【感想・書評】東大脳の作り方(平凡社新書):大学受験塾チーム番町との類似点と相違点

 

東京大学文系・理系数学 傾向と対策と勉強法

 

【感想・書評】東大脳の作り方(平凡社新書):大学受験塾チーム番町との類似点と相違点

 

 

『東大脳の作り方』の著者

 2006年の本です。
 筆者は当時、桜蔭卒の東大理Ⅲの2年生でした。桜蔭は主席で卒業したそうで、東大理Ⅲも現役合格しています。北海道稚内生まれ。お父さんは自衛官で、お父さんの転勤に伴い、神奈川、岐阜、埼玉、東京の4つの公立小学校に通ったそうです。
 本書の後も『東大病院研修医 駆け出し女医の激闘日記』という本を出されているようです。専門は、どうも、消化管外科方面のようです。

 

『東大脳の作り方』での東大脳とは?

 『東大脳の作り方』という題名は、おそらく、出版社が売れるように考えてつけたのではないかと推測します。本書中では筆者は「東大脳」を「自分の人生を『自分のものとして』生きていく姿勢」「自ら目標を設定し、挑戦することのできる思考形態」としています。
 Amazonの低評価の中には「東大脳」という題名と、本書での定義のズレを批判しているものがあります。しかし、世界陸上400mハードルで銅メダルを2回獲った、為末大さんは、それなりにコーチングというものを理解した人だと思いますが、YouTubeチャンネル「為末大学」で「自分の人生を生きているという感覚が一番の才能であり、後天的に最も与えにくい」と語っています。

 そうすると、本書で筆者が定義した「東大脳」は、そう的外れではなく、先鋭的な教育、コーチングの観点からすると、むしろ、適切なのではないかと思います。

 

塾に通う意味

 筆者は、本文冒頭で、なぜ多くの人が塾に通うのかを考えます。多くの人が疑いもなく行っていることを、改めて考え直すのは、いいことだと思います。
 1つは、学校の勉強が受験に役に立たないと考えられているから。
 もう1つ、さらに大きいのは、みんなただ、なんとなく不安だから。
 筆者も高3の春に大手予備校の数学の東大対策講習に行ってみたそうです。理Ⅲ現役合格の筆者でも、テキストの問題はさっぱりわからなかったそうです。そして、あくまで筆者の個人的な感想ですが、講師が黒板に問題の解法を示し、生徒が板書を写すような授業の形式には馴染めなかったそうです。また、先生の解説を聞いてノートを取るという作業は学校で十分やっているから、そういう授業スタイルである限り塾は要らない、という結論に至ったそうです。

 このあたりの考え方は、大学受験塾チーム番町と似ていますね。大学受験塾チーム番町も
・学校の勉強は受験に直結する
・合格者平均あたりの人が解ける、合否を分けるレベルあたりまでしか扱わない
・板書はしない。生徒が問題を解く。
という方針で運営をしております。

 そして、筆者は高2の10月頃まで、勉強は100%学校に関するものだったそうです。理Ⅲ現役合格の筆者が「学校の勉強をこなすだけでいっぱいいっぱい」「他までとても手が回らなかった」「学校と塾で二重に勉強することがかえって基礎の定着を遅らせるケースもある」と語っています。

 このあたりは、大学受験塾チーム番町では、授業の特長ですで指摘しています。世の中には、学校と塾とで異なる内容を扱う結果、どちらも定着せず、むしろ、成績を下げている人が多くいると思います。

 

著者が理Ⅲを志望した理由

「他の科類は何百人もいるのに、理Ⅲだけ90人…」
「これだけ希少価値があるのだから、ここに入れば自分の実力が証明される。日本中から集まる天才たちと肩を並べることができる。私もその中に入りたい!」

 東大理Ⅲに入るということは、まあ、将来は医師になることがほぼ前提となります。このあたりの動機も、Amazonで低評価をつけた人達からは批判されているようです。医師にふさわしくない、と。

 大学受験塾チーム番町の塾長は、少し違う観点から考えてみようと思います。
 やる気が上がる8つのスイッチ(ディスカヴァー)という本があります。著者は、コロンビア大学モチベーション・サイエンス・センター副所長のハイディ・グラント・ハルバーソン先生です。大学の研究に基づく、ちゃんとした本です。その中で、「証明型か成長型か」というタイプ分けがされます。これは、成長型、つまり、「自分が向上することに焦点を当てる」心の持ちようでなければならないそうです。一方、本書の筆者は、自ら「証明される」と述べているように、証明型、つまり、「人に自分の能力を見せつけ認めさせよう」という心の持ちようです。
 また、マインドセット「やればできる!」の研究(草思社)という本があります。スタンフォード大学の心理学のキャロル・S・ドゥエック教授の著書です。大学での研究、調査に基づく話もたくさん出てくる、ちゃんとした本です。この本では、「こちこちマインドセット」「しなやかマインドセット」という言葉を使っています。「証明型」にあたるのが「こちこちマインドセット」です。「証明型」(こちこち)は、チャレンジを恐れる人が出てくる、試験で非常に悪い点を取ってしまった場合、「自分はもうダメ、どうにもならない」と考える、などとしています。
 本書の筆者は、東大理Ⅲには合格しましたが、その後、医師として、東大医学部出身者にふさわしい活躍をできているのか、モチベーション・サイエンスの観点からは、興味深いところではあります。モチベーションが低下していないことを願います。

 

センター試験(現共通テスト)は高得点を狙え?

 筆者は、たとえ、大学の配点が低くても、旧センター試験では高得点を狙うべき、と本書で主張しています。
 理由の1つは「センター試験はほぼ教科書レベル。リフレッシュできる」という旨のものです。しかし、本書が発売された2006年に比べ、共通テストの性質は、大きく変わっています。まず、共通テストの多くの科目は、「ほぼ教科書レベル」ではありません。理系の場合、数学、物理、化学あたりは、教科書を超えて、チャート式や、国立二次向けの問題集をこなしていたほうが、見通しが良い問題が多いです。そして、では、国立二次と傾向が近いかというと、そうではなく、身近な事柄と絡ませてきたり、定性的な理解を問う問題が出たりします。国立二次との相性はよくありません。
 したがって、大学受験塾チーム番町の塾長は、共通テストと国立二次の合計点が最大になるようなバランスを自分で考えることが大切で、必ずしも、共通テストで高得点を目指す必要はないと考えます。

 

一番でないと意味がない?

 筆者は、自衛官であるお父さんから、幼稚園の頃から「何でも一番でないと意味がない。二番、三番はドベと同じ。」と刷り込まれて育ち、実際に、一番への執着心を持つようになったようです。このことが、東大理Ⅲ合格への原動力になった可能性はあるかと思います。
 一方、先述のように、「一番でないと意味がない」というのは「こちこちマインドセット」の心の持ちようです。挫折により、ポッキリ折れてしまう危険性もはらんでいます。「成長すれば、それは成功である」という「しなやかマインドセット」のほうが、長期間にわたり、やる気が持続する傾向が高いことを考えると、このような教育には、長期的には疑問が残ります。筆者が現在も、熱意を持って医師としての仕事に取り組めていることを願います。
 絶妙なことに、このお父さんは、中学受験が終わった頃から、ほとんど口出しをしなくなったそうです。筆者も述べていますが、お父さんが干渉を続けていたら、大学受験はうまくいかなかったかもしれませんね。いやあ、この点は絶妙だと思います。
 また、筆者は、家庭でのお手伝いによって「自分で考えたことを実行に移す」を身に着けたのではないか、と述べています。これもおそらく大切なことで、進学校の下位層の多くは、何でも保護者がやってあげるので、ただ単に、自分に事を自分でできない、したがって、テスト勉強もうまくできない、というケースが多いと思います。

 筆者は「大学受験で問われる内容は、元をたどれば必ず教科書の内容です」と述べています。
 大学受験塾チーム番町でも、数学、物理、化学の授業は、基本の理解には検定教科書を使いますし、生物、日本史、世界史なども、教科書が信頼できるテキストだと考えています。

 筆者のような考え方で理Ⅲに合格するのは少数派でしょうし、他の部分の記述により、Amazonには低評価のコメントも多いようです。それでも、塾長は、筆者が「自分の人生を『自分のものとして』生きていく姿勢」を貫いた結果たどり着いた大学受験についての結論は、1つの真実を語っているように思います。

 

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この記事を書いた人

大学受験塾チーム番町代表。東大卒。
指導した塾生の進学先は、東大、京大、国立医学部など。
指導した塾生の大学卒業後の進路は、医師、国家公務員総合職(キャリア官僚)、研究者など。学会(日本解剖学会、セラミックス協会など)でアカデミックな賞を受賞した人も複数おります。
40人クラスの33位での入塾から、東大模試全国14位になった塾生もいました。

大学受験塾チーム番町 市ヶ谷駅100m 東大卒の塾長による個別指導

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