、もっと難しい教材に取り組んでいると、入試では実際には『新標準演習』レベルを使いこなすことが求められるので、抜けが出て、点数が伸びない、ということになります。

 ただし、難関大の有機構造決定については実際に、入試レベルの問題に取り組む必要があります。同じ卜部吉庸先生の『化学の新演習』(三省堂)の★、★★問題を解けるようにするといいかと思います。他に、構造決定に特化した、わかりやすい参考書もあります。

 

『化学の新標準演習』で偏差値はどのくらいまで伸びる?

 上記のように、進研模試や河合全統記述模試など、標準レベルの模試なら、十分、東大、医学部レベルの偏差値に達します。受験というものは、標準レベルまでの網羅度で点数が決まります。標準レベルの教材だからといって舐めてはいけません。十分、東大レベルの成績に達します。

 

『化学の新標準演習』は共通テスト対策になる?

 上記のように、何章かに1つ「共通テストチャレンジ」というコーナーがあり、旧センター試験のような問題が載っています。この問題に慣れれば、共通テストにかなり対応しやすくなるでしょう。

 

『化学の新標準演習』は初学者にも使える?

 教科書レベルのチェック問題も充実はしています。
 しかし、本当の教科書レベルの基本の説明は、教科書や『宇宙一わかりやすい高校化学』(学研)で理解し、基本問題も『宇宙一』の別冊付属問題集あたりがいいと思います。
 初学者は、まず、このあたりを9割方マスターしてから『新標準演習』に移るといいと思います。

 

『化学の新標準演習』と『重要問題集』や『基礎問題精講』との違いは?

 『重要問題集』(数研出版)のほうが、教科書レベルのチェックが薄く、少しむずかしい問題も載っています。『新標準演習』のほうが、解説が詳しいです。コンセプトとしては、かなり似ていると思います。
 『基礎問題精講』(旺文社)は、問題が121問と絞られており、網羅性に欠けます。標準問題をつぶしたいのなら『新標準演習』。その他いろいろを考えて、化学に時間をかけられないなら『基礎問題精講』ということになると思います。

 

『化学の新標準演習』と『新研究』や『新演習』との違いは?

 同じ卜部吉庸先生の参考書問題集ですが、まったく異なります。
 『化学の新研究』(三省堂)は、問題集ではなく、参考書です。評判は高く、教科書を読んでいて「これはなぜだろう?」と思った時、『新研究』で調べると、だいたい載っていると思います。
 『化学の新演習』(三省堂)は、『新標準演習』に比べ、教科書~標準レベルまでが薄く、難関大学入試の応用問題で出そうなトピックが載っています。まずは『新標準演習』を完璧にすることが大切です。

 

オススメの補助教材

 大学受験化学は、無機のイオン分析などで「ゴロ合わせ」があると楽な分野がありますが、『新標準演習』は「ゴロ合わせ」がかなり弱いです。『宇宙一わかりやすい高校化学』(学研)『福間の無機』(旺文社)、『化学一問一答』(東進ブックス)あたりは、ゴロ合わせも充実しています。まあ、ググればいいのかもしれませんが。

 

『化学の新標準演習』の出版社の信頼性と実績

 『化学の新標準演習』の出版社は、三省堂です。
 まず、中学、高校の英語、国語の検定教科書を出版しています。英語は、超定番の『NEW CROWN』『CROWN』です。この時点で信頼性は抜群ですね。
 一般向けには、国語辞典、漢和辞典、英和辞典、六法全書なども出版しています。
 大学受験向けには、上記の『化学の新演習』『化学の新研究』が、もう20年ほどはハイレベルな大学受験化学において、超定番になっていて、信頼性と実績は抜群と言えます。

 

『化学の新標準演習』の著者の信頼性と実績

 著者は卜部吉庸先生です。卜部吉庸先生は、京都教育大学特修理学科卒業。長年、奈良の県立高校の先生を務められ、その後、私立高校の講師をされたようです。他の著書に、『化学の新研究』『化学の新演習』があります。両方とも、ハイレベルな受験生向けの化学の参考書、問題集として、20年ほどは超定番になっています。化学の参考書、問題集の分野での信頼性、実績は抜群と言えます。

 

『化学の新標準演習』は個別指導塾で使いやすい?

 主に、理解が難しい、理論化学について言うと、概念の理解、知識問題については、教科書や例題で解説したあとに『新標準演習』の問題に取り組むことができます。計算問題については、多くの場合、『新標準演習』の例題に類題が載っているので、それを解説し、載っていない場合は、他の計算問題の参考書で解説したあとで、問題に取り組むことができます。個別指導塾で使用すると、生徒の化学の成績を東大レベルに引き上げることができます。
 無機、有機については、暗記が中心なので、自分で勉強すれば成績が上がります。

 

『化学の新標準演習』の目次

01.物質の成分と元素
02.元素の構造と周期表
03.化学結合1
04.化学結合2
05.物質量と濃度
06.化学反応式と量的関係
07.酸と塩基
08.中和反応と塩
09.酸化還元反応
10.物質の状態変化
11.気体の法則
12.溶解と溶解度
13.希薄溶液の性質
14.コロイド
15.固体の構造
16.化学反応と熱
17.電池
18.電気分解
19.化学反応の速さ
20.化学平衡
21.電解質水溶液の平衡
22.非金属元素1
23.非金属元素2
24.典型金属元素
25.遷移金属元素
26.金属イオンの分離と検出
27.無機物質と人間生活
28.有機化合物の特徴と構造
29.脂肪族炭化水素
30.アルコールとカルボニル化合物
31.カルボン酸・エステルと油脂
32.芳香族化合物1
33.芳香族化合物2
34.有機化合物と人間生活
35.糖類(炭水化物)
36.アミノ酸とタンパク質、核酸
37.プラスチック・ゴム
38.繊維・機能性高分子

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【使い方】物理のエッセンス(河合出版) レベルと難易度は?

 

【使い方】物理のエッセンス(河合出版) 個別指導塾で使える?レベルと難易度は?

 

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『物理のエッセンス』の著者の実績と信頼性

 著者は浜島清利先生です。著書は他に、

・物理講義の実況中継(語学春秋社)
・名問の森(河合出版)
・良問の風(河合出版)

があります。
 大学受験の物理の参考書では、特に、『物理のエッセンス』『名問の森』『良問の風』は超定番です。実績と信頼性は抜群と言えます。

 

塾長の実績と経験:『物理のエッセンス』のレベル 東大の偏差値を超えます

 検定教科書を理解し、教科書レベルの問題をスラスラ解ける人(『宇宙一わかりやすい高校物理』(学研)の説明を理解し、付属の別冊問題集を解ける人)なら、独習で使えると思います。
 レベルは、全問解けるようにすれば、河合全統記述模試、進研模試などの標準的な模試では、東大の偏差値を超えます。これらの模試と『物理のエッセンス』を見比べればわかることですし、塾長の生徒は達成しています。そして、東大、京大、医学部あたりに合格するための基本技法をほぼ網羅できます。

 

『物理のエッセンス』の使い方

 『物理のエッセンス』で大学受験物理の基本解法をほぼ網羅的にマスターできます。問題を全部解けるようにしましょう。

 まえがきにある通り、教科書に書いてある説明は簡潔に、教科書に書いていないが受験で使うことの説明は丁寧にされています。Amazonで低評価をつけている人は、このまえがきを読んでいないのではないでしょうか。つまり、教科書はわかっていることが前提の本です。

 『物理のエッセンス』のたとえば、鉛直面内の円運動(非等速円運動)の所には
1.力学的エネルギー保存則
2.遠心力を考えて、半径方向で力のつり合いの式をつくる
といった、物理の入試問題を解くために必要な抽象的なパターンが、バーンと書いてあります。

 また、たとえば、電磁気のコンデンサーの難しめの回路を解くテクニックに、
(ある極板上の電荷)=C×(自分の電位ー相手の電位)
というものがあります。『重要問題集』(数研出版)などの「問題集」では、説明なしに、解答にいきなりこの話が出てくるので、この話を聞いたことがない人は、わけがわからないと思います。一方で、『物理のエッセンス』では、しっかり原理から解説してくれています。

 『物理のエッセンス』は(教科書レベルのことの多くは省かれているものの、)入試問題を解くために理解しなければならないことは、しっかり解説してくれていて、かつ、入試で合格点を取るために必要な技法をマスターするための問題は、ほぼ網羅されている、という、非常にバランスの良い教材だと思います。

 問題の解説はやや素っ気ないですが、東大、京大、国立医学部あたりを目指すなら、泣き言は言えないでしょう。

 一方、以下のような親切な配慮も見られます。

・難しめの問題には、*、**がついている。得意でない人は、1周目は飛ばしてもいいかもしれない。ただ、『物理のエッセンス』に取り組む人は、最終的にはマスターすべき。

・誤りやすい誤答例を「miss!」として取り上げている。出題者の狙い目になっているので、クリアーを目指しましょう、とのこと。

・よく受ける質問、本質をつく疑問に「Q&A」として答えている。

・覚えなくてもよいが、知っておくと問題を解く上でずっと有利になる事柄を「知っておくとトク」として扱っている。

・物理が得意な人へのメッセージを「High」として扱っている。東大・京大・物理が難しい医学部あたりを受ける人は、理解すべきです。また、上位教材である『名問の森』では、これらを使う問題が出てきます。

 河合全統記述など、標準的な記述模試では、これで東大の偏差値を超えます。学校の定期テストでも、東大合格レベルの順位に入れると思います。

 東大、京大、医学部入試も、この内容が基礎になります。

 『物理のエッセンス』と実際の入試との違いは、『物理のエッセンス』の問題は、入試問題を解くためのバラの技法のマスターに重点が置かれ、解答が長くないのに対し、実際の入試問題は、もう少し複雑で、小問が続く、ということです。
 ただ、それでも、デカルトが「困難は分割せよ」と言ったように、東大や医学部を目指す人でも、「困難を分割し」、『物理のエッセンス』でバラの技法をマスターしたあとに、入試レベルの問題に取り組んだほうが、遅いようで早く、また、到達点も高いと思います。

 

『物理のエッセンス』が合わない、使いにくい、わかりにくい人

 教科書を理解していない人です。また、東大、京大、医学部あたりを目指さず、入試に使う技法に少々抜けが出てもいい人は、もう少し解説の親切な参考書を使ったほうがいいです。おそらく、Amazonで低評価をつけているのは、このような人達だと思います。

 

『物理のエッセンス』は共通テスト対策になる?

 物理のエッセンスが完璧なら、共通テストでも、かなりの高得点を取ることができるはずです。ただし、共通テストは、国立二次、私大とは異なる角度から問うてくる問題や定性的理解(計算で数値を求めるのではなく、性質を理解する)を求めるもあり、医学部などで高得点が必要な場合、共通テスト型の問題で慣れることが大切だと思います。
 一方、共通テストでそこそこの点数でいいという人は、共通テストは共通テスト向けの教材を使い、国立二次、私大も、もう少し解説がわかりやすいものを使ったほうがいいと思います。

 

『物理のエッセンス』は個別指導塾で使える?

 東大や医学部に数十人受かるような高校の中位層以上なら、塾長が教科書で基本を解説し、『物理のエッセンス』の例題を解説すると、生徒はスムーズに『物理のエッセンス』の問題に取り組めるようです。かなり効率的に、生徒を東大レベルに連れて行ってあげることができます。このような学校でも、下位層だと、まずは、教科書の解説+『リードLightノート』の問題、あたりがいいのかな、と思います。

 

『物理のエッセンス』をマスターした後は?

 物理は、数学とは異なり、分野横断的な出題は少なく、「力学」の分野では「力学」しか出題されないことも多いです。したがって、『物理のエッセンス』のある分野を終えたら、いきなり大学の過去問のその分野の問題に取り組むことができます。正解できないまでも、解説を読んで理解できる力はついているはずです。

 あるいは、同じ浜島先生の『名問の森』(河合出版)は、『物理のエッセンス』でマスターした技法を難関大レベルの問題で使いこなす学習に最適です。『物理のエッセンス』で少し抜けている、入試に頻出の内容も補うことができます。

 

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名問の森(河合出版) 

 

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『名問の森』のレベル、難易度

検定教科書を理解し、教科書レベルの問題をスラスラ解け
 ↓
『物理のエッセンス』(河合出版)を理解し、問題を全問スラスラ解け、
(ここまでで、河合全統記述模試や進研模試など、標準レベルの記述模試なら東大の偏差値を超えます。)
旧帝大、医学部、東工大、早慶などを目指す人

 

『名問の森』の使い方

 『名問の森』は『物理のエッセンス』(河合出版)と著者が同じ姉妹書です。難関大向けの問題集のわりには、解説が親切です。

 『名問の森』は『物理のエッセンス』でマスターした受験に必要な基本ツールを、東大や医学部で合否を分けるレベルの生の入試問題でどのように使いこなすかの訓練、と考えるといいと思います。
 入試問題について、なにを考えれば解けるかという「着眼点」「目のつけどころ」といったものがあると思います。一度は、わからなかったら答を見て、実際に手を動かして解いてみたほうがいいと思いますが、その後の復習は、「着眼点」がパッと思い浮かんだらOK、ということでいいと思います。
 『名問の森』の全部の問題について「着眼点」がパッと思い浮かんだら、東大や京大や医学部でも合格レベルになります。

 『名問の森』は『物理のエッセンス』に少しだけ抜けている、入試によく出る設定の問題も、適切に補われていると思います。

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他レビューへの疑問

 

『物理のエッセンス』のレベルは基礎固め?最低限の基本問題?

 たしかに、ある程度以上の実際の入試問題は、『物理のエッセンス』よりも設定が複雑で、小問が続きます。
 一方で、『物理のエッセンス』は、見た目は問題が短く終わりますが、たとえば、GMARCHあたりでは出題されない、解けなくても合否を分けないような「バラの技法」が結構たくさん載っています。このような教材を「基礎固め」「最低限の基本問題」と呼ぶのは、おかしいと思います。
 実際、『物理のエッセンス』を全問解けるようにすれば、進研模試や河合全統記述模試などの、物理の問題の設定が複雑でない、標準レベルの記述模試では、東大の偏差値を超えます。また、実際の東大、京大あたりの入試でも、正解に必要な技法は、ほぼ物理のエッセンスに載っています。
 物理で「基礎固め」「最低限の基本問題」と呼ぶのが適切なのは、『宇宙一わかりやすい』シリーズ(学研)や『らくらくマスター』(河合出版)あたりだと思います。『物理のエッセンス』は、これらよりは、かなり高度な技法まで載っています。

 

『物理のエッセンス』は教科書を読んでいない状態からでも取り組むことができます?

 先述のように、『物理のエッセンス』のまえがきでは、著者の浜島先生ご自身が『物理のエッセンス』に書かれているのは「教科書に書かれていないけど大切なこと」、「用語の説明など必要だけれど退屈な所は教科書にまかせ」と書かれています。
 つまり、教科書を読むことは、大前提の本だと、著者の浜島先生ご自身がおっしゃっていると思います。

 

『物理のエッセンス』のレベル 到達偏差値は、河合全統記述記述模試で55前後?

 先述のように、『物理のエッセンス』は実際の難関大入試とは異なり、「バラの技法」を習得するために、問題が短く、設定も複雑ではありません。ただ、河合全統記述模試の物理も、それほど設定は複雑ではありません。また、先述のように、『物理のエッセンス』は、東大入試まで含めて、正解に必要な「バラの技法」は、ほぼ網羅されています。
 実際に、到達偏差値は、低く見ても河合全統記述模試で東大の67.5は行けると思います。

 

『物理のエッセンス』の出版社の信頼性と実績

 『物理のエッセンス』の出版社は、河合出版です。予備校の河合塾の傘下です。河合塾は、模試が学校採用される場合が多く、河合全統記述模試や共通テスト型模試は、数十万人が受験します。
 河合出版の参考書、問題集も『物理のエッセンス』『数学良問のプラチカ』『入試現代文のアクセス』など、受験界で超定番のものが何冊もあります。また、予備校系の参考書としては、ビジュアルの良さに定評があると思います。
 出版社の信頼性、実績は抜群と言えます。
 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

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【使い方】Focus Gold(啓林館):売っている場所、書店は?個別指導塾で使える?

 

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『Focus Gold』を売っている場所、書店は?

 Focus Goldは、基本的には学校採用専用教材です。しかし、人気があるため、大書店では売っていることがあります。東京だと、丸善丸の内本店、お茶の水店、ジュンク堂書店池袋店、など、大きめの書店に売っています。小さめの書店だと、チャート式は売っていてもFocus Goldは売っていないことが多いと思います。
 また、出版元の啓林館のWebショップでも買うことができます。

 

『Focus Gold』の最新版(5th)と旧版(4th)の違い

 『Focus Gold』は、現在、4th Editionと5th Editionが売られています。4thは2021年以前高校入学の旧課程の人向けです。5thは、2022年以降高校入学の新課程の人向けです。書店やECサイトでは、必ず確認しましょう。

 

『Focus Gold』はこんな人におすすめ

数学の教科書本文の問題をほぼ全問解けるようになり、
 ↓
定期テストなどで東大、京大、国立医学部あたりに合格しそうな数学の成績の人

 

『Focus Gold』の使い方、レベル、難易度は?

 高校生、大学受験生向けの数学の参考書、問題集です。
 Focus Goldは本文の問題の大学受験数学に出そうな技法の網羅性が素晴らしいです。

 教科書を理解し、教科書の本文の基本問題を解けるようになったら、Focus Goldの本文の問題を、できない問題に✓マークをつけつつ、全問解けるようにするといいでしょう。
 ここまでで、学校の定期テストでは東大レベルの順位に入れると思いますし、河合全統記述、進研模試などの標準レベルの記述模試でも東大レベルの成績になると思います。

 Focus Goldの章末問題や巻末のほうの入試問題は、やや難易度に波があるように思うので、よほど余裕がある人以外は、とりあえず後回しでもいいかなと思います。
 入試標準レベルを的確に集めた教材が他に存在します。

 対象に「定期テストなどで東大、京大、国立医学部あたりに合格しそうな数学の成績の人」と書きました。
 現在そうでない人でも、塾長が指導し、問題を厳選すれば、十分使えると思います。
 そうでない人で独学の人には、ちょっと内容が重たいかなという気がします。もう少し内容が軽いもの、たとえば黄チャート(数研出版)を完璧にしたほうが、成績が伸びやすいと思います。

 

『Focus Gold』は個別指導塾で使える?

 Focus Goldは例題と問題が、数値が違うくらいで対応しているので、先生が例題を解説し、生徒が問題を解く、という形式で、個別指導塾でとても使いやすいです。それでいて、東大、京大、国立医学部レベルの、低く見積もっても、一歩手前くらいまでは連れて行っていってくれる教材で、個別指導塾で使う教材として、非常に優れていると思います。

 

『Focus Gold』の優れている所、ダメな所は?

 チャート式などに比べ、Focus Goldが特に優れているのは、
・数列、漸化式と場合の数、確率の融合問題が東大レベルまで収録されており、例題→類題と勉強できるのは、入試の壁を超えやすい。
・数3の微積分の入試に出る技法の網羅度が素晴らしい。特に、体積の難しめの問題の例題と類題の対応度が素晴らしい。(青チャートあたりは、例題と類題の対応、難易度が雑。)

 Focus Goldのダメなところは
・数1Aの『整数』が、悪くはないが、青チャートあたりに比べ、収録問題の安定感に欠ける気がする。
・数2Bの『図形と方程式』の「直線群の通過領域」の基本問題が載っておらず、いきなり入試レベルの問題が出てきて、おそらく面食らう。青チャートには、説明、基本問題から載っている。
・チャート式型の参考書全体に言えるが、『確率』が弱く、上位大学に通用しない。『合格る確率』(文英堂)などで補う必要あり。
・チャート式型の参考書全体に言えるが、『図形』『データ』が、共通テストの出題傾向との相性がかなり悪い。共通テスト型問題集で補う必要あり。
・チャート式型の参考書全体に言えるが、国立二次でよく出る技法と、私大マーク型でよく出る技法は、相反していて、お互いに出ないことが多いが、両方載っているので、量が膨大になりがち。大学受験塾チーム番町では、塾長が問題をランク分けしています。

 

『Focus Gold』のレイアウト

 おおむね、1ページに1問の例題が解説されています。一番上に、例題が載っています。次に、その例題を解くための着眼点、コツのようなものが書かれています。次に、その例題の解答が載っています。横には、式変形がわかりにくい部分などに、副文の解説が載っていることがあります。一番下に、例題と数値が違うくらいで、同じように考えれば解ける、類題が載っています。
 紙面は2色刷りです。ただの白黒よりは、見た目も良いので、かわいいものが好きな女子などは、勉強するモチベーションが上がる可能性もあります。

 解答は別冊冊子です。こちらも2色刷りです。チャート式と違って、本冊の章末問題には、解答が、解答冊子の何ページに載っているかが書かれています。このような細かい心配りが、チャート式を猛追している要因の1つなのだと思います。数研出版は見習ったほうがいいですね。

 

『Focus Gold』の出版社の信頼性と実績

 『Focus Gold』の出版社は、啓林館です。小中高の英語、数学、理科の検定教科書を出版しています。この時点で信頼性は絶大ですね。高校英語の『Vision Quest』シリーズは、進学校では、かなりのシェアなのではないでしょうか。
 また、学校採用の副教材も充実しています。最も有名なのが本書『Focus Gold』です。その他、『Vision Quest』の問題集や、理科の問題集『センサー』などが学校採用されていることが多いです。
 一般書籍は、小学校、中学校の教科書ワークが「新興出版社」という出版社名で、普通の書店で販売されています。
 したがって、啓林館の信頼性と実績は抜群と言えます。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【答えは?】リードLightノート(数研出版)生物基礎、生物:医学部対策になる?

 

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東大・医学部受験の生物の勉強法

 

【答えは?】リードLightノート(数研出版)生物基礎、生物 使い方、レベルは?

 

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『リードLightノート』生物基礎、生物の解答、答えは?

 『リードLightノート』生物基礎、生物は、高校生、大学受験生向けの問題集です。おそらく、多くの高校で採用され、カリキュラムの一部となっています。下記で解説するように、優れた問題集だと思います。
 学校で配布される『リードLightノート』は、解答をもらえないことも多いようです。これは、先生が高校生に対して、自分自身で答えを見つけるプロセスを重視し、解答に頼らずに思考力を養うことを目的としていると思われます。
 一方で、『リードLightノート』は書店やamazonでも購入でき、そちらは解答つきとなっています。
 本記事の筆者は、学校採用教材は、解答が配られたほうがいいのではないかと考えます。『リードLightノート』が学校採用され、解答をもらえない場合、市販の物を買ってもいいと思います。

 

『リードLightノート』生物基礎、生物はこんな人におすすめ、レベル

・ゼロから生物を始める人
・生物の知識問題で失点がある人

 

『リードLightノート』生物基礎、生物の使い方

 教科書レベルの穴埋め問題集です。
 リードAの部分では、教科書のような解説に、ところどころ穴埋めがあります。ここだけでもかなり理解をすることができます。
 リードBの部分は用語の一問一答です。
 リードCの部分は問題形式です。

 意外に問題数が多いかと思うかもしれませんが、大切なことはリードA~Cまでくり返し出題され、自然にくり返しの回数を取れるようになっています。ただ、それでも多いと思う人は、とりあえず『らくらくマスター』生物基礎+生物(河合出版)あたりを仕上げるといいでしょう。
 さらに、できなかった問題は✓マークを付け、勉強法の基本の(1)短答問題型の方法で復習し、全問できるようにしましょう。
 リードA、Bはすぐ下に答があります。リードCの答は別冊なので、オレンジペンで答を書き込み、赤下敷きで隠すといいでしょう。

 東大、京大、国立医学部などで合否を分けるのは考察問題ですが、まずはこのレベルの基本がスラスラできることは大前提でしょう。
 教科書などのテキストを熟読することも大切ですが、初中級者の勉強法としては受動的なので、この問題集が完璧になるまでは、この問題集を基幹教材にして、わからないことを教科書などで調べる、といった勉強が成績が伸びやすいと思います。

 

『リードLightノート』は医学部対策になる?

 医学部受験生でも、成績が足りない人は、『リードLightノート』を仕上げることによって、成績を上げることができます。
 さらに、特に、国立医学部の場合、基本的な穴埋め問題と、考察問題の割合が多いケースも多いと思います。すると、物事を根本から理解しようという姿勢がある人は、『リードLightノート』までで、合格点を取れてしまう可能性もあると思います。もちろん、できれば、上位教材や過去問などで、特に、考察問題対策をしたほうがいい人が多いとは思います。
 一方、私大医学部の場合、知識問題は、ひねって問われることが多いので、実際にそのような問題集、過去問をこなさないと、厳しいかな、と思います。

 

『リードLightノート』の後はどうする?

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 リードLightノートでは、入試に必要な知識をかなり習得することができます。一方、問題の形式が入試とはかけ離れているので、入試、模試で点数を取りたい場合、実際の形式に近いもので慣れたほうがいいです。そういう場合、まずは、この2冊が、リードLightノートからの接続が良いと思います。
 『入門』は易しいです。知識はリードLightノートレベルで、出題形式が入試っぽい程度です。解説が非常に親切です。
 『基礎』は、必要な知識自体はほぼ変わりませんが、論述問題、考察問題なども少し入ってきて、ややレベルが上がります。やはり、本文の問題の解説はかなり親切です。

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『生物基礎問題精講』のレベル、難易度

・『リードLightノート』(数研出版)がスラスラできる人
・論述問題、考察問題の初心者

 

『生物基礎問題精講』の使い方

 レベルは、書き込み式ノートである『リードLightノート』(数研出版)とほぼ変わらないと思います。ただし、問題の形式が入試問題らしくなり、論述問題が増えます。
考察問題もあります。

 『リードLightノート』でマスターした基礎知識を入試問題形式で確認する。穴埋め問題ができても論述問題ができない人は多いと思われるので、論述問題の入門として使う。難関大の入試生物は考察問題が合否を分けるので、考察問題の入門編として使う。
といった使い方が考えられます。

 「必修基礎問」が78題。「実践基礎問』が28題。章末の演習問題が47題あります。

 章末の演習問題以外は、問題のすぐ近くに解説と答があるので、使いやすいです。解説も、章末の演習問題ではない、本文の問題は、二色刷りで見やすいです。また、同レベルの問題集の中では、解説の分量が多く、わかりやすいと思います。さらに、解説中に「Point」として、覚えるべきこと、理解すべきことが簡潔にまとまっているコーナーがあることがあります。
 章末の演習問題は、解説が簡潔です。ただし、本文の問題の問題番号とのリンクが付いていて、本書1冊で理解がはかどりそうではあります。
 『リードLightノート』でインプットした知識を、模試、入試の点数に変えるための1冊目として、オススメできます。
 できなかった問題に✓マークをつけ、できるまでひたすらくり返しましょう。

 

生物標準問題精講(旺文社)

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『生物標準問題精講』はどんな人におすすめ?

・『リードLightノート』(数研出版)がスラスラできる人。
・志望大学の過去問を分析し終えて、考察問題、論述問題に慣れたり、難関大でよく出るテーマを知ったりしたい人。

 

『生物標準問題精講』の使い方、レベル、難易度は?

 難関大学の入試生物では、基本知識問題を正解できるのは前提として、考察問題が合否を分けます。
 『リードLightノート』(数研出版)がスラスラできれば、東大、京大、医学部まで含めて、志望大学の生物の入試問題を理解することができると思います。
 知らない用語が出てきた場合、それは考察問題で、出題者も受験生にその用語をあらかじめ知っておくことを要求していない場合が多いと思います。
 まずは、考察問題も、志望大学の過去問を通して慣れると、一石二鳥だと思います。
 その上で、考察問題のトレーニングを積みたい、という場合、『標準問題精講』がいいと思います。

 また、難関大学の入試生物で出やすいテーマというものはあります。
 考察問題の場合、基本知識を元に、初見のテーマに対応することを求められる場合も多いので、問題と答の丸覚えをしたり、的中を期待したりはしないほうがいいかもしれませんが、あらかじめテーマを知っておくと有利になる場合もあると思います。

 問題と解答が別冊になっているので、勉強しやすいと思います。解答、解説は2色刷りです。解説の文字数も多く、図解も親切だと思います。

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生物問題集合格177問(東進ブックス)入試必修編

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 入試標準問題までの難易度が安定していると思います。ここまでを全問解ければ、進研記述模試や河合全統記述模試などの標準レベルの記述模試では、東大の偏差値に近いところまで行くのではないでしょうか。

 

高校生物をわかりやすく教えてください(学研)

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 問題集ではなく、解説書です。生物のそれなりのレベルの解説書では、一番わかりやすいのではないかと思います。ただし、2冊とも分厚いので、通読しようとすると自爆します。あくまでも、わからないことがあったときの調べ物用として使いましょう。
 生物基礎の分野の一部が載っていませんが、載っていないのは、わかりやすい分野ですし、生物基礎については『宇宙一わかりやすい生物基礎』を使うという選択肢もあります。

 

『リードLightノート』の出版社の実績と信頼性

 『リードLightノート』の出版社は数研出版です。
 まず、高校数学の検定教科書の進学校での採用率は圧倒的だと思います。その他、各科目の検定教科書を出版しています。高校理科あたりは、比較的有名だと思います。
 市販の参考書では、数研出版と言えば、数学の『チャート式』が超定番です。他にも追随する類書はありますが、知名度の面からは、『チャート式』が最も有名でしょう。
 数研出版の実績と信頼性は絶大といえます。

 

『リードLightノート』の解答とニーチェ

 ニーチェは、「力への意志」を重視しました。それは、自らの潜在能力を最大限に発揮し、困難に立ち向かう勇気と情熱です。解答なしで学習することは、生徒たちにとって大きな試練となるでしょう。しかし、その試練を乗り越えることで、彼らは真の理解と知識を手に入れることができるのです。ニーチェは、「苦難は人を強くする」と述べましたが、まさにこの状況は、生徒たちを強くする機会と言えます。

 一方、解答付きの市販版の存在は、「パースペクティヴィズム」の観点から考察できます。ニーチェは、物事には多様な見方があり、絶対的な真理などないと説きました。解答の有無という二つの選択肢は、学習に対する異なる視点を提示しているのです。生徒たちは、自分にとってどちらの方法が適しているかを見極め、主体的に選択する必要があります。

 また、ニーチェは「超人」の概念を提唱しました。それは、既存の価値観に囚われず、自ら新たな価値を創造する人間像です。解答なしで学ぶ生徒たちは、自分自身で知識を構築していく過程で、まさに「超人」への第一歩を踏み出しているのかもしれません。彼らは、受動的に解答を与えられるのではなく、能動的に真理を探求する姿勢を身につけているのです。

 ニーチェは、「教育」の在り方についても独自の見解を持っていました。彼は、既存の教育システムを批判し、個人の潜在能力を引き出す教育の重要性を訴えました。解答なしの学習は、生徒一人一人の思考力を最大限に引き出す試みと言えるでしょう。それは、画一的な知識の詰め込みではなく、生徒自身が知識を能動的に構築していく過程なのです。

 ただし、ニーチェは「ニヒリズム」の危険性についても警鐘を鳴らしました。解答がないことで、生徒たちが虚無感に陥る可能性もあります。そこで重要なのは、教師の適切な指導と支援です。生徒たちの挑戦を励まし、時には助言を与えることで、彼らの「力への意志」を支えていく必要があるでしょう。

 リードLightノート生物の解答の有無は、ニーチェの思想を通して見ると、教育の本質的な問いを投げかけています。それは、生徒たちをどのように導くべきかという問いです。解答なしの学習は、生徒たちに大きな試練を与えますが、同時に大きな成長の機会も与えます。一方、解答付きの市販版は、学習に対する別の視点を提供しています。

 重要なのは、生徒一人一人が自分の道を主体的に選択し、歩んでいくことです。ニーチェは、「人間とは乗り越えられるべき何かである」と述べました。生徒たちには、自分自身と向き合い、乗り越えていく勇気が求められています。そして、教師には、その勇気ある挑戦を支える役割が求められているのです。

 リードLightノート生物をめぐる問題は、単なる解答の有無の問題ではありません。それは、教育の本質と、人間の成長の可能性を問う、哲学的な問いなのです。ニーチェの思想は、この問いに向き合う上で、大きな示唆を与えてくれます。生徒たちが、自らの「力への意志」を発揮し、「超人」への道を歩んでいけるよう、私たち教師は、知恵と情熱を持って彼らを導いていかなければならないのです。

 

『リードLightノート』の解答と構造主義

 高校という教育機関は、知識の伝達と評価という役割を担っており、そのために問題集を使用するという行為が行われます。しかし、その問題集の解答の有無によって、生徒たちの間に不平等が生じるという事態が発生しています。これは、教育制度という構造の中で、問題集という要素が持つ意味合いが、文脈によって異なるために生じる矛盾だと言えます。

 学校での使用を前提とした問題集であるにもかかわらず、市販されているという事実は、教育という営みが、商業主義の論理に侵食されていることを示唆しています。知識の獲得という本来の目的よりも、問題集の販売という経済的利益が優先されているのです。このような状況は、教育制度が、資本主義という大きな構造の中に組み込まれていることを浮き彫りにしています。

 さらに、解答の有無という違いが、生徒たちの間に不公平感を生み出しているという点も重要です。これは、教育制度という構造の中で、生徒たちが置かれている立場の違いが、知識へのアクセスの差異につながっていることを示しています。構造の中で優位に立つ者は、知識を独占することができるのに対し、そうでない者は不利な立場に置かれてしまうのです。

 以上のように、『リードLightノート生物』をめぐる問題は、教育制度という構造の中で生じる矛盾や不平等を浮き彫りにしています。これは、構造の中で個人が置かれている立場によって、知識へのアクセスに差異が生じるという、構造主義的な問題系に通じるものがあります。私たちは、このような構造的矛盾を認識し、その解決に向けて努力していく必要があるのではないでしょうか。

 

『リードLightノート』の解答とハイデガー

 この問題は、ハイデガーの思想の観点から見ると、教育という世界の中で生徒という現存在(Dasein)が直面する本来性(Eigentlichkeit)と非本来性(Uneigentlichkeit)の問題として捉えることができます。

 生徒たちは、学校という世界の中に「投げ込まれ」、そこで様々な課題に取り組むことを求められています。『リードLightノート生物』という教材は、その課題の一つとして生徒たちに与えられているのです。しかし、学校が解答を配布しないのに対し、同じ教材が解答付きで市販されているという状況は、生徒たちを非本来的な在り方へと誘惑しているとも言えます。

 ハイデガーは、現存在が日常的に没入している世界の平均的な在り方を「世人性(das Man)」と呼び、それが現存在の本来的な在り方を覆い隠してしまうと批判しました。解答付きの教材を手に入れることで、生徒たちは自ら思考することを放棄し、世人性の規範に従属してしまう危険性があるのです。

 しかし、ハイデガーは同時に、現存在が本来的な在り方を取り戻すためには、「良心の呼び声(Ruf des Gewissens)」に耳を傾ける必要があるとも説いています。生徒たちもまた、自らの良心の声に従って、解答に頼ることなく自ら思考し、理解を深めていく道を選択することができるはずです。その過程では、時に困難に直面することもあるでしょう。しかし、そうした困難を乗り越えていくことこそが、現存在としての生徒たちが自らの存在の本来性を実現していく道なのです。

 また、ハイデガーは、現存在が本来的な在り方を取り戻すためには、「死への先駆的決意性(Vorlaufen zum Tode)」が必要だとも説いています。これは、自らの有限性を直視し、そこから逆照的に自らの存在の意味を見出すことを意味します。生徒たちもまた、自らの学びの有限性を認識し、与えられた時間の中で何をなすべきかを主体的に決断していく必要があるのです。

 教師もまた、生徒たちが本来的な在り方を取り戻すための「呼び声」となる存在であるべきでしょう。解答を安易に与えるのではなく、生徒たちが自ら思考し、理解を深めていくことを励まし、支援していくことが求められています。

 このように、『リードLightノート生物』をめぐる問題は、教育という世界の中で生徒という現存在が自らの存在の意味を問い、本来的な在り方を追求していく過程の一つの局面として捉えることができます。生徒たちには、世人性の誘惑に惑わされることなく、良心の呼び声に従って自ら学び、思考していく姿勢が求められているのです。

 

『リードLightノート』の解答とデリダ

 『リードLightノート生物』という高校採用問題集をめぐる状況は、一見、教育現場での公平性や平等性の問題として捉えられがちです。解答の有無によって、学習環境に差異が生じているように見えます。しかし、この状況の背後には、「教育」や「学習」という概念そのものの脱構築を促す様々な力学が潜んでいます。

 まず、「解答」という存在が示唆するのは、知識の固定化や権威化です。解答は、ある問題に対する唯一の正解を提示し、それ以外の可能性を排除します。しかし、果たして知識とは、そのように固定化され、権威化されるべきものなのでしょうか。むしろ、知識は常に問い直され、書き換えられていくものではないでしょうか。解答の有無という問題は、知識の在り方をめぐる根源的な問いを突きつけています。

 また、「学習」という行為は、しばしば既存の知識を受動的に吸収することと捉えられがちです。解答がついている市販の問題集は、そのような学習観を助長しているように見えます。しかし、真の学習とは、既存の知識を批判的に検討し、新たな知見を創造していく能動的な営みなのではないでしょうか。解答の不在は、学習者に自ら思考し、探究することを要求します。それは、受動的な学習観を脱構築し、能動的な学習の可能性を切り拓く契機となり得るのです。

 さらに、高校による解答の配布の有無は、教育の標準化や画一化の問題を浮かび上がらせます。全ての学習者に同じ解答を提示することは、多様な視点や解釈の可能性を抑圧し、学習を均質化します。しかし、教育とは本来、個々の学習者の特性に応じて多様に展開されるべきものではないでしょうか。解答の配布をめぐる差異は、教育の標準化に抗う契機として捉え直すことができます。

 以上のように、『リードLightノート生物』をめぐる状況は、知識の在り方、学習観の転換、教育の多様性など、様々な問題系を孕んでいます。これらの問題系を脱構築的に読み解くことで、教育の根源的な問い直しが可能になります。解答という存在を相対化し、知識の生成的な性質を肯定すること。受動的な学習観を脱構築し、能動的な探究の可能性を拓くこと。そして教育の標準化に抗い、多様性を育むこと。そのような営みを通して、教育はその可能性を更新していくのです。解答の有無という一見些細な差異が、教育の在り方を根底から問い直す契機となります。そこにこそ、脱構築の生産的な力が宿っているのです。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

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【難易度】今年の入試で合否を分けたこの1題(東京出版) :大学受験数学の合否を分けるレベルを体感

 

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定価は1,750円です。注意しましょう。

 

『今年の入試で合否を分けたこの1題』のレベル、難易度

・『Focus Gold』『青チャート』などで数学の受験によく出る技法をほぼマスターし、標準レベルの記述模試では東大レベルの成績が取れる人
・旧帝大、医学部あたりの数学で合否を分けるレベルがどの程度かを体感したい人
・大学入試前に数学の実戦問題演習をしたい人

 

『今年の入試で合否を分けたこの1題』の使い方

 『今年の入試で合否を分けたこの1題』は、『月刊大学への数学』誌で有名な東京出版から毎年7月頃に発売される、臨時増刊号です。
 その年の有名大学の数学の入試で合否を分けたであろうレベルの問題を1題取り上げています。
ただし、『月刊大学への数学』誌は数学マニア(?)向けの本なので、やや、レベルが高めに設定されていると思います。

 大学受験の数学の勉強法でも述べていますが、東京出版の参考書は、入試問題の難易度をA(易)~D(難)で評価しています。Bは教科書を理解した上で『Focus Gold』『青チャート』などの問題を使いこなせれば完答できる、発想力といったものは要らない問題です。Cは、東大理Ⅰの合格者平均程度だと、完答できないことが多いと思います。
 東大は入試の成績を開示しており、東大新聞は合格者平均点を調査しています。東大入試の数学は、Bを完答、Cで部分点、くらいで、十分に合格者平均点に達します。
Cの部分点もBレベルで十分です。

 まず最初に「問題編」として、問題だけが、分野別に収録されています。その後、「解説編」として、分野別ではなく、北海道大学から南下して熊本大学までの順で、その年のその大学の各問題の難易度、全体の出題セットの講評、なぜこの1題か、「合否を分けた1題」の解説、が収録されています。巻末には、「難易度表」として、各大学の過去5年の難易度について、横軸に「量」、縦軸に「質」をとった座標平面が載っています。

 受験の全範囲について、『Focus Gold』『青チャート』といった教材がおおむね仕上がったと思ったら、本書のB難易度の問題にどれだけ通用するか、試してみるといいかと思います。

 「この1題」だけでなく、その大学の問題全てについて、A~Dの評価だけは載っています。塾長は一応、合否を分けるレベルの問題くらいは見抜けますが、第三者の評価も加え、塾生に納得してもらうために、この本を毎年購入しています。

 世の中には、平均的な東大合格者にも解けないような難問に取り組みつつも、標準レベルの内容に抜けが多く、大学受験に成功しない人も多いようです。注意したいものです。

 

『今年の入試で合否を分けたこの1題』の問題数、どの大学が載っている?

・北海道大学理系
・東北大学理系
・筑波大学医学群
・千葉大学理系
・横浜市立大学医学部
・東京医科歯科大学医学部
・東京大学理系
・東京大学文系
・一橋大学
・東京工業大学
・東京農工大学
・慶應義塾大学理工学部
・慶應義塾大学薬学部
・慶應義塾大学医学部
・早稲田大学理工系
・上智大学理工学部
・東京慈恵会医科大学医学部
・日本医科大学
・防衛医科大学校医学科
・山梨大学医学部(後期)
・新潟大学理系
・名古屋大学理系
・金沢大学理系
・京都大学理系
・京都大学文系
・京都府立医科大学
・同志社大学理系
・京都薬科大学
・近畿大学医学部
・大阪医科薬科大学
・大阪大学文系
・大阪大学理系
・大阪公立大学理系(前期)
・大阪公立大学工学部(中期)
・神戸大学理系
・岡山大学理系
・広島大学理系
・徳島大学医、歯、薬学部
・産業医科大学
・九州大学理系
・熊本大学医学部

以上41問。

 

 

この問題が合否を決める!(東京出版)

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 上記の『合否を分けたこの1題』の3年分を再編集し、問題を厳選したものです。受験生は年度別『合否を分けたこの1題』と同じような使い方ができると思います。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

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【感想・書評】アームストロング砲(司馬遼太郎):数学と理科を勉強する重要性

 

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靖国神社に大村益次郎像があるのはなぜ?

花神(司馬遼太郎、新潮文庫)

大学受験合格への鍵:大村益次郎が示す「戦術」と「戦略」の違い

番町と幕末のSTEM教育

 

【感想・書評】アームストロング砲(司馬遼太郎):数学と理科を勉強する重要性

 

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『アームストロング砲』の著者と実績

 著者は歴史小説の大家、司馬遼太郎さんです。司馬遼太郎さんは、他にも『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』『花神』といった、ベストセラーや、NHK大河ドラマ、スペシャルドラマにもなった、多くの有名な歴史小説を書いています。
 歴史小説家としての実績は、日本史上、屈指の存在でしょう。

 

『アームストロング砲』の感想、書評 

 文庫本の題名が『アームストロング砲』なのですが、この文庫は短編集で、その中に『アームストロング砲』という短編があります。

 

思想よりもアームストロング砲

 

思想よりも科学

 明治維新は「薩長土肥」と言われます。
 肥前佐賀藩は何をしたか知っていますか?司馬遼太郎さんによると、幕末の佐賀藩は「軍隊の制度も兵器も、ほとんど西欧の二流国なみに近代化されていた」とのことです。鳥羽伏見の戦いで薩長が幕府軍に勝った後、佐賀藩はその軍事力を薩長に提供しました。

 幕末の佐賀藩の殿様、鍋島閑叟(かんそう)は、「産業開発のために藩の秀才を選抜して、英語、数学、物理、化学、機械学を学ばせ」たそうです。なぜでしょうか?
 幕末の日本は、尊王・佐幕、攘夷・開国といった、思想の議論が盛んでした。一方、鍋島閑叟は、科学力に基づく経済力、軍事力がなければ始まらない、と見抜いていたのだと思います。
史実か創作かはわかりませんが、司馬遼太郎さんは、鍋島閑叟に

「長州人にいたっては空想空論の舌さき三寸で天下の事が成ると思っている」

と言わせています。天下の事は技術を持って成す、という思想は、後述する、戊辰戦争の総司令官、元は長州の村医者の大村益次郎と似ていると思います。

 たとえばデリダは、西洋形而上学の伝統を脱構築し、その根底にある「ロゴス中心主義」を批判しました。彼にとって、真理や実在は言語の外部に存在するのではなく、言語の働きそのものの中に生成されるものでした。したがって、知識や学問もまた、言語の差異的な運動の中で絶えず構築され、脱構築されるプロセスだと言えるでしょう。

 この観点から見ると、鍋島閑叟が藩の秀才に学ばせた「英語、数学、物理、化学、機械学」は、単なる実学的な知識ではなく、新たな思考の可能性を切り拓く契機だったと捉えることができます。それは、従来の儒学的な知の体系に閉じこもるのではなく、西洋の科学的な知の体系に開かれていく試みだったのです。

 ここで重要なのは、鍋島閑叟がこれらの知識を単に受容するだけでなく、それを「産業開発」という具体的な文脈の中で活用しようとしたことです。知識は常に特定の文脈の中で意味を持つものであり、その文脈を離れては空虚な記号に過ぎません。鍋島閑叟は、西洋の知を日本の文脈に接続し、新たな意味を生み出そうとしたのだと言えるでしょう。

 また、鍋島閑叟の教育政策は、当時の思想的な対立を超えて、知の実践的な力に着目するものでした。尊王・佐幕、攘夷・開国といった二項対立的な思考に対して、鍋島閑叟は科学力と経済力、軍事力の重要性を訴えたのです。それは、言説の次元での対立を超えて、知の具体的な効果に目を向ける姿勢だと言えるでしょう。

 ただし、ここで注意すべきは、科学力や経済力、軍事力もまた、一つの言説であり、権力と結びついたものだということです。知は決して中立的なものではなく、常に権力関係の中に組み込まれています。鍋島閑叟の教育政策も、藩の権力を維持・拡大するための戦略的な営みだったと見ることができるのです。

 したがって、鍋島閑叟の試みを単に礼賛するのではなく、その知の実践がどのような権力関係の中に位置づけられていたのかを問うことが重要です。それは、知と権力の複雑な絡み合いを解きほぐし、知のあり方を根本的に問い直す作業でもあるでしょう。

 幕末の佐賀藩の教育政策は、知をめぐる根源的な問いを突きつけているように思われます。それは、知の言説的な性質と実践的な力、そしてそれらと権力との関係を問うものです。私たちは、知の可能性を切り拓きながらも、その知がどのような文脈の中で機能しているのかを常に問い続けなければならないのです。そのような批判的な態度こそが、知の豊かさと危うさを同時に引き受ける道であり、私たちを新たな思考の地平へと導くのではないでしょうか。

 

現代にも存在する「進路の強制」問題

 ただ、現在、大学の先生や教育界の気鋭の指導者の中での通説では、たとえば、「医師の親が子に『医学部に入れ』などと言って、勉強を強いるのは(どちらの行為も)逆効果、とされます。また、シリコンバレーでは、親が子に、早くからプログラミングを学ばせたところ、子は大学で哲学を専攻してしまった、などという話もあるようです。佐賀藩の場合、殿様と家来という関係だから、なんとか成立していたのでしょうね。実際に、発狂してしまった佐賀藩士も描かれています。なんだ、幕末も、現在も、教育事情は、大して変わらないではないか、と思いました。

 ただ、時間の線形的な流れを脱構築し、過去と現在、未来の複雑な絡み合いを思考すると、歴史とは単なる過去の出来事ではなく、現在との絶えざる対話の中で生成されるものと言えます。したがって、幕末の教育政策と現代の教育問題を単純に比較するのではなく、それらの間に横たわる差異と反復の運動に目を向けることが重要かもしれません。
 この観点から見ると、親が子に特定の学問や職業を強いることの問題性は、幕末から現代に至るまで繰り返し立ち現れてきた主題だと言えるでしょう。医師の親が子に医学部進学を強制したり、シリコンバレーの親が子にプログラミングを学ばせたりすることの弊害は、江戸時代の佐賀藩士の発狂という事例にも通じるものがあります。それは、知の強制が個人の主体性を抑圧し、精神的な危機をもたらす可能性を示唆していると思います。
 ただし、ここで注意すべきは、幕末と現代の教育問題を同一視することの危険性です。歴史は単なる繰り返しではなく、常に差異を孕んだ反復の運動と言えます。佐賀藩の教育政策が藩主と家臣という封建的な関係の中で行われたのに対し、現代の教育問題は個人の自由と権利が尊重される民主主義社会の文脈の中で生じています。両者の間には、時代状況の違いに基づく質的な差異があると言わなければなりません。
 また、シリコンバレーの事例が示すように、親の期待に反して子が哲学を専攻するという現象もまた、教育をめぐる言説の複雑さを物語っています。それは、知の強制に対する個人の抵抗であると同時に、実学的な知識の価値を相対化する試みでもあるのです。このような言説の絡み合いこそが、教育の問題を豊かで多面的なものにしていると言えるでしょう。
 したがって、幕末と現代の教育問題の類似性を指摘するだけでは不十分かもしれません。むしろ重要なのは、両者の間に横たわる差異を繊細に読み解き、それぞれの時代の文脈の中で教育の問題を捉え直すことでしょう。そのためには、教育をめぐる言説の複雑な絡み合いに目を向け、その言説が持つ力と限界を批判的に検討することが不可欠でしょう。
 教育をめぐる議論は、時間と言説の複雑な織物の中に浮かび上がってきます。私たちは、過去と現在の単純な比較ではなく、差異と反復の運動の中で教育の問題を捉え直さなければなりません。そのような批判的な思考こそが、教育の豊かさと可能性を切り拓く道であり、私たちを新たな教育の地平へと導くのではないでしょうか。同時に、教育をめぐる言説が持つ権力性にも自覚的でなければなりません。教育の名の下に個人の主体性が抑圧されることのないよう、私たちは常に用心深くなくてはなりません。

 大学受験塾チーム番町でも、塾で授業を行うのは、英語、数学、物理、化学です。また、STEM教育への取り組みとして、プログラミング、電子工作をおすすめしています。塾長も、有史以来、国力を決めるのは、科学力だと思っています。何千年もの昔、鉄器文明の勢力は、青銅器文明の勢力を駆逐したのです。思想としては、鍋島閑叟と同じなのだと思います。

 

アームストロング砲の製造?

 小説『アームストロング砲』では、佐賀藩でアームストロング砲を製造したことになっています。これは史実かどうかはわからないようです[1]。ただし、小説なので、創作は許されます。
 司馬遼太郎さんは、佐賀藩と言えども、アームストロング砲を製造するには乏しすぎる科学力で、必死にアームストロング砲を研究、開発する佐賀藩士を描くことによって、現在の日本人に奮起を促したのではないでしょうか。

 フィクションと現実、創作と史実の境界を脱構築し、それらの間の複雑な相互作用を思考しましょう。すると、文学とは単なる虚構の産物ではなく、現実を形作る言説の一部でもありえます。したがって、『アームストロング砲』における佐賀藩の描写を単なる創作として片付けるのではなく、その描写が持つ現実的な効果に目を向けることが重要になると思います。
 この観点から見ると、佐賀藩士がアームストロング砲の製造に奮闘する姿は、単なる過去の出来事の再現ではなく、現在の日本人に向けられたメッセージだと捉えることができます。それは、科学力の乏しさを嘆くのではなく、その乏しさの中で知恵を絞り、新たな可能性を切り拓こうとする姿勢を称揚するものなのです。
 ここで重要なのは、司馬遼太郎が佐賀藩士の努力を描くことで、現在の日本人の主体性を喚起しようとしていることです。主体とは言説の効果として立ち現れるものであり、言説がどのように主体を形作っているかを問うことが重要です。『アームストロング砲』における佐賀藩士の描写は、現代の日本人の主体形成に働きかける言説的な実践だと言えるでしょう。
 ただし、ここで注意すべきは、この小説が持つ言説的な力を過度に一般化することの危険性です。言説は常に特定の文脈の中で機能するものであり、その文脈を離れて普遍化することはできません。『アームストロング砲』が喚起する主体性もまた、特定の歴史的・社会的な文脈の中で生じるものであり、それを絶対化することは慎まなければなりません。
 また、この小説が現代の日本人に奮起を促すというメッセージ性もまた、一つの言説的な構築物だと見ることができます。それは、日本人としての主体性を特定の方向に導こうとする戦略的な営みでもあるのです。このようなメッセージ性が持つ権力性を批判的に検討することが不可欠でしょう。
 したがって、『アームストロング砲』における佐賀藩の描写を単に称揚するのではなく、その描写が持つ言説的な効果と権力性を繊細に読み解くことが重要だと思います。それは、この小説が喚起する主体性の可能性と限界を同時に見定める作業でもあるでしょう。
 小説という虚構の世界は、現実を形作る言説の織物の一部として立ち現れてきます。私たちは、小説が持つ言説的な力に敏感になりながら、同時にその力が持つ政治性にも自覚的でなければなりません。そのような批判的な読みこそが、小説の豊かさと危うさを同時に引き受ける道であり、私たちを新たな思考の地平へと導くのではないでしょうか。『アームストロング砲』が投げかける問いは、私たちの主体性そのものを問い直すことへの呼びかけなのかもしれません。

  

戊辰戦争とアームストロング砲

 戊辰戦争が始まり、鍋島閑叟はやっと上洛します。そこで、かつて「舌さき三寸で天下の事が成る」という思想で奔走していたであろう、長州の桂小五郎に、佐賀藩の軍隊を官軍の主勢力とすることを懇願され、鍋島閑叟は、中立を破り、薩長側につきます。
 鍋島閑叟は、勝ち組に入るために、このタイミングを待っていて、「薩長土肥」に入ることができ、してやったりのでしょうか。それとも、胸中は、なにか複雑、虚しさのようなものがあったのでしょうか。
 同じ九州で、関ヶ原の戦いの時、黒田官兵衛は、九州を切り取って、独立しようと思っていた、という説がありますよね。鍋島閑叟も、似たようなことを考えていたかどうか…。    

 その後、江戸城は無血開城されます。それに不満の幕臣は彰義隊を結成し、新政府軍との上野戦争が勃発します。その時、佐賀藩の「アームストロング砲」は加賀屋敷、つまり、現在の東京大学本郷キャンパスに設置され、勝敗を決した、とのことです。塾長は、一時期、不忍池を通って本郷キャンパスに通っていた時期があり、この話は身近に感じます。その後も、北陸、東北戦線で、鍋島閑叟が育てた佐賀藩の軍事力は、大いに活躍したそうです。
 戦争が良いこととは思いませんが、鍋島閑叟が数学、理科で育てた軍事力により、日本の内戦が短期間で終わったならば、やはり、鍋島閑叟は偉大なのではないか、と思いました。

 司馬遼太郎さんは、いくつか、科学技術もテーマに含んだ歴史小説を書いているよう です。
 『花神(かしん)』(1977年NHK大河ドラマ)は、先述の上野戦争の新政府軍の司令官である大村益次郎が主人公です。大村益次郎は、靖国神社(千代田区九段、大学受験塾チーム番町から800m)に銅像が立っています。像から番町側で、「鳩居堂」という蘭学の塾を開いていた時期もあります。おそらく、数学、物理学、化学も教えていたのではないかと思われます。
 大村益次郎は、第二次幕長戦争の長州の司令官でもありました。
幕府軍の先鋒が戦国さながらの甲冑と火縄銃で現れたのに対し、長州軍はミニエー銃という性能の良い銃を持ち、大村益次郎がオランダ語で読んだ兵学を実践したのでした。

 

数学と理科を勉強しよう

 司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』(2009~2011年NHKスペシャルドラマ)は日露戦争が描かれます。
 日露戦争の日本海海戦の勝因としては、日本の戦法、徹底した訓練、などの他に、伊集院信管、下瀬火薬、無線電信機、海底ケーブル、などの新技術が挙げられるようです。

 「産業開発のために藩の秀才を選抜して、英語、数学、物理、化学、機械学を学ばせ」た。太平洋戦争では、日本では原爆を落とされました。現在、日本には、GAFAMのような企業はありません。 
 日露戦争後、あるいは、「失われた30年」の日本にもうひとつ欠けていたのは、このような姿勢ではないでしょうか。
 そして現在、一部の高校では、早めに数学、理科を捨て、早慶、GMARCH文系の合格者で高校のブランドづくりをしています。日本国は、このようなことで大丈夫なのでしょうか?

 幕末の佐賀藩が進めた洋学の導入と、現代の高校教育における理系と文系の分断。戦前の日本の軍事的な躍進と、戦後の経済的な停滞。これらの対立項は、一見すると無関係に見えますが、近代日本の歩みを暗示的に物語っているようです。
 しかし、これらの二項対立は決して安定したものではありません。一方の項を優先することは、必然的に他方の項を周縁化することにつながるのです。幕末の佐賀藩が洋学を重視したように、理系教育重視を主張することは、一面では合理的かもしれません。しかし、そのことが日本文化の豊かさを担ってきた人文学的教養を軽視することにつながるとしたら、それは大きな代償を払うことになるでしょう。
 また、太平洋戦争での敗北と、GAFAMに代表されるようなイノベーティブな企業の不在は、日本の近代化の歪みを象徴しているようにも見えます。戦前の日本は、軍事力の強化に邁進するあまり、科学技術の真の発展を疎かにしてきたのかもしれません。そして戦後は、経済成長を最優先するあまり、基礎研究や教育への投資を怠ってきたのかもしれません。これらの歪みは、二項対立の片方の項を偏重することから生じたものだと言えます。
 このような二項対立を乗り越えていくことが重要性ではないでしょうか。理系と文系、効率と人間性、伝統と革新といった対立項を、二者択一の問題として捉えるのではなく、両者を共に育んでいく必要があると思います。
 教育もまた、こうした二項対立を乗り越えていく場であるべきでしょう。効率性や即戦力ばかりを重視するのではなく、長期的な視野に立って、多様な知性と感性を育んでいくことが求められています。そのためには、教養教育の重要性を再認識し、人文学と自然科学の融合を図っていく必要があると思います。そうすることで初めて、日本は真の意味での近代化を遂げ、創造性豊かな社会を実現することができるのではないでしょうか。
 私達は、固定化された価値観や既成の枠組みを問い直すことが求められていると思います。日本の未来を切り拓いていくためには、こうした脱構築の精神を胸に、新しい知のあり方を模索していくことが不可欠だと思います。

 司馬遼太郎さんは、足掛け15年戦争に従軍しています。そして、終戦後「なんとくだらない戦争をしてきたのか」「昔の日本人は、もう少しましだったのではないか」と思ったそうです。このような思いが、鍋島閑叟や大村益次郎のような合理主義者を主人公とした小説の執筆に駆り立てたのではないでしょうか。そして、二度と同じ過ちを犯さないように、日本人に訴えたかったのではないでしょうか。

 ちなみに、司馬遼太郎さんは、鍋島閑叟を描いた『肥後の妖怪』(『酔って候』(文春文庫)に収録)という短編小説も書いています。

 

出版社の実績と信頼性

 『アームストロング砲』の出版社は講談社です。小学館・集英社とともに、日本の三大出版社と呼ばれます。「週刊少年マガジン」のような漫画雑誌から、本書のような文庫本まで、幅広く出版しています。
 講談社の実績、信頼性は絶大と言えます。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想・書評】東大教師が新入生にすすめる本(文春新書)

 

東大のこと、教えます(プレジデント社、小宮山宏)

 

【感想・書評】東大教師が新入生にすすめる本(文春新書):生涯に一度の輝かしい瞬間に送る祝辞

 

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『東大教師が新入生にすすめる本』の感想、書評

 東大の先生による新入生のためのブックガイドとして、雑誌『UP』(東京大学出版会)に掲載されたアンケートを再構成した本です。

1.私の読書からー印象に残っている本
2.これだけは読んでおこうー研究者の立場から
3.私がすすめる東京大学出版会の本

という3問の設問で構成されます。

 平成16年初版のもののまえがきは、ホリエモンこと堀江貴文さんのゼミの教官だった、船曳建夫先生が書かれています。船曳先生は、ベストセラー『知の技法』の編者としても有名です。
 船曳先生は、まえがきを「大学1年生という一瞬」と題しています。生涯に一度しかない輝かしい一瞬。本書は、その大学新入生に対する祝福の言葉だそうです。まあ、そのような、ありがたいものと捉えることもできますし、厳しい洗礼と捉えることもできます(笑)。

 全体的に、ご自分の専門分野の本が多く挙げられています。新入生に、今すぐ読め、ということなのか。今すすめるから後日読め、ということなのか。前者であれば、かなり厳しいものも多いです。本の難しさにも、色々あると思いますが、前提知識がないと理解できない類の本も多いだろうからです。大学受験数学に例えると、教科書レベルを理解していないと、教科書を超える、チャート式やFocus Goldを理解できませんね。そのようなことが、かなり起こりうるのではないかと。

 一方で、塾長が教養課程の時に『物理科学』という授業の担当だった物理の教授が『日本人の英語』(岩波新書、マーク・ピーターセン)を挙げていて「諦めかけていた冠詞に再び挑戦しようかと思わせてくれる本」としています。東大教授も、英語の冠詞には苦労するのだなあと。『日本人の英語』は『続・日本人の英語』とともに、他の工学系の先生も挙げています。
 また、天文学の先生が『法隆寺論』『柿本人麻呂論』『聖徳太子』といった本を挙げていることがあります。不完全な史料から史実を推定する作業は、観測で得られる不完全な少ない情報から天体で何が起こっているかを推定する作業に似ていて、参考になるそうです。東大教授の研究領域にまで達すると、いかなる分野でも、通づるものがあるのだなあ、と思いました。
 三たび物理の先生ですが、『戦争と平和』(トルストイ)、『罪と罰』(ドストエフスキー)を挙げている先生もいます。『戦争と平和』は、複数の物理の先生が挙げています。ある先生は、「要は、ある目的を離れて思考することであ」る、とおっしゃっています。よくわかりませんね(笑)。
 塾長は、司馬遼太郎さんが好きです。ある図学の先生は『竜馬がゆく』(文春文庫)を挙げています。
 小説は、全体として、ドストエフスキー、夏目漱石が挙げられることが多いです。

 2004~2008年版は、急に、『ファインマン物理学』を含め、ファインマン先生の著作が増えるような気がします。

 興味がある人、将来の専攻に考えている人は、ここで挙げられているような本を、早くから手にとってみてはいかがでしょうか。

 

『東大教師が新入生にすすめる本』とフーコー

 権力と知の関係性の観点からすれば、大学教授による新入生への本の推薦は、単なる知識の伝達ではなく、権力関係の再生産として捉えることができます。教授は、大学という制度的権威を背景に、特定の知識やテクストを「読むべきもの」として提示することで、新入生の知的な関心や思考の方向性を規定しようとしているのです。

 また、言説分析(言葉や文章がどのように社会を形作っているのかを分析する考え方)の観点からは、推薦される本のリストそのものが、一つの言説的実践として機能していると言えます。そのリストは、東京大学というエリート教育機関が重視する知識体系や価値観を体現しており、新入生に特定の「真理」を内面化(外から与えられる情報や価値観を、自分の内面に取り込み、自分のものにしていくこと)させる働きを持っています。推薦図書リストは、大学教育という規律訓練の一環として、新入生を特定の知的規範に適合させるための装置なのです。

 さらに、主体の構築という視点から見れば、推薦図書を読むことは、新入生が「東大生」としての主体性を形成する過程の一部だと言えるでしょう。推薦された本を読み、理解することは、大学の知的共同体への参入を意味します。新入生は、推薦図書を通して、東大生としての自己認識を獲得し、エリートの一員としてのアイデンティティを構築していくのです。

 ただし、フーコーの権力論からすれば、この過程は、新入生が受動的に権力に従属することを意味するわけではありません。新入生は、推薦図書を批判的に読み、自らの解釈を生み出すことで、支配的な言説に抵抗し、オルタナティブな知の可能性を切り拓くこともできるはずです。大学教育の中で、既存の知の枠組みを問い直し、新たな思考を生み出すことは、フーコーが重視した「批判」の実践だと言えるでしょう。

 また、推薦図書をめぐる言説は、東京大学という特定の制度的文脈の中で生み出されたものです。他の大学や教育機関では、異なる推薦図書リストが存在し、別の知的規範が重視されているかもしれません。フーコーの視点からすれば、これらの差異は、知の多様性と権力関係の複数性を示唆するものだと言えます。私たちは、特定の推薦図書リストを絶対視するのではなく、複数の知的伝統や価値観の並存を認め、それらの間の対話と交渉を促進していく必要があるでしょう。

 東京大学の先生達が新入生に本を推薦することは、知識の伝達であると同時に、権力関係の再生産でもあります。それは、大学教育という規律訓練の一環であり、新入生を特定の知的規範に適合させる働きを持っています。しかし、新入生は、推薦図書を批判的に読み、オルタナティブな知の可能性を探ることで、支配的な言説に抵抗することもできるはずです。

 フーコーの思想は、推薦図書をめぐる言説の背後にある権力の作用を可視化し、知の多様性と複数性を認めることの重要性を示唆しています。私たちは、特定の推薦図書リストに囚われることなく、多様な知的伝統との出会いと対話を通して、新たな思考の地平を切り拓いていかなければならないのです。大学教育の目的は、既存の知を再生産することではなく、批判的な思考力を培い、知の創造に参与する主体を育むことにあるのかもしれません。

 

『東大教師が新入生にすすめる本』とハイデガー

 ハイデガーにとって、大学とは単に専門的な知識を教授する場ではなく、学問の本質を問い、真理を探究する場でした。彼は『ドイツ大学の自己主張』の中で、大学の使命について次のように述べています。「大学の本質的な課題は、学問的認識を通じて、現存在全体を最高度の明晰性と責任とへともたらすことである」。つまり、大学教育の目的は、学生たちが自らの存在の意味を問い直し、本来的に生きることを促すことなのです。

 この観点から見るなら、先生達が新入生に本を勧めるという行為は、単なる読書案内ではなく、学問の世界への招きだと言えるでしょう。彼らは自身の研究や思索を通じて得た洞察を、本という形で学生たちに伝えようとしているのです。そこには、若い魂を導き、新たな地平を切り拓こうとする教育者の情熱が込められているはずです。

 ハイデガーはまた、学問を「現存在の根本様式」の一つと捉えました。学問とは、事象そのものに向き合い、その本質を問うことです。これは容易なことではありません。なぜなら、私たちは日常的な見方や先入観に囚われがちだからです。しかし、本を読むという行為は、そうした殻を破り、新たな視点を獲得する契機となり得ます。先生達が勧める本には、既成の枠組みを超えて、世界を根源的に捉え直す力が秘められているのです。

 もちろん、ここで重要なのは、単に本を読むことではなく、本と真摯に対話することです。ハイデガーが強調したように、言葉とは単なる記号ではなく、存在を開示する出来事です。私たちが本を読むとき、そこには著者との出会いがあります。著者の思索に耳を傾け、みずからの存在を問い直すことで、私たちは新たな地平を切り拓いていくことができるのです。

 また、先生達が新入生に本を勧めるという行為には、学問共同体の一員として迎え入れるという意味合いもあるでしょう。ハイデガーは、大学を「指導者と追随者の共同体」と呼びました。そこでは、先生と学生が共に真理を探究し、互いに切磋琢磨しながら成長していきます。新入生に本を勧めることは、彼らを学問の世界へと誘い、共に歩むことを呼びかける象徴的な行為なのです。

 ただし、ここで注意しなければならないのは、本を読むことが自己目的化してはならないということです。ハイデガーが批判したように、大学が単なる専門知識の習得の場に堕してしまっては、その本来の使命を見失ってしまいます。あくまでも大切なのは、本を通じて獲得した知見を、自分自身の生の課題として引き受けることなのです。

 そのためにも、先生達は学生たちに対して、本を批判的に読む姿勢を促す必要があるでしょう。ただ受動的に著者の意見を受け入れるのではなく、みずからの経験や思索と突き合わせながら、本と対話することが求められます。そうした能動的な読書こそが、学生たちを本来的な在り方へと導く鍵となるはずです。

 さらに言えば、先生達自身も、常に学び続ける姿勢を持つことが大切です。学問の道に終わりはありません。私たちは誰もが、みずからの無知に気づき、新たな知を求めて歩み続けなければならないのです。先生達が学生たちに示すべきは、完成された知識ではなく、真理を愛し、探究し続ける生き方なのかもしれません。

 東京大学の先生達が新入生に本を勧めるという一見些細な行為は、実はハイデガーの思想と深く響き合っています。それは単なる知識の伝達ではなく、学問の本質を問い、本来的な在り方を模索する契機なのです。先生達の推薦図書リストには、学生たちを導こうとする情熱と、共に真理を探究する友愛の精神が込められているはずです。

 新入生たちには、そうした先達からのメッセージを謙虚に受け止め、みずからの人生を問い直すことが求められます。本を媒介として、先生達との、そして先人達との対話を重ねることで、彼らは新たな地平を切り拓いていくことができるでしょう。そのとき、大学は単なる学舎ではなく、真理への愛に溢れた生きた共同体として、学生たちの魂を育んでいくはずです。

 

『東大教師が新入生にすすめる本』とデリダ

 まず、「東京大学の先生」という主体は、一枚岩ではありません。各教員は、それぞれ異なる専門分野、思想的立場、価値観を持っており、その多様性は「何冊か本を勧める」という行為にも反映されているはずです。しかし、「東京大学の先生」という集合的なアイデンティティが前面に押し出されることで、その多様性は覆い隠されてしまいます。ここには、ある種の権力の作用が見て取れるでしょう。

 また、「東京大学の新入生」という存在も、脱構築の対象となり得ます。新入生は、入学試験という制度的な選抜を経て、「東大生」というアイデンティティを付与されます。しかし、それは単なるラベルに過ぎず、新入生一人一人の個別性を捨象したものだと言えます。「東大生」という主体は、大学という制度によって構築された仮構であり、決して自明の存在ではないのです。

 さらに、「本を勧める」という行為自体も、脱構築の対象となります。本を勧めるということは、ある特定の知識やイデオロギーを推奨し、他の知識やイデオロギーを排除することでもあります。そこには、大学という権威による言説の統制が働いていると考えられます。デリダが指摘したように、テクストの意味は決して一義的に確定できるものではありません。しかし、本を勧めるという行為は、テクストの多義性を抑圧し、特定の読解を強要するものでもあるのです。

 ただし、だからと言って、本を勧めること自体が全く意味を持たないわけではありません。デリダは、「pharmakon(ファルマコン)」という概念を提示しました。「pharmakon」とは、毒にも薬にもなり得る両義的なものを指します。本を勧めるという行為も、知的な啓発の契機となる一方で、特定のイデオロギーを注入する装置にもなり得るのです。

 重要なのは、この両義性を認識し、批判的に吟味することでしょう。東京大学の先生達が本を勧めるとき、彼らは自らの権力を行使しています。しかし、その権力は絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得るのです。新入生は、勧められた本を無批判に受け入れるのではなく、そこに潜む権力関係を見抜き、自らの読解を通してテクストの多義性を開いていく必要があります。

 そのとき、「東京大学の先生」と「東京大学の新入生」という主体もまた、脱構築されていくことになるでしょう。本を媒介とした対話の中で、両者の境界は揺らぎ、固定された関係性は解体されていきます。そこに生まれるのは、知の伝達ではなく、知の生成のプロセスです。

 「東京大学の先生達が、東京大学の新入生に、何冊か本を勧める」という行為は、決して一枚岩の権威から無知の学生への一方的な贈与ではありません。それは、権力と知のダイナミックな相互作用の場であり、脱構築の契機を孕んだ出来事なのです。重要なのは、その複雑さと両義性を認識し、批判的に吟味していくことでしょう。そのとき、大学という制度もまた、絶えざる脱構築のプロセスの中で更新されていくのではないでしょうか。

 

キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)

東大脳の作り方(平凡社新書)

東京大学文系・理系数学 傾向と対策と勉強法

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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【感想・書評】東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法(KADOKAWA)

 

【感想・書評】東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法(KADOKAWA)

 

 

『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法』の感想、書評

2018年8月の新刊です。
東大医学部在学中に司法試験も一発合格し、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでベスト30にも入った、河野玄斗さんの本です。

塾長も、一応、プロフェッショナルとしての自覚を持って仕事をしておりますので、勉強法の本は多く読んでおり、この本には、あまり目新しいことは見られませんでした。
たとえば、帯と本文にある

「1000時間勉強して将来の年収が100万円上がる場合、勉強の時給は100万円✕40年÷1000時間=時給4万円になるよ。なんでみんなそんなに勉強しないの?」

というのも、有名な和田秀樹さんの本には書いてあります。
勉強法も当塾の、勉強法の基本のページと重複する内容も多いです。

しかし、そのことは、この本の評価を下げるものではありません。塾長が読んでいるような本を読んでいない人は、世間にはたくさんいるでしょう。そのような人が、東大医学部で、司法試験に合格して、メディアに出ている人の本ということで、この本を読んだなら、社会的にはプラスになるということです。また、今まで言い尽くされてきたようなことを徹底することが大切だ、ということも言えるでしょう。そもそも、本の題名にも「シンプルな」とあります。

 

数学を学ぶメリット?

 

問題解決能力が養われる?

 まあ、数学を学ぶと問題解決能力が養われるかもしれません。たしかに、筆者は、2023年現在、司法試験、医師国家試験に加え、公認会計士試験にも合格し、YouTuberとして活動し、予備校も作るそうです。問題解決能力は、遺憾なく発揮されていると思います。しかし、上記のいずれも、1つ1つバラせば、なにも目新しいものはありません。YouTubeの内容も、大学入試の問題を解説する、解くといった、YouTube上にいくらでも存在する内容のものが多いです。まあ、筆者自身の人生なので、好きに生きればいいと思いますが、東大医学部卒に世間が期待しているのは、今まで誰もしていないことをやり遂げる、まず、そのことを探す「問題発見能力」なのではないかと思うのです。ノーベル賞級の研究をするとかですね。

 

論理的思考力が身につく?

 塾長の経験と私見ですが、数学を勉強すると、まずまず論理的な人は、より論理的になれると思います。一方、論理的でなく、数学を、解き方丸暗記科目と履き違えてしまったような人は、脳の「丸暗記神経回路」がより強化されるだけで、論理的にはなれないと思います。数学には「丸暗記」という逃げ道があるので、論理から逃げられない、宮本算数教室のパズルあたりが良いのではないかと思います。そうすると、論理的に考える脳の神経回路が構築されるのではないでしょうか。

 

『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法』の出版社の実績、信頼性

 『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法』の出版社は、KADOKAWAです。本書は、受験よりの一般書と言えます。一般書も多く出していますが、大学受験界では、共通テストの各科目の解説書である、見た目が黄色で有名な『大学入試共通テスト◯◯の点数が面白いほど取れる本』や『物理基礎・物理が面白いほどわかる本』、『坂田アキラの◯◯が面白いほどわかる本』シリーズ(黄色)、『世界一わかりやすい京大の理系数学・文系数学』(黄色)など、解説が詳しい本に定評があると思います。
 信頼性と実績は絶大だと思います。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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【感想】英語の歴史 過去から未来への物語(中公新書、寺澤盾):東大・医学部受験におすすめ?

 

東大・医学部受験の英語の勉強法

 

【感想】英語の歴史 過去から未来への物語(中公新書、寺澤盾):東大・医学部受験におすすめ?

 

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 2008年10月25日初版。
 寺澤盾先生は東京大学名誉教授です。東京大学文学部英語英米文学科卒業。2022年現在は、青山学院大学文学部英米文学科の教授をされています。お父さんの寺澤芳雄先生も、中世英語、英語史専攻の東大名誉教授です。本書の「あとがき」では、中学生の頃は、英語に抵抗感を持っていた、とのことですが、結局は、親子でバトンを繋いだのでしょうか。大学時代に英語に興味を持ったのは、皮肉にも、お父さんの書斎の本が原因だったそうです。お母さんも中・高の英語の先生だったそうです。
 青山学院大学の寺澤盾先生のサイトには「20世紀以降の現代英語は英語史の研究領域とは見なされていませんでした。」「20世紀以降の英語におこっているさまざまな通時的変化や世界で用いられている英語(Englishes)の多様性が明らかにされつつあります。そうした新たな潮流の中で、「現代英語の多様性と変化」が私の新たな研究テーマとなっています。」とあります。本書も「英語の歴史」という題名ですが、現代の英語にとどまらず、英語の未来についても考察しているのは、先生の問題意識を反映されているのだと思います。
 英語での題名も「Chainging English」となっています。

 

『英語の歴史 過去から未来への物語』を読んでほしい人

 世界史をだいたい把握している、英語が好きな高校生以上。

 

国際語としての英語

 本書では、英語の歴史を語る前に、現在の国際語としての英語について述べています。インターネット言語として、広告に使用される言語として、外交・通商、航空・海洋上の通信、学術の世界で使用される言語として。
 そして、世界語となった英語の特徴として、ドイツ語やフランス語に比べて語彙数が多いことを挙げています。その理由として、「歴史的に」英語が外国語に対して門戸を開いてきたことを挙げています。
 本書は、このような流れで、英語の語彙の増大を中心に、歴史的背景を見ていこう、ということなのだろうと思いました。

 

英語のルーツ

 現在、世界中で15億人に話されている英語ですが、およそ1500年前に英語という言語が形成された頃に、この言語を話していた人達は、ブリテン島、現在のイギリスではなく、デンマークから北西ドイツ、オランダに住んでいたとのことです。
 世界史で「ゲルマン民族の大移動」を習います。「ゲルマン民族の大移動」により、彼らはブリテン島に移動してきたので、そう考えれば、そうだよなあ、と思いました。

 したがって、現代ドイツ語と英語は、多くの点で似ている、と考察しています。
 その他、ゲルマン語とその他の印欧語族(ラテン語に由来する)の差異などについても考察されています。

 

語彙の増大

 先ほど、現在の英語は、ドイツ語、フランス語に比べ、語彙数が多い、と触れました。本書では、世界史上の大事件から、英語の語彙の増大について考察しています。
 まず、1066年に、ノルマンディー公ウィリアムによるブリテン島征服がありました。ウィリアム1世の母語はフランス語であり、この頃、大量のフランス語が流入した、としています。
 まあ、中国に征服されたわけではない日本にも、漢字が大量に流入している状況などからすると、それはそうだろうなあ、と思いました。
 次に、1500年以降、イギリスにもルネサンスが流入し、英語にもギリシア語、ラテン語が数多く導入されることになったとのことです。

 日本語にも、ほぼ同じような意味で、異なる表現がありますが、英語にも、そのようなものは多いです。本書では、上記の借用語の多さがその原因である、としています。ウィンストン・チャーチルが第二次世界大戦中に行った演説は、ほぼ、借用語を使わず、本来語のみが使われており、それにより、徹底抗戦の強い意志を込める力を持った、と述べています。
 日本語でも、和語のみを意識して使った場合、独特のニュアンス、雰囲気を表現することができるだろうなと思いました。

 寺澤先生はこれらの借用のマイナス面について「英語では、語源が異なるため、意味上関連がありながらそれが語形に反映されない語群が数多くあり」学習者にとって、語彙の記憶を難しくさせている、と述べています。
 こういうわけで、大学受験生は、単語を覚えるのが大変になっているのですね。

 

綴り字・発音・文法の変化

 本書では、主に、語彙の増大をメインに述べていて、文法の歴史的変化についての記述が少ないことが物足りないのが残念ですが(そのような他書もある)、少しだけ述べられています。英語は、フランス語に比べると、たとえば、定冠詞、不定冠詞などの活用が少ないですが、古英語時代は、活用が多かったようです。活用が減ると、日本の中学生、高校生あたりは喜びそうですが(笑)、英文を読む際に、語形から主語や目的語を区別することが難しくなります。日本語の古文で、敬語から、主体、客体を判断するようなものでしょうね。したがって、英語では、語順がSVOで固定化されていく傾向が強まり、文法関係を明示する前置詞などが発達していくことになる。そして、現代英語では
 It rains.
などと、意味上主語がない場合にも、形式的に主語を置かなければならない、と述べています。文法書などでは「天候のit」などと説明されますが、なるほどなあ、と思いました。

 また、助動詞において「婉曲表現は使われていくうちに婉曲性・丁寧さが薄れていくので次々に新たな婉曲表現が必要となる」という記述は、現代日本語にも当てはまる普遍的なものなのでしょう。具体的には、must(義務)の意味を表したいのに、少し穏やかなmay(許可)を使う、といった歴史があったのではないかということです。
 そういえば、日本でも、コンビニの店員さんなどは「千円からでよろしかったでしょうか?」などと、かなり婉曲的な表現をよく使うなあと思いました。「千円でいいですか」という普通の丁寧表現だと、もはや、それほど丁寧に感じられない、ということですね。

 私達も苦労している英語の綴りと発音のずれですが、その要因は様々だが、1つは「発音が古英語以来多様に変化してきたのに対し、綴りは書物などの書記媒体の普及や学校教育によって標準化・固定化される傾向にあり、発音変化が必ずしも綴りに反映されていないからである。」とし、たとえば、handkerchiefのdなど、発音が難しい子音の連鎖により発音の欠落が起きた、外国語からの借用、などの例を挙げています。
 綴り字改革も試みられてきたようですが、英語は世界に広まっていて地域ごとに発音が異なること、同音異義語の区別がつかなくなること、関連語が綴りによる関連性が見えにくくなってしまうこと、などから、大規模な綴り字改革は期待できない、とのことです。

 

英語の未来

 寺澤先生は、20世紀以降の英語の変化も研究テーマとされていることは、冒頭で述べました。本書では、それを超えて、英語の未来について考察しています。
 英語は国際語としての地位を保ち続けるか。
 国際化を念頭に置いた、英語簡略化の試みも続けられているそうです。先述のように、借用語などが原因で、英語の語彙は多く、難しいです。それをできるだけ簡素化する。また、付加疑問文の選択、穴埋め問題は、日本の高校の英文法のテストでよく出ますが、それを簡素化して統一する。先述のように綴りと発音のズレが著しいが、綴りを発音に近づけ、簡略化する流れがますます強まるであろう。
 英語を第一外国語として話す人より、第二外国語として話す人のほうがすでに多く、したがって、イギリスやアメリカが、国際語としての英語をコントロールしていくことは、まずまず難しくなるであろう。一方、英語でない言語を母語とする人々が、母語をさっさと捨て去ることはないであろう。言語は文化的アイデンティティと深く関わっているからである。などと述べられています。
 英語の歴史の本でありながら、20世紀以降の英語の変化も研究テーマとされている寺澤先生としては、この「英語の未来」の考察については、おそらく、世に向けて強く発信したかった部分ではないか、と思いました。

 巻末には、英語の歴史について書かれた他書、英語史年表なども載っています。

 塾長も、英語の授業中に、本書で学んだ内容を生徒に話し、少しでも生徒が英語学習に興味を持って臨んでもらえれば、と思いました。

 

東大・医学部受験におすすめ?

 この本を読んでも、受験で点が増えるということはないと思います。ただ、英語が好きな人は、より、英語学習のモチベーションが上がるかと思います。

 

『英語の歴史 過去から未来への物語』の目次

第1章 国際語としての英語

第2章 英語のルーツ

第3章 語彙の増大
1.英語史の概要
2.古英語期-派生と複合による新語形成
3.中英語期-大量のフランス語流入
4.近代英語期-国際化した借用語

第4章 綴り字・発音・文法の変化
1.綴り字と発音のずれ
2.文法-人称代名詞と助動詞の発達

第5章 英語の拡張

第6章 現代の英語
1.科学技術の進歩
2.環境問題
3.差別撤廃運動
4.性差とフェミニズム

終章 英語の未来

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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