お子さんが主体的に東大・医学部受験に挑む秘訣:主体性を引き出す方法
世界陸上2001年エドモントン大会、2005年ヘルシンキ大会の400mハードルで銅メダルを獲得された為末大さんがYouTubeチャンネル「為末大学」を開設しています。2020年6月6日に「子供が自ら挑戦するようになる接し方」という動画をアップしています。
子どもが自主性、主体性を失うとき
為末さんは、かつて、子供にハードルを教える時、1つのレーンにハードルを置き、1人ずつ跳んでもらって、ゴールまで行ったらみんなで拍手する、というようにしたそうです。すると、転ぶ子が出て、周りの大人が「大丈夫?」と駆け寄り、子供は泣き出し、その後の子は跳ばなくなったそうです。
「1人だと注目されて良くないのでは」と反省し、次は、5つのレーンにハードルを置き、1レーンに1人ずつ跳んでもらい、ゴールまで行ったらみんなで拍手する、というようにしたそうです。すると、1人の子がまた転び、大人たちが駆け寄り、子供たちは、高いハードルへの挑戦を避け、低いハードルのレーンに長い列ができたそうです。たとえるならば、主体的な、東大、医学部受験へのチャレンジを避けたということですね。
子どもの自主性を引き出す方法
そして、次は、5つのレーンにハードルを置き、前の子が途中まで行ったら、次の子がスタートするようにしたそうです。すると、転んだ子も、注目されないし、次にもう他の子が来るので、再び走り出すようになったそうです。たとえるならば、主体的に、東大、医学部受験にチャレンジするようになった、ということですね。
為末さんは、「子供は、周りに心配されることや、見られることが痛い」。だから、主体性を育むためには、「良かれと思って介入する所をぐっとこらえて、視線をそらし気味にする」ことが大切なのではないかと結論づけています。
麹町中(当塾から1.3km)の前校長の工藤勇一先生は、著書などで「子供に手をかけすぎる大人たち」というようなことを、よくおっしゃっています。おおむね、為末さんの主張と同じようなことだと思います。
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お子さんが主体的に東大・医学部受験に挑む秘訣
よく、医師の方の家庭が、お子さんに「医学部に入れ」と言い続け、お子さんのほうは、すっかりやる気を無くす、と言う話を聞きます。主体性を失ってしまった、ということですね。一番いいのは、保護者の医師の方が、医師として、社会貢献している姿を見せることなのでしょうね。
大学受験で大学が求める人物像と主体性
東京大学
東大のアドミッションポリシー(大学の教育理念、目的、特色等に応じて受験生に求める能力、適性等についての考え方をもとめたもの)(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_01_17.html)には
「強靭な開拓者精神を発揮して,自ら考え,行動できる人材の育成です。
そのため、東京大学に入学する学生は,健全な倫理観と責任感,主体性と行動力を持っていることが期待され」
「東京大学が求めているのは、本学の教育研究環境を積極的に最大限活用して、自ら主体的に学び、各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持った学生です。」
とあります。ただ、東大の一般受験の場合、主体性が得点化されるわけではないので、主体性がなくても、それが直接的に入試本番の点数でマイナスになるわけではありません。(受験勉強の過程には、主体性が大きく影響すると思いますが。)
慶應義塾大学医学部
慶應医学部のアドミッションポリシー(https://www.keio.ac.jp/ja/admissions/examinations/policies/)には、以下のように記載されています。
「創立者福澤諭吉の『一身独立(自ら考え、実践する)』の教えを理解し」
「学習意欲を重視し」
「入学試験での評価は、次のように行います。(中略)
学習意欲・態度、使命の理解、倫理感:調査書、面接、小論文により評価します。」
「【入学までに身につけておくべきこと】(中略)
特別活動および課外活動:主体性、協調性、共感・思いやり・気遣い、利他性(奉仕の心)、倫理感、責任感、洞察力など」
慶應医学部の場合、調査書、面接、小論文で「学習意欲・態度」、つまり主体性を評価されることになります。調査書については、普通、高校の先生は、よほどのことがない限り、マイナスになるようなことは書かないような気がします。
一方、面接や小論文では、主体性の欠如が見抜かれる可能性は、十分あり得ると思います。主体性の欠如が見抜かれる場合をいくつか考えてみましょう。
・典型的な回答のくり返し
受験生が一般的な模範解答や典型的な回答をそのままくり返す場合、自分自身の考えや意見、つまり主体性が不足していると判断されるかもしれません。
・具体例の不足
自分自身の経験に基づく具体的な事例を回答できない場合、主体性を持って医学部を志望してきたのか、疑問視されるかもしれません。
・初めて聞いたような話題に対応できない
新たな視点や突発的な質問に対して、うまく応じることができない場合、主体的に学び、考えてきたのか、疑問視されるかもしれません。自分でいろいろと思考を巡らせていれば、初めて聞いたような話題にも、対応できることが多いであろうからです。
・意見に一貫性がない
面接中に意見がコロコロ変わる、あるいは状況に応じて自分の立場を変えるような場合、確固たる信念や主体的な思考が不足していると判断されるかもしれません。
・他者の意見に流されやすい
面接官の意見にすぐ同意するなどの場合、自分の意見、主体性を持ち合わせていないと判断されるかもしれません。ただ、注意すべきは、大学のアドミッションポリシーや、医師として当然のことについて、それに反する意見を述べるべきではないということです。まあ、これも、主体的に大学や医師という職業について、調べ、考えてきたならば、問題ないでしょう。
・情熱が感じられない
医学を志望する動機や将来に対する情熱が感じられない回答をすると、主体的な動機が不足していると評価されるかもしれません。たとえば、以下のような回答が評価を下げると考えられます。
「医学部を選んだ理由は、将来安定しているからです。」
「医者になりたいのは、人を助けたいからです。」(具体性の不足)
「私の家族に医者が多いので、自然と医学部を選びました。」(周囲に影響されている、主体性が不足している)
インターネット出願においては、
「主体性」「多様性」「協働性」についてどのように考え,心掛けてきたかについて,100文字 以上,500文字以内で入力を求めます
とあります。ただ、これは得点化されず、入学後の参考資料としてのみ用いるとのことです。
文部科学省は大学受験生の主体性をどう考えているか?
2014年9月の「高大接続特別部会配付資料」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/10/06/1352297_14.pdf)を要約すると、以下のようになると思います。
文部科学省は、大学入学者選抜において、受験生の主体性を重視すべきであると強く主張しています。現状では、多くの大学の入試が知識・技能の評価に偏りがちですが、これからは受験者の主体性を多面的に評価することが不可欠だと訴えています。
具体的には、個別大学の入学者選抜では、受験者がどのような経験を積み、その経験を大学でどのように生かしていこうとしているのか、なぜその大学で学ぼうとするのかなど、受験者の主体性に関わる要素を丁寧に見極める必要性を説いています。そのためには、面接、集団討論、高校の調査書、受験者自身の活動報告書等を活用し、様々な角度から受験者の主体性を評価することが求められると述べています。
また、高校教育においても、生徒の主体性を育むことを重要な目標の一つとして掲げるべきだと主張しています。特に進学校においては、大学入試のための知識偏重の教育から脱却し、生徒が主体的に学ぶ力を身につけられるような教育を行うことが肝要だと指摘しています。高校教育の出口である大学入試のあり方を変えることで、高校教育そのものを主体性重視の方向へと導いていく狙いがあるものと思われます。
さらに、大学教育についても課題を指摘しています。現状では、学生が主体性を発揮し、磨く場が大学内に十分に用意されていないと分析しています。社会に出る前の貴重な学びの場である大学で、もっと学生の主体性が育まれるようにすべきだという問題意識が読み取れます。学生の多様性を確保することで、学生が刺激し合いながら主体的に成長できる環境を整えることの必要性に言及しています。
これらの指摘から、文部科学省としては、初等中等教育から高等教育までの一貫した教育改革、いわゆる高大接続改革を通じて、生徒・学生の主体性を重視した教育と選抜を実現することを強く目指していることが読み取れます。受験生の主体性を多面的に評価する大学入試を実現し、それを起点として高校教育、大学教育の双方を主体性重視の方向へと導いていくという、改革の全体像が見えてきます。生徒・学生の主体的な力を育み、確かな学力を備えた人材を社会に送り出すことが、文部科学省の目下の重要課題であることが窺えます。
また、2020年10月頃の資料(https://www.mext.go.jp/content/20201028-mxt_daigakuc02-000010703_2.pdf)を重複を省き要約すると、以下のようになると思います。
各大学には、自らのアドミッション・ポリシーを明確に定めた上で、面接、集団討論、調査書、活動報告書等のあらゆる要素を活用し、受験者の主体性を多角的に評価することを期待しています。とりわけ、なぜ志願者がその大学を選び、学ぼうとするのか、これまでにどんな経験を積み、その経験をどう大学での学修に生かそうとしているのかという点を、丁寧に見極める必要性を訴えています。
さらに、大学受験における主体性の評価に際しては、あらゆる受験生に対して公平であることが重要だと強調しています。家庭の経済状況など、本人の努力ではどうにもならない要因によって不利益を被ることがあってはならないと訴えています。その方策として、調査書に家庭環境に関する項目を設けることなどを提案。社会経済的に厳しい状況に置かれた受験生に対しては、何らかの配慮を講じることも選択肢に含めるべきだとの見解を示しています。
以上のように、文部科学省は、生徒・学生の主体性をいかに評価し、育んでいくかを重要な課題と捉えているようです。大学入試に至るまでの高大接続改革を一体的に進めることで、高校教育、大学教育、大学入学者選抜のそれぞれの局面で、一人ひとりの主体性が存分に発揮され、伸長できる環境を整えようとしています。
この記事を書いた人
大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。
大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導
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