【書評・感想】勉強の哲学 来たるべきバカのために(文藝春秋、千葉雅也)

 

【感想・書評】勉強の哲学 来たるべきバカのために(文藝春秋、千葉雅也)

 

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『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の著者と信頼性 

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の著者の千葉雅也先生は立命館大学の准教授(その後教授になりました)です。東大卒。フランスにも留学し、哲学、表象文化論を専攻され、フランス現代思想の研究と美術、文学、ファッションなどの批評を連関して行っているそうです。他に『現代思想入門』(講談社現代新書)などの著書があります。
 有名大学の教授なので、信頼性は絶大と言えます。

 

『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の感想、書評

 本書は、東大、京大でも売れたそうです。一言で言えば、自己啓発と自己破壊の間で揺れ動く、普遍的な「勉強」の問いを提示してくれる作品です。
 大学受験生がしなければならないのは「勉強」ですね。

 

「哲学」とは

 「哲学」を辞書で引くと、「世界・人生などの根本原理を追求する学問」とあります。つまり、本書も、大学の哲学の准教授(現教授)の千葉雅也先生が、「勉強」の「根本原理を追求」しよう、という試みだと思います。

 

「勉強とは自己破壊である」を哲学する

 千葉雅也先生は「勉強とは自己破壊である」とおっしゃいます。
 環境の中で「こうするもんだ」という「ノリ」に合わせていた「ただのバカ」から、別の考え方=言い方をする環境へ引っ越し、「来たるべきバカ」になることであると。
 たとえば、大学受験塾チーム番町から800mほどの靖国神社には、大村益次郎像が立っています。「あの銅像は大村益次郎像だよね」くらいが普通の「ノリ」でしょう。
しかし、大村益次郎について勉強すると、家業は長州の村医者で、大坂適塾で蘭学を学び、塾頭として頭角を現して、宇和島藩では黒船を作り、江戸では、幕府の学問所の教授を務めるとともに、大村益次郎像から番町側に行ったあたりで「鳩居堂」という蘭学(数学、物理学、化学、オランダ語など)の塾を開いていて、長州藩にスカウトされ軍務大臣のような職務に就き、幕府の第二次長州征伐では司令官として幕府軍を押し返し、戊辰戦争では江戸城で総指揮を採った、などということがわかります。
 こんなことをベラベラと話しだしたら、「ノリが悪い」「キモい」「周囲から浮いている」人だと思われることでしょう。本書では、そうなることが「勉強」だとしています。
 いやあ、レベルが高い「勉強」ですね。周囲から浮いて、変なやつだと思われる覚悟が必要ですね。勉強とは恐ろしいものだな、と思いました。これまでの自己という概念を壊し、新たな視点や思考方法を受け入れることは極めてチャレンジングであり、安定した自己を捨て去ることでしか、真の理解や学び、つまり勉強の哲学が得られないということですね。

 デリダは、私たちが無批判に受け入れている価値観や概念を脱構築することを提唱しました。つまり、私たちが当然のものとして受け入れている「ノリ」や「常識」そのものを問い直すことが重要だと考えました。
 千葉先生の言う「ただのバカ」とは、ある特定の環境の中で支配的な価値観に無批判に順応している状態を指すと言えるでしょう。それは、デリダの言う「ロゴス中心主義」的な思考、つまり、ある特定の言説や価値観を中心に据えて、それ以外の可能性を排除してしまう思考に他なりません。
 一方、「来たるべきバカ」になるということは、そのような支配的な価値観から脱却し、新たな思考の可能性を切り拓くことを意味するのではないでしょうか。それは、デリダの言う「脱構築」の実践にほかなりません。
 ただし、ここで注意すべきは、「来たるべきバカ」もまた、一つの「ノリ」や「常識」に過ぎないということです。デリダが示唆するように、どのような価値観も絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得るのです。
 したがって、真の意味での「勉強」とは、ある特定の価値観を別の価値観に置き換えることではなく、価値観そのものを常に問い直し、更新し続けることなのかもしれません。それは、「ただのバカ」から「来たるべきバカ」へ、そしてまた新たな「バカ」へと、終わりなき自己破壊と自己更新のプロセスを辿ることを意味するのです。
 そのためには、私たちは自分自身の思考の枠組みを常に疑い、問い直すことが求められます。自分が無意識のうちに前提としている「ノリ」や「常識」を脱構築し、新たな可能性に開かれていく勇気が必要なのです。
 千葉先生の言葉は、デリダの思想と共鳴しながら、私たちに「勉強」の本質的な意味を問いかけているように思えます。「勉強」とは、固定化された知識を獲得することではなく、自己を破壊し、更新し続けることなのです。

 

「勉強しなさい」を哲学する

 『メイキング・オブ・勉強の哲学』のほうでは「勉強しなさい」という言葉について、少し語られています。世間一般の「勉強しなさい」は、「そこそこ稼ぎのある勤め人になってくれればいい」という程度であって、逆に、深くものを考えてヤバいこというやつになっちゃ困ると思っている、としています。勉強は恐ろしいことであると。
 深くものを考えると、塾長のように、世の中の塾、予備校は、間違っているのではないか、という「ツッコミ」(すぐ下で述べます)、ちゃぶ台返しを始めることになります。また、そもそも現在、大学の研究や、現場の気鋭の指導者によると、「勉強しなさい」というのは、逆効果、ということになっています。子供が本書のように勉強すると、逆に親は「勉強しなさいと言うのは逆効果だということは、大学の研究なんだけど、そんな事も知らないの?そっちこそ勉強すれば?」と言われることになりますね(笑)。
 さて、それでも、世間の保護者は子供に「勉強しなさい」という勇気があるでしょうか?「勉強しなさい」と言うほうも、その発言の意味を、深掘りする、「勉強の哲学」について考える必要があると思いました。

 世間一般の保護者は、勉強とは社会の支配的な価値観に適応するための道具であり、既存の秩序を維持するためのものだと考えています。
 しかし、デリダ風に言うと、このような勉強観は、ロゴス中心主義的な思考に基づいています。それは、特定の価値観や規範を中心に据え、それ以外の可能性を排除する思考です。「そこそこ稼ぎのある勤め人」という価値観もまた、一つの構築物に過ぎないのです。
 保護者が「深くものを考えて、ヤバいこと言うやつ」を忌避するのは、その価値観が脅かされることを恐れているからだと言えるでしょう。支配的な価値観に疑問を呈し、別の可能性を探ろうとする態度は、既存の秩序を揺るがす危険性を孕んでいます。
 しかし、真の意味での勉強とは、まさにそのような危険性を引き受けること、だと思います。勉強とは、固定化された知識を受動的に吸収することではなく、既存の価値観を脱構築し、新たな思考の地平を切り拓くことだと言えるでしょう。
 その意味で、勉強は確かに「恐ろしいこと」なのかもしれません。それは、自分自身の確信や価値観を根底から揺るがし、未知の領域へと踏み出すことを要求するからです。勉強とは、自己を破壊し、更新し続ける終わりなきプロセスなのです。
 このように考えると、保護者の「勉強しなさい」という言葉は、皮肉にも、勉強の本質を見失わせる危険性を孕んでいると言えるでしょう。真の意味での勉強は、社会の支配的な価値観に適応することではなく、その価値観そのものを問い直し、脱構築することなのだと思います。
 ただし、ここで注意すべきは、「ヤバいこと言うやつ」もまた、一つの価値観に過ぎないということです。どのような立場も絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得るのです。
 したがって、勉強の目的は、ある特定の立場に与することではなく、あらゆる立場を相対化し、常に新たな可能性に開かれ続けることだと言えるでしょう。それは、保護者の価値観をも、「ヤバいこと言うやつ」の価値観をも超え出る、終わりなき思考の運動なのです。
 勉強とは、安定した地盤を踏み外し、未知の領域に飛び込むことと言えるでしょう。

 

勉強の哲学におけるツッコミとは?

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、いわゆる漫才でいう「ツッコミ」について「アイロニー」という用語を使っています。たとえば、学校へ行く、テストでいい点を取る、というのは、普通の「ノリ」でしょう。
 ここで自分にツッコミを入れます。「なぜ学校に通っているのだろう」「なぜテストでいい点を取らなければならないのだろう」。すると、「学校」とはなにか、「テストとはなにか」、「勉強とはなにか」(まさに、本書のテーマ、勉強の哲学)など、深いテーマが開けてくるはずです。
 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、「アイロニー」は「根拠を疑うこと」としています。「なぜ学校に通っているのだろう」「なぜテストでいい点を取らなければならないのだろう」なども、根拠を疑っています。また、東大を目指すなら予備校の「東大コース」に通う、医学部を目指すなら予備校の「医学部コース」に通うことは普通のことと思われがちです。しかし、「本当に東大数学なんてあるのだろうか」「本当に医学部英語なんてあるのだろうか」と根拠を疑ってみることが大切、哲学なのだと思います。

 「学校へ行く」「テストでいい点を取る」ということが「普通の『ノリ』」とされているのは、まさにそれが社会的に構築された価値観だからです。しかし、その価値観自体は自明のものではなく、常に問い直される必要があります。
 「なぜ学校に通っているのだろう」「なぜテストでいい点を取らなければならないのだろう」という問いかけは、その価値観の根拠を問う「アイロニー」の実践に他なりません。それは、一見自明に見える前提を疑い、別の可能性を探ることを意味します。
 デリダの観点からすれば、このような「アイロニー」は、単なる否定や懐疑ではなく、新たな思考の地平を切り拓く積極的な営みです。既存の価値観を脱構築することは、私たちを固定化された意味の束縛から解放し、新たな解釈と創造の可能性に開かれた場所へと導くのです。
 ただし、ここで注意すべきは、「アイロニー」もまた一つの立場に過ぎないということです。デリダが示唆するように、どのような立場も絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得ます。「アイロニー」の実践者もまた、自らの立場を相対化し、問い直し続ける必要があるのです。
 したがって、真の意味での「勉強」とは、ある特定の立場に与することではなく、あらゆる立場を相対化し、常に新たな可能性に開かれ続けることだと言えるでしょう。それは、「普通の『ノリ』」をも、「アイロニー」の立場をも超え出る、終わりなき思考の運動なのです。
 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』における「アイロニー」の概念は、デリダの脱構築の思想と深く共鳴しながら、私たちに「勉強」の本質的な意味を問いかけているように思えます。「勉強」とは、固定化された価値観を受け入れることではなく、その価値観そのものを常に問い、揺るがし続けることなのです。

 

勉強の哲学におけるボケとは?

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、いわゆる漫才でいう「ボケ」について「ユーモア」という用語を使っています。「ユーモア」とは、見方を変えること、「ノリ」を「拡張」すること。
 先述の大村益次郎についてこまごまと語るのも、「ノリ」の「拡張」ですね。逆に、靖国神社について話をしているときに、大村益次郎像の話に「縮減」して、大村益次郎についてこまごまと語りだすのは「ノリ」の「縮減」でしょう。
 「なぜ?」と問い続けることと、見方を変えて新たな視点を持つことの両方が、深い学びと理解、つまり、勉強の哲学へと繋がることを示していると思いました。

 デリダは、意味の固定化や二項対立的な思考を脱構築することを試みました。彼にとって、言語は常に不確定で、意味は絶えず差延されるものでした。したがって、ある特定の見方に固執することは、思考の可能性を狭めてしまう危険性があります。
 「ボケ」としての「ユーモア」は、まさにそのような固定化された見方を揺るがす働きを持っていると言えるでしょう。「ユーモア」とは、常識的な見方を逸脱し、別の視点から物事を捉え直すことを意味します。それは、既存の枠組みに収まらない発想の飛躍であり、新たな解釈の可能性を開く営みなのです。
 このような「ユーモア」の実践は、デリダの脱構築の戦略と重なり合うものがあります。脱構築とは、テクストに内在する矛盾や欠落を暴き出し、既存の意味の体系を揺るがすことを目指します。それは、一見自明に見える前提を疑い、別の読みの可能性を探ることに他なりません。
 「ユーモア」もまた、日常的な見方を相対化し、別の視点から世界を捉え直すことを可能にします。それは、私たちを意味の固定性から解放し、新たな思考の地平を切り拓く営みだと言えるでしょう。
 ただし、ここで注意すべきは、「ユーモア」もまた一つの見方に過ぎないということです。デリダが示唆するように、どのような見方も絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得ます。「ユーモア」の実践者もまた、自らの視点を相対化し、問い直し続ける必要があるのです。
 したがって、真の意味での「勉強」とは、ある特定の見方に固執することではなく、あらゆる見方を相対化し、常に新たな可能性に開かれ続けることだと言えるでしょう。それは、常識的な見方をも、「ユーモア」の視点をも超え出る、終わりなき思考の運動なのだと思います。
 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』における「ユーモア」の概念は、デリダの脱構築の思想と共鳴しながら、私たちに「勉強」の本質的な意味を問いかけているように思えます。「勉強」とは、固定化された見方を受け入れることではなく、その見方自体を常に問い、揺るがし続けることなのだと思います。

 さて、塾長は、なぜ、大村益次郎について語りたいのでしょうか。それは、語ることが楽しいからです。「享楽」に浸っているからです。本書では、「縮減的ユーモア」は「享楽的こだわり」のために口を動かしている、とします。

 「やりたいことが見つからない」「大学の志望学部がわからない」といった人は多いと思います。そういう人は、自分は何が楽しいのか、「享楽的こだわり」を考えてみるといいのかな、と気付かされました。

 

勉強の哲学における有限化とは?

 「ツッコミ」「アイロニー」によって「なぜ?」を「追求」するにせよ、「ボケ」「ユーモア」によって「連想」を「拡張」するにせよ、上記のこのような問いは無限に深まります。
 そこで勉強の有限化は、勉強において本質的、哲学的です
 たとえば、大学受験の日本史では、「大村益次郎」と書かされたり、選択させられたりすることはあっても、大村益次郎の家業が村医者であったり、番町で「鳩居堂」という蘭学の塾を開いていたことは、まず問われないでしょう。

 デリダは、意味の無限の連鎖と差延を強調しました。彼にとって、言語は決して確定的な意味を持つことはなく、常に他の記号へと差延されていくものでした。したがって、「なぜ?」を追求することも、「連想」を拡張することも、原理的には無限に続く営みだと言えるでしょう。
 しかし同時に、デリダは現実の場面での意味の確定を全否定した、「安易なニヒリスト」と指摘されることもあります。脱構築は、意味の無限の遊びに終始するのではなく、むしろ意味の確定を可能にするための条件を問うものでもあったのです。
 この観点から見ると、勉強の有限化は、無限の思考の運動を現実の場面で実践するための不可欠な契機だと言えるでしょう。「ツッコミ」と「ボケ」を無限に続けることは、思考の可能性を開く上で重要ですが、同時にそれを有限の形に結晶させることも必要なのです。
 勉強の有限化とは、ある一定の枠組みの中で思考を展開し、その成果を他者と共有可能な形で表現することを意味します。それは、無限の思考の運動を一時的に停止し、その意味を確定する作業に他なりません。
 ただし、ここで注意すべきは、有限化された勉強の成果もまた、脱構築の対象となり得るということです。デリダが示唆するように、どのような枠組みも絶対的なものではなく、常に問い直される必要があります。有限化された勉強の成果は、新たな「ツッコミ」と「ボケ」の出発点となるのです。
 したがって、真の意味での「勉強」とは、無限の思考の運動と有限化のプロセスを絶えず往還することだと言えるでしょう。それは、「ツッコミ」と「ボケ」によって思考を深化させると同時に、その成果を有限の形で結晶化する営みなのです。
 「ツッコミ」「アイロニー」と「ボケ」「ユーモア」の無限の深まりと、勉強の有限化の必要性は、デリダの思想と共鳴しながら、私たちに「勉強」の本質的な意味を問いかけているように思えます。「勉強」とは、無限の思考の運動と有限化のプロセスを絶えず往還することなのです。

 さて、どうやって勉強を有限化するか。

 

教師は勉強の有限化の装置である

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、教師は有限化の装置である、とします。
 たとえば、上記のように、大学受験では、大村益次郎の家業が村医者であったりすることは問われません。しかし、世の中の大学受験塾、予備校では、大学受験に出題されないことを講義することによって、受験生を引きずり込む、他者との差別化を図る、といった手法がよく行われるようです。数学や物理や化学で、必要のない大学レベルの概念を持ち出す。「東大日本史」は資料読み取り型で細かい知識は必要ないのに、私大のような知識偏重の授業を行う、など。有限化として働くどころか、受験生を「ノリ」の「拡張」の泥沼へと引きずり込んでゆくのだと思います。そして、大学合格からは遠ざかってゆく。
 大学受験塾チーム番町では、例えば、数学は、教科書を理解し、チャート式やFocus Gold(啓林館)あたりを全問解けるようにして、少し入試問題に慣れれば、東大や医学部に合格できる、と勉強を有限化しています。その根拠は、模試や過去問について実際に、「この問題はFocus Goldのこのページを理解していれば解けたよね」「この問題は解けなくても合格点に達するよね」といった検討をする、具体的事実を示すことだと考えています。
 大学受験塾の勉強に対する姿勢は、「哲学的」なのですね(笑)。

 

勉強の哲学における「信頼できる他者」とは?

 世の中には、様々な教育、勉強法の本が存在します。
 お子さん4人を東大理Ⅲに「入れた」ママの教育論。東大法学部卒、元財務官僚で現在は弁護士の「7回読み勉強法」。などなど。
 さて、学生、受験生、保護者は、何を信じればいいのでしょうか?

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、「信頼に値する他者は、粘り強く比較を続けている人である」「「勉強するにあたって信頼すべき他者は、勉強を続けている他者である」とします。つまり、その人たちは、「研究」「学問」に属している人、ということになります。
 つまり、勉強の足場とすべきは「ネット」や「一般書」ではなく、「専門書」「研究書」であるとします。
「専門書」「研究書」は、専門分野の業界や学問の世界に直接・間接の関わりがあり、同種のテーマに関する他者との建設的な議論が背景にあるから信頼性の根拠がある、とのことです。
 したがって、教育論や勉強法について、信頼すべきは、大学の研究に基づく本ということになります。
 大学受験塾チーム番町では、教育論、勉強法について、なるべく、大学の研究に基づく本、または、それに準ずるサンプル数のある本、をおすすめしています。

大学受験塾チーム番町オススメ 教育の本5選

大学受験塾チーム番町オススメ 勉強法の本5選

 大学受験塾チーム番町では、数学、物理、化学の授業で、一番基本の部分の理解に検定教科書を使います。その理由の1つに「共著であり、文科省の検定を通っている」があります。著者の言う「信頼性の根拠」に近いのだと思います。
 教科書検定制度にも弊害はあるでしょう。しかし、現状、数学、理科の教科書は「なぜそうなる」という理解の部分がしっかり書かれていることが多いのに対し、市販や塾の教材は問題の解き方が書いてあるだけのことも多いです。

 トップレベルの中学、高校に合格した人が、高校の数学や理科で挫折する、というのは非常に多い話です。塾長は、この原因の1つは、検定教科書を軽視し、「信頼性の根拠」に欠ける場所に学習の足場を置いたため、教科書に書いているような「なぜそうなる」という理解をせずに、問題の解き方だけを覚えるような悪いクセが身についてしまうからではないかと思います。

 また、法学部に興味がある人へ経済学部に興味がある人へのページでは、予備校の先生が書いた入門書とともに、学者の先生が書いた本を紹介しています。これも、著者の言う「信頼性の根拠」に近いと思います。

 大学受験塾チーム番町は、教育論、勉強法の指導についても「哲学的」なのですね(笑)。

 本の「信頼性」を前提として、読む本をどのように比較し決めるか。著者は「享楽のこだわり」で、自分なりに、主観的に決めるとします。

 

勉強の哲学における享楽とは?

 上記「ボケ」の項で、塾長が大村益次郎について語りたいのは、楽しいから、「享楽」に浸っているから、と述べました。
 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、勉強を有限化するためには、比較を中断する必要があり、そのためには、信頼できる情報を比較する中で、自分の享楽的こだわりによって足場を定める、しかし、それを絶対化しないことが必要、とします。

 デリダは、意味の無限の連鎖と差延を強調すると同時に、現実の場面での意味の確定の必要性も認めていました。脱構築は、意味の無限の遊びに終始するのではなく、意味の確定を可能にするための条件を問うものでもあったのです。
 この観点から見ると、「比較を中断する」ことは、無限の思考の運動を一時的に停止し、意味を確定するための重要な契機だと言えるでしょう。比較を続けることは、思考の可能性を開く上で重要ですが、同時にそれを有限の形に結晶させるためには、ある地点で比較を中断する必要があります。
 ただし、ここで注意すべきは、比較の中断が恣意的なものであってはならないということです。デリダが示唆するように、意味の確定は、単なる主観的な選択ではなく、一定の条件の下で行われる必要があります。
 『勉強の哲学』で提示されている「信頼できる情報を比較する中で、自分の享楽的こだわりによって足場を定める」という方法は、まさにこの点を捉えていると言えるでしょう。信頼できる情報を比較することは、主観的な恣意性を排除するための重要な条件です。そのうえで、自分の享楽的こだわりに基づいて足場を定めることは、意味の確定を可能にする実存的な決断なのです。
 しかし同時に、『勉強の哲学』は、その足場を「絶対化しない」ことの重要性も指摘しています。これもまた、デリダの思想と深く共鳴するものがあります。デリダにとって、どのような意味の確定も、絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得るものでした。
 したがって、真の意味での「勉強」とは、比較の中断と意味の確定を繰り返しながら、同時にその確定された意味を常に問い直し続けることだと言えるでしょう。それは、信頼できる情報を比較し、自分の享楽的こだわりに基づいて足場を定めると同時に、その足場を絶対化することなく、新たな思考の可能性に開かれ続ける営みなのだと思います。
 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』で提示されている勉強の有限化の方法は、デリダの脱構築の思想と共鳴しながら、私たちに「勉強」の本質的な意味を問いかけているように思えます。「勉強」とは、無限の思考の運動と有限化のプロセスを絶えず往還しながら、確定された意味を常に問い直し続けることなのだと思います。

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』では、「享楽のこだわり」は自分のバカの部分で、おそらく変化可能である。自分の根っこ(哲学的な部分)のバカさを変化させる。そのために、欲望年表をつくり、発端にある出来事と出会い直そうとする。別のしかたでバカになり直す。ことを勧めています。
 これが「来たるべきバカ」だそうです。
 「来たるべきバカ」という概念は、自己変革のプロセスを象徴しています。自分自身の「バカさ」を認識し、それを変化させていくことで、新たな自己として生まれ変わることを勧めています。これは、自己成長、勉強の絶え間ない旅であり、その中で常に変わり続けることの美しさを示しています。
 先述した、「やりたいことが見つからない」「大学の志望学部がわからない」といった人にも「欲望年表」は有効なのかもしれないな、と思いました。

 

勉強の哲学についての塾長の私見

 著者は「勉強→引っ越し」という順番で考えているようです。もちろんそれもいいと思います。
 一方で、逆に、「先に引っ越して、勉強のきっかけを得る」という考え方も、たとえば大学受験において、本質的、哲学的ではないかと思います。

 たとえば、東大に20~30人受かる高校と、東大に2~3人ほど受かる高校があったとしましょう。
 高校の授業が教科書とやや上(数学ならチャート式レベル)を扱うという点では、そう変わらないのではないでしょうか。現実に、東大に20~30人受かる高校の下位層より、東大に2~3人受かる高校の上位層のほうが進学実績はいいでしょう。
 ただ、上位層だけを比べるとき、おそらく「環境のノリ」の差が大きいと思います。日常会話の知的レベルも若干違うでしょう。また、中学、高校入試の時点で「何が何でも○○中・高」と思ったか否かの「ノリ」も差を分けるような気がします。
 なるべく大学進学実績のいい高校に入るメリットの1つは、「環境のノリ」にあると思います。

 行動遺伝学によると、能力は遺伝要因が5割ほど、環境5割ほどだそうです。家庭や学校の「環境のノリ」は大きそうです。家庭や学校で日常的に知的な会話が行われる、東大に入るのはアタリマエ、などの環境があれば、大学受験もうまくいきやすいでしょう。

 高校生は普通、家庭を「引っ越し」ませんから、「引っ越す」きっかけは、中学入試、高校入試、だったでしょう。もちろん、これから迎える大学受験も「引っ越す」きっかけでしょう。
 そして、引っ越した先の「ノリ」に合わせるには「勉強」が必要になりますね。

 題名にもあるように、『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の背景には哲学があります。倫理の教科書を読んでいると、少し読みやすいかもしれません。

 

『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の出版社の実績、信頼性

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の出版社は文藝春秋です。雑誌「文藝春秋」は、文学、政治、社会問題など幅広い分野の記事が掲載されている総合雑誌です。また、芥川賞・直木賞の最新情報も掲載されています。「文春文庫」は、たとえば、司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』など、ベストセラーやNHK大河ドラマ化、スペシャルドラマ化された作品が文庫化されています。
 「文藝春秋」「文春文庫」の実績、信頼性は抜群と言えます。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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【感想・書評】東大脳の作り方(平凡社新書):大学受験塾チーム番町との類似点と相違点

 

東京大学文系・理系数学 傾向と対策と勉強法

 

【感想・書評】東大脳の作り方(平凡社新書):大学受験塾チーム番町との類似点と相違点

 

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『東大脳の作り方』の著者

 2006年の本です。
 筆者は当時、桜蔭卒の東大理Ⅲの2年生でした。桜蔭は主席で卒業したそうで、東大理Ⅲも現役合格しています。北海道稚内生まれ。お父さんは自衛官で、お父さんの転勤に伴い、神奈川、岐阜、埼玉、東京の4つの公立小学校に通ったそうです。
 本書の後も『東大病院研修医 駆け出し女医の激闘日記』という本を出されているようです。専門は、どうも、消化管外科方面のようです。

 

『東大脳の作り方』での東大脳とは?

 『東大脳の作り方』という題名は、おそらく、出版社が売れるように考えてつけたのではないかと推測します。本書中では筆者は「東大脳」を「自分の人生を『自分のものとして』生きていく姿勢」「自ら目標を設定し、挑戦することのできる思考形態」としています。
 Amazonの低評価の中には「東大脳」という題名と、本書での定義のズレを批判しているものがあります。しかし、世界陸上400mハードルで銅メダルを2回獲った、為末大さんは、それなりにコーチングというものを理解した人だと思いますが、YouTubeチャンネル「為末大学」で「自分の人生を生きているという感覚が一番の才能であり、後天的に最も与えにくい」と語っています。

 そうすると、本書で筆者が定義した「東大脳」は、そう的外れではなく、先鋭的な教育、コーチングの観点からすると、むしろ、適切なのではないかと思います。

 

塾に通う意味

 筆者は、本文冒頭で、なぜ多くの人が塾に通うのかを考えます。多くの人が疑いもなく行っていることを、改めて考え直すのは、いいことだと思います。
 1つは、学校の勉強が受験に役に立たないと考えられているから。
 もう1つ、さらに大きいのは、みんなただ、なんとなく不安だから。
 筆者も高3の春に大手予備校の数学の東大対策講習に行ってみたそうです。理Ⅲ現役合格の筆者でも、テキストの問題はさっぱりわからなかったそうです。そして、あくまで筆者の個人的な感想ですが、講師が黒板に問題の解法を示し、生徒が板書を写すような授業の形式には馴染めなかったそうです。また、先生の解説を聞いてノートを取るという作業は学校で十分やっているから、そういう授業スタイルである限り塾は要らない、という結論に至ったそうです。

 このあたりの考え方は、大学受験塾チーム番町と似ていますね。大学受験塾チーム番町も
・学校の勉強は受験に直結する
・合格者平均あたりの人が解ける、合否を分けるレベルあたりまでしか扱わない
・板書はしない。生徒が問題を解く。
という方針で運営をしております。

 そして、筆者は高2の10月頃まで、勉強は100%学校に関するものだったそうです。理Ⅲ現役合格の筆者が「学校の勉強をこなすだけでいっぱいいっぱい」「他までとても手が回らなかった」「学校と塾で二重に勉強することがかえって基礎の定着を遅らせるケースもある」と語っています。

 このあたりは、大学受験塾チーム番町では、授業の特長ですで指摘しています。世の中には、学校と塾とで異なる内容を扱う結果、どちらも定着せず、むしろ、成績を下げている人が多くいると思います。

 

著者が理Ⅲを志望した理由

「他の科類は何百人もいるのに、理Ⅲだけ90人…」
「これだけ希少価値があるのだから、ここに入れば自分の実力が証明される。日本中から集まる天才たちと肩を並べることができる。私もその中に入りたい!」

 東大理Ⅲに入るということは、まあ、将来は医師になることがほぼ前提となります。このあたりの動機も、Amazonで低評価をつけた人達からは批判されているようです。医師にふさわしくない、と。

 大学受験塾チーム番町の塾長は、少し違う観点から考えてみようと思います。
 やる気が上がる8つのスイッチ(ディスカヴァー)という本があります。著者は、コロンビア大学モチベーション・サイエンス・センター副所長のハイディ・グラント・ハルバーソン先生です。大学の研究に基づく、ちゃんとした本です。その中で、「証明型か成長型か」というタイプ分けがされます。これは、成長型、つまり、「自分が向上することに焦点を当てる」心の持ちようでなければならないそうです。一方、本書の筆者は、自ら「証明される」と述べているように、証明型、つまり、「人に自分の能力を見せつけ認めさせよう」という心の持ちようです。
 また、マインドセット「やればできる!」の研究(草思社)という本があります。スタンフォード大学の心理学のキャロル・S・ドゥエック教授の著書です。大学での研究、調査に基づく話もたくさん出てくる、ちゃんとした本です。この本では、「こちこちマインドセット」「しなやかマインドセット」という言葉を使っています。「証明型」にあたるのが「こちこちマインドセット」です。「証明型」(こちこち)は、チャレンジを恐れる人が出てくる、試験で非常に悪い点を取ってしまった場合、「自分はもうダメ、どうにもならない」と考える、などとしています。
 本書の筆者は、東大理Ⅲには合格しましたが、その後、医師として、東大医学部出身者にふさわしい活躍をできているのか、モチベーション・サイエンスの観点からは、興味深いところではあります。モチベーションが低下していないことを願います。

 

センター試験(現共通テスト)は高得点を狙え?

 筆者は、たとえ、大学の配点が低くても、旧センター試験では高得点を狙うべき、と本書で主張しています。
 理由の1つは「センター試験はほぼ教科書レベル。リフレッシュできる」という旨のものです。しかし、本書が発売された2006年に比べ、共通テストの性質は、大きく変わっています。まず、共通テストの多くの科目は、「ほぼ教科書レベル」ではありません。理系の場合、数学、物理、化学あたりは、教科書を超えて、チャート式や、国立二次向けの問題集をこなしていたほうが、見通しが良い問題が多いです。そして、では、国立二次と傾向が近いかというと、そうではなく、身近な事柄と絡ませてきたり、定性的な理解を問う問題が出たりします。国立二次との相性はよくありません。
 したがって、大学受験塾チーム番町の塾長は、共通テストと国立二次の合計点が最大になるようなバランスを自分で考えることが大切で、必ずしも、共通テストで高得点を目指す必要はないと考えます。

 

一番でないと意味がない?

 筆者は、自衛官であるお父さんから、幼稚園の頃から「何でも一番でないと意味がない。二番、三番はドベと同じ。」と刷り込まれて育ち、実際に、一番への執着心を持つようになったようです。このことが、東大理Ⅲ合格への原動力になった可能性はあるかと思います。
 一方、先述のように、「一番でないと意味がない」というのは「こちこちマインドセット」の心の持ちようです。挫折により、ポッキリ折れてしまう危険性もはらんでいます。「成長すれば、それは成功である」という「しなやかマインドセット」のほうが、長期間にわたり、やる気が持続する傾向が高いことを考えると、このような教育には、長期的には疑問が残ります。筆者が現在も、熱意を持って医師としての仕事に取り組めていることを願います。
 絶妙なことに、このお父さんは、中学受験が終わった頃から、ほとんど口出しをしなくなったそうです。筆者も述べていますが、お父さんが干渉を続けていたら、大学受験はうまくいかなかったかもしれませんね。いやあ、この点は絶妙だと思います。
 また、筆者は、家庭でのお手伝いによって「自分で考えたことを実行に移す」を身に着けたのではないか、と述べています。これもおそらく大切なことで、進学校の下位層の多くは、何でも保護者がやってあげるので、ただ単に、自分に事を自分でできない、したがって、テスト勉強もうまくできない、というケースが多いと思います。

 筆者は「大学受験で問われる内容は、元をたどれば必ず教科書の内容です」と述べています。
 大学受験塾チーム番町でも、数学、物理、化学の授業は、基本の理解には検定教科書を使いますし、生物、日本史、世界史なども、教科書が信頼できるテキストだと考えています。

 筆者のような考え方で理Ⅲに合格するのは少数派でしょうし、他の部分の記述により、Amazonには低評価のコメントも多いようです。それでも、塾長は、筆者が「自分の人生を『自分のものとして』生きていく姿勢」を貫いた結果たどり着いた大学受験についての結論は、1つの真実を語っているように思います。

 

キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)

東大教師が新入生にすすめる本(文春新書)

東大のこと、教えます(プレジデント社、小宮山宏)

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

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京大数学2018~

 

京大数学2018~

 

2018年京都大学文系数学:難易度、どのくらい解ければ合格点か

 

大問1

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
共通接線の話は、『Focus Gold』(啓林館)あたりにはまず載っています。
計算は少し大変そうです。
理系の大問1も共通接線の問題でした。
完答すべきです。

 

大問2

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
三角比、三角関数と微分の融合問題です。

(1)
QRを求めることと∠BAPを使うことから逆算して頑張れば解けると思います。
図形の入試標準問題に慣れておいたほうがいいでしょう。

(2)
(1)ができれば普通の微分の問題です。
完答すべきです。

 

大問3

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
整数問題です。
理系の大問2と共通問題です。

具体的にn=1、2、3…とやってみて、あたりをつけるのが定石でしょう。
そうすれば方針が見えると思います。
完答すべきです。
大学受験の数学は、入試問題の丸覚えではなく、教科書の理解と『Focus Gold』(啓林館)などの問題集でマスターした技法を入試問題に対して臨機応変に使いこなすことが大切だと思われますが、整数は、問題の性質上、実際に入試レベルの問題に多く取り組む優先順位が高い分野だと思います。

 

大問4

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はD。
四面体の問題。
理系大問6と共通問題です。

(1)
垂直を示す問題。
ベクトルでも初等幾何でもいいでしょう。
四面体の線分の垂直をベクトルで証明する問題は『Focus Gold』(啓林館)あたりには載っています。

(2)
ちょっと思いつきにくいと思います。
合格には(1)ができればいいと思います。

 

大問5

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はC。
確率の問題。
Xnが最大と最小になる場合とそれからいくつかを具体的にやってみて、問題を把握すると、確率の入試標準レベルの問題になると思います。
完答も狙えるでしょう。
大問3でも述べましたが、nを含んでよくわからない問題は、具体的にやってみることが大切です。

大学受験の数学は、入試問題の丸覚えではなく、教科書の理解と『Focus Gold』(啓林館)などの問題集でマスターした技法を入試問題に対して臨機応変に使いこなすことが大切だと思われますが、確率は、問題の性質上、実際に入試レベルの問題に多く取り組む優先順位が高い分野だと思います。

 

京都大学文系数学の傾向と対策と勉強法

 教科書を理解し、チャート式や『Focus Gold』(啓林館)などで受験によく出る技法をマスターし、入試標準問題演習をすれば、上記のように、3~4完+部分点が狙えます。
合格点を大きく上回るでしょう。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような問題に取り組みつつも、『Focus Gold』(啓林館)あたりに抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

 

 

2018年京都大学理系数学:難易度、どのくらい解ければ合格点か

 

大問1

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
(1)
共通接線の話は、『Focus Gold』(啓林館)あたりにはまず載っています。
文系の大問1も共通接線の問題でした。
(2)
軌跡、領域の問題。
原型になるような問題は『Focus Gold』(啓林館)あたりにはまず載っていますし、このくらいちょっといろいろやる程度の問題も入試標準問題集には載っているでしょう。
完答すべきです。

 

大問2

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
文系の大問3と共通問題です。
整数問題です。

具体的にn=1、2、3…とやってみて、あたりをつけるのが定石でしょう。
そうすれば方針が見えると思います。
完答すべきです。

 

大問3

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はC。
半径1の円に内接する等脚台形の4辺の積の最大を考える問題。

まあ、半径1を使うために、円の中心から頂点に補助線を引くものでしょう。
図形問題で最大最小を考えるときは、角をθとおく選択肢を常に頭においておきましょう。
このくらいで、4辺の積を三角関数の最大値に帰着できそうだな、と思えれば、完答も狙えるでしょう。

 

大問4

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
複素数平面と確率と漸化式の融合問題です。
複素数平面の図形的な読み取りは教科書基本レベルで、確率と漸化式の部分も入試標準問題集ではよくあるような話です。
完答すべきです。

 

大問5

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はC。
微分、積分、弧長の問題。
(1)
ゴリゴリやれば出るでしょう。
(2)
ちょっと計算の途中の工夫が大変かもしれません。

 

大問6

『今年の入試で合否を分けたこの1題』誌の難易度はD。
四面体の問題。
文系大問4と共通問題です。
(1)
垂直を示す問題。
ベクトルでも初等幾何でもいいでしょう。
四面体の線分の垂直をベクトルで証明する問題は『Focus Gold』(啓林館)あたりには載っています。
(2)
ちょっと思いつきにくいと思います。
合格には(1)ができればいいと思います。

 

京都大学理系数学の傾向と対策と勉強法

 教科書を理解し、チャート式や『Focus Gold』(啓林館)などで受験によく出る技法をマスターし、入試標準問題演習をすれば、上記のように、3完+(2半~1完2半)ほどが狙えると思います。合格点を大きく上回るでしょう。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような問題に取り組みつつも、『Focus Gold』(啓林館)あたりに抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

 

【レベル】合格る確率(文英堂):東大や京大や医学部に受かる?優先問題は?

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

 

【レベル】合格る確率(文英堂):東大や京大や医学部に受かる?優先問題は?

 

数学の確率で悩んでいる人へ

 数学の確率で、教科書レベルの基本や、青チャート、Focus Gold(啓林館)あたりをマスターしたのに、難しい模試や上位大学の過去問の確率に全く歯が立たず、悩んでいませんか?
 実は、確率は、他の代数系の分野とは異なり、上位大学では、青チャート、Focus Gold(啓林館)あたりの技法では対応しにくい問題が出題されることが多いです。
 この記事を読むと、『合格る確率』のどの問題を優先してマスターすれば、上位大学の確率に対応できるのか、『ハッと目覚める確率』(東京出版)とどちらをこなせばいいのか、などを知ることができます。

 

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正しい書名は『受かる確率』ではなく『合格る確率』

 間違えている人が多いです。注意しましょう。

 

2024年一橋大学数学で的中!

 2024年一橋大学数学第5問は、「円に内接する正n角形の頂点から、無作為に相異なる3点を選んだとき、その3点を頂点とする三角形の内部に円の中心が含まれる確率を求めよ」という出題でした。
 鋭角三角形になればいいわけですが、余事象をとって、鈍角三角形の確率のほうが求めやすいです。
 そのような問題が『合格る確率』の問題番号68の例題に載っています。ほぼ的中と言っていいでしょう。
 ちなみに、2024年東京大学文系数学第4問は、一橋の「3点」が「4点」になっただけと言って良い出題でした。本問も、『合格る確率』の68番をやっていると、かなり見通しが良かったと思います。
 

 

2023年京都大学数学で的中!

 2023年京都大学理系数学第3問は(1)は、文系第1問(1)と共通で「サイコロをn回投げた時の積が5で割り切れる確率」。(2)は「サイコロをn回投げた時の積が15で割り切れる確率」と、『合格る確率』の138ページ、ITEM55と全く同じように解けばいい問題が出題されました!
 『合格る確率』の難しめの問題は、もともと、京都大学の過去問が多く載っています。

 

『合格る確率』の対象は?

教科書の場合の数、確率の分野を理解し、問題を全部解けるようになり、
 ↓
チャート式、Focus Gold(啓林館)あたりの場合の数、確率の分野の本文の問題を全部解けるようになった人。

 

『合格る確率』の使い方、レベル、難易度は?

 確率の分野は、大学入試でよく出題されます。
 しかし、代数分野は教科書の理解とチャート式、FocusGoldあたりの技法の組み合わせ、ひとひねりで対応できるのに対し、確率は実際に入試レベルの問題をマスターしておかないと、対応できないことが多いです。ですが、入試で合否を分けているレベルの類型を適切に網羅している確率の問題集は、ほとんどありません。
 この『合格る確率』は、「入試で合否を分けているレベルの類型を適切に網羅している確率の問題集」として適切だと思います。

 ステージ1からステージ5にわかれていて、徐々にレベルが上がります。ステージ1は教科書レベルの話が多く、その後も、チャート式、Focus Goldあたりと、かなり重複します。ほぼ知識ゼロから『合格る確率』を読むことも不可能ではないですが、塾長は、上記のように、教科書とチャート式、FocusGoldに載っている話は、まずはそちらでマスターすることをオススメします。なんだかんだ言って、検定教科書は、いちばん大切な一番基本の部分を、しっかり説明してくれています。
 ステージ3の途中辺りから、教科書やチャート式、Focus Gold本文には載っていないが、入試にはよく出る類型の問題が多く出てきます。『合格る確率』の真骨頂はこの部分だと思います。
 解けなかった問題に✓をつけ、全問解けるまでくり返しましょう。

  『合格る確率』では「カルノー図」という、少し珍しい図が多用されています。2つの集合であれば、たしかに、ベン図より少しだけ便利ですが、集合が3つになると、結局ベン図を使っています。

 

『合格る確率』の優先問題は?

1.Focus Goldレベル
2.教科書レベル
3.教科書レベル
4.教科書レベル
5.教科書レベル
6.Focus Goldレベル
7.教科書レベル
8.教科書レベル
9.Focus Goldレベル
10.教科書レベル
11.教科書レベル
12.教科書レベル
13.Focus Goldレベル
14.教科書レベル
15.教科書レベル
16.Focus Goldレベル
17.Focus Goldレベル
18.Focus Goldレベル
19.Focus Goldレベル
20.Focus Goldレベル
21.Focus Goldレベル
22.Focus Goldレベル
23.教科書レベル
24.Focus Goldレベル
25.Focus Goldレベル
26.教科書レベル
27.Focus Goldレベル
28.Focus Goldレベル
29.Focus Goldレベル
30.教科書レベル
31.Focus Goldレベル
32.Focus Goldレベル
33.本書特有(優先度高)サイコロの積が◯の倍数、といった問題(後述)にも応用できる。
34.本書特有(優先度中)
35.本書特有(私大向け)碁盤の目状の道順の場合の数を書き込んで求める。
36.本書特有(優先度中)碁盤の目状の道順の典型問題にひとひねり。入試でもひとひねりはありがち。
37.本書特有(優先度高)推移グラフ+道順の場合の数を書き込む。国立二次でも出そう。
38.Focus Goldレベル
39.Focus Goldレベル
40.本書特有(優先度低)
41.Focus Goldレベル 私大向け。
42.Focus Goldレベル
43.Focus Goldレベル+α
44.Focus Goldレベル+α 42~44は、例の部屋分け、空き部屋があっていい、ダメの話。
45.本書特有 トーナメント。
46.Focus Goldレベル+α n人じゃんけん。
47.Focus Goldレベル
48.Focus Goldレベル
49.Focus Goldレベル
50.Focus Goldレベル
51.Focus Goldレベル
52.教科書レベル
53.本書特有(優先度高) 3勝リードで優勝。推移グラフを書き、場合の数を書き入れる。
54.本書特有(優先度高) 2勝リードで優勝。2回の試行を1単位として考える。偶奇での場合分け基本編。
55.本書特有(優先度高) 「積が◯の倍数」は頻出
56.本書特有(優先度高) 積が12の倍数がやや難しい
57.Focus Goldレベル
58.Focus Goldレベル+α サイコロをn回投げたときの最大値と最小値の差。難しくはない。
59.本書特有(優先度高) 少し複雑な反復試行。
60.本書特有(優先度高) 文字を含む少し難しめの確率。
61.教科書レベル
62.教科書レベル
63.教科書レベル
64.本書特有(優先度高) 入試実戦的な条件付き確率はFocus Gold本文などは弱い。
65.教科書レベル+α 抽象的な条件付き確率。
66.本書特有(優先度低) 2事象の独立を示すという、あまり見ない問題。
67.Focus Goldレベル
68.本書特有(優先度高) 円に内接する三角形という、ありがちな設定。Σも使う。
69.本書特有(優先度中) 場合の数を格子点で考える。格子点は先にFocus Goldなどで。
70.本書特有(優先度高) 2連勝で優勝。偶奇で場合分けする問題は、わりと出る。
71.本書特有(優先度中) n回目に初めて◯◯する確率。
72.本書特有(優先度高) Σを使う王道問題。
73.教科書レベル
74.教科書レベル
75.Focus Goldレベル
76.教科書レベル
77.本書特有(優先度高) 2回の試行を1単位として考える+確率漸化式+偶奇で場合分け。
78.Focus Goldレベル
79.Focus Goldレベル やや複雑な確率漸化式。
80.Focus Goldレベル 3項間になる確率漸化式。
81.本書特有(優先度高) すごろく。難しくない。
82.Focus Goldレベル+α 3項間になる確率漸化式。場合の数版がFocusに載っている。
83.教科書レベル ただし、漸化式を立てる難しめの問題。
84.本書特有(優先度高) 2回の試行を1単位として考える+偶奇で場合分け。
85.Focus Goldレベル+α 確率漸化式+条件付き確率。
86.本書特有(優先度高) Σ+条件付き確率。
87.Focus Goldレベル理系 区分求積法との融合。
88.本書特有(理系優先度中) e(ネイピア数)に収束。
89.本書特有(優先度高) 期待値+Σ。
90.本書特有(優先度高) 期待値+Σ+二項定理。

 

『合格る確率』で東大、京大、医学部で合格点を取れる?

 東大、京大、医学部あたりも、『合格る確率』の技法を根本から理解し、使いこなせれば、合格者の平均レベルには達するでしょう。東工大、一橋大、大阪大、早稲田、慶應あたりならなおさらです。
 『合格る確率』は、このあたりの大学で合否を分ける、あるいは、難しすぎないが他の受験生に差をつけることができる、ような問題を、的確に収録しています。

 

『合格る確率』は文系にも使える?

 東大、京大、一橋あたりなら、文系の範囲は、全問こなしたいです。『合格る確率』は、このあたりの大学で合否を分ける、あるいは、難しすぎないが他の受験生に差をつけることができる、ような問題を、的確に収録しています。
 それ以外の旧帝大文系あたりも、『合格る確率』をできれば全問こなしたいですが、難しい方からある程度省いても、合格点を超えると思います。地方旧帝国大学は『合格る確率』的な問題の出題頻度がかなり下がります。まずは『年度別入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)前後あたりを解けるようにしたほうがいいかと思います。
 それ以外の文系大学の場合、『合格る確率』は適切ではないです。適切なレベルで、解説の詳しい問題集を使うべきです。

 

『合格る確率』と『ハッと目覚める確率』どっち?

 同じ確率系の参考書として、『ハッと目覚める確率』(東京出版)と比較されることが多いようです。『ハッと目覚める確率』のほうが難しいです。東大や医学部入試で、まだ合格ラインに達していない人は、『合格る確率』をオススメします。合否を分けるレベルの技法は、ほぼ網羅されており、ここに載っていない技法が必要な問題は、合否を分けるレベルより上である可能性が高いです。
 ただ、『合格る確率』の特徴は、上位国立大学でよく出題される、nなどの文字が入った抽象的な問題に対応できることにあります。具体的な数値の問題の難しめの問題はほとんど収録されていません。そのような問題に取り組みたい場合、『ハッと目覚める確率』を選ぶことになります。また、たとえば、『年度別入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)前後あたり、など、他の入試問題集で、そのような問題に取り組む、という選択肢もあると思います。

 

『合格る確率』は個別指導塾で使える?

 例題を先生が解説し、似たような問題を実際に生徒に解いてもらう、という授業形式で、ほぼ、東大、京大、国立医学部レベルの、低く見積もっても一歩手前くらいまでは連れて行ってくれる教材です。個別指導塾との相性は、非常にいいと言えます。

 

『合格る確率』のレイアウト

 見開きで1問が解説されています
 左ページ上に問題が載っています。その後、その問題の解答、解説、関連事項の解説などが載っています。右ページの下に、同じような考え方で解ける類題が載っています。類題の解答解説は、切り離し可能な別冊になっていて、勉強しやすいと思います。この別冊解答は、解説がそう親切ではありませんが、本文の問題の解説を理解できていれば、この程度の解説で十分でしょう。

 

『合格る確率』を使うのが不適切な志望校は?

 『合格る確率』は、先述のように、大半の問題が、教科書、Focus Gold(チャート式)と重複します。残りの20問ほどが、東大、京大、上位国立医学部、一橋、あたりの確率の問題でよく出る技法を扱っているのが貴重なのです。
 『合格る確率』を使うかどうかを見極める1つの方法が、「志望校の過去問の確率が、nが出てくるような抽象的な問題か」ということです。抽象的で、かつ、難しい問題は、『合格る確率』を使う価値が高いです。
 一方、具体的な数値しか出てこない確率の問題の場合、同じ「確率」の分野でも、『合格る確率』の収録問題とは、かなり傾向が異なります。上位ではない国立大学、ほとんどの私立大学は、こちらのタイプだと思います。その場合、たとえば、『年度別入試問題集』(数研出版)の「場合の数・確率」の前半の方の問題、などに取り組むと、具体的な数値を扱う確率の問題に、対応できるようになるでしょう。共通テスト型の問題でも、かなり具体的な数値を扱う確率に強くなれると思います。

 

『合格る確率』の出版社の信頼性と実績

 『合格る確率』の出版社は文英堂です。まず、高校の英語と国語の検定教科書を出版しています。これだけで、ちゃんとした出版社ですね。
 高校生、大学受験生向けには『高校これでわかる』シリーズが各科目から出ています。教科書より、少し記述が削らたり、厳密さを緩和したりして、わかりやすさを追求し、定評があります。また、各科目で出ている『高校これでわかり基礎問題集』『シグマ基本問題集』は、教科書レベルの基本的な市販の参考書で迷った時、無難にオススメできます。
 さらに、『大学受験の得点源』のように、まとめノートのような、斬新なコンセプトの本も特徴的です。本書『合格る確率』も、大学受験の確率の基本技法をほぼ網羅してしまおうという、斬新なコンセプトの本と言えます。同筆者の『合格る計算』も、高校数学の計算に特化した、斬新なコンセプトの本と言えます。
 高校生、大学受験生向けの参考書、問題集の出版社としては、信頼性、実績は抜群と言えます。
 中学入試向けには、『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズや、『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズ。『最高水準問題集』など、数多くの有名な参考書、問題集が出ています。レベル、難易度は幅広いですが、特に、『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズなど、解説が詳しい参考書に定評があると思います。また『中学入試塾技算数』のように、中学入試算数の基本技法をほぼ網羅してしまおうという、斬新なコンセプトの参考書も多いと思います。

 

他のレビューへの疑問

 

難易度が教科書基礎レベル中心?

 上記で私が実際に、『合格る確率』の問題番号とレベルを対応させたところ、どう見ても「教科書基礎レベル中心」の本とは言えないと思います。中央値は、教科書を超え、Focus Goldと重複しているレベルの問題あたりです。

 

目標偏差値は60前後?

 そもそも「どこが主催する何模試の偏差値」でしょうか?偏差値とは、母集団の平均点を偏差値50としたもので、たとえば、駿台全国模試の偏差値60と進研模試の偏差値60とでは、全くレベルが異なります。したがって単に「偏差値◯◯」という記述自体が、全く意味をなしません。
 『合格る確率』の後半の漸化式絡みやΣを使う問題には、文系だと京大、一橋あたり、理系でも地方旧帝大あたりでそのまま出題されてもいいような問題も含まれます。普通、このあたりを「目標偏差値は60前後」と表現するでしょうか?

 また、あるレビューには「ステージ3までの内容は多くの高校の定期テストでも出題されますし、偏差値55以下の大学入試でも出題されます。」とあります。
 しかし、「多くの高校の定期テストで」ステージ3の「推移グラフを書く」「2回の試行を1セットと考える」「積が12の倍数になる確率」といった問題が出題されるでしょうか?また、先述のように、「偏差値55」が「どこが主催する何模試の」偏差値55なのかが不詳ですが、一般的に、偏差値55というのは、それほど高レベルを意味しているとは思えません。そのようなレベルを目指すのであれば、「推移グラフを書く」「2回の試行を1セットと考える」「積が12の倍数になる確率」といった問題に取り組む必要はないはずです。
 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想・書評】東大のこと、教えます(プレジデント社、小宮山宏):世界の知の頂点を目指して

 

東大教師が新入生にすすめる本(文春新書)

 

【感想・書評】東大のこと、教えます(プレジデント社、小宮山宏):世界の知の頂点を目指して

 

 

『東大のこと、教えます』の著者と信頼性

 『東大のこと、教えます』は2007年発売の本です。
 2005年から2009年まで東大の総長を務められた小宮山宏先生が、東大や日本について語っています。
 小宮山宏先生は1944年生まれ。都立戸山高校から東京大学工学部化学工学科に進学されました。ご専門は、地球温暖化問題対策技術などだそうです。東大総長退任後は、三菱総合研究所理事長、新日本石油社外取締役、JXホールディングス社外取締役などを務められています。
 元東大総長なので、著者の信頼性は絶大と言えます。

 

『東大のこと、教えます』のまえがき

・日本から世界への発信が少ない
・このままでは、日本は「世界の田舎」になる
・環境、エネルギー問題の解決について、最も先進的なモデルを実現しているのは日本
・もはや、模倣や導入が有効な時代は終わったのに、「アメリカでは」「フランスでは」といった「出羽守」が多い。

 したがって、小宮山先生は、「東京大学アクションプラン」をつくりました。東大を「世界の知の頂点」とし、日本、世界の課題解決に役立つ大学とするための決意表明が記されています。このことについても、本書に詳述されています。

 デリダは、西洋中心主義的な思考を脱構築し、中心と周縁の関係を問い直すことを試みました。彼にとって、ある特定の文化や価値観が「中心」として特権化され、他の文化や価値観が「周縁」として排除されることは、問題含みの行為でした。
 この観点から見ると、日本が「世界の田舎」になるという危機感は、まさに西洋中心主義的な思考の産物だと言えるでしょう。「アメリカでは」「フランスでは」といった言説は、西洋の文化や価値観を「中心」として特権化し、日本を「周縁」に位置づける思考の表れなのです。
 しかし、『東大のこと、教えます』は、この西洋中心主義的な思考自体を問い直そうとしているようにも読めます。日本が環境やエネルギー問題の解決において「最も先進的なモデル」を実現しているという指摘は、日本の独自性と優位性を主張するものです。それは、西洋を「中心」とする思考に対する一つの挑戦でもあるのです。
 ただし、ここで注意すべきは、日本の独自性や優位性を主張することが、単なる自文化中心主義に陥る危険性もあるということです。デリダが示唆するように、どのような文化や価値観も、絶対的な正当性を主張することはできません。日本のモデルもまた、常に脱構築の対象となり得るのです。
 この点で、「東京大学アクションプラン」は興味深い試みだと言えるでしょう。東大を「世界の知の頂点」とすることは、日本の独自性を主張すると同時に、世界との対話と交流を促進するものでもあります。それは、自文化と他文化の境界を絶えず横断し、新たな知の可能性を切り拓く営みだと言えると思います。
 ただし、ここでもまた、「世界の知の頂点」という言葉自体が、一つの中心化の言説であることに注意が必要です。真の意味での知の探求とは、あらゆる中心化の言説を脱構築し、絶えず周縁へと開かれ続けることだと思います。
 『東大のこと、教えます』のまえがきと「東京大学アクションプラン」は、私たちに知のあり方の本質的な問いを投げかけているように思えます。それは、自文化と他文化の境界を絶えず横断し、中心と周縁の関係を問い直しながら、新たな知の地平を切り拓いていく営みなのです。そのような脱構築と再構築の果てしない運動こそが、私たちを真の意味での「知」へと導くのではないでしょうか。

 

東大の世界ランキングは?

小宮山先生は、本書で「東大は「総合力」では世界一だ」と語っています。

「人間とはなにか」を学ぶ文学部、「自然とはなにか」を追求する理学部、幅広い見識と知的能力を磨く教養学部、これら三学部が総合大学としての東大の中核部分にある。その周りに、法学、経済学、工学、医学、薬学、農学といった実学がある。さらに多くの研究所やセンターが最先端の研究を担う。これが東大の基本構造であり、ここまできちんとした構造をもっている大学は世界でも少ない。

 たとえば、世界一の大学といえば、ハーバード大学が思い浮かびがちですが、ハーバード大学は、医療以外の理系の実学が弱いとのことです。

 2006年の世界大学ランキングについては、この年、東大は16位でした。しかし、アメリカの週刊誌(NEWSWEEK)の評価なので、英語を使う国が圧勝で、ドイツ、フランスの大学は30位以内に一校も入っていない。こうした状況も把握せず、欧米は日本より進んでいるという前提の議論は時間の無駄である、としています。

 デリダは、あらゆる二項対立的な思考を脱構築し、それらの間の階層関係を問い直すことを試みました。彼にとって、一方の項が特権化され、他方の項が下位に位置されることは、問題含みの行為でした。
 この観点から見ると、世界大学ランキングは、まさに大学間の階層関係を固定化する装置だと言えるでしょう。ランキングは、特定の基準に基づいて大学を序列化し、「上位」と「下位」の区別を生み出します。それは、大学の多様性や独自性を捨象し、一元的な価値基準を押し付ける行為なのです。
 しかし、小宮山先生は、このランキングの問題性を鋭く指摘しています。英語を使う国が圧勝するランキングは、言語の多様性を無視した、自文化中心主義的な評価だと言えます。また、ドイツやフランスの大学の順位の低さは、ランキングの基準がいかに恣意的で偏ったものであるかを示しているのです。
 この点で、東大の「総合力」を強調する小宮山先生の議論は、ランキングの一元的な価値基準に対する挑戦だと読めます。文学、理学、教養学という三学部を中核に、実学と最先端の研究を有機的に結びつける東大の構造は、多様性と独自性を重視する教育モデルだと言えるでしょう。それは、ランキングの画一的な基準では測れない、大学の真の「強み」を示すものだと思います。
 ただし、ここで注意すべきは、「総合力」という概念自体が、一つの価値基準であることです。どのような価値基準も絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得ます。「総合力」もまた、ある特定の教育モデルを特権化する言説である可能性があるのです。
 したがって、真の意味での大学の評価とは、あらゆる価値基準を相対化し、絶えず問い直していくことなのかもしれません。それは、ランキングの一元的な基準に依拠するのでもなく、「総合力」という概念に固執するのでもない、大学の多様性と独自性を尊重する態度だと思います。
 小宮山先生の議論と世界大学ランキングの問題は、私たちに大学のあり方の本質的な問いを投げかけているように思えます。それは、あらゆる価値基準を脱構築し、大学の多様性と独自性を尊重しながら、新たな教育と研究の可能性を切り拓いていく営みだと思います。

 ただ、2023年現在、おそらく日本の大学は凋落を続けていて、欧米のみならず、アジアとの比較の時代になっていると思います。今、アジアの大学と比べた時、小宮山先生は何を語るでしょうか?

 

東大の先生、研究のレベルは?

 東大の教授、助教授(現在は准教授)約2,500人のうち、三分の一は世界で通用するレベルとしています。学問の世界は非常に細分化されているので、細分化された分野ごとに考えると、そう言えるそうです。
 実際に先生の名前を列挙されています。たとえば、この本は2007年発売ですが、2015年にノーベル賞を受賞された梶田隆章先生の名前も見られます。たしかに、実際に世界トップレベルだったのだなあ、と思いました。

 ただし、知識を細分化し、専門家の権威に委ねることは、知の全体性を見失わせる危険性があると思います。それは、知識の断片化と権力化を促進し、知の自由な探求を阻害しかねません。
 この観点から見ると、学問の細分化は、知の全体性を捉えることを困難にする側面があると言えるでしょう。細分化された分野ごとに専門家が存在し、その権威が強調されることで、分野間の有機的な連関が見えにくくなります。それは、知の総合的な理解を妨げ、専門家の言説に依拠する受動的な態度を助長しかねません。
 いっぽうで、東大の教授陣の質の高さを強調する小宮山先生の議論は、この細分化の問題に一石を投じるものだと読めます。三分の一の教授が「世界で通用するレベル」だという指摘は、専門分野における最高水準の知見を追求する東大の姿勢を示すものです。それは、細分化された知の最前線に立ち、その限界を乗り越えていく営みだと言えるでしょう。
 ここで注意すべきは、「世界で通用するレベル」という評価自体が、一つの価値基準であることです。どのような評価基準も絶対的なものではなく、常に脱構築の対象となり得ます。「世界で通用する」という言説もまた、ある特定の学問観を特権化する可能性があります。
 また、個々の教授の卓越性を強調することは、知の個人化を促進する危険性もあります。知の探求とは、個人の才能や業績に還元できるものではなく、言語や文化、歴史といった共同性の中で生成するものだと思います。
 したがって、真の意味での知の追求とは、専門分野の深化と知の総合化を同時に進めていくことなのかもしれません。それは、細分化された知の最前線に立ちながら、常にその限界を問い、分野間の対話と交流を促進する態度だと思います。そのためには、個々の教授の卓越性を認めつつも、知の共同性と全体性への視座を失わないことが重要でしょう。
 東大の教授陣の質の高さと学問の細分化の問題は、私達に知のあり方の本質的な問いを投げかけているように思えます。それは、専門分野の深化と知の総合化を同時に追求し、知の共同性と全体性への視座を保ちながら、新たな知の地平を切り拓いていく営みだと思います。

 

東大に新しい学部を作るなら?

 ビジネススクールだそうです。
 たしかに、日本人がビジネススクールに通おうと思った場合、一橋や早慶にもありますが、東大にはありません。東大卒の場合、アメリカの大学院に通って、MBA(経営学修士号)を取得する、という場合が多いと思います。
 小宮山先生は、総長に就任してすぐに、動いたそうですが、実現には至らなかったそうです。

 実現に至らなかったのには、いくつかの要因が考えられるでしょう。一つには、東大の伝統的な学問の枠組みや教育方針とビジネス教育の実践的なアプローチとの間に文化的なギャップがあった可能性があると思います。また、資金調達や適切な教員の確保、カリキュラム開発など、新しい学部を設立するための具体的な課題があったかもしれません。

 しかし、その後、東大は社会人向けの「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」(東大EMP)を設立しており、これはビジネススクールとは異なるアプローチで、経営やリーダーシップに関する教育を提供しています。東大EMPは、従来のMBAプログラムとは異なり、課題設定能力を重視し、社会や未来を拓いていくリーダーを育成することを目指しています。

 このように、東大はビジネススクールの設立には至らなかったものの、社会の変化に対応し、新たな時代のリーダーを育成するための教育プログラムを提供していることがわかります。これは、東大が学問の伝統を守りつつも、社会のニーズに応える柔軟性を持っていることを示しており、今後もそのような取り組みが期待されます。

 

ビル・ゲイツを客員教授に呼ぶなら?

 ビル・ゲイツは、特に口説かなくとも、客員教授として短期の講義はいつでもやってくれるだろう、とのことです。
 その他、オラクルの創業者のラリー・エリソン氏は、大変な日本びいきだそうです。実際に、本郷キャンパスで講演をしたこともあるそうです。ラリー・エリソン氏のカリファルニアの自宅は、京都の桂離宮を、そっくり模した建物だそうです。
 また、小宮山先生は、国際的なネットワークが必要だと考え、タイの王女やダボス会議の創設者などをメンバーとした組織に助言をもらっていたそうです。

 文化的な境界を越えた交流や対話は重要だと思います。異なる文化や言語の間の出会いは、自己同一性を揺るがし、新たな思考の可能性を切り拓くと思います。それは、自文化の枠組みを相対化し、他者の視点を取り入れることで、より豊かな知の地平を切り拓く営みだと言えるでしょう。
 この観点から見ると、東大とグローバルリーダーとの交流は、文化的な境界を越えた知の交流の一つの形だと捉えることができます。ビル・ゲイツやラリー・エリソン氏といった世界的なリーダーが東大で講義や講演を行うことは、異なる文化や価値観の出会いの場を創出するものです。それは、東大の知的環境を豊かにし、学生や研究者に新たな視点と発想をもたらす可能性を秘めています。
 また、小宮山先生がタイの王女やダボス会議の創設者らとのネットワークを重視していることは、知のグローバル化の重要性を示しています。国や文化の枠を越えた知の交流は、地球規模の課題に対応するための不可欠な条件だと言えます。それは、多様な視点と知見を結集し、新たな解決策を生み出す土壌を作ると思います。
 ただし、ここで注意すべきは、グローバル化の名の下に、特定の文化や価値観が一方的に押し付けられるリスクがあることです。グローバル化は時として、強者の論理を押し付ける装置として機能することがあります。真の意味での知の交流は、あくまでも対等な立場に基づく対話と相互理解なくしては実現し得ないと思います。
 東大とグローバルリーダーとの関係は、私達に知のあり方の本質的な問いを投げかけているように思えます。それは、文化的な差異を越えた対話と交流を通して、知の地平を拡げていく営みだと思います。そのような差異の中の対話こそが、私たちを新たな知の可能性へと導くのではないでしょうか。同時に、グローバル化の影に潜む権力の問題にも自覚的でなければなりません。真に対等な文化間の対話と相互理解の実現に向けて、私たちは常に努力を重ねていく必要があるでしょう。

 その他、東大の抱える課題、日本の抱える課題、特に、国際的な視点から語られている部分が印象的でした。

 

『東大のこと、教えます』の目次

1.東大にしかできないことがある
2.東大がニッポンを変える
3.東大だってお金がほしい
4.【番外編】東大総長の胸のウチ
特別対談 小宮山宏VS梅田望夫

 

『東大のこと、教えます』の出版社の実績と信頼性

 『東大のこと、教えます』の出版社の出版社はプレジデント社です。ビジネス雑誌『プレジデント」や家庭・教育雑誌『プレジデントファミリー』などを出版しています。単行本も、『企業参謀』(大前研一)など主にビジネス系のものを出版しています。出版社の中ではかなり信頼性が高い部類だと考えられます。

 

キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)

東大脳の作り方(平凡社新書)

東京大学文系・理系数学 傾向と対策と勉強法

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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【2024】上智大学理工学部 数学 難易度と傾向と対策:教科書+黄チャートで合格へ

 

【2024】上智大学理工学部 数学 難易度と傾向と対策:教科書+黄チャートで合格へ

 

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早稲田大学理工系数学

慶應義塾大学理工学部数学

千葉工業大学数学

 

上智大学理工学部入試の数学で悩んでいる人へ

 上智大学理工学部数学の難易度、また、どのような参考書をマスターすれば合格点を取れるかがわからずに、悩んでいませんか?
 実は、上智大学理工学部の数学は、教科書の理解、基本問題と黄チャートあたりの技法の組み合わせで、ほぼ合格点をとれます。(さすがに、少し、入試問題への慣れが必要です。)
 この記事を読むと、上智大学理工学部数学の難易度(『合否を分けたこの1題』誌のものも併記してあります)、どのように勉強すれば合格点を取れるか、どこまで解ければいいのか、を知ることができます。

 

上智大学理工学部入試における数学の重要性

 上智大学理工学部の数学の配点は、TEAP利用型は150/400、3教科型は200/600です。見た目だけでも、配点の1/3以上を占めていますね。 
 また、2024年のように、難易度がAAC/BBDで、Cもなんとかなりそう、Dも最後の小問以外はいけそうな場合、黄チャートあたりを網羅している人は、ほぼ全問解けるので、数学が苦手な人は、かなり、差をつけられてしまいます。その失点を他科目で取り返すのは、かなり厳しいと言えます。
 以上より、上智大学理工学部入試における数学の重要性がわかると思います。

 

上智大学理工学部入試、入試本番の心構え

 以下のことは、どこの大学の入試の数学でも、このような傾向があります。
 上智大学理工学部入試の数学は、当然、難しい出題もあります。完答できなそうな問題など、珍しくありません。
 そのような時に、解けなそうな問題をみて、戦意を喪失しないことです。人間は、そのような心持ちになるだけで、パフォーマンスが低下することが、大学の研究で明らかになっています。ちゃんと勉強した受験生の場合、解けなそうな問題を見たら「他の受験生も解けないな」と思って、軽く流し、解けそうな問題を確実に解く、部分点を取る、ということを心がければ、合格点を取れます。

 

 

2024年 上智大学理工学部(TEAP) 数学:難易度、どのくらい解ければ合格点か

 

 『合否を分けたこの1題』誌(東京出版)では、難易度をA(易)~D(難)にレベル分けしています。Bが教科書の理解とチャート式、Focus Gold(啓林館)あたりの技法の組み合わせで完答でき、発想力といったものはいらない問題です。東大は成績を開示し、東大新聞はかつて合格者の平均点を調査していました。Bを完答、CもBレベルの部分点で合格者平均を超えます。
 上智大学理工学部は、東大理Ⅰ、理Ⅱあたりより、はるかに合格しやすいと言えるので、Bを完答、CはBレベルの部分点、という戦略で、はるかに合格点を超えることができます。

 第三者の評価も加え客観性を持たせるために、この評価も併記します。
 大学受験塾チーム番町では、普通の塾、予備校のように、入試問題の解き方を解説しても、あまり意味はないと考えます。どのように勉強すれば、大学入試の数学で合格点を取れるのか。それを、正解に必要な技法が、教科書、チャート式、Focus Gold(啓林館)に載っているか、という独自の観点から分析します。

 

第1問

(1)
『合否を分けたこの1題』誌の難易度はA。
ユークリッドの互除法で解く一次不定方程式の問題です。

教科書に数値が違うくらいの問題が載っているので、解けます。

(2)
『合否を分けたこの1題』誌の難易度はA。
複素数平面と対数の融合問題です。

問題文に「極形式で表したとき」と親切にありますし、愚直に計算するだけで、教科書レベルの組み合わせと言えるので、解けます。

(3)
『合否を分けたこの1題』誌の難易度はC。
対数の問題です。

ウはlog101.28の値を求めるだけなので、教科書レベルか少しだけ上程度と言え、解けます。
エが難しいので、難易度Cなのだと思います。ただし、論述式ではないので、おおまかな値をアタリをつけて、適していたら正解、というのが実戦的だっただろうと思います。そうすれば、完答も可能だったかと思います。

 

第2問

『大学への数学』誌の難易度はB。
空間ベクトルの問題です。

(1)
dベクトルをa,b,cベクトルで表す問題です。
教科書基礎レベルと言え、解けます。

(2)
aベクトルとcベクトルの内積の値を求める問題です。
問題文で内積の値が2つ与えられています。また、ABCDは長方形なので、内積0が使えます。このくらいで解けます。全く難しくありませんが、教科書や黄チャート本文あたりにそのまま載っているわけではないので、少し、入試問題に慣れていたほうがいいかもしれませんし、上智理工受験生なら大丈夫かもしれません。

(3)
Oから平面αに下ろした垂線の足をHとしたとき、OHベクトルをa,b,cベクトルで表す問題です。
本問は四角錐ですが、三角錐について、ほぼ同じ問題が黄チャート本文あたりにそのまま載っているので解けます。

(4)
長方形ABCDの面積を求める問題です。
教科書通り「ベクトルの大きさは2乗せよ」の格言で、縦と横の長さが求まるので、解けます。

(5)
四角錐の体積を求める問題です。
(3)で述べた黄チャート本文あたりにそのまま載っている問題は、体積まで求めます。本問も、あとは高ささえわかればいいです。それは(3)のOHベクトルの大きさなので、教科書通り「ベクトルの大きさは2乗せよ」の格言で解けます。
完答しましょう。

 

第3問

『大学への数学』誌の難易度はB。
数3の微積分の問題です。

(1)
関数のグラフを書いて極値を求め、グラフの概形を書く問題です。

 

上智大学理工学部数学の勉強法と傾向と対策

 上智大学理工学部の数学は、大問4問、試験時間90分です。

 2024年は『合否を分けたこの1題』誌の難易度はAAC/BBDと、かなり、ばらつきがありました。ただし、これは完答の難易度です。最初のCは小問で、しかもなんとかなりそうですし、最後のDも小問集合なので、最後の小問以外は正解できそうな感じでした。B問題の完答、C問題のBレベルの部分点、という方針で、はるかに合格点を超えます。
 以上は、黄チャートあたりを網羅し、年度別『入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)や過去問をこなす、といった勉強法、対策で十分達成できます。

 数3の微積分は、毎年出題される傾向があります。空間ベクトルもよく出題される傾向があります。最初に小問集合があるので、全分野から、満遍なく出題される傾向があります。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような問題に取り組みつつも、黄チャートあたりに抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

 

上智大学理工学部数学のオススメ参考書

 一番の基礎は教科書です。教科書には定義、問題以前の説明、基本問題が一番しっかり載っています。まずは、教科書を理解し、本文の問題(章末除く)を全問解けるようにしましょう。
 次に、黄チャートあたりの上智大学理工学部に重要な問題を全問解けるようにします。この時、指導者がいて、適切に問題を選んでくれるといいですね。ここまでで、進研記述模試、河合全統記述模試などの標準的な記述模試では、上智大学理工学部レベルの成績になっているはずです。

 直前期に何をすべきかは人によって違います。記述模試で成績が足りている人は年度別『入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)や過去問をこなすといいでしょう。過去問の場合、月刊『大学への数学』誌の難易度C問題は、平均的な東大理系合格者も完答できていない場合が多いので、難易度に気を配りながら取り組むといいと思います。
 上記のような教材をきっちりこなしきれた場合、今までこなした教材で、忘れていてできなそうな問題に✓をつけ、ひたすら復習し、弱点をつぶすのがいいと思います。

 現役生で、間に合うか間に合わないかわからない場合、とにかく、復習してマスターすることを重視して、微積分、確率、ベクトルなどの頻出分野から優先順位をつけて、黄チャートや年度別『入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)をこなすといいでしょう。

大学受験の数学の勉強法・参考書

 

 

2023年 上智大学理工学部(TEAP) 数学:難易度、どのくらい解ければ合格点か

 

第1問

『合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。

(1)
44311と43873の最大公約数を求める問題です。
やや数字は大きいですが、ユークリッドの互除法を使えばよく、教科書レベルと言え、解けます。

(2)
(2・7・11・13)20のケタ数を求める問題です。
途中、厳密には、常用対数の値の評価が必要になりそうですが、本問は論述式ではないので、厳密にやらなくても正解はできると思います。そう考えると、教科書に載っているケタ数を求める問題と、そう変わりません。かつ、全出題の全体最適を考えると、それが実戦的だったかと思います。

(3)
数列(漸化式)と極限の問題です。
前半は、与式を連立すると、3項間漸化式に帰着されます。このあたりの操作は、チャート式などの連立漸化式のところに別解として載っていることが多いと思います。あとは、問題文の解答の形を目指して自然にやっていけばいいですが、教科書やチャート式などには、そのままは載っていなそうなので、ちょっと、入試問題に慣れていたほうがいいのかな、という気がします。
後半は、教科書レベルの特性方程式で解く漸化式と極限の問題なので、解けます。

 

第2問

『合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
空間ベクトルの問題です。

(1)
立方体を平面で切ったっときに、どの辺と交わるか、の問題です。
小学生でもわかりそうなので、解けます。

(2)
OPベクトルをa,b,cベクトルで表す問題です。
相似に気づけば、ベクトルの基本的なたし算で、数秒で解けます。「中点」などとあるので、相似を使うことは考えたいところです。

(3)
断面の面積を求める問題です。
四角形の面積なので、三角形に分割すると見通しがいいかもしれない、というのは、数1の教科書の三角比に出てくるのでいいと思います。その2つの三角形は高さが等しいので、底辺の比が面積比、というのも公立中学校レベルです。では、1つの三角形の面積はと言うと、全体としてベクトルの問題なので、ベクトルで三角形の面積を求める例の式が見通しが良さそうです。したがって、最高でも教科書レベルの組み合わせといえ、解けます。

(4)
切断されてできる立体のうち、頂点Aを含むものの体積を求める問題です。
これも、相似比と体積比の関係を使うと見通しが良く、簡単に解けます。高校受験生のほうが得意かもしれません。まあ、こう考えるのが一番早いと思いますが、点と平面の距離の公式を使って高さを出す、といった、大学受験生っぽい解き方もあります。

(5)
平面πと線分BCの交点をQとし、Qは線分CDを何対何に内分するかと、OQベクトルをa,b,cベクトルで表すことを問う問題です。
直線CD上にあるので、s倍とでも置く、平面π上にあるので、OM、ONベクトルの1次結合で表せる、など、黄チャートあたりに載っている技法を使えばいいので、解けます。
完答しましょう。

 

第3問

『合否を分けたこの1題』誌の難易度はC。
数2、数3の微積分の問題です。

(1)
4次関数の最小値を求める問題です。
教科書レベルと言え、解けます。

(2)

(ⅰ)
回転体に水を注いだときの水面の面積を求める問題です。
一見、2重根号なども出てくるので、複雑そうに見えますが、ゴリゴリやると、意外に簡単に解けます。水面はドーナツ型をしています。

(ⅱ)
水面がy=0になった時の水の体積を求める問題です。
(ⅰ)は、つまり、切り口の面積を求めた、ということですから、(2)を積分すると出ます。したがって、教科書レベルと言え、解けます。
大学受験数学においては、小問集は前の結論を使うのではないか、という考え方が大切です。

(ⅲ)
水面の面積が時間の何乗に比例するかを求める問題です。
Focus Goldあたりには、このような水を入れていく問題があり、このあたりから、そのような問題の経験があったほうが見通しがいいかな、と思います。経験があっても、やや難しいかもしれません。たとえば「2乗に比例する関数」というのは公立中学の中3で習います。一方で、日頃から「何乗に比例する」といったことを深く考えてこなかった人は、何をすればいいかわからなかったかもしれません。

(ⅳ)
水面がy=2になった時の水面の面積と体積を求める問題です。本問のほうが(ⅲ)より簡単でしょう。
水面は、単なる円になっています。(ⅰ)のドーナツ型の外側の円なので、求まります。
体積も(ⅱ)でy=0までは求めてあるので、あとは0≦y≦2を求めます。この積分も難しくありません。したがって解けます。

 

第4

『合否を分けたこの1題』誌の難易度はB。
数3の微積分の問題です。

(1)
不等式の証明の問題です。
教科書通り、(右辺)-(左辺)≧0を示しに行きます。微分して増減表を書くのも教科書通りです。したがって解けます。

(2)
不等式の証明の問題です。
自然数nについての証明なので、数学的帰納法で行くのはいいと思います。
形はやや複雑ですが、(1)同様、(右辺)-(左辺)≧0を示しに行きます。数学的帰納法のn=1を示すときに、(1)の結論を使えます。見た目は複雑そうですが、教科書通り、単調増加性と左端の値を調べることで、0以上を示せます。したがって解けます。

(3)
定積分の近似値を求める問題です。
大学受験数学においては、小問集は前の結論を使うのではないか、という考え方が大切です。
大学受験数学ではよくある流れで、(2)の式を(3)の与式に向かって変形していきます。そうすると、正解への道のりは、比較的簡単に見えてきますが、計算がかなり大変です。時間との関係も考え、計算の前までで部分点を狙う、というのが実戦的かもしれません。理論的には完答も可能です。
ただ、黄チャートあたりに直接載っているような問題ではないので、年度別『入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)あたりで入試問題に慣れておくことが大切かと思います。

 

上智大学理工学部数学の勉強法、対策

 2023年は『合否を分けたこの1題』誌の難易度はBBCBでした。ただし、これは完答の難易度です。第3問のCも小問小問集合で、(2)の(ⅲ)以外は解けそうでした。むしろ、第4問の最後の計算がきつかったかと思います。B問題の完答、C問題のBレベルの部分点、という方針で、はるかに合格点を超えます。
 以上は、黄チャートあたりを網羅し、年度別『入試問題集』(数研出版)の*問題(頻出標準問題)や過去問をこなす、といった勉強法、対策で十分達成できます。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような問題に取り組みつつも、黄チャートあたりに抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

大学受験の数学の勉強法・参考書

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長が個別指導

 

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【2023】千葉工業大学 数学 難易度と傾向と対策は?:教科書+過去問演習で合格点!

 

【2023】千葉工業大学 数学 難易度と傾向と対策は?:教科書+過去問演習で合格点!

 

上智大学理工学部数学

 

千葉工業大学入試の数学で悩んでいる人へ

 千葉工業大学数学の難易度、また、どのような参考書をマスターすれば合格点を取れるかがわからずに、悩んでいませんか?
 実は、千葉工業大学の数学は、教科書の理解、基本問題でほぼ合格点をとれます。(さすがに、少し、過去問を解くなどで慣れたほうがいいです。)
 この記事を読むと、千葉工業大学数学の難易度、どのように勉強すれば合格点を取れるか、どこまで解ければいいのか、を知ることができます。

 

千葉工業大学入試における数学の重要性

 千葉工業大学の数学の配点は、おおむね、3科目型だと全体の1/3、2科目型だと全体の1/2です。全体に占める配点の割合だけでも、重要さがわかりますね。
 また、数学は、前半の大問は独立した小問集合ですが、後ろの大問に行くにつれて、前の小問を解けないと先に進めない出題になる傾向があります。他の受験生が解けている問題が、教科書レベルに抜けがあることにより、先に進めないと、その失点を他科目で取り返すのは、厳しくなります。
 以上より、千葉工業大学入試において、数学は重要と言えます。

 

千葉工業大学入試数学、入試本番の心構え

 以下のことは、どこの大学の入試の数学でも、このような傾向があります。

 千葉工業大学入試の数学は、前半は教科書レベルで解ける問題が多く、ほぼ完答できなければいけないのですが、あまりプレッシャーに感じると、実力を発揮できないかもしれません。一方、後半の大問の後半の小問は、難しいことが多いです。
 仮に、前半の簡単な問題や、後半の難しい問題を見て、解けなそうな時、戦意を喪失しないことです。人間は、そのような心持ちになるだけで、パフォーマンスが低下することが、大学の研究で明らかになっています。簡単な問題の場合、落ち着けば、解けるかもしれません。難しい問題の場合、ちゃんと勉強した受験生の場合、解けなそうな問題を見たら「他の受験生も解けないな」と思って、軽く流し、解けそうな問題を確実に解く、ということを心がければ、合格点を取れます。

 

千葉工業大学入試数学、近年の傾向、難易度

 全問、マーク式の入試です。

 千葉工業大学は理系大学ですが、数学3C(ベクトル除く)が出題されず、いわゆる文系数学の範囲のみが出題されます。

 最初の大問の独立した小問集合は、教科書の理解で正解できることが多い難易度である傾向があります。その後の大問も、前半は教科書の理解で正解できる難易度であることが多いです。合格点が6割だとしても、それで、他の受験生に十分に差をつけることができます。

頻出分野

 大問1に独立した小問集合があることもあり、数学1A2B+ベクトルから、まんべんなく出題されている傾向があります。

 

 

2023年 千葉工業大学2月1日 数学:難易度、どのくらい取れば合格点か

 

大問1

(1)
複素数が純虚数になるようaの値を定める問題です。
分母を実数化し、(実部)=0とおけばいいので、教科書レベルの組み合わせと言え、解けます。

(2)
整式の割り算の問題です。
数値が違うだけで全く同じ問題が教科書に載っているので解けます。

(3)
与式が恒等式となるようなa,bの値を求める問題です。
このような分数型の恒等式も教科書に載っているので、解けます。分母を払えば、普通の恒等式の問題になるだけの話です。

(4)
平行四辺形の対角線の長さを求める問題です。
cos∠abc=1/4なので、平行四辺形より、cos∠bac=-1/4です。したがって2辺と狭角のcosがわかり、余弦定理が使えるので、教科書レベルの組み合わせと言え、解けます。

(5)
指数方程式の問題です。
根号を外して分母を払うという、教科書には載っていない類型ですが、そうすれば、教科書レベルと言えます。全く難しくありませんが、千葉工業大学の過去問などで、このような、ひねった出題に慣れておいたほうがいいでしょう。

(6)
集合のところに出てくる、「かつ」「または」を含む、2つのベン図で考える問題です。教科書よりは少し難しいですが、少しだけなので、教科書の勉強だけでも解けたいです。

(7)
3点が同一直線上にあるときの点Pの座標を定める問題です。
平面αのy座標が4なので、3点すべてのy座標はわかっています。大雑把に図でも書くと、内分、外分の考え方でいけることがわかりますが、教科書にそのまま載っているような問題ではないので、千葉工業大学受験生には難しかったかもしれません。

(8)
数2の整関数の定積分を計算する問題です。
教科書基礎レベルと言え、解けます。

 

大問2

(1)
 三角関数とデータの分析の融合問題です。
 最初は平均値を求めるだけなので、教科書レベルと言え、解けます。ただし、問題文の形に変形するのは半角の公式を使いますが、これも教科書そのままなので、大丈夫でしょう。
 問題文の平均値が、三角関数の合成をできる形になっています。これが有名角では合成できません。有名角で合成できない形も教科書に載っているので、最大値を求めるまでは教科書レベルと言え、解けます。
 最後の中央値の考察が、教科書を超え、チャート式あたりをこなしていないと厳しい出題です。ただ、大学受験は満点を取らなくてもいいので、この最後の1問はできなくても合格できます。

(2)
 対数と図形と方程式(領域(本問は図形ですが)と最大・最小)の融合問題です。
 1つ目の問題は、置きかえの誘導があるので、素直に載ると、与式が円を表すことがわかります。これは、対数、円ともに教科書レベルと言え、解けます。
 2つ目の問題が、教科書の領域と最大・最小の類題です。ただし、本問は図形が円で、この類型は教科書には載っていません。黄チャートあたりには載っていますが、どうかなというところです。ただ、こちらは解けなくても合格点だと思います。

 

大問3

(1)
確率漸化式の問題です。
教科書にも「発展」のところに載っているレベルの問題なので、解けます。

(2)
 空間ベクトルの問題です。よくある、四面体の底面の点の位置ベクトルを「係数をたして1」から求める問題です。
 最初の問題は、三角形の重心の位置ベクトルを求めるだけなので、教科書基礎レベルと言え、解けます。
 これ以降が、点Hが平面ABC上にあるので、「係数をたして1」を使います。これが、黄チャートあたりには載っていますが、教科書には、そのままは載っていないので、どうかな、というところかと思います。

 

大問4

絶対値つき関数と微分の融合問題です。

(1)
誘導にしたがって、曲線の式の絶対値を外すだけなので、教科書基礎レベルと言え、解けます。

(2)
 曲線Cと折れ線lが異なる3つの共有点を持つようなkの値の範囲を求める問題です。曲線と折れ線は、絶対値を場合分けして外すxの範囲は同じです。しかも曲線Cはx<0では直線です。したがってx<0で1つの共有点は傾きを考え、x>0で2つの共有点は、色々考察すると判別式が正の一発で出ることがわかります。ただ、このあたりが教科書を超えているので、千葉工業大学受験生には難しいかもしれません。

(3)
 前半は、直線の交点のx座標を求めるだけなので、中学レベルと言え、解けます。
 後半は、直線と放物線の2交点の距離を求める問題です。黄チャートあたりには、解と係数の関係を使う鮮やかな解き方が載っていますが、教科書には載っていないので、どうかな、というところかと思います。千葉工業大学受験生には難しいかもしれません。

(4)
 三角形PQRの面積と最大値を求める問題です。三角形PQRの面積を求めるまでの考察が何段階かあるので、千葉工業大学受験生には難しいかと思います。解けなくても合格点を取れます。
 

千葉工業大学数学の勉強法と傾向と対策

 千葉工業大学の数学は、大問4問、試験時間80分。数3C(ベクトル除く)が出ません。いわゆる文系数学が出題範囲です。大問1が独立した小問集合であることもあり、まんべんなく各分野から出題されている傾向があります。

 出題は「教科書レベルの組み合わせ」と言える難易度のものがほとんど、という傾向があります。教科書に載っていない、新たな技法をマスターする必要はありません。そのような問題、上記で「教科書レベルの組み合わせと言え」とされていない問題は、解けなくても、明らかに合格点に達します。

 問題は、「教科書レベルの組み合わせ」の問題も、教科書だけやっていれば解けるようになるわけではないので、どう対策するかです。まあ、実際に、「教科書レベルの組み合わせ」の問題に取り組んで慣れるのが一番いい対策だと思います。具体的な教材は、次の項で考察します。

 

千葉工業大学数学のオススメ参考書

 一番の基礎は教科書です。教科書には定義、問題以前の説明、基本問題が一番しっかり載っています。まずは、教科書を理解し、本文の問題(章末除く)を全問解けるようにしましょう。

 基幹参考書は、教科書だけで受からないかなあ、と思います。

 たとえば、白チャートあたりの参考書に進む、という選択肢もあります。しかし、白チャートに進むということは、教科書に載っていない新しい技法をマスターするという面も大きく、千葉工業大学の「教科書レベルの組み合わせ」とは、方向性が違い、コスパがかなり悪い、という面が大きいです。

 年度別『入試問題集』(数研出版)という参考書が毎年発売されます。その年の入試で出題された問題が、たくさん載っています。この年度別『入試問題集』は、分野ごとに難易度順に並んでいるので、最初の数問がちょうど千葉工業大学レベルの難易度のことも多いです。

 千葉工業大学の過去問を多く解けるようにするのも、もちろん、「教科書レベルの組み合わせ」が多く載っていますから、一番良い対策と言えます。

 また、千葉工業大学と同レベルの大学の過去問を多く集めて解けるようにするのも、良い対策でしょう。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような難易度の問題に取り組みつつも、それより下のレベルの難易度(千葉工業大学なら教科書)に抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

大学受験の数学の勉強法・参考書

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長が個別指導

 

 

2022年 千葉工業大学2月1日 数学:難易度、どのくらい取れば合格点か

 

大問1

(1)
 (x+1)(x+3)(x+5)(x+7)を展開したときのx2の係数を求める問題です。
 xを2つ選んで掛けると、つまり、定数項も2つ選んで掛けることになるので、それを全て足す、というのが早いです。ただ、最悪、愚直に全部展開しても答えは出るので解けます。

(2)
放物線の平行移動の問題です。
教科書にも載っているので、解けます。

(3)
データの平均値と分散についての問題です。
教科書レベルと言え、解けます。

(4)
整式が整式で割り切れるときのaの値を定める問題です。
愚直に割り算を実行して、(余り)=0とすればいいので解けます。

(5)
円が直線を切り取る線分の長さを求める問題です。
最近は教科書にも載っているので、解けると思います。黄チャートあたりには載っています。

(6)
 見た目が複雑そうな指数方程式です。
 ただ、自然に変形していけば解ける形になるのですが、千葉工業大学受験生には難しいかもしれません。

(7)
つまり、放物線の接線で傾きが5であるものを求める問題です。
微分してもいいですし、傾き5の直線との重解条件で考えても解けます。

(8)
2点ABを2:1に内分するを点Cとし、線分OCの長さを求める問題です。
教科書レベルの組み合わせといえ、解けます。

 

大問2

(1)
 最初は、放物線と直線が異なる2つの共有点を持つ条件です。教科書レベルと言え、解けます。
 次は、前問の方程式につき、解と係数の関係を使うだけなので、教科書レベルと言え、解けます。
 最後は∠AOBが直角になるpの値を求める問題です。前問の解と係数の関係と、内積0を使えばいいので、教科書レベルの組み合わせと言え解けると思います。

(2)
 数直線上を点が移動する確率の問題です。
 最初の問題は、教科書に類題が載っているレベルです。
 その後も、教科書レベルの組み合わせと言えますが、確率という分野はやや特殊で、教科書レベルの組み合わせといえども、実際にその組み合わせに慣れないと、状況の把握が難しいのではないかと思います。したがって、このレベルの入試問題に慣れる必要があるかな、と思います。
 最後の条件つき確率も、入試問題に対し、教科書が弱い分野です。

 

大問3

(1)
 対数の問題です。
 最初は、与式を見て、底を2に変換すればいいだろう、と考えられれば、あとは教科書レベルと言え、とても簡単ですが、教科書には載っていないような形なので、どうかな、というところかと思います。
 次の最小値も、まあ、1変数に持ち込まないと始まらないだろう、と思えば、相加相乗平均を使う形になり、あとは教科書レベルと言え、これも決して難しくはありません。ただ、やはり、教科書には載っていないような形なので、どうかな、というところかと思います。

(2)
 積分の問題です。
 基本形は教科書にも載っている「定積分は定数と置け」が格言の問題です。本問は、それよりやや複雑ですが、誘導が親切なので、教科書のこの問題を解けるようになっていれば、解けると思います。

 

大問4

全体的に三角比の問題です。最後に少し微分が出てきます。

(1)
 tanからcosを求める問題は教科書にも載っており、解けます。cosが求まったので、2辺と狭角のcosがわかったので、余弦定理を使うのも教科書レベルで、ACの長さも求まります。

(2)
 教科書の三角比のところに載っている、三角形と内接円の話のところと同じ話で解けるので、教科書レベルと言えます。次も、その話の「大きい三角形の面積は分割した三角形の和と等しい」という式を立てれば解け、教科書レベルと言えますが、問題文の形から、そうだと気づいて話を進めるのは、少し難しいかもしれません。

(3)
 3辺がわかっているので余弦定理でcos∠CABが求まるのは、教科書レベルなので解けます。tan∠PABも点Pが∠Aの二等分線上にあることから、半角の公式一発で出るので、教科書レベルと言え、解けます。
 このあとの考察は千葉工業大学受験生には難しいかと思います。大学入試は満点を取らなければいけないわけではないので、それでも十分合格点を超えます。

(4)
(3)が前提であり、本問自体の考察も難しめなので、解けなくても十分合格点を超えます。

 

千葉工業大学数学の勉強法と傾向と対策

 2022年も出題は「教科書レベルの組み合わせ」と言える難易度のものがほとんど、という傾向のとおりでした。教科書に載っていない、新たな技法をマスターする必要はありません。そのような問題、上記で「教科書レベルの組み合わせと言え」とされていない問題は、解けなくても、明らかに合格点に達します。まずは教科書本文を完璧にすることが、一番良い対策と言えます。

 「教科書レベルの組み合わせ」の問題は、実際に、「教科書レベルの組み合わせ」の問題に取り組んで慣れるのが一番いい対策だと思います。具体的には、年度別『入試問題集』(数研出版)の分野ごとの最初の数問や、千葉工業大学の過去問、同レベルの大学の過去問などです。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような難易度の問題に取り組みつつも、それより下のレベルの難易度(千葉工業大学なら教科書)に抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

大学受験の数学の勉強法・参考書

 

 

2020年 千葉工業大学1月31日 数学:難易度、どのくらい取れば合格点か

 

大問1

(1)
与式を満たす複素数zを求める問題です。
両辺をzの係数で割ると、教科書にも載っている分数型の複素数になります。分母を実数化すればいいので、解けます。

(2)
男子3人と女子3人が交互に並ぶ場合の数を求める問題です。
高校の教科書レベルと言え、また、高校入試でも出題されるような問題なので、解けます。

(3)
赤玉1個、青玉4個、白玉5個から同時に3個取り出して、赤、青、白が1個ずつになる確率を求める問題です。
教科書レベルと言え、解けます。

(4)
三角形ABCの∠A、辺BC、辺CAが与えられているときに、sinBを求める問題です。
正弦定理を使えば良く、教科書レベルと言え、解けます。

(5)
二次方程式に帰着させる指数方程式の問題です。
教科書に載っているので、解けます。

(6)
等差数列の第3項までの和と第10項までの和が等しいときの公差を求める問題です。
愚直に式を立てて、イコールで結べばいいので、教科書レベルの組み合わせといえ、解けます。

(7)
ベクトルの大きさが与えられているときに、ベクトルの内積と大きさを求める問題です。
「ベクトルの大きさは2乗せよ」の格言通りやると、全て解決するので、教科書レベルの組み合わせと言え、解けます。

(8)
絶対値つき定積分の問題です。
教科書通りやればいいので、解けます。

 

大問2

(1)
三角関数を含む式を、加法定理で開いて、合成し、最小値を求める問題です。

全体として、教科書本文より少しだけ難しいだけです。しかし、教科書では角に3xは入ってこないこと、0≦x≦π/2 の場合は載っていないこと、などから、実際に、このレベルの問題の問題の経験があったほうがいいと思います。

(2)
前半は対数方程式です。教科書には載っていない形ですが、全て積になっており、教科書レベルの組み合わせと言え、解けます。
後半は対数と3次関数の最大の融合問題です。誘導もついているので、教科書レベルの組み合わせと言え、解けます。チャート式などには類題が載っています。

 

大問3

(1)
整式の割り算の問題です。
このような問題は、教科書通り、自分で商をQ(x)などと置くのがコツです。それで、前半は、教科書レベルの理解で解きたいです。後半は、教科書だけでは、やや難しいかもしれません。チャート式などには類題が載っています。

(2)
空間ベクトル(座標)、球面の問題です。
前半は、理論上は教科書レベルの組み合わせでいけますが、ちょっと見慣れない出題なので、かなり実力がないと厳しいかもしれません。
後半は、球面とzx平面の交わりという、教科書に載っている話ですが、その円がz軸、x軸両方に接している(チャート式あたりの図形と方程式の円には載っています)、その後の計算処理もやや難しい、などから、難しいのではないかと思います。
ただ、この小問を丸々失点しても、合格できます。

 

大問4

 

数2の微積分の問題です。

(1)
放物線の接線を求め、その接線と直線の交点を求める問題です。
いずれも教科書レベルと言え、解けます。

(2)
(1)とは違う接線と直線の交点を求める問題です。
やはり、教科書レベルと言え、解けます。ただ、やや計算が見た目教科書よりも複雑なので、このレベルの入試問題に慣れておいたほうがいいと思います。

(3)
三角形PQRが二等辺三角形になるための条件を求める問題です。
今までの状況を図示すると、数2の図形と方程式(公立中学校?)で習う、中点の考え方を使うと解けるとわかります。気づけば教科書レベルと言えますが、教科書には、このような複雑な設定の問題はないので、このレベルの入試問題に慣れておいたほうがいいと思います。

(4)
線分PRが通過する面積を求める問題です。
この程度の面積を求めるのは、入試では頻出ですが、教科書には載っていませんし、線分が通過するなどという話も載っていないので、千葉工業大学受験生としては、かなりの実力がないと、解くのは厳しいかと思います。

 

千葉工業大学数学の勉強法と傾向と対策

 2020年も出題は「教科書レベルの組み合わせ」と言える難易度のものがほとんど、という傾向のとおりでした。教科書に載っていない、新たな技法をマスターする必要はありません。そのような問題、上記で「教科書レベルの組み合わせと言え」とされていない問題は、解けなくても、明らかに合格点に達します。まずは教科書本文を完璧にすることが、一番良い対策と言えます。

 「教科書レベルの組み合わせ」の問題は、実際に、「教科書レベルの組み合わせ」の問題に取り組んで慣れるのが一番いい対策だと思います。具体的には、年度別『入試問題集』(数研出版)の分野ごとの最初の数問や、千葉工業大学の過去問、同レベルの大学の過去問などです。

 受験生の中には、予備校や参考書で、平均的な合格者も解けないような難易度の問題に取り組みつつも、それより下のレベルの難易度(千葉工業大学なら教科書)に抜けが多く、受験に成功しない人も多いので、注意しましょう。

大学受験の数学の勉強法・参考書

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長が個別指導

 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

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【レベル】ヒストリア日本史・世界史精選問題集(学研):『実力をつける100題』とどっち?早慶に受かる?

 

【レベル】ヒストリア日本史・世界史精選問題集(学研):『実力をつける100題』とどっち?早慶に受かる?

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 高校生、大学受験生向けの日本史、世界史の問題集です。ヒストリアとは、ギリシア語で「探究」の意味で、「歴史」を意味するhistoryはこの語に由来するそうです。

 

『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』のレベル

 対象は、すでに世界史でGMARCH合格ラインにある人~早慶合格を目指す人、あたりです。河合全統記述模試で言うと、偏差値60前後からなら、使っていいかと思います。足りない人は『はじめる日本史・世界史』(Z会出版)あたりをひたすら復習して、全問解けるようにしましょう。
 私大入試向けです。本書をがんばっても、東大、京大、一橋の論述の点数は、ほとんど増えないです。

 

『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』の特徴、使い方

 

入試の過去問ベースの問題集

 日本史・世界史の問題集には、入試の過去問ベースの問題集と、オリジナル問題ベースの問題集があります。
 過去問ベースのメリットは、大学別の傾向や難易度を的確に知ることができることです。デメリットは、内容に偏りがあって、日本史・世界史の範囲を網羅できない場合があることです。
 オリジナル問題ベースは、ほぼ逆で、日本史・世界史の範囲を網羅できるのに対し、難易度がちょうど標準的で、難問が少ないことです。

 『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』では、
・入試の過去問をベースにする
・該当単元以外の問題は極力排除する
・適宜、オリジナル問題を加えることで、その単元の用語カバー率を上げるように配慮する
という工夫をすることにより、過去問ベースでありながら、そのデメリットを極力抑えようとしています。オリジナル問題には「オリジナル」マークがついています。
 出題形式は、実際の入試のように、短答記述式、選択式、正誤問題、並べ替え問題となっています。
 全100テーマ。日本史は、途中までは時代順に配列され、最後に交渉史、地域史などのテーマ史があります。世界史は、途中までは、各地域の時代順に配列されています。最後に文化・テーマ史がまとまっています。

 

解説が詳しい

 『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』を見ればわかりますが、問題編と解説編が同じくらいの厚さです。日本史は、問題編は349ページ、解説編は319ページです。世界史は、問題編は339ページ、解説編は277ページです。解説編は別冊なので、勉強しやすいです。特に、受験生が苦手なタイプの問題が手厚く解説されています。「Lecture」として、ポイントがまとまっている部分もあります。
 一部の教科書や教材にしか載っていないような細かい用語には「難関レベル」「最難関レベル」というマークが付いています。
 難関レベルは、明治、青山学院、立教、中央、法政、日本女子、東京女子、津田塾、学習院、関西、関西学院、同志社、立命館、南山だそうです。ただ、これらの大学は、細かい用語が正解のために必要であっても、ほとんどの受験生は正解できないので、受験は満点を取る必要はありませんから、無視してもいいでしょう。
 最難関レベルは、早稲田、慶應、上智だそうです。

 また、解答の用語は基本的だが、問われ方が難しい場合にも、解答に必要なヒントや手がかりをいかに見つけ出すかについての詳しい解説がされています。

 

使い方

 問題を解いて、答え合わせをして、間違えた問題は✓をつけて、解説を熟読します。間違えた問題は、翌日、3日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後などとひたすら復習して、全問解けるようにしましょう。

 

『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』で早慶に受かる?

 河合全統記述模試偏差値60前後から使い始め、その後も、教科書の読み込みや、一問一答などで、基本の網羅度を上げ続けることが前提ですが、受かります。あとは、英語と国語をがんばってください。
 早慶あたりの日本史・世界史で難しく感じるのは、正誤問題です。
 日本史の場合、似た人名や同じジャンルを対象とした2つの著者名などです。これらが詳しく解説されています。
 世界史の場合、早慶あたりの正誤問題の特徴は「正しい選択肢の内容は難解だが、誤っている選択肢のウソは、基本事項が習得できていれば見破れる」ことです。つまり、知らない用語が含まれていても、それは「ノイズ」「目くらまし」であって、冷静に教科書レベルの基本知識で消去法で解けば、正解にたどり着けることが多い、ということです。それで正解できなければ、他の受験生も正解できていないので、差はつきません。受験というものは、満点を取る必要はありません。
 ちなみに、この「ノイズ、目くらまし」という考え方は、共通テストの理科、社会の正誤問題でも有効です。正誤がわからない難しい問題は、とりあえず△をつけて、他の選択肢の検討に移りましょう。
 また、日本史では、史料問題の攻略が必須です。『ヒストリア日本史』では、なるべく最頻出の史料問題は扱ったそうです。

 

『ヒストリア』と『実力をつける日本史・世界史100題』(Z会出版)とどっちがいい?

 『実力をつける』のほうが、細かい知識の出題が多いです。したがって、『ヒストリア』を見て、「簡単すぎる」を思える人以外は、まず『ヒストリア』だと思います。その後、英語、国語の成績が十分足りていたら、『実力をつける』に手を出してもいいかと思います。

 

『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』は共通テスト対策になる?

 早慶と共通テストを両方受ける場合、共通テスト対策として、かなり十分です。あとは、近年の共通テストの資料を大量に読ませるような出題形式に慣れるため、共通テスト型の問題集で慣れましょう。
 一方、早慶を受けないで、共通テストだけ受ける場合は、オーバーワークです。他の共通テスト対策の問題集を使ったほうが効率がいいです。『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』では、共通テストではまずでないだろう、という問題まで載っています。

 

『ヒストリア日本史精選問題集』は東大対策になる?

 『ヒストリア日本史精選問題集』を東大対策に挙げているサイトがあります。しかし、全く東大対策には向きません。東大日本史は、細かい知識は問われず、資料を読み取って、高校日本史のごくごく基本的な知識で、時代の特徴、背景、因果関係などを論述させることに特徴があります。これは、『ヒストリア日本史精選問題集』とは、ベクトルが全く逆です。東大日本史のためには、高校日本史のごくごく基本的な知識を覚えた上で、論述問題集を読み込み、教科書を時代の特徴、背景、因果関係などが書いてある部分に注意しつつ読む、といった学習が有効です。

 

『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』の出版社の実績と信頼性

 『ヒストリア日本史・世界史精選問題集』の出版社は学研です。高校生、大学受験生向けの学習参考書としては、物理、化学の『宇宙一わかりやすい』シリーズが、わかりやすい解説で定評があります。どうように『イメージ記憶でスイスイ覚える ゆる語訳古文単語』なども、わかりやすさを追求した、チャレンジングな古文単語集だと思います。小中学生向けの参考書も多く出版しています。
 出版以外にも、学研教室や介護事業なども展開しています。
 学研の実績と信頼性は抜群と言えます。

 

『ヒストリア日本史精選問題集』の目次

001.旧石器・縄文・弥生時代
002.邪馬台国連合
003.大和政権
004.推古朝の政治
005.飛鳥文化
006.大化の改新~天武・持統朝の政治
007.白鳳文化
008.律令制度
009.遣唐使
010.奈良時代政治史
011.奈良時代の仏教と美術
012.奈良時代の歴史書編纂と文芸
013.平安初期の政治
014.弘仁・貞観文化
015.摂関政治
016.国風文化
017.地方政治の転換
018.寄進地系荘園の成立
019.源氏の進出
020.院政と院政期の文化
021.平氏の台頭
022.鎌倉幕府の成立
023.鎌倉幕府と朝廷
024.執権政治の展開と武士の生活・土地支配
025.元寇とその後の政治
026.鎌倉期の産業
027.鎌倉期の宗教
028.鎌倉期の文芸
029.鎌倉幕府の滅亡と室町幕府の成立
030.守護の権限強化
031.足利義満
032.東アジアとの交渉
033.室町幕府の衰退
034.室町時代の一揆
035.応仁の乱とその後の争乱
036.室町時代の産業
037.室町文化
038.戦国大名
039.ヨーロッパ人の来航・織田信長
040.豊臣秀吉
041.桃山文化
042.江戸幕府の成立
043.江戸幕府の機構
044.大名・朝廷・寺社統制
045.江戸時代の初期外交と鎖国
046.近世の身分制社会
047.文治政治と正徳の治
048.農業・諸産業の発展
049.交通路の整備
050.近世の流通・貨幣
051.寛永・元禄文化
052.享保の改革
053.社会の変容
054.田沼時代と寛政の改革
055.列強の接近
056.天保の改革
057.江戸時代後期の藩政改革
058.江戸中・後期の文化
059.江戸時代の学問
060.開国とその影響
061.江戸幕府の滅亡
062.明治新政府の成立
063.殖産興業と松方財政
064.文明開化
065.明治初期の外交
066.自由民権運動
067.憲法制定と初期議会
068.条約改正
069.日清・日露戦争
070.韓国併合
071.産業革命
072.社会運動の発生
073.明治文化1
074.明治文化2
075.大正政変
076.第一次世界大戦と大戦景気
077.ワシントン体制
078.大正デモクラシー
079.大衆文化の誕生
080.恐慌から景気回復へ
081.軍部・右翼の台頭
082.満州事変から日中戦争へ
083.太平洋戦争
084.占領期の日本
085.占領政策の転換
086.講和とその後の日米関係
087.55年体制
088.高度経済成長
089.高度経済成長の終焉と55年体制の崩壊
090.戦後の文化
091.日中交渉史
092.日朝交渉史
093.日米交渉史
094.日露交渉史
095.東北日本の歴史
096.琉球・沖縄の歴史
097.貨幣制度史
098.女性史
099.支所編纂史
100.世界遺産

 

『ヒストリア世界史精選問題集』の目次

001.先史の世界
002.オリエント世界の成立~統一
003.オリエント世界の統一とイラン世界
004.エーゲ世界とアテネ民主政
005.アテネ民主政の完成
006.ヘレニズム世界
007.共和政ローマ
008.帝政ローマ
009.キリスト教の成立
010.古代インド
011.黄河文明~戦国時代
012.秦・漢
013.魏晋南北朝・隋
014.唐
015.ゲルマン人の活動
016.ノルマン人の移動・封建制度
017.ローマ=カトリック教会の発展
018.西欧世界の拡大・商業の復活
019.英仏王権の伸長
020.中世のドイツ・イタリア
021.ビザンツ帝国・東ヨーロッパ
022.五代・宋・遼・西夏・金
023.モンゴル帝国・元朝
024.イスラーム教の成立~アッバース朝
025.イスラーム諸王朝
026.オスマン帝国
027.ティムール朝・サファヴィー朝・ムガル帝国
028.明
029.清
030.朝鮮史
031.東南アジア史
032.内陸アジア史
033.アメリカの文明・大航海時代(アメリカ大陸)
034.大航海時代(アジア)
035.宗教改革
036.絶対王政の成立
037.ヨーロッパ各国の絶対王政
038.イギリス革命
039.ヨーロッパ諸国間の植民地戦争
040.アメリカ独立戦争
041.フランス革命
042.ナポレオン戦争
043.産業革命
044.ウィーン体制
045.ラテンアメリカの独立・メキシコ革命
046.19世紀のイギリス・アイルランド問題
047.19世紀のフランス・イタリア・ドイツ
048.近世~19世紀のロシア
049.アメリカ合衆国の発展
050.社会主義
051.アフリカ分割
052.西アジアへの列強の進出
053.イギリスによるインドの植民地化
054.19世紀~20世紀前半の東南アジア
055.アヘン戦争~変法運動
056.義和団事件~辛亥革命
057.朝鮮の民主化
058.第一次世界大戦にいたる国際関係
059.第一次世界大戦
060.ロシア革命
061.ヴェルサイユ体制とワシントン体制
062.戦間期のヨーロッパ諸国
063.1920年代のアメリカ
064.戦間期の西アジア
065.戦間期の南アジア・東南アジア
066.戦間期の中国
067.世界恐慌
068.ファシズムの台頭
069.第二次世界大戦と戦後処理
070.戦後の東西冷戦
071.平和運動と軍縮
072.戦後のアメリカ合衆国
073.戦後のラテンアメリカ
074.戦後の東西ヨーロッパ
075.ヨーロッパ統合
076.パレスチナ問題
077.戦後のアフリカ諸国
078.戦後の西アジア・南アジア
079.戦後の東南アジア
080.中華人民共和国
081.台湾・朝鮮半島
082.ギリシア文化・ヘレニズム文化
083.ローマ文化
084.中世ヨーロッパ文化
085.ルネサンス
086.17~18世紀のヨーロッパ文化
087.19世紀のヨーロッパ文化1
088.19世紀のヨーロッパ文化2
089.20世紀の文化
090.イスラーム文化
091.中国文化、魏晋南北朝・唐
092.中国文化、宋・元
093.中国文化、明・清
094.オアシスの道と草原の道
095.海の道
096.中国の土地制度史・東アジアの文字
097.儒学史・中国の反乱史
098.オセアニア・太平洋地域史
099.19世紀を中心とする移民史
100.グローバリゼーション

 

大学受験の世界史の勉強法・参考書 早慶上智GMARCHなど私大編

大学受験の日本史の勉強法・参考書 早慶上智GMARCHなど私大編

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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藤沢秀行の名言と伝説:囲碁の日本棋院と同じ千代田区五番町の塾が人間力を高める言葉を紹介

 

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藤沢秀行名誉棋聖から成績の落ちない勉強法を学ぶ

大学受験合格のカギは人間的成長:藤沢秀行名誉棋聖と野村克也監督の共通点

 

藤沢秀行名誉棋聖の名言と伝説:囲碁の日本棋院と同じ千代田区五番町の塾が人間力を高める言葉を紹介

 

 大学受験塾チーム番町から、直線で100mちょっとの所に、囲碁の総本山、日本棋院があります。日本棋院の住所は五番町で、大学受験塾チーム番町と同じです。伝説の碁打ち、藤沢秀行名誉棋聖の名言、伝説を集めました。

 

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藤沢秀行の名言

 

「碁打ちを50年もやっているのに何もわかっていない。しかし、奥が深く、変化が広大無辺だからこそ、我々は強くなれる。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録1

 

「趙治勲とか小林光一なんか何とも思わない。そういう心構えで日々戦っている。老いたりといえども、まだ72歳です。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「プロのわれわれも何もわからない。無限の方向に進んでいるのだからね。知っているったって本当はー何も知らないんだ。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録2

 

「だから、年齢なんて、そんなものはたいしたことがないんだ。」
「将棋にしても碁にしても、そして人生にしても、無限の変化がある世界だから、日々の工夫を続ければ続けるほど強くなれる」
米長邦雄永世棋聖に「50歳を過ぎてから強くなった」理由を聞かれて。

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「本当の強さというものは、誰のものでもない。すべての棋士が、一生懸命になって追いかけていくものです。その過程の副産物として、誰かが結果的にタイトルを預かる、というだけなんです。大事なのは、一生懸命に追いかけていくことなんですね。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「ようするに、骨から強くなっていないんだ。骨太でなければ、骨を鍛えていなければ、ちっとも強くないんです」
「他人のいいところだけをつまんで、自分の栄養にしようとしている。これは無意味どころかマイナスです。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「そうじゃないんだよね。いちばん大事なのはその過程なんだ。」
将棋の若手棋士が、難解な詰将棋に対し「これは作り物だから実践には出ない」という声が出た話を受けて。

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「ただ自分一人で這い上がる努力を続けて来ただけです。しかし、それがいちばん大事なことなんだと思いますよ。一段ずつ階段を登ることを心がければ心がけるほど、不思議と地力がつくものなのです。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「毎日が真剣勝負だと思ってかかれ。便所掃除でも草むしりでも、これは真剣勝負なんだというくらいの気持ちを持て」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「最後は、やっぱり人間性の問題になるんじゃないですか。」
「所詮、将棋も碁も、人間が打ったり指したりするものですよ。やっぱり人間を高める、自分を磨いていくほかないんだね。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「不識という言葉がある。何もわからない、という意味です。私は人生のこと、碁のこと、何もわからない。でも誠意ということだけはわかります。誠心誠意、すべてのものごとにあたる。それだけですよ。」
「私は相当のバカですが、まず、バカだということを知らなきゃいかん。自分自身はいかに無力であるか、ということを知らなきゃいかん。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「人間なんてみんなバカで、神様に比べれば偽物です。それがわかっていないから、勝つ人を本物だと思って、勝つ人の真似をしてしまう。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「ものごとに頓着しない、人と人の赤裸々な付合いを大切にしたい。それが本当の付合いというものだ。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録3

 

「考えてみれば、我々のポカはまだ幸せである。すべてが自分自身の責任なのだから。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録4

 

「まだ修行中の碁打ちには、戦って戦って戦い抜けと言っている。戦いを避ける技は、後になってからでも身につく。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録6

 

「定石もヘチマもない。見てていい手が定石なんだ。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録7

 

「書も、絵も、碁も、同じだと思う。感情の発露というものがいちばん大切なんだ。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録8

 

「いいと思ったことは、どんどん教えてしまう。その結果、若い人が強くなり、私が負かされても仕方ないではないか。」

『勝負の極北』(クレスト社)藤沢語録9

 

「現在ただ今、誰が強いとか弱いとか、そんなことはたいしたことないですよ。ゴールのないマラソンなんだから。今、後ろのほうにいても、日々走りつづけていればその人は必ず上達する。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「碁の神様がわかっているのが100だとしたら、私にわかっているのは、せいぜい5か6か、あるいはもっと下です。」
「いまだに碁のことはわからないから、模索しています。せめて1局に1手、自分の納得できる手を打ちたいと思って精進を続けています。」

『勝負の極北』(クレスト社)

 

「無悟という言葉に思い至った。悟り無し。いくら勉強しても、俺には永久に碁はわからない、ということがわかった。」

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

「頭改造しなきゃダメだよ。」
京大医学部卒の坂井秀至棋士に向かって。

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

「もっと修行しなきゃダメだよ。碁の。たえず、工夫しなきゃ。上のてっぺんの連中が。もっと戦闘力をつけなきゃいかんと思うんだよな。碁に戦闘、かみついて戦う姿勢を。お前ら(若手)なおそうだよ。人まねなんかクソくらえだ。自分で工夫しろ。」

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

「私は碁は芸であると考えている。勝ち負けは結果にしか過ぎない。芸が未熟なら負ける。芸が勝っていれば勝つ。私とて勝ちたいと思うけれど、勝負という狭い枠に自分を閉じ込めたくないのである。芸というのは、もっと広い発想から生まれるものだろう。自由奔放な発想なくして、芸を高めることはできないと思っている。」

『碁打秀行』(角川文庫)

 

「弟子たちにも言うんだ。なかなかわかってもらえないんだけど。碁っていうものは人間が打つもんなんだから、人間を高めなきゃダメなんだぞって教えてやる。イロハのイの字から。そういうこともわかなないんだ。ただ碁勝ちゃいいんだって。」

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

「碁は一つの作品だと思いますから、今日はご来場の皆さんのために、二人にしっかり力いっぱいの碁を、いい作品を見せてもらいたいと思います。」
日本棋院関西総本部「藤沢秀行名誉棋聖を囲む会」。井山裕太対結城聡にて。

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

昭和63年、世界選手権で中国の聶衛平に敗れた夜に詠んだ詩。
「棋士は死す迄
 遠く涯しない
 曠野をさ迷える者
 過去秀でた棋士ですら
 野辺に咲く一輪の花
 楽しいかな自由の天地
 方寸の盤上に駛走(しそう)し
 画となり書ともなる
 涯しなき自由の天地
 傷だらけの道程
 耐え 戦い 弱者は死
 自由の天地を知らざるもの悲し」

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

秀行さんはなんでそんなにお酒を飲んだんですか?と聞かれて
「自分の神経に耐えられないんじゃねぇかと思うんだよ。大変なんだよ、戦っていくってことは。なんでも、あなた方の仕事でも。無限の中にいるわけだよ。それと同じことなんだよ。上へ行けば上へ行くほど大変なんだよ。努力がね。最善を尽くそうとすりゃ大変なことなんだよ。碁だってそうだ。何もわかっている奴なんかいるわけねえもの。だからそれに近づこうとして努力する。それもねえ、並大抵の努力じゃできないの。本当に死ぬ思いのような。だからまねは誰もできない。」 

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

今、秀行さんの夢ってなんですか?と聞かれて
「もう少しマシになりたいと思うだけ」

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

藤沢秀行の伝説

 

 1962年、自ら創設に尽力した、初代実力制名人に就く。リーグ戦最終戦は負け、新宿に飲みに行ったが、その間に、呉清源VS坂田栄男がジゴで、ジゴは「半星」という規定から、酔っ払っているうちに名人になっていた。翌朝の読売新聞社会面には、裸同然で記者会見に応じる姿の写真が大きく載ったらしい(人生、意気に感ずより)。名人戦の賞金は、それより1ケタ多い借金の返済にも回らず、ちょっと違う方面に行ってしまったらしい。

 

1978年棋聖戦、1勝3敗のカド番。挑戦者は加藤正夫本因坊。
「私は加藤君の大石に襲いかかった。下手をすれば、自分の首が飛ぶのを恐れず、大勝負を挑んだのである。勝負どころの1手に私は2時間57分の大長考をした。あらゆる変化を読んだつもりだった。」
131手で加藤正夫本因坊は投了。藤沢秀行棋聖が殺した加藤の石は34。記録的な勝利だった。

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

「80歳でタイトルを獲る」

 藤沢秀行名誉棋聖は1992年、67歳の時、王座位を防衛しました。これは史上最高齢のタイトル保持記録です。これ自体、伝説と言えます。その後、小林覚九段と福井進九段と立川競輪に行き、帰りに駅前で飲んた時に、「80歳でタイトルを獲る」と言ったそうです。小林覚九段が各方面に吹聴し、加藤正夫九段がNHKで言ったそうです。

『勝負の極北』(クレスト社)

 

1999年、日本棋院に対して脱退届を出し、反乱を起こし、除名される。
「もう日本棋院とは脱退しまして、敵対行為に入るかもしれません。免状値上げに対しても猛反対してきたんですけど、現在にいたっては、五段が10万ですね。七段にいたっては50万とかって言うんでしょ。これではますます、アマチュアの人とプロの碁打ちは離れてゆく。ポトンと一滴かもしれませんが、一滴が大きい波紋になって…。」
2003年、藤沢秀行名誉棋聖は日本棋院に復帰。
「日本棋院もいい方向に動き出したようなので、意地を張っている理由がなく、復帰を決断しました。」

『無頼の遺言』(NHKのドキュメンタリーDVD)

 

藤沢秀行プロフィール

 1925年6月14日生まれ。
 1977年、第1期棋聖戦から、50代で棋聖位を6連覇。毎年、自分が囲碁を教え、自宅で食事を食べさせていた若手が挑戦してくる。1983年失冠。直後に吐血し、ガンが発見される。計3度のガンから生還。
 1991年、王座位を獲得。翌年、67歳で防衛。いまだ史上最年長タイトル保持記録。
 1998年、引退。
 2009年5月8日、誤嚥性肺炎により死去。83歳。
 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町(日本棋院から直線で130m、日本棋院の住所は五番町で大学受験塾チーム番町と同じ。)代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

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大妻中学校(市ヶ谷駅650m)入試算数 対策と傾向と勉強法は?:『塾技』で解く合格への道

 

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大妻中学校は市ヶ谷駅から650mです

 大妻中学校は千代田区三番町にあります。地下鉄市ヶ谷駅から650mほど、大学受験塾チーム番町から1.0kmほどです。

 

大妻中学校入試算数の対策と傾向と勉強法:『塾技』で解く

全体としては、中学入試の参考書にそのまま載っているような問題が多く、満点近くを狙えます。
・学校の算数の教科書を説明から理解し、問題を完璧に解けるようにする。
・『受験算数の裏ワザテクニック』(文英堂)シリーズなど、わかりやすい参考書で中学入試の技法をマスターする。
・『塾技』(文英堂)を全問完璧に解けるようにする。
という対策で、ほぼ満点を狙えるでしょう。
『塾技』に載っていないが、実際に試してみると意外に簡単に解けるような問題に注意しましょう。

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中学入試塾技100算数(文英堂)という参考書が市販されています。
中学入試によく出る技法を100にまとめ、見開きの左ページで技法と例題を解説し、右ページには、その技法を使う入試問題が載っています。
やや解説が簡素なので、はじめてこれらの技法を学ぶ人は、『受験算数の裏ワザテクニック』(文英堂)シリーズ、あたりが、解説が親切でオススメです。
この「塾技」をもとに、大妻中(千代田区三番町、大学受験塾チーム番町から1.0km)入試の算数を分析してみます。

 

2021年大妻中算数第2回

 

大問1

(1)
特に工夫もなく、計算するだけで正解できます。

(2)
式の中に含まれるを求める逆算と言われる問題です。『塾技』2「逆算」に載っていて解けます。

(3)
直方体をすき間なく並べ、立方体を作る問題です。『塾技』82「最大公約数・最小公倍数2」の左ページの例題に、数値が違うだけの同じ問題が載っていて解けます。

(4)
原価に利益を見込んで定価をつけ割引する売買の問題です。『塾技』16が「売買の問題」で、ほぼ似たような問題が載っていて解けます。

 

大問2

5つの整数A、B、C、D、Eがあり、B+Cを求める問題です。
本文のようにアルファベットが3つ、4つあって、全部足せばなんとかなる問題は、『塾技』9「消去算」に載っています。

 

大問3

特に、中学受験特有の技法を使うわけではなく、おもり1個の質量と箱の質量はかんたんに求まります。その後もかんたんに正解できます。

 

大問4

時計算と言われる問題です。『塾技』23「時計算」に、数値が違うくらいの同じ問題が載っており、解けます。

 

大問5

列車どうしがすれ違う問題です。『塾技』24「通過算」に似たような問題が載っているので、解けるでしょう。

 

大問6

部屋に何人ずつ入ると何人入れない、何部屋余るという問題です。「1個あたりの差」と「全体の差」から個数を求める「差集め算」と言われる問題です。『塾技』5「差集め算」に似たような問題が載っていて、解けます。

 

大問7

『塾技』27「角度1」に星型の角の和の考え方が載っていますが、本問は角が7つに増えています。同じように、三角形の内角と外角の関係を使えばいいのですが、補助線を引いて、三角形と四角形の内角の和にすることができれば、解けます。似たような問題をマスターできていたかどうかで、正解、不正解が別れたでしょう。

 

大問8

「仕事算」と言われる問題です。『塾技』10「仕事算」に載っています。本問は、A君とC君の仕事量の比が与えられているという特殊性がありますが、それほど難しくないでしょう。本問のように、実質、連立方程式を解く問題も、『塾技』の右ページに載っていて、解けると思います。

 

大問9

高校数学で群数列と言われる問題です。ただし、本問は、特別な技法が必要なわけではなく、規則性に近いものを把握し、計算すれば正解できます。

(1)
初めて10が現れるまで計算すれば正解できます。

(2)
これも16群までと17群までの項数を愚直に計算すれば、140番目が17群にあることがわかります。

 

大問10

やや複雑な回転体の表面積を求める問題です。
やや難しいのが、真ん中の円錐台の部分の表面積ですが、母線が3:4:5の直角三角形の状況になっていることに気づけば、あとは、扇形の側面積の公式を使えば求まります。扇形の側面積は『塾技』42「すい体」に載っています。3:4:5の直角三角形については、『塾技』72「直角三角形の相似」に載っています。

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m(大妻中から1.0km) 東大卒の塾長による個別指導

 

 

2021年大妻中算数 海外帰国試験

 

大問1

(1)
普通に計算するだけで正解できます。

(2)
本問は、中学数学で言う因数分解、つまり、分配法則の逆を使うとかなり簡単に解けます。『塾技』1「計算の工夫」に分配法則が載っています。

(3)
計算式のを求める「逆算」と言われる問題です。『塾技』2「逆算」に載っており、解けます。

(4)
食塩水の標準的な問題です。食塩水の問題は、まず食塩の質量に注目するのがコツです。(これは、高校化学も同じで、溶質の質量、モル数に注目すると見通しが良いことが多いです。)塾技17、18「食塩水1」「食塩水2」をマスターすれば解けます。
食塩水は、公式丸覚えではなく、濃度は食塩水の質量を100とした時の食塩の質量の百分率であることから理解しましょう。また、百分率とは、「割合」(比べる数÷もとにする数。批判も多いが、文部科学省の検定を通った教科書に書いてある。)1を100%としたものだということを理解しましょう。

(5)
年齢の和や比が与えられている問題です。特に中学入試特有の技法が必要なわけではなく、問題文を理解し、比を理解していれば正解できます。一応、『塾技』56「年令算」はありますが、この技法は、本問には不要です

 

大問2

似たような問題が、『塾技』58「速さと比1」に載っており、解けます。かかる時間の比は、速さの逆比になることを使うと見通しがいいです。

 

大問3

正方形を折り返し、角度を求める問題です。
図形を折り返す問題は、中学入試によく出ますが、本問は、正三角形、二等辺三角形であることから角を求めていきます。似たような問題に慣れておきましょう。

 

大問4

やり取りの前後で比が変化する「倍数算」と言われる問題です。『塾技』54、55「倍数算1」「倍数算2」に載っており、解けます。

 

大問5

約数について、現場で考える問題です。
『塾技』79、81、82「約数」「最小公倍数・最大公約数1」「最小公倍数・最大公約数2」あたりをマスターしておくと、見通しがよく解けるでしょう。

 

大問6

川を上り下りする「流水算」と言われる問題です。本問の「休憩をとる」というのは、全く難しくなく、典型レベルの問題です。『塾技』25「流水算」に似たような問題が載っており、解けます。

 

大問7

高さが同じで底面積が異なる、角柱と角すいの体積比の問題です。
本問の底面積のような三角形の面積比は、『塾技』67「面積比3」の載っており、解けます。

 

大問8

「仕事算」と言われる問題です。『塾技』10「仕事算」に似たような問題が載っており、解けます。

 

大問9

高校数学で群数列と言われる問題です。ただし、本問は、特別な技法が必要なわけではなく、規則性に近いものを把握し、計算すれば正解できます。上記、2021年第2回の大問9と、見た目は異なりますが、ほぼ同じ問題です。

(1)
愚直に足していけば求まります。

(2)
これも、100近くまで愚直に足していって、あとは数えれば求まります。

 

大問10

鈍行列車と急行列車が円状の線路を周る問題です。

(1)
最小公倍数を理解していれば、簡単に解けます。

(2)
実際に試してみると解ける問題です。あまり見たことがないな、と思ったら、実際に試して見る姿勢が大切です。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町(大妻中高から1.0km)代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

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