大学受験にコーチはいたほうがいい?:個別指導と受験生の自立のバランスが鍵!

 

大学受験にコーチはいたほうがいい?:個別指導と受験生の自立のバランスが鍵!

 

 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2021年9月3日に「コーチはいたほうがいい?」という動画をアップしています。

 

個別指導塾のコーチの重要性

 まず、コーチがいることのメリットは「全体的なバランスを把握できる」ことだと述べています。
 たとえば、大学受験で例えると、なんとなく学校に通って良い成績を取り、なんとなく塾に通っていたら、志望大学レベルの成績になり、なんとなく受かってしまう。結果合格すれば、なぜ自分は合格レベルの成績に達していたのかをわからなくてもいいでしょう。しかし、多くの場合、そうではないわけです。自分はなぜ、志望大学レベルの成績に足りないのか。それがわからなければ、技術的にも、精神的にも、厳しいです。誰か、全体像を把握していなければ。

 コーチングの教科書には、有名な図があるそうです。選手が不調のとき、栄養士は、「これは栄養の問題だ」と言う。ストレングストレーナーは「筋力が足りていない」と言う。バイオメカニクス(動き)の先生は「技術的な課題」と言う。メンタルサポートの人は「最近、メンタルの調子が良くない」と言う。といった図だそうです。それぞれの職業からはそう見えるが、結局、それらを全体的にマネージする存在がいて、バランスを取らなければなりません。

 これは大学受験も同じです。たとえば、国立文系志望の場合、英語や社会は成績が足りているが、数学が全く足りていない、という人はとても多いでしょう。普通の個別指導塾の場合、英語と数学の先生は異なるでしょう。英語の先生は、英語の宿題を出し、社会の授業も受け続けなければならず、結局、時間や集中力は有限な資源なので、数学に回す十分な時間や集中力が足りず、国立大学に不合格になる。

 大学受験塾チーム番町は、塾長が全科目を指導する個別指導塾なので、全科目の全体的なバランスを考えた上で、そのバランスまで、個別指導をしております。ある東大に行った生徒が「先生が全部見ているから強いんだと思うんですよね」と言っていました。そのあたりを理解できるから、東大に合格できるのですね。

 次に、コーチがいることのメリットは、客観性だと述べています。
 たとえば、上記のように、明らかに数学の成績が足りていないのに、客観的、冷静に、的確な対策を取れないまま、受験に不合格になる人は、とても多いと思います。チーム番町は、塾長だけが指導する個別指導塾なので、客観的に冷静に、なんのしがらみもなく、ひたすら合格に向けて、最善の対策を尽くすことができます。

 次に、メリットは、コーチは経験を持っているので、間違えにくい、と述べています。
 特に、大学受験は期限がありますから、失敗から学ぶということが許されにくい状況です。個別指導をしていれば、このような生徒、家庭は、こうなる、というのが、おおむね見通せます。チーム番町では、そのあたりまで含めて、個別指導をしております。

 

大学受験生の自立の重要性

 コーチがいることのデメリットは、独りに弱くなることだと述べています。
 為末さんの勝手な見立てでは、独りで何回か遠征したことがない、それがフィットしない人間は、だいたい勝負弱い、と述べています。最後の最後、自分しかいない、という状況に慣れていない。
 高校受験の時、校門の前まで、保護者の方が付き添うケースが増えているようです。しかし、校門の中に入れば、受験生1人で戦わなければならないわけです。果たして、保護者の方が付き添うことは、本当にプラスなのでしょうか?高校受験までに、独りで強く戦えるよう、教育をすべきなのではないでしょうか?
 大学受験塾チーム番町は、個別指導塾ですが、生徒を依存させるようなことはせず、自立してもらうことを目的に指導しております。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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与えすぎると大学受験に失敗する?:個別指導塾と意欲を奪わない教育

 

与えすぎると大学受験に失敗する?:個別指導塾と意欲を奪わない教育

 

 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2021年9月29日に「与えすぎて弱くなるってどういうことですか?」という動画をアップしています。

 

意欲を奪わない教育と個別指導塾

 為末さんは家訓を決めたそうです。「与えすぎて奪わぬように」。為末さんは「教育が陥る一番厄介なプロセス」と述べています。指導者側が、良かれと思って、相手に深く関わりすぎてしまい、いちばん重要なものを奪ってしまう。

 「いちばん重要な奪うもの」とは何か。それは、「自分が自分の人生を生きているんだという感覚」で、いちばん後天的に与えにくいもの、と述べています。意欲、継続する気持ち、好奇心。

 個別指導塾というものは「懇切丁寧に教えてくれる」と思われがちかもしれません。しかし、それは、ややもすると「与えすぎ」て「奪う」ことになりかねません。たとえば、生徒の質問に対して、すぐに正解を教えてしまう。生徒の間違った答案に対し、すぐに間違いを指摘してしまう。

 大学受験塾チーム番町の塾長は、なるべく与え過ぎぬよう、質問されても、一段階だけ正解に近づくヒントを与える。生徒が間違った答案を書いても、「どこが違うかわかる?」と聞く。その他、日頃から「なぜこうなると思う?」「そもそもそれって何?」とこちらから質問する、など、工夫しております。

 

与え過ぎると大学受験に失敗する

 これは、親子の関係でも同じです。本人が中学受験に乗り気でないのに、保護者の方主導で早くから塾に通わせ、本人から学ぶ意欲、継続する気持ち、好奇心を「奪い」、入学後の学校では下位層になり、また保護者の方が本人を塾に連れてくる。

 為末さんは、オーバーコーチングで指導された選手の特徴を述べています。それは、「自己評価ができない」「自分が今、いいかどうかを、全て他者に決めてもらう」「試合の後、最初に見るのはコーチの顔」といったことです。

 進学校で下位層に陥り、保護者の方に塾に連れてこられるような生徒も同じです。
 自分の状況を自分で把握する力が弱い。これは、近年、非認知能力のうちのメタ認知と言われるものと同じようなものです。
 テストで悪い点を取った時、「お母さんに怒られる」と言う。などです。

 世の中の大学受験の塾には、細かい自習のスケジュールまで、塾側が立てることを売りにしている塾があるようです。そんな塾は、本当にうまくいっているのでしょうか?たとえば、全寮制で自習の時間まで決まっている学校が、開成、灘あたりに迫った、という話は聞かないですよね。

 「与えすぎ」ると、究極的には、学ぶことが楽しい、結局、自分が学んでいる意味は何か?まで失ってしまうでしょう。

 近年、科学的根拠に基づいた教育の書籍、たとえば、『GRIT やり抜く力』(ペンシルベニア大学心理学部、アンジェラ・ダックワース教授)や『SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法』(ボーク重子さん。大学の研究などに基づいて書かれている。)などが出ています。いずれも、子供の主体性、民主的といったことが重視されています。

 「与えすぎ」。やっているほうは「良かれ」と思ってやっているので、厄介な問題ですね。ただ、進学校の下位層のご家庭は「与えすぎ」の結果、大切なものを奪ってしまっているようなケースが多いと思います。

 

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大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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オンラインで大学受験の学力は上がるのか?: デメリットと個別指導の重要性

 

オンラインで大学受験の学力は上がるのか?: デメリットと個別指導の重要性

 

 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています2021年9月14日に「結局インターネットで足は速くなりますか?」という動画をアップしています。

https://www.youtube.com/watch?v=kBFwMhfckkw

 

 

 特に、新型コロナウイルス感染拡大の状況下、「オンライン指導」が注目されました。果たして、「オンライン」で大学受験の学力は上がるのでしょうか。
 結論は、上がる人と上がりにくい人がいる、ということでしょう。

 

オンラインのメリット

 為末さんは、インターネットのメリットを、好きな時に好きな動画を見られること、と述べています。

 

オンラインのデメリットと個別指導の重要性

 一方、デメリットは、「同じ情報でも、その人が持っている前提知識と抽象的なものを理解する能力によって、全然意味が違う。」と述べています。
 ソクラテスは本や論文を書きませんでした[1]。1つの考え方として、ソクラテスは「産婆術」、つまり、出産を助けるように、質問をしたり、返ってくるものに対し追いかけたりして、対話を通して相手の理解を深める、ことを大切にしていたから、というものがあります。逆に、文章には対話がない。一方的に読むことしかできない。一方的に読むと、人は必ず読み間違える。
 これは、文章のみならず、オンラインで流される大学受験向けの授業なども同じです。受け手が何を受け取っているかを、発信者はコントロールできない。

 大学受験塾チーム番町は個別指導塾です。
 もちろん、東大卒の塾長が授業を行いますが、それよりも、生徒からの発信が大切だと考えています。たとえば、問題を解いた答案や、私の質問に対する生徒の返答です。
 問題を解いた答案が間違っていれば、生徒が理解できていないことがわかります。
 そして、答案が、見た目は合っていたとしましょう。それでも、さらに、「理解はしていないが、なんとなく、まねをしたら合っていた」という場合が生じます。このレベルは東大に数十人合格するような学校の下位層でも多く生じます。
 一方、東大模試の反省といった、かなり高いレベルにおいても、論述式の答案などで、当塾で指導した「型」を外れている、といった場合が生じます。これも、実際に生徒の答案、発信したものを見て、個別指導をすることでしか、指導者は状況を把握できません。

 したがって、おおむね、トップ進学校の中、上位層あたりなら、オンライン授業でも、発信者が発したことを適切に受信し、大学受験の学力を伸ばす可能性がある、一方で、その他大勢の人は、一方的なオンライン授業では、大学受験の学力を伸ばすことが難しいケースが多い、ということになると思います。

 

出典

1.NHK. 100分de名著. 納富信留(慶應義塾大学文学部教授)

 

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指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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お子さんが主体的に東大・医学部受験に挑む秘訣:主体性を引き出す方法

 

お子さんが主体的に東大・医学部受験に挑む秘訣:主体性を引き出す方法

 

 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2020年6月6日に「子供が自ら挑戦するようになる接し方」という動画をアップしています。

 

子どもが自主性、主体性を失うとき

 為末さんは、かつて、子供にハードルを教える時、1つのレーンにハードルを置き、1人ずつ跳んでもらって、ゴールまで行ったらみんなで拍手する、というようにしたそうです。すると、転ぶ子が出て、周りの大人が「大丈夫?」と駆け寄り、子供は泣き出し、その後の子は跳ばなくなったそうです。

 「1人だと注目されて良くないのでは」と反省し、次は、5つのレーンにハードルを置き、1レーンに1人ずつ跳んでもらい、ゴールまで行ったらみんなで拍手する、というようにしたそうです。すると、1人の子がまた転び、大人たちが駆け寄り、子供たちは、高いハードルへの挑戦を避け、低いハードルのレーンに長い列ができたそうです。たとえるならば、主体的な、東大、医学部受験へのチャレンジを避けたということですね。

 

子どもの自主性を引き出す方法

 そして、次は、5つのレーンにハードルを置き、前の子が途中まで行ったら、次の子がスタートするようにしたそうです。すると、転んだ子も、注目されないし、次にもう他の子が来るので、再び走り出すようになったそうです。たとえるならば、主体的に、東大、医学部受験にチャレンジするようになった、ということですね。

 為末さんは、「子供は、周りに心配されることや、見られることが痛い」。だから、主体性を育むためには、「良かれと思って介入する所をぐっとこらえて、視線をそらし気味にする」ことが大切なのではないかと結論づけています。

 麹町中(当塾から1.3km)の前校長の工藤勇一先生は、著書などで「子供に手をかけすぎる大人たち」というようなことを、よくおっしゃっています。おおむね、為末さんの主張と同じようなことだと思います。

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お子さんが主体的に東大・医学部受験に挑む秘訣

 よく、医師の方の家庭が、お子さんに「医学部に入れ」と言い続け、お子さんのほうは、すっかりやる気を無くす、と言う話を聞きます。主体性を失ってしまった、ということですね。一番いいのは、保護者の医師の方が、医師として、社会貢献している姿を見せることなのでしょうね。

 

大学受験で大学が求める人物像と主体性

 

東京大学

 東大のアドミッションポリシー(大学の教育理念、目的、特色等に応じて受験生に求める能力、適性等についての考え方をもとめたもの)(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_01_17.html)には

「強靭な開拓者精神を発揮して,自ら考え,行動できる人材の育成です。
 そのため、東京大学に入学する学生は,健全な倫理観と責任感,主体性と行動力を持っていることが期待され」

「東京大学が求めているのは、本学の教育研究環境を積極的に最大限活用して、自ら主体的に学び、各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持った学生です。」

とあります。ただ、東大の一般受験の場合、主体性が得点化されるわけではないので、主体性がなくても、それが直接的に入試本番の点数でマイナスになるわけではありません。(受験勉強の過程には、主体性が大きく影響すると思いますが。)

 

慶應義塾大学医学部

 慶應医学部のアドミッションポリシー(https://www.keio.ac.jp/ja/admissions/examinations/policies/)には、以下のように記載されています。

「創立者福澤諭吉の『一身独立(自ら考え、実践する)』の教えを理解し」

学習意欲を重視し」

「入学試験での評価は、次のように行います。(中略)
 学習意欲・態度、使命の理解、倫理感:調査書、面接、小論文により評価します。」

「【入学までに身につけておくべきこと】(中略)
 特別活動および課外活動:主体性、協調性、共感・思いやり・気遣い、利他性(奉仕の心)、倫理感、責任感、洞察力など」

 慶應医学部の場合、調査書、面接、小論文で「学習意欲・態度」、つまり主体性を評価されることになります。調査書については、普通、高校の先生は、よほどのことがない限り、マイナスになるようなことは書かないような気がします。
 一方、面接や小論文では、主体性の欠如が見抜かれる可能性は、十分あり得ると思います。主体性の欠如が見抜かれる場合をいくつか考えてみましょう。

・典型的な回答のくり返し
受験生が一般的な模範解答や典型的な回答をそのままくり返す場合、自分自身の考えや意見、つまり主体性が不足していると判断されるかもしれません。

・具体例の不足
自分自身の経験に基づく具体的な事例を回答できない場合、主体性を持って医学部を志望してきたのか、疑問視されるかもしれません。

・初めて聞いたような話題に対応できない
新たな視点や突発的な質問に対して、うまく応じることができない場合、主体的に学び、考えてきたのか、疑問視されるかもしれません。自分でいろいろと思考を巡らせていれば、初めて聞いたような話題にも、対応できることが多いであろうからです。

・意見に一貫性がない
面接中に意見がコロコロ変わる、あるいは状況に応じて自分の立場を変えるような場合、確固たる信念や主体的な思考が不足していると判断されるかもしれません。

・他者の意見に流されやすい
面接官の意見にすぐ同意するなどの場合、自分の意見、主体性を持ち合わせていないと判断されるかもしれません。ただ、注意すべきは、大学のアドミッションポリシーや、医師として当然のことについて、それに反する意見を述べるべきではないということです。まあ、これも、主体的に大学や医師という職業について、調べ、考えてきたならば、問題ないでしょう。

・情熱が感じられない
医学を志望する動機や将来に対する情熱が感じられない回答をすると、主体的な動機が不足していると評価されるかもしれません。たとえば、以下のような回答が評価を下げると考えられます。
「医学部を選んだ理由は、将来安定しているからです。」
「医者になりたいのは、人を助けたいからです。」(具体性の不足)
「私の家族に医者が多いので、自然と医学部を選びました。」(周囲に影響されている、主体性が不足している)

 

 インターネット出願においては、

「主体性」「多様性」「協働性」についてどのように考え,心掛けてきたかについて,100文字 以上,500文字以内で入力を求めます

とあります。ただ、これは得点化されず、入学後の参考資料としてのみ用いるとのことです。

 

文部科学省は大学受験生の主体性をどう考えているか?

 2014年9月の「高大接続特別部会配付資料」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/10/06/1352297_14.pdfを要約すると、以下のようになると思います。

 文部科学省は、大学入学者選抜において、受験生の主体性を重視すべきであると強く主張しています。現状では、多くの大学の入試が知識・技能の評価に偏りがちですが、これからは受験者の主体性を多面的に評価することが不可欠だと訴えています。

 具体的には、個別大学の入学者選抜では、受験者がどのような経験を積み、その経験を大学でどのように生かしていこうとしているのか、なぜその大学で学ぼうとするのかなど、受験者の主体性に関わる要素を丁寧に見極める必要性を説いています。そのためには、面接、集団討論、高校の調査書、受験者自身の活動報告書等を活用し、様々な角度から受験者の主体性を評価することが求められると述べています。

 また、高校教育においても、生徒の主体性を育むことを重要な目標の一つとして掲げるべきだと主張しています。特に進学校においては、大学入試のための知識偏重の教育から脱却し、生徒が主体的に学ぶ力を身につけられるような教育を行うことが肝要だと指摘しています。高校教育の出口である大学入試のあり方を変えることで、高校教育そのものを主体性重視の方向へと導いていく狙いがあるものと思われます。

 さらに、大学教育についても課題を指摘しています。現状では、学生が主体性を発揮し、磨く場が大学内に十分に用意されていないと分析しています。社会に出る前の貴重な学びの場である大学で、もっと学生の主体性が育まれるようにすべきだという問題意識が読み取れます。学生の多様性を確保することで、学生が刺激し合いながら主体的に成長できる環境を整えることの必要性に言及しています。

 これらの指摘から、文部科学省としては、初等中等教育から高等教育までの一貫した教育改革、いわゆる高大接続改革を通じて、生徒・学生の主体性を重視した教育と選抜を実現することを強く目指していることが読み取れます。受験生の主体性を多面的に評価する大学入試を実現し、それを起点として高校教育、大学教育の双方を主体性重視の方向へと導いていくという、改革の全体像が見えてきます。生徒・学生の主体的な力を育み、確かな学力を備えた人材を社会に送り出すことが、文部科学省の目下の重要課題であることが窺えます。

 

 また、2020年10月頃の資料https://www.mext.go.jp/content/20201028-mxt_daigakuc02-000010703_2.pdfを重複を省き要約すると、以下のようになると思います。

 各大学には、自らのアドミッション・ポリシーを明確に定めた上で、面接、集団討論、調査書、活動報告書等のあらゆる要素を活用し、受験者の主体性を多角的に評価することを期待しています。とりわけ、なぜ志願者がその大学を選び、学ぼうとするのか、これまでにどんな経験を積み、その経験をどう大学での学修に生かそうとしているのかという点を、丁寧に見極める必要性を訴えています。

 さらに、大学受験における主体性の評価に際しては、あらゆる受験生に対して公平であることが重要だと強調しています。家庭の経済状況など、本人の努力ではどうにもならない要因によって不利益を被ることがあってはならないと訴えています。その方策として、調査書に家庭環境に関する項目を設けることなどを提案。社会経済的に厳しい状況に置かれた受験生に対しては、何らかの配慮を講じることも選択肢に含めるべきだとの見解を示しています。

 以上のように、文部科学省は、生徒・学生の主体性をいかに評価し、育んでいくかを重要な課題と捉えているようです。大学入試に至るまでの高大接続改革を一体的に進めることで、高校教育、大学教育、大学入学者選抜のそれぞれの局面で、一人ひとりの主体性が存分に発揮され、伸長できる環境を整えようとしています。

 

 

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大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【感想】自由(末續慎吾、ダイヤモンド社):日本記録保持者とコーチに学ぶ個別指導塾の師弟関係

 

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『自由』(末續慎吾)の書評、感想

 末續慎吾さんは、陸上競技のアスリートです。
 200mの20秒03は、いまも日本記録です。2003年、世界陸上パリ大会200mで銅メダル。日本人が200mというスプリント種目で銅メダルを獲ったのです。2008年、北京オリンピックでは、400mリレーのメンバーとして銀メダル。
 しかし、その直後、長年、心身ともに追い込んだ結果、心身がズタズタで、休養を余儀なくされたそうです。
 その1980年生まれの末續選手が、いまだに現役で選手を続けています。

 

勝ち負けからの自由

 2003年の世界陸上銅メダルの前から、2008年北京オリンピックのメダルまで、末續さんは、勝つことが「当たり前」という精神状態にあったそうです。そして、現在、それはおかしなことだった、健全ではなかった、不健康だったと思っているようです。勝負は勝つことも負けることもあるはずだ。

 「競技が楽しい」という感情より「勝っている自分が好き」という感情が圧倒し、負けを受け入れられないのも、不健康、いや「ある種の病気かもね」と述べています。

 学生も「大学受験で良い点を取るのが当たり前」「大学受験勉強が楽しい、より、大学受験で良い点を取っている自分が好き」という精神状態は、もしかすると、健全ではないのかもしれませんね。大学受験の模試で良い点を取ることもあれば、悪い点を取ることもある。そして、ごく一部の職業競技者を除き、陸上競技が「遊び」に過ぎないのと同じように、学問も、もともとは、有閑階級の「遊び」だった。大学受験生も、ある程度の「遊び」の気持ちが大切なのでしょう。

 

熟練者の勝負観

 2018年、末續さんは38歳で「マスターズ陸上」という、年齢別の大会に初めて参加します。参加した理由は「今でもかけっこが大好きで、いくつになってもかけっこしたい」から。超面白かったそうです。皆びっくりするほど「笑顔」だったから。末續さんより年上の人が、子供みたいに喜んだり、笑ったりしている。そして、変に緊張して、しかめっ面して、狭い世界でかけっこしている自分が恥ずかしくなったそうです。

 陸上競技も大学受験も、このように、それぞれの感情を持った人間が行っているはずで、そういった人間のやるスポーツ、大学受験を勝敗や記録だけを競うものにしてしまうのはどうなのだろう。

 

本番を最大限に楽しむためには?

 陸上競技のレース前に「自分の走りをしてきなさい」と言われる。大学受験の前に「落ち着いて」「自分の実力を発揮して」などと言われる。
 しかし、末續さんは、本番前にそんなことを言われるようでは遅い、と述べます。

”試合の時には完成していて、あとは本番のコントロールできない空気にまかせちゃう。まかせられるほど自分自身を本番までに仕上げられていないから、そういった言葉を呪文のように唱えなきゃいけないわけだよ”

”楽しむ以外のすべてのことは練習の時にやってしまうことが大事なんです。”

 かつて、塾長の生徒で「東大を受けるのが楽しみです」と言った人がいました。彼は、その年の東大文系数学の合格者平均が40点台のところ、60点台でした。受験の前の受験勉強で、末續さんが言う「楽しむ以外のすべてのこと」をしっかりやったのでしょうね。

 

休養を余儀なくされる

 2008年、北京オリンピックの後、末續さんは休養を余儀なくされ、地元の熊本に戻りました。
 「光」に慣れることから始めなければならなかったそうです。朝、いきなり目が光を受けるのは刺激が強すぎて、頭が痛くなるような状態だったそうです。「起きる」という行為自体もエネルギーを使うので、起きて立ち上がるのに2時間位かけたそうです。「廃人」はこの状態の一歩先にあるんだと思ったそうです。
 「才子多病」と言います。大学受験でいわゆる「偏差値」が高い人は、それだけ神経を消耗するのか、精神的に疲弊しやすい傾向があるように思います。日頃の心の持ちようと、あとは、しっかり寝ることでしょうね。

 

日本記録、メダルからの山の下りかた

 目標や夢を達成する過程を「山を登る」ことに例えましょう。すると、「山を下る」行為もあるわけです。登る前に、下ることも考える。登った後に、登りを振り返る。
 末續さんは、下りも含めて山の全体像であって、それは、本気で挑戦した人間しか知ることはできない、と述べています。

 大学受験も、合格までの「山を登る」過程だけではなく、合格、あるいは不合格のあとにあるもの、「山を下る」、「山の全体像」を見ることが大切なのでしょう。そして、本気で挑戦する。

 

新・根性論

 末續さんは「助力よりも負荷に目を向けてしまっていた」、「自分をどれだけ追い込むかだけを考えていた」、「結果、心身ともに壊してしまった」、と述べています。まずは自分で思っているよりももう少し時間をかけて、自分でやってみる。
 大学受験の勉強もそうで、まずは、失敗してみないと、自分にとって何が必要なのか、わからないですからね。次に、誰かに聞いてみる。より良い情報を収集してみる。「助力」を求める。最初から絶対解を求めたり、自分だけで答えを決めつけない。
 大学受験も、ひとりよがりでとんちんかんなことを言っている親子は多いです。自分で時間をかけてやってみようともしないし、情報を集めたとしても、その狭い視野で頭がガチガチに硬直してしまっている。

 

個別指導塾の師弟関係

 陸上競技の指導者と選手の関係は、個別指導塾の先生と生徒の関係に似ているでしょう。
 末續さんは、高校を選ぶ時、「僕が必ず強くする」と言った先生より「僕は何もわからないけど、君と一緒に陸上をやりたい。先生もいろいろ勉強するから。」と言った先生を選びました。
末續さんは、選手としての素晴らしい実績を持つ指導者が、選手それぞれの個性を無視して「自分と同じようにやることが正解だ」と言ってしまうことに抵抗があり、そのような選手は他にもいた、とのことです。

 ここで「個性」とはなんでしょう?性格か、それとも、競技者としての物理的な骨格の違いか。
 骨格の違いについては、世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードル銅メダリストの為末大さんは、100m走で10”3~4までは「普遍」「型」だけでいい、としています。
 一方、末續さんは、そのレベルを超え、為末さんの言う「個別」の領域に入っていました。

 

 

 大学受験も同じで、学力や生活態度が「普遍」に届いていない生徒の場合、指導者が「普遍」を示してくれるのなら、変わるべきは指導者ではなく、生徒、保護者のような気がします。「普遍」に届いていないのに「個性」を主張している人たちが、けっこう多いような気がします。

 

個別指導塾の信頼関係

 末續さんは37歳の時、カール・ルイスの師のトム・テレツ氏に師事したそうです。個別指導の先生を変えたということですね。
 思うように走れなくて悩んでいた末續さんに、トム・テレツ氏は「君が過去どうだったかは、僕にはどうでもいい。今の君はきっと速く走れる。自分を信じなさい。」と言い、末續さんは「別にこの人の言っていることが全て間違っていても構わない」と思い、究極の師弟関係とは、このようなものだと思ったそうです。

 末續さんが一番言いたかったのは、「いかに誠実な姿勢でお互いを受け入れているか」ということのようです。それは、それでいいでしょう。

 ただ、大学受験の場合、指導者が間違ったことを言っていて、生徒がそれでも構わないと思っていると、大学受験には合格しないですよね。そして、このような姿勢の人は、進学校の下位層に多いと思います。世の中には、いろいろな人がいて、正論を納得する人もいれば、詐欺師を信用する人もいます。

 

企業秘密

 現在の末續さんは、お世辞にも、日本トップレベルの競技力とは言えませんが、それでも練習メニューは、企業秘密だそうです。ただし、(笑)がついているので、どこまで本気で秘密なのかはわかりませんが。

 

『自由』(末續慎吾)の目次

はじめにー勝利至上主義のその先の話

1.「勝ち負け」の話
 勝つだけって本当に正しいこと?
 こじらせアスリートー「勝ち負け」からの自由
 レジェンド・オブ・マスターー熟練者の勝負観
 本番を最大限楽しむためには?
 是、勝者の条件也ー「自分より強い選手」に挑む条件
 かけっこの世界ー苦しみの先にあったもの

2.「夢」の話
 本気で挑戦するということ
 真剣な僕ー突然、目標が消えてしまった時
 真剣の意味
 新・根性論ー根性とプライドの正しい持ち方
 メダルの対価ープロとアマの違いの話(上)
 1000円ープロとアマの違いの話(下)
 メダリストは1日にして成らず

3.「人間関係」の話
 「良い」指導者の条件
 上下関係と並行関係ー指導者の位置関係
 パワハラシンキング
 究極の信頼関係ー心情を感じる感情の情報
 知らない関係は大人の嗜みー主観と客観のバランス

4.「個性」の話
 「個性がないんです(涙)」ー個性の見つけ方
 走らずして、走るのだー「極める」とは
 スポーツの嗜みースポーツをやる意味ってなんですか?
 「理想の自分」は変化していく
 今の時代を少しラクに生きる考え方
 流されちゃいましょう 

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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東大・医学部受験のための最適な道しるべ:「普遍」と「個別」、そして「守破離」

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

 

東大・医学部受験のための最適な道しるべ:「普遍」と「個別」、そして「守破離」

 

 あなたは、大学受験に向けた勉強を始める前に、どんな準備をしていますか?どのような教科書や資料を選んでいますか?一体どんなアプローチが最も効果的なのでしょうか?これらはどんな受験生でも持つ疑問であり、特に厳しい競争が予想される東大や医学部の受験においては、どういった方法で学習に取り組むべきかが重要となります。
 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。「なぜトップ選手の真似をすると競技力が低下するのか」の中で「個別と普遍」という話をされています。

 

 

普遍と個別、守破離

 陸上選手の成長の過程。選手たちはまず「普遍」、すなわち一般的な「型」を目指します。これは、理想的な走り方があり、それを目指して訓練を重ねることで、その技能は向上します。これはまさに「守」のステップで、基本的な型を守りつつ、その型を追い求めて行くことで技能の向上が見込めます。
 一方、100m9秒台のような選手を見ると、「型」を押さえているようにも見えるが、実際には教科書とは異なる独自の技術を用いています。つまり、彼らは「普遍性」を突き抜けて「個別性」の世界に足を踏み入れているのです。これがまさに「破」のステップで、普遍的な型を破り、独自の技術や戦略を導入することでさらなる向上を図っているのです。

 選手の成長段階によっては、この「個別性」の追求が逆効果になる場合もあります。まだ「普遍」に至っていない選手に対して、「個性が大切だから自由にやれ」と指導すると、選手は混乱し、方向性を見失うことがあります。この段階では、型に基づいた訓練を徹底することが最も有効です。
 一方、すでに「型」を身につけている選手に対して、「型」に固執するよう指導すると、選手は「普遍性」から進歩しようとせず、成長が止まってしまうことがあります。ここでは、一歩踏み出して自身の「個別性」を追求することが求められます。

 この考え方は、日本の伝統的な思考法である「守破離」と深く結びついています。「守破離」という言葉は、能楽の創始者とされる世阿弥が提唱したもので、まず基本的な「型」を学び(守)、次にその「型」を突き抜けて新たな技術や方法を導入する(破)、そして最終的には型から自由になり、自分だけのスタイルを作り上げる(離)というステップを表しています。学問やビジネス、芸術の世界でも広く活用されている考え方です。

 この文脈で考えると、「普遍」は「守」に該当し、普遍を突き抜けて「個別」に進むのが「破」、そして最終的に自分だけの世界を作り出すのが「離」です。

 為末さんは、多くの選手や人々がまだ「普遍」の段階にいると主張しています。そして、この段階の人々にとっては、「個別」の分析をする必要はなく、ひたすら「型」を追い求めることで技能や知識が向上すると説いています。

 

東大、医学部対策の前に

 この「普遍」と「個別」、「守破離」の考え方は、東大、医学部受験にも応用することができます。進学校の下位層の特徴の1つに、「型」に弱い、というものがあると思います。たとえば、数学の答案で、教科書にない表現を勝手に自分で作ってしまう。2×(-3)と書くべきところを、2×-3と、負の数をかけるときにカッコをつけない、などです。これは、独創性や個別性を追求する「トップの世界」とは全く異なる次元の問題です。「普遍」や「型」から、大きく逸脱した場所に位置してしまっていることを意味します。

 また、やたら「東大対策」「医学部対策」といったものをありがたがる人がいます。もちろん、最終目標としての東大入試、医学部入試がどのようなものかを初めに理解して、勉強を始めることは大切です。しかし、過度に「東大」「医学部」といった「個別」を求める前に、まず、「普遍」、たとえば数学だと、教科書の理解とチャート式などをマスターし、ベネッセ模試や河合全統記述模試などの「普遍」的な模試で、東大や医学部レベルの成績を出すことが大切だと思うのです。合格者の多くは、普通に学校に通う過程で、「普遍」をクリアしています。

 そして、普遍的な模試で、東大レベルの成績に達し、東大対策を始めたとしましょう。それはそれで、東大二次という「型」にあてはめる、という、皮肉な話になります。たとえば、東大模試の検討をする場合、文系だと、社会2科目も論述が多いので、1時間ほどかかります。その検討の内容はというと、東大二次という「型」にはめられなかった部分に対する反省であるわけです。たとえば、東大入試の現代文の論旨の追い方、答案の書き方は、当塾配布のB5用紙1枚以上のものではありませんが、塾生の答案と採点基準を見て、B5用紙に書いてあることから外れていることを指摘し、修正するよう指導するわけです。
 また、東大入試の数学や理科というものは、せいぜい「普遍」の組み合わせ、ひとひねり程度で合否が分かれていて、「普遍」から外れるものではありません。

 結局、学問の世界で、「型」から外れる、「破」が許されるのは、学部生だと卒論、または大学院に進学してから、まだ教科書や論文にかかれていないことを研究する時、という場合が多いのでしょう。大学受験エリートが、研究の世界でもう1つ成果を残せていない、と言われるのも、「守」から「破・離」への突き抜けが上手くいっていない、ということでしょうか。

 さらに普遍的なことを言うと、身の回りの日常的なこと、という普遍的なことを自分でできないのに、学校のテストや入試という個別的なことを自分でしろ、というのは、無理ですよねえ。

 

まとめ

 この記事では、為末大さんが提唱する「普遍と個別」、そして日本の古代の哲学である「守破離」について、東大や医学部への受験対策と絡めて解説しました。

 大事なのは、「普遍」をきちんと理解し、それに基づいて学習を進め、そこから「個別」へと進むことです。そして、最終的には自分だけの世界を作り上げるための戦略を練るのです。

 東大や医学部への受験は、きわめて厳しい競争を伴います。しかし、上記の考え方を採用すれば、自分の学習方法や受験対策を明確にすることができ、その結果、目標に一歩近づくことができるでしょう。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

 

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【感想・書評】花神(司馬遼太郎、新潮文庫) :村医者、塾の先生、大村益次郎の生涯

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

靖国神社に大村益次郎像があるのはなぜ?

大学受験合格への鍵:大村益次郎が示す「戦術」と「戦略」の違い

番町と幕末のSTEM教育

 

花神(司馬遼太郎、新潮文庫) :村医者、塾の先生、大村益次郎の生涯

 

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『花神』の感想、書評

 『花神』は、大学受験塾チーム番町から800mの靖国神社(千代田区九段)に銅像が立っていて、そこから番町方面に行ったところで「鳩居堂」という蘭学の塾も開いていた、大村益次郎という人を描いた小説です。1977年、NHK大河ドラマにもなっています。

 

村医者から大坂適塾塾頭へ

 村田蔵六(後の大村益次郎)の家業は長州の村医者でした。大学受験塾チーム番町は、医学部受験も対象としています。
 長州から大坂へ向かう船中、同行者に「あんたは撃剣の心得があるか」と聞かれ「刀の抜き方も知らん」と答えています。これは、後年、第二次長州征伐で幕府軍を迎え撃つ時に、戦国さながらの装備でやってきた幕府軍を押し返す、また、戦国さながらの戦いをしようとした長州軍を叱ることの伏線ですね。大村益次郎は、オランダ語で読んだ兵書の戦法と最先端の銃という、日本史上前代未聞、最先端の戦い方で、幕府軍を押し返します。受験もこう戦いたいですね。

 蔵六は、適塾の教授法や課業の合理性に魅力を覚えます。合理性。これが、蔵六を大村益次郎として歴史の表舞台に登場せしめたものであり、また、襲撃による死という、表舞台から退場せしめたものでもありました。

 適塾では、成績順に、良い畳の場所に移動できます。蔵六は適塾の塾頭になりました。大学受験塾チーム番町のみなさんにも、がんばってほしいものです。ただ、成績を公にすることは、良いことなのでしょうか。競争心を煽る反面、生徒が過度な圧力を感じ、成績が低い生徒は、自信をなくし、学習意欲の低下や精神的なストレスを抱えるリスクがあるようにも思います。適塾のような塾だから、可能だったのであり、塾を主宰している者としては、考えさせられます。

 

帰郷、村医者へ

 蔵六は、父の願いにより、長州の故郷に帰ります。
 蔵六の父は、葛根湯の使いすぎで評判が悪かったのですが、蔵六は、葛根湯を使わなかったので、頼りなく思われました。少々の風邪の患者が来ても「部屋を暖かくして3日ばかり寝ていなさい」「あなた程度の風邪をなおせるような薬は世界中にありません」と言う。これは、現代の医療でもそうで、多くの患者は、薬をもらわないと不安でしょう。1978年版ドラマ『白い巨塔』の里見脩二の兄も、そういう医師だったと思います。個々の医者の治療法がどのように患者や同僚から受け止められるか、そしてそれが医者の評判にどのように影響するかというテーマを掘り下げるための舞台となっており、読者に多くの思索を促すと思います。
 蔵六の父は、このような機微は理解していて「薬は効こうが効くまいが、患者の不安を鎮める」と言いますが、超合理主義者の蔵六はそのようなことができません。これも、合理主義者としての歴史舞台への登場と退場の伏線でしょうね。
 また、蔵六の、患者の自然治癒力を信じ、体を休めることで回復を促すという、医療の本質に対する深い理解と、患者の健康を第一に考える誠実さを反映していると思います。

 

宇和島で黒船を作る

 宇和島藩主伊達宗城(伊達政宗の長男を始祖とする分家)は、黒船を作ってやろうと思い、藩の科学技術を宰領する人物を探しました。そこで推薦されたのが村田蔵六です。「上医は国の病を治す」とは、三国志演義などにも出てくる言葉です。蔵六は家業の村医者を辞め、宇和島藩に出仕します。
 そして、伊達宗城に、蒸気で動く軍艦と西洋式砲台を作るよう、命じられます。大坂適塾の塾頭としての学力を見込まれたのでしょう。作ってしまうだけの勉強をしていた蔵六も蔵六ですね。伝統的な武家社会と新しい技術革新との緊張の場面と言えると思います。
 ここで、提灯貼りの嘉蔵という町人とタッグを組むのも、後に武士の世を終わらせる伏線でしょう。技術革新が社会構造にどのような変化をもたらすかを物語っていると思います。
 また、嘉蔵は走る箱車を作り、まず、宇和島藩の家老を驚かせます。これも、蔵六がのちに、思想ではなく技術で歴史を転回させることの伏線でしょう。
 結局、蒸気船はできます。試乗で平素沈鬱な家老が「村田、進んでいるではないか」とはしゃぎ、蔵六は「進むのはあたりまえです」「あたり前のところまで持ってゆくのが技術というものです」と家老をむっとさせます。度々出てくる、蔵六の超合理主義性、空気の読めなさです。
 この頃、蔵六は、シーボルトの娘、イネにオランダ語を教えます。蔵六は「あなたはグランマチカ(文法)をばかになさるからこの程度のことが読めないのです。」と言います。
 現在の英語教育でも、「構文派」と「多読派」の不毛な対立が見られます。合理主義者の蔵六は「構文派」。現在でも、東大卒や京大卒など、きちんと数学のある入試を突破した指導者は「構文派」が多いですね。そして、やや感情的に描かれるイネは「構文軽視派」。
 受験英語の神様と言われた伊藤和夫先生は、何十年も前から「理屈半分、慣れ半分」と両方の重要性を説いています。塾長もそれでいいと思います。

 

番町で塾の先生になる

 蔵六は、伊達宗城の参勤交代に伴い、江戸に出てきます。
 蔵六は、新道一番町、現在の大村益次郎像(千代田区九段、靖国神社)から番町側に南下したあたりで、「鳩居堂」という塾を開きます。オランダ語、物理学、生理学、医学、兵学を教えていたようです。兵学?蔵六は村医者で、実戦経験はありません。しかし、この、オランダ語の本を読んで学んだ兵学で、後年、幕府の第二次長州征伐を押し返し、戊辰戦争を早期終結へと導くことになります。
 「机上の空論」という言葉がありますが、蔵六の功績を鑑みるに、座学と実践の関係を再考察させられると思います。

 そして蔵六は、幕府の学問所でも、兵学を教える教授になります。

 この時期、蔵六は、父の病気を理由に、一時期、長州に帰国します。
 父との会話で蔵六は進路を考えます。幕臣(つまり殿様)になるのか…。しかし、蔵六の本心は長州藩に仕えることでした。自分のことなど知らないであろう故郷の長州藩に。理由は「故郷が好きだから」。
 実は、『花神』のテーマには、この故郷好きな蔵六のアイデンティティ(帰属意識、自分を自分たらしめているもの)もあるのではないかと考えます。超合理主義者の大村益次郎が、一方では、アイデンティティという反合理的なもの、感情的なものによって、幕臣の身分を捨て長州に仕えるという、反合理的な判断をする。

 江戸に戻ってきた蔵六は、女性の解剖を依頼されます。蔵六は女性の解剖をしたことがありませんが、引き受けます。幕府の学問所の書物を読み、あと必要なのは想像力と少しの勇気。これも、後年、蘭書だけの知識、実践経験ゼロで幕府軍を迎え撃ったのと同じ、座学と実践の問題でしょう。

 さて、長州藩は八月十八日の政変で京都を追われます。蔵六にも帰藩命令が出ます。
「もはや、江戸にもどれないかもしれない」
 ところが面白いことに、蔵六は後年、戊辰戦争の総司令官として、江戸に戻ってきます。
 また、蔵六は後年「塾を閉じるのがいかにもいやであった」と語ったそうです。戊辰戦争の総司令官、軍政家として栄達する蔵六ですが、結局、自分の意思でやった事業といえば、塾だけだったからです。同じく塾を主宰している塾長としては、うれしいですね。

 塾での最終講義は、史実はわかりませんが、『花神』では「タクチーキ(戦術)のみを知ってストラトギー(戦略)を知らざる者は、ついに国家をあやまつ」というテーマだったとされます。戦術と戦略は軍事でははっきり区別されます。戦術は、戦いに勝つための個々の具体的な方法。戦略は、戦術より総合的・長期的な戦争に勝つための方策。 
 たとえば、大学受験で東大に受かりたいとしましょう。がんばって世界史で塾に通って、時間と労力を費やした挙句、数学の点数が足りない、といった「戦略」負けしている人がとても多いように思います。

 長州藩は京都で暴発して御所に向かって攻め込み(禁門の変、蛤御門の変)、潰走します。長州藩は朝敵になります。

 

蘭学で幕府軍を押し返す

 幕府軍は長州に攻め込みます。
 長州軍は、まず、芸州口の戦いで勝ちます。大村益次郎は喜びません。勝つように作戦を立てたのだから勝って当然、ということでしょう。受験もこうありたいですね。
 大村益次郎は、自ら、石州口の戦いに、指揮をとりに出かけます。
 長州侍は一騎打ちをはじめました。「ばかな」。大村益次郎は、

自分の兵学思想とかけ離れたいくさをしていることに腹がたった。
いまから満点下津々浦々にいたるまで斬り従えなければならない。
革命期にあっては思想の普及は軍隊によるしかないのである。
それがああいう戦さをしていては、百年かかっても幕府はびくともしない。
蔵六の兵学思想には、豪傑や剣客。あるいは槍の名手といった種類の人間は不要であった。
忠実に命令をきく歩卒さえおればよい。
歩卒たちに敵よりも射程が長く命中精度がよく射撃操作の軽快な小銃をもたせ、そういう大小の集団を巧妙に運動させ、敵を兵器と戦術で圧倒してゆくことが肝要なのである。

 これは、塾長の受験の戦い方の考えと同じです。
 成績が足りない人が、普通の人と同じく、普通の予備校に通い、志望大学に合格できるのかと。新たな受験思想が必要ではないかと。

 たとえば、先生が解説して板書してそれをノートに写す。しかもその問題は、入試で合否を分けるより上のレベルで、合否には関係ない問題である。そんな「作業」に時間を費やしていて、受験に勝てるか、と。そんなことをしている暇があったら、合否を分けるまでのレベルの問題をひたすら解けるようにして、網羅度を上げろ。英文を読み込め、と。

 

物理学のように戊辰戦争を片づける

 大政奉還後、江戸は西郷隆盛や勝海舟では収まらず、大村益次郎がいよいよ、歴史の表舞台に登場します。
 そして、いよいよ、大村益次郎の超合理主義性、空気の読めなさが、彼の生命に関わることになります。
 江戸城には、薩摩の海江田信義が参謀としていましたが、はたして、海江田より上なのかどうかがはっきりしない大村益次郎が海江田にいきなり命令をします。そして、ついに、海江田に

「アナタはいくさを知らぬのだ」

と言ってしまいます。明治2年に大村益次郎は襲撃されて亡くなりますが、黒幕は海江田だと言われます。
 ここが難しいところで、勝つためには大村益次郎が采配をとるしかありません。海江田に軍略の力量が足りないことを理解させなければなりません。
 一方、この大村益次郎の空気の読めなさという欠点が、大村益次郎の魅力でもあるのだと思います。ここで、うまく立ち回れるような器用な人物であったら、はたして司馬遼太郎さんは、大村益次郎を描いたでしょうか。また、日本史はどうなっていたでしょうか。

 これは、進学校のクラス30位以下で入塾してくるような親子も同じようなものなのです。クラス30位以下なのに、自分の日常のだらしなさ、自分の教育力の無さを自覚していない。なので、塾長に厳しい指摘をされると、感情的になって退塾し、受験も、その学校としてはどうだろう、いう結果になります。
 この前後も、大村益次郎は、

数学教師が数式を書いて答えを出すような当然の態度で

総司令官として司令をし、作戦を遂行します。

 ちなみに、上野戦争では、アームストロング砲が、加賀藩邸、今の東京大学本郷キャンパスに据えられ、新政府軍の勝ちを決します。塾長は、一時期、上野の不忍池が通学路だった時期があり、この話は感慨深いです。

 

花神とは?

 中国では、花咲かじいさんのことを花神というそうです。
 大村益次郎は、蘭学を学び、大坂適塾の塾頭に登りつめた、その超合理主義性でもって、日本中に「維新」という花を咲かせる花咲かじいさんの役割をしたのでしょう。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
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靖国神社に大村益次郎像があるのはなぜ?:戊辰戦争と近代国家の出発点

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

花神(司馬遼太郎、新潮文庫)

大学受験合格への鍵:大村益次郎が示す「戦術」と「戦略」の違い

アームストロング砲(講談社文庫、司馬遼太郎)

番町と幕末のSTEM教育

 

靖国神社に大村益次郎像があるのはなぜ?:戊辰戦争と近代国家の出発点

 

 靖国神社(千代田区九段、大学受験塾チーム番町から800m)には、大村益次郎という人の銅像が立っています。

 

大村益次郎って誰?

 大村益次郎は、元々は江戸時代末期の長州の村医者です。

 緒方洪庵の大坂適塾(大阪大学医学部の前身)の塾頭として頭角を現します。オランダ語の本で医学の他にも、数学、物理学、化学、兵学などを勉強していたようです。

 宇和島藩に在籍したこともあります。技術者として洋式軍艦(いわゆる黒船ですね)を作リました。そして、宇和島藩主伊達宗城の参勤交代に伴い、江戸に出てきます。

 江戸で大村益次郎は、現在の大村益次郎像から番町方面にしばらく南下したあたりで、「鳩居堂」という蘭学の塾を開きます。オランダ語、数学、物理学、化学、生理学、兵学などを教えていたようです。幕府の学問所の教授も務めていましたが、それにもかかわらず、この頃、長州藩にスカウトされ、長州藩に出仕するようになります。

 京都では、八月十八日の政変で京都を追われた長州は暴発し、御所に向かって攻め込み、潰走します(禁門の変、蛤御門の変)。大村益次郎も江戸にいられなくなり、長州に帰ります。

 長州は、一度は、幕府に恭順しますが(第一次長州征伐)、高杉晋作の挙兵(この時、真っ先に駆けつけたのが、初代総理大臣伊藤博文)により、反幕府派が政権を握り、幕府を迎え撃ちます(第二次長州征伐)。大村益次郎は、オランダ語で読んだ兵学を長州藩の将校に教育します。また、第二次長州征伐では、石州口方面で指揮に出向き、幕府軍を押し返します。

 その成り行き上、戊辰戦争でも、江戸で総指揮をとります。

 明治2年、京都で襲撃され、亡くなります。

 

靖国神社に大村益次郎像がある理由は?

 以下、主に、『この国のかたち』(司馬遼太郎、文春文庫)第4巻「招魂」から引用します。

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戊辰戦争戦争と近代国家の出発点

 結論を先に言うと、戊辰戦争の死者を弔うために、靖国神社の前身である「招魂社」の創設を提案したのが、大村益次郎でした。

 戊辰戦争での戦死は、それまでの「藩」「藩主」のためではなく、新しく誕生しようとしている新国家のためでした。新国家としては、新国家が「公」であるためには、戊辰戦争の戦死者を「公死」とする必要がありました。靖国神社の前身である招魂社ができたのは、そのような事情でした。招魂社は、日本における近代国家の出発点だったと言えます。

 一番最初に書いたように、大村益次郎は、元々は「村医者」、つまり農民でした。上記のように、招魂社は、「藩」を否定し、日本が近代国家になる出発点でもありましたが、もともとは武士ではなく農民の大村益次郎であればこそ、推進できた構想でもあったでしょう。

 10年後の明治12年に招魂社は靖国神社になり、「神道」によって祭祀されることになります。現在も、政治家の靖国神社への参拝は、憲法の政教分離原則との関係で問題になりますね。しかし、大村益次郎が発案した前身の招魂社は、神道でも仏教でもありませんでした。明治2年という時代に、藩も宗教も超えていた。現在の靖国神社をめぐる問題を見て、天国の大村益次郎は、何を思うでしょうか?

 

 大村益次郎を描いた小説に、司馬遼太郎さんの『花神』があります。1977年には、NHK大河ドラマにもなっています。

 

この記事を書いた人

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指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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【書評・感想】キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)

 

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅66m 東大卒の塾長による個別指導

東大のこと、教えます(プレジデント社、小宮山宏)

東大教師が新入生にすすめる本(文春新書)

東京大学文系・理系数学 傾向と対策と勉強法

(千代田区立)麹町中学校の型破り校長 非常識な教え(工藤勇一、SB新書)

 

【書評】灘校と西大和学園で教え子500人以上を東大合格させたキムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実(KADOKAWA)【感想】

 

キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の書評、感想

2021年4月発売。

キムタツ先生は本名は木村達哉先生です。
生徒の大半が東大、京大、国立医学部に進学する灘中高で教鞭をとられ、2021年3月に退職されました。英語教師集団「チームキムタツ」を率いられています。

 

『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の裏テーマは東大理Ⅲ佐藤ママ?

 あくまで塾長の推測ですが、お子さん4人が全員東大理Ⅲに進学した、佐藤ママさんへ反論書なのではないかと思います。
 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の中でも「特殊な成功例を、さも誰にでもあてはまるように話し、それを信じてしまう人が後を絶ちません。」「(稀に親の言うことを素直に聞く子供がいて)そういう親が書いた本もあります。親はこういう指示をすべきというような本が。」「『子供をこうやって東大に入れた』というような本」といったような表現が散見されます。
 塾長も、佐藤ママさんの家庭は特殊で、『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』に出てくるような家庭のほうが大多数派で、キムタツ先生の主張のほうが、一般性、汎用性が高いと思います。

 

東大に入る子は本当に本書のようなのか?

 塾長の経験上、ご家庭が『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』のようであれば、おおむね、受験は大成功します。
 逆に、『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』の逆を行っているようなご家庭は、受験の技術うんぬん以前に、親子の精神的な幼さが原因で受験がうまく行かないように思います。

 

勉強し続ける子の親とは?

 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、「勉強しなさい」という言葉には、全く効果がなく、むしろ、逆効果だとしています。これは現在、まともな指導者の中では、通説と言っていいと思います。キムタツ先生以外にも、多くの指導者がこのようにおっしゃいます。

 キムタツ先生は、3つの提案をされます。以下のような環境は、良くないとしています。

1.幼いうちにスマホやゲーム機を与えられている環境
2.自宅にあまり本がないような環境
3.リラックスして生活できないような環境

 キムタツ先生は、ゲームに対し、かなり否定的のようです。子供が任天堂との勝負、ゲーム制作者がプレイヤーを熱中させようと、様々なテクニックを用いて中毒性を持たせるのに、勝てるわけがない、と。キムタツ先生は、自分のお子さんには、ご家庭ではゲームをさせなかったそうです。
 たしかに、ケームを一切しないのに越したことはないかもしれません。
 しかし、ゲームをやりたい、やりたい、やりたいと思っている子供に、一切ゲームを許可しない、というのは、バランスを欠く意見かと思います。子供の頃の我慢が、大人になってから、歪んだ人格として現れるということはあると思います。これは、「勉強しなさい」と言ってしまうような大人の、裏返しの姿ということもできると思います。また、実際に、適度にゲームをしつつ、受験にも成功している人は、かなり多くの割合を占めるはずです。さらに、『ドラゴンクエスト』などのゲームを通して、「受験も同じようにやればいいんだな」という、シミュレーションをすることもできると思います。
 このゲームに関する記述については、ちょっと偏った意見で、お子さんの教育上も危険をはらんでいるかな、と思います。

 自宅に本がたくさんあるような環境のほうがいいのは、当たり前ですね。しかし、大人がただ「本を読め」と言っても子供は本を読まないので、キムタツ先生はある取り組みをしており、それが本書に書かれています。

 リラックスできる家庭とは、どのような家庭でしょうか?キムタツ先生は、本書の冒頭から「勉強しなさい」と言わない、ということを書かれています。「~しなさい」と言わない。キムタツ先生によると、灘の生徒に聞くと両親が「放っておいてくれるのでありがたい」ということが多いそうです。塾長の経験からも、親が口うるさい場合、たいてい、ダメですね。当塾は、そもそも、保護者面談を行いませんし、保護者の方からのクレームも受けつけません。不都合があれば、生徒自身が言えばいいことで、保護者があれこれ言っているようではダメなのです。
 『私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む』(英知出版、著者はジャーナリストだが、巻末に引用論文などがたくさん載っている、かなりまともな本)の第4章「ストレス」には、「研究者らの結論によれば、環境による影響のなかで子供の発達を最も左右するのはストレスなのだ。」という記述があります。ストレスが子供の心と体の健全な発達を阻害する度合いは、従来の一般的な認識よりもはるかに大きい、と。そして、子供にとって、最も大きい環境は、家庭です。

 

英検の先取りは意味がない?

 キムタツ先生は英語の先生です。『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、英検の先取りは意味がない旨を書いています。大人になれば普通のレベルのことを、幼いときに達成しても、大して意味はない、というのは塾長もキムタツ先生と同意見です。また、キムタツ先生によると、小学生で英検2級を取ったが、高校になったら勉強がつまらなくなって辞めてしまい、どこの大学にも入れなかった、という話は、受験業界には多いそうです。塾長の経験では、年少にして英検1級を取ったことを、保護者がFaceBookでさり気なく自慢していていて、まあまあの進学校に合格したものの、その他、数学、国語の成績が壊滅的な人がいました。また、かなり面倒見が良い高校に通い、学校の授業の内容が非常に豊富なのに、英検のための塾に通った結果(英検くらい、自分で勉強して合格しろよと思いますが)、戦力の分散という戦略のタブーの基本を犯し、英語も含め、全体的に成績が悪い人もいました。

 

東大に合格する勉強体質とは?

 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、勉強体質とは、「自分で楽しいことや新しいことに出会うと、調べてみようかな、知っておこうかな、という気持ちになる体質。自分のレベルをあげようという体質。」のことだそうです。これについては、東大生は、机に向かっている時間だけでなく、日常自体が勉強だとか、世の中をみる解像度が違う、とか言われますね。
 世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2021年9月29日に「与えすぎて弱くなるってどういうことですか?」という動画をアップしています。

 為末さんは、一番の才能は「こんなことをしてみようかなと思いつく」「何を見ても好奇心がワーッと湧いてくる感覚」といったもので、これらが後天的に最も与えにくい、と語っています。キムタツ先生の「勉強体質」と通ずる物があると思います。

 

中高一貫校のデメリットは?

 中学受験の塾がメディアのスポンサーになっているからなのかはわかりませんが、中学受験、中高一貫校のデメリットが語られることは少ないように思います。
 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では
・入った段階ですでに疲弊しまくっている生徒が多い
・ゆっくりやるのが合っている子が、中高一貫校の速いスピードについていけない
・公立に転校する子もいる
といったことを挙げられています。
 塾長は、高校入試を経ないがために、中高一貫校の下位層は、普通の公立中学レベルの内容もマスターできていない人だ、ということを挙げておきたいと思います。公立中学レベルのことをマスターできていないのだから、当然、大学受験には大きなハンディです。なんのために中学受験をしたのでしょうね。

 

東大に入る子の特徴

 『キムタツの東大に入る子が実践する勉強の真実』では、以下を挙げています
1.読書ができる子
2.勉強体質が身についている子
3.中学時代の内容が頭に入っている子
4.精神的に安定している子
5.がり勉でない子

 1,2,3,4に関しては、上記で論じました。精神的に安定ということは、家庭でリラックスできるということですね。
 5.については、キムタツ先生は、机に向かうだけでなく、「自分が人生でやりたいことを見つけるために、経験値を上げる」「学校と自宅の往復しかしていないような子では、自分のやりたいことが見えてきません」「時間を見つけて本を呼んだり映画を見たり、どこかにでかけたりする子ほど成績がいい」とおっしゃっています。
 普通の感覚では、机にしがみつくことができれば、まあ、たいしてものですよね。ただ、キムタツ先生は、多くの場合、「机にしがみつかされている」と指摘しています。また、ペンシルベニア大学心理学部のアンジェラ・ダックワーズ教授の著書『GRIT やり抜く力』でも、将来、やりたいことを見つけるために、なるべく多くの経験をすることが大切、といったことが書かれています。オリンピックの金メダリストなども、意外にも、最初から専門種目を選んでいたわけではなく、色々なことをやってみた後に専門種目にたどり着いたケースも多いようです。将来やりたいことがあれば、当然、勉強をやり抜く力が高まりますよね。

 

東大に合格するには考える力を身につける

 キムタツ先生が『ドラゴン桜』関係で、有名な編集者、佐渡島庸平さん(灘→東大)と話していた時、佐度島さんが常に「なぜですか?」と尋ねてくることに気づいたそうです。そして、それは、灘のよくできる生徒と話しているときも全く同じことが言えるそうです。
 逆に、進学校の下位層には、数学や理科の授業で支離滅裂な答案を書き、「なぜそうなると思った?」と尋ねても、答えられない人が多いです。数学や理科を、理解せずに、解き方を丸覚えする、数値を当てはめる科目だと履き違えてしまっている。おそらく、中学受験、高校受験を通して身についてしまった悪習慣なのでしょう。当塾でも、ご家庭で常に「なぜ?」「それってそもそも何?」と問いかけるよう、おすすめしています。

 

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この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

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中学入試塾技算数の難易度、レベル

・小学校の教科書の説明を理解していて、問題をスラスラ解ける。
 ↓
・『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズで、中学受験によく出る技法を理解し、マスターしている。または、通塾していて、中学受験によく出る技法を理解し、マスターしている。
 ↓
『塾技』の左ページの説明を理解でき、右ページの問題の解説も理解できると思います。

 

中学入試塾技算数の使い方

 入試によく出る技法が、ほぼ網羅されている参考書、問題集です。大学受験の数学で言うと『チャート式』(数研出版)に例えられると思います。

 左ページの説明を理解し、右ページの問題を解けるようにしましょう。右ページの問題は、1度目は解けなくても構いません。解説を読み、理解して、✓をつけ、後日、全問解けるまでくり返しましょう。

 ただし、左ページの説明が、簡潔すぎて、中学入試の初級者が理解するのは難しいと思います。「理解」のための参考書というよりは、「中学入試算数の範囲を高速回転して穴をなくす」ための参考書だと思います。「理解」は上記のように、『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズなど、わかりやすいものがおすすめです。

 『塾技』を高速回転すれば算数は仕上がるので、「塾で配られる大量のプリントは意味がないなあ」と思うようになるかもしれません。

 

中学入試塾技算数で偏差値はどこまで伸びる?

 大学受験塾チーム番町のサイトでは、『塾技』が中学入試にどれだけ通用するのかを分析しています。

開成中学校

女子学院中学校(当塾から600m)

白百合学園中学校(当塾から1.1km)

 まず大前提として、入試というのは、満点が必要なわけではなく、一部解けない問題があってもいいということです。
 女子学院、白百合あたりは、『塾技』にほぼ似たような問題が載っている、または、せいぜい、ひとひねり、くらいの問題を解き切れれば、合格点に達します。
 開成は、『塾技』と「教科書の根本からの理解」を「組み合わせる」ことができるかで、合格点を取れるかどうかが決まっています。
 ただし、『塾技』には載っていないが、実際にその場で試してみると難しくない、たとえば「規則性」と言われる問題には、注意しましょう。
 また、図形問題は、性質上、いろいろな問題を量をこなして、「見える」ようにすることが大切だと思います。
 結論としては、『塾技』を全問スラスラ解けるようにして、実際の入試問題に慣れれば、御三家レベルの偏差値には達すると思います。

 

『中学入試塾技算数』のレイアウト

 見開きで1つの塾技になっています
 左ページに、その塾技の解説がされています。ただし、この部分が、初見だと、解説が不親切に感じる場合が多いと思うので、先述のように、「中学入試算数の範囲を高速回転して穴をなくす」ような使い方で使い、初めての理解は『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズなどがいいと思います。
 右ページの上に「入試問題で塾技をチェック!」というコーナーがあります。このページの塾技を使った入試問題と解き方が載っています。
 右ページの下に「チャレンジ入試問題」というコーナーがあります。入試問題だけが載っています。東大あたりにそれなりに受かる中学校の場合が多いですが、そのような中学校でも標準的な問題は出題されますから、中学校の名前だけで問題を判断することはできません。この部分の解答は、切り離し可能な別冊に載っています。カラフルで見やすいと思います。解説は、決して不親切ではありませんが、この本の性質上、そこまで詳しくはないと思います。

 

『中学入試塾技算数』の出版社の信頼性と実績

 『中学入試塾技算数』の出版社は文英堂です。まず、高校の英語と国語の検定教科書を出版しています。これだけで、ちゃんとした出版社ですね。
 中学入試向けには、本ページでも度々出てくる『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズや、『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズ。『最高水準問題集』など、数多くの有名な参考書、問題集が出ています。レベル、難易度は幅広いですが、特に、『受験算数の裏ワザテクニック』シリーズなど、解説が詳しい参考書に定評があると思います。また、本書、『中学入試塾技算数』のように、斬新なコンセプトの参考書も多いと思います。
 中学生、高校受験、高校生、大学受験向けにも、同様に、解説が詳しかったり、コンセプトが斬新だったりして、評価の高い参考書、問題集が多いです。

 

中学入試塾技算数の目次

大きな分野わけとしては
・式と計算
・文章題
・割合
・速さ
・平面図形
・立体図形
・比
・相似
・数の性質
・規則性
・場合の数
となっています。
その中で、たとえば、仕事算、ニュートン算、転がる図形、など、中学入試によく出る技法は、ほぼ網羅されています。よほど、たとえば御三家レベルですでに合格点レベルにあるような人でない限り、欲しい物が得られる参考書だと思います。

 

この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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