大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導
大学受験の勉強法の本:超一流になるのは才能か努力か?(文藝春秋)
『超一流になるのは才能か努力か?』の感想・書評
2016年7月29日発売。
フロリダ州立大学心理学部のアンダース・エリクソン教授の著書です。
巻末に引用した論文、文献などがたくさん載っている、ちゃんとした本です。
エリクソン教授の研究は、他の本でも引用されています。
東大、医学部に合格する超一流の脳の回路を構築
物事が上達する、勉強すれば大学受験で点数を取れる、超一流になれるメカニズムはこれだと思います。
かつては、脳に絶対音感の回路があるかないかはすでに決まっており、変えようにも変えられない、と考えられていました。
しかし、1990年代以降、脳には、たとえ成人でも、それまでの想定をはるかに超える適応性があり、脳の能力を自らの意思でかなり変えられる、ということが明らかになってきました。脳は適切なきっかけに反応し、自らの回路を書き換えていく。ニューロン(神経単位)の間に新たな結びつきが生じる一方、既存の結びつきは強まったり弱まったりし、脳の一部では新たなニューロンが育つこともある。
生まれ持った才能と思われていた、絶対音感が、大人でも習得できることがわかりました。そして、これは、絶対音感だけではなく、他の能力にも当てはまります。
ロンドン大学の研究では、ロンドンのタクシー運転手とバス運転手の脳を比較しました。タクシー運転手は、常に、最適なルートを考える必要があるのに対し、バス運転手は、同じルートを繰り返し走るだけ、という違いがあります。
タクシー運転手のほうが、空間把握にかかわるとされる、脳の海馬がはるかに大きかったそうです。
東大・医学部受験生も、『超一流になるのは才能か努力か?』に書かれているような方法で、適切に、脳の神経回路を形成するようなトレーニングをすることが、超一流の大学受験生になるための努力だと思います。
東大、医学部に合格する超一流の最強の努力は?
『超一流になるのは才能か努力か?』で筆者(翻訳者)は「限界的練習」と名付けています。限界を少し超える負荷を自分にかけ続ける。これが超一流になるための努力であると。
短期記憶では数字を7ケタほど覚えるのが限界、とよく言われます。
しかし、筆者が行った実験で、被験者に、ちょうどできるかできないかの境界あたりの数を与えるトレーニングセッションを続けたところ、82ケタまで覚えられるようになったとのことです。
東大・医学部受験生も、「現在の自分よりも少し上」の内容を適切に把握し、勉強すれば、効果的に成績を上げることができると思います。極端に言えば、数学、理科は小学校の教科書から用意し、理解していなかった部分にチェックをつけ、ひたすら復習してマスターする、という方法が超一流への努力だと思います。
教科書が完璧になったら、入試によく出る技法がほぼ網羅されている教材に進む、限界を少し超える負荷を自分にかけます。数学なら『Focus Gold』。物理なら『物理のエッセンス』。化学なら『化学の新標準演習』。これらが完璧になれば、進研模試や河合全統記述模試などの標準的な模試では、東大、国立医学部級の偏差値になり、実際に合格する一歩手前くらいにはなっています。
仕上げに、実際の入試で合否を分けているレベルの入試問題で、上記の技法を使いこなす練習をする、限界を少し超える負荷を自分にかければ、合格点に達します。
英語も、文法なら、中学レベル→高校基礎→高校標準などと限界を少し超える負荷を自分にかけ続けることができます。長文も、公立高校入試レベル→高校基礎レベル→共通テストレベル→地方国公立大レベル→東大レベルなどと、限界を少し超える負荷を自分にかけ続けることができます。
現代文も、最初は、中学国文法の参考書の例文の音読から初め、公立高校入試レベル→共通テストレベル→地方国公立大レベル→東大レベルなどと、限界を少し超える負荷を自分にかけ続けることができます。
ここで注意したいのは、大学受験などの受験勉強の場合、トレーニング強度が低すぎるゆえの失敗というよりは、限界を「大きく」超える負荷をかけてしまうことで、トレーニングの強度として適切さを欠く失敗のほうが、はるかに多いようです。
数学で言うと、検定教科書が完璧でないなら完璧にすべきですし、チャート式、Focus Goldのレベルが完璧でないなら、完璧にすべきです。
チャート式、Focus Goldのレベルに抜けが多いのに、入試で合否を分ける問題どころか、それを超えて、東大合格者も解けていないような問題の解説を予備校で聞き、数学が全くできるようにならない、という人が世の中にはとても多いのだと思います。限界を「少し」越えるのがコツです。
また、英語の音声の倍速再生のスピードを少しずつ上げる、なども、限界を少し超える負荷を自分にかけ続ける方法としていいですね。
個別指導塾の強み、超一流になる目的のある努力
『超一流になるのは才能か努力か?』では、音楽の先生が、練習していると言っているにも関わらずどうも上達していない生徒に対し、理由を把握しようとする、架空の会話があります。
先生「何回練習したのかな。」
生徒「10回か20回です。」
先生「正確に弾けたことは何回あったかな?」
生徒「そうですね、わかりません。1~2回でしょうか。」
先生「どうやって練習したんだい?」
生徒「えーと、ただ弾いただけです。」
大学受験の勉強も同じです。結局、できないことをできるようにした時に、成績が上がるわけです。よく「参考書を◯周」という表現をする指導者、生徒がいます。それは、上記の生徒の「10回か20回です。」と同じで、塾長は、ほぼ意味がないと思います。出来ている部分は、ほぼやらなくてもいいです。出来ていない部分は、チェックをつけ、翌日も、翌々日も、1週間後も復習して、ひたすらできるようにする。それが、成績を上げるための、目的のある練習、学習です。
また、本書では、「目的のある練習」には「フィードバックが不可欠」としています。上記の会話では、
先生「正確に弾けたことは何回あったかな?」
生徒「そうですね、わかりません。1~2回でしょうか。」
と、生徒は練習中に、指導者からフィードバックを受けることができず、どこが間違っているのかを把握できなかかったことも、練習がうまく行っていない原因ではないか、としています。
大学受験塾チーム番町は、個別指導塾なので、生徒が答案を書いている最中に、塾長である私から、どこが間違っているのか、フィードバックを受けることができ、「目的のある練習」を実現できているのだと思います。超一流になるための適切な努力を心がけております。
超一流になる心的イメージ:東大、医学部受験の全体像
「心的イメージ」とは、たとえば、超一流のチェスプレイヤーが駒の配置、相互関係を5万個ほど蓄積している、超一流のピアニストが曲全体をどんなふうに演奏するかというイメージを持ちつつ、細部についても明確なイメージを持っている、など、「木」と「森」の両方に目配りができることです。
東大、医学部受験の数学(物理や化学はほぼ同じですし、他科目も似たようなものです)に当てはめましょう。
生徒側は、今習っている事柄(木)を理解することも大切ですが、大学受験のためには、高校数学の体系(まずは数学の検定教科書、次に教科書を軸としてチャート式やFocus Goldなどの学校採用教材)のどこに何が載っているか(森)を把握することも大切です。
森を把握することにより、大学入試で他分野にまたがる出題があっても、「問題文のこの部分はこれをつかい、この部分はあれを使えばいい」といった思考で解くことができます。
指導者側も、大学入試の過去問や模試で、合否を分けるレベルなのに生徒ができていない部分があった場合、その問題自体を解説する(木)というよりは、「この教材のここに載っているよね」と、大学受験数学の体系の中のどこに抜けがあるのか(森)を示すことが大切でしょう。
また、超一流のチェスプレイヤーともなれば、創造性が必要な新手を繰り出さなければ勝てません。しかし、そういう人ですら、駒の配置、相互関係を5万個ほど蓄積しているのです。「暗記数学」を批判する人がいますが(「暗記数学」という言葉も解釈が必要で、一般的には、意味もわからず丸暗記するのではなく、理解した上で、Focus Goldなどの技法を覚える、という解釈だと思われる。)東大、医学部受験生が数学の『チャート式』や『Focus Gold』の技法を覚えることは、超一流への適切な努力と言っていいのではないでしょうか。(ただ、Focus Goldなどの技法の暗記を必要とする日本の大学受験数学の是非には、疑問を残すところだと思いますが。)
浪人しても東大、医学部に合格するわけではない理由
上記のように、上達のコツは、限界を少し超える負荷を自分にかけ続けることです。
逆に言うと、自分の能力の範囲のことをこなし続けても、成長はしません。むしろ、改善に向けた意識的な努力をしないと、徐々に劣化します。
大学受験界でも、指導歴○○年、といった文言を見ることがあります。しかし、長いこと携わっていたところで、改善に向けた意識的な努力をしないと、むしろ、その人は劣化して、うすらボケた人である可能性も高いです。超一流への努力を怠っているからです。
また、浪人としたところで、東大や医学部に受かるわけではありません。大きな理由としては、脳の回路は、自分の限界を少し越える負荷をかけ続けないと劣化するから、ということもあるでしょう。先述のように、予備校の授業は、東大合格者も解けないような問題の解説のことも多く、「自分の限界を少し越える負荷」にはあてはまらない事が多いでしょう。一生懸命、予備校の授業に出席しても成績が上がらない、ということは、超一流への努力からも外れている、ということなのです。
東大、医学部に合格する英作文の超一流への努力
秋元康さんは、スタッフに「カルピスの原液を作れ」と言うそうです。その原液があれば、色々なところがそれを使ってアイスクリームやキャンディーなどを作りたいと言って来る。
『超一流になるのは才能か努力か?』も「カルピスの原液」のようなもので、「限界的練習」を各分野に応用すれば、東大や医学部にも合格できるし、スポーツも上達するし、文章も上手に書けるようになるはずです。
受験英語の神様と呼ばれた、故伊藤和夫先生の名著『ビジュアル英文解釈』(駿台文庫)には、ベンジャミン・フランクリンが、兄の印刷所で働いていた時に、独学し文章を書いていた話が載っています。
余談ですが、ベンジャミン・フランクリンは、雷雨の日に凧を上げ、雷が電気であることを証明した人であり、アメリカ独立宣言の起草委員であり、アメリカ独立戦争中は外交で活躍し、現在は、100ドル紙幣の肖像の人です。
本書には、ベンジャミン・フランクリンの文章独学法が書いてあります。
フランクリンは、あるイギリスの雑誌の文章の筆者と同じくらいの文章をかけるようになりたいと思ったそうです。そこで、文章の内容を思い出せる程度に最低限メモし、雑誌と同じくらい質の高い文章を書くことを目指し、書いた後に元の記事と照らし合わせ、必要があれな自分の記事に修正を加える、という方法を採ったそうです。まさに、「限界的練習」を文章力に応用したわけですね。
普通の学生であれば、中学国文法の参考書の例文→小学校の教科書レベルの文章→中学校の教科書レベルの文章→自分の好きな作家の文章、などと、限界を少し超える負荷を自分にかけ続け、フランクリンのように超一流への努力をすれば、確実に文章力は上がるでしょう。
東大・医学部受験の英作文も同じです。中学文法の例文→高校文法基礎、高校英作文基礎レベルの英文→受験標準レベルの英文→東大・医学部レベルの英文と、限界を少し超える負荷を自分にかけ続け、日本語を見て英文を書けるようにし、超一流への努力をすれば、確実に英作文の実力は向上するはずです。
ちなみに、本書によると、フランクリンはチェスが大好きで、文章よりもチェスに多くの時間を掛けたそうですが、チェスはそれほど上達しなかったそうです。本書では、それは、チェスについては、限界を少し超える負荷を自分にかけ続ける「限界的練習」をせず、自分の実力の範囲にとどまっていたからだろう、としています。将棋や囲碁を上達したい人は、現在の自分より少しだけ上のレベルの問題集を買ってきて(ただ、現在の自分までのレベルの本にも意外と抜けは多いと思う)、問題を解けるようにする、限界を少し超える負荷を自分にかけ続ける「限界的練習」をすることが、超一流への努力だと思います。
創造性も限界的練習から生まれる
創造性、クリエイティビティが話題になることが多いです。創造性はどうすれば育めるのでしょうか?
『超一流になるのは才能か努力か?』では、創造性も限界的練習の結果だとします。
ピカソも、初期は、古典的な作風だった。その上で、さまざまな芸術的スタイルを探求した。つまり、限界を少し超える負荷を自分にかけようとした、「限界的練習」をした、超一流への努力をした、ということですね。
ノーベル賞受賞者は、誰よりも多く論文を書いている。これも、限界を少し超える負荷を自分にかけようとした、「限界的練習」をした、超一流への努力をしたということですね。
最先端に到達した人が、限界を少し超える負荷を自分にかけようとした、限界的練習によって、超一流への努力をし続けた結果が、創造性なのでしょう。
こういう人は『超一流になるのは才能か努力か?』を読むべき
勉強、スポーツ、楽器、などなど、なんでも、上達したい人。先述のように、アイスにもキャンディーにもなれる、「カルピスの原液」のような本。
『超一流になるのは才能か努力か?』の目次
序.絶対音感は生まれつきのものか?
1.コンフォート・ゾーンから飛び出す「限界的練習」
2.脳の適応性を引き出す
3.心的イメージを磨きあげる
4.能力の差はどうやって生まれるのか?
5.なぜ経験は役に立たないのか?
6.苦しい練習を続けるテクニック
7.超一流になる子供の条件
8.「生まれながらの天才」はいるのか?
終.人生の可能性を切り拓く
この記事を書いた人
大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。